【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。

扇レンナ

文字の大きさ
17 / 58
本編 第2章

第10話

「……本当に、会うのか?」
「はい」

 この一時間で、一体何度このやり取りをしたのだろうか。そう思いつつ、私は頷く。

「なにかあれば、容赦なく話は切り上げるからな」

 彼は私にだけ聞こえる声量でそう言葉を発し、目の前の扉をノックする。

 しばらくして、「どうぞ」という凛とした女性の声が聞こえてきた。

 ちらりとラインヴァルト殿下の横顔を見つめる。先ほどの何処となく不安そうな表情は消えており、きりりとした表情を浮かべられている。……心臓がぎゅっとつかまれたような感覚だった。

(って、ダメよ。こんなこと、思っては……)

 軽く頭を横に振っていれば、ラインヴァルト殿下が扉を開けられる。

「ラインヴァルト、よく来てくれたわね」

 お部屋の奥にある執務机。そこの前に腰掛けていた一人の女性は、立ち上がってこちらに近づいてくる。

 彼女はきれいな銀色の髪を美しく結い上げている。吊り上がった形をしているその青色の目は柔和に細められ、私たちを見ている。

(……王妃、殿下)

 いろいろなところで拝見することがあるので、王妃殿下のお顔は頭の中に焼き付いている。

 そして、この女性のお顔は――まさしく、私の頭の中に焼き付いている王妃殿下そのものだった。

「本当に久々だわ。あなたったら、帰国後ちっとも会ってくれないんだから……」

 王妃殿下は、頬に手を当てつつ困ったように笑われた。その仕草は、同性である私でも見惚れてしまいそうなほどに似合っている。

 ちらりと隣に立たれるラインヴァルト殿下を見つめる。彼は、険しい表情をされていた。

「当たり前だ。……あんたに会うような時間はない」
「まぁ、本当にいつまで反抗期なんだか」

 ラインヴァルト殿下のお言葉を、軽く躱す王妃殿下。彼女はある程度ラインヴァルト殿下と言葉を交わすと、次に私に視線を向けてこられた。

 ……自然と、ごくりと息を呑む。

「あなたが、テレジア・エーレルトさんね」
「は、はい……」
「ラインヴァルトのお気に入りの子だと、いろいろな筋から聞いているわ」

 いろいろな筋って、何処なんだろうか。

 頭の片隅でそう思いつつも、私は背筋を正す。それから、深々と礼をする。

「お初にお目にかかります。テレジア・エーレルトと申します」

 淑女の一礼を披露すれば、王妃殿下はにっこりと笑ってくださる。

「なんて完璧な一礼なのかしら」
「……そんな」

 素直な称賛に照れくさくて、視線を逸らす。そんな私を見ても、彼女はニコニコと笑っているだけだった。

「あぁ、そうだわ。わたくしも自己紹介をしなくては。ラインヴァルトの母親のアデルハイト・ヴォルタースよ。今後よろしくね、テレジアさん」

 にこやかな笑みを崩さずに、王妃殿下は自己紹介をしてくださった。でも、彼女はしばらくして表情を曇らせた。

「……こんなことを言うのは、なんなのだけれど」
「は、い」

 なんだか、空気が悪いような気もする。王妃殿下のお顔を見つめると、困ったような表情を浮かべられていた。

「あなたの身に起きたことは、わたくしの耳にも入っています」
「……そ、れは」

 多分、ゲオルグさまとの婚約破棄の件だろう。むしろ、それしかない。

 喉がカラカラに渇くのがわかった。……どういう風に、言葉を紡げばいいかがわからない。

「わたくし個人としてはともかく、王家としての面目があるのです。きっと、あなたを王家に入れることを反対する輩も多いでしょう」

 ……正直なところ、私はラインヴァルト殿下と結婚するつもりはない。

 が、今、そんなことを言える空気じゃなった。視線を下げて、王妃殿下のお言葉を待つ。

「だけど、大丈夫よ。……わたくしは、あなたの力になりたいわ」
「……え」

 目をぱちぱちと瞬かせる。王妃殿下は、またにこやかな笑みを浮かべられていた。

「だって、この子がこんなにも必死に捕まえようとしているんだもの。親として応援するのは、当然でしょう?」

あなたにおすすめの小説

彼女を愛することはない 王太子に婚約破棄された私の嫁ぎ先は呪われた王兄殿下が暮らす北の森でした

まほりろ
恋愛
書籍化しました! 電子書籍配信日・2025年01月31日 紙の書籍販売日・2025年2月4日 描き下ろしSS投稿しました。 ※登場自分紹介での誤字について。  登場人物紹介に「ハルト:現国王の兄。ワルモンド:ハルトの兄で現国王」とありますが、下記が正しい情報です。 「ハルト:現国王の兄。ワルモンド:ハルトの弟で現国王」  ハルト(ウィルバート)が【兄】で、ワルモンドが【弟】です。紛らわしくて申し訳ありません。 【粗筋】  公爵令嬢のリーゼロッテは王太子の婚約者だった。しかし双子の妹に婚約者を奪われ、20歳以上年上の王兄の元に嫁がされてしまう。  しかし、王兄殿下のお屋敷でリーゼロッテを出迎えたのは12歳ぐらいの少年で……。  「ハルト」の名乗った少年を、リーゼロッテは王兄殿下の隠し子だと推測した。しかし、少年の正体は意外な人物だった。  リーゼロッテの美貌に目をつけた国王が、彼女を愛人として差し出すように言って来た。  その上、王太子や妹までリーゼロッテを利用しようとしていて……。 「リーゼロッテのことは愛してないし、彼女を愛することはこれからもないよ」  それはハルトがついた苦しくも悲しい嘘だった。 ※両片思い、じれじれ、もだもだ。   ※第16回恋愛小説大賞で奨励賞を受賞しました!(2023/03/31)応募してくださった皆様のおかげです!ありがとうございます!!   ※2022年2月14日HOTランキング25位、ありがとうございました!

虐げられた伯爵令嬢は獅子公爵様に愛される

高福あさひ
恋愛
リリム王国辺境伯エインズワース伯爵家の長女、ユーニス・エインズワース。伯爵令嬢であるはずなのに、生活は使用人以下で、まともに育てられたことはない。それでも心優しく強かに育った彼女は、ある日、隣国との国境である森で二人の怪我をした男性を見つけて……?※不定期更新です。2024/5/14、18話が抜けていたため追加しました。 【2024/9/25 追記】 次回34話以降は10/30より、他サイト様と同時の更新予定です。

悪役令嬢、猛省中!!

***あかしえ
恋愛
「君との婚約は破棄させてもらう!」 ――この国の王妃となるべく、幼少の頃から悪事に悪事を重ねてきた公爵令嬢ミーシャは、狂おしいまでに愛していた己の婚約者である第二王子に、全ての罪を暴かれ断頭台へと送られてしまう。 処刑される寸前――己の前世とこの世界が少女漫画の世界であることを思い出すが、全ては遅すぎた。 今度生まれ変わるなら、ミーシャ以外のなにかがいい……と思っていたのに、気付いたら幼少期へと時間が巻き戻っていた!? 己の罪を悔い、今度こそ善行を積み、彼らとは関わらず静かにひっそりと生きていこうと決意を新たにしていた彼女の下に現れたのは……?! 襲い来るかもしれないシナリオの強制力、叶わない恋、 誰からも愛されるあの子に対する狂い出しそうな程の憎しみへの恐怖、  誰にもきっと分からない……でも、これの全ては自業自得。 今度こそ、私は私が傷つけてきた全ての人々を…………救うために頑張ります!

氷の宰相補佐と押しつけられた厄災の花嫁

瑞原唯子
恋愛
王命により、アイザックはまだ十歳の少女を妻として娶ることになった。 彼女は生後まもなく始末されたはずの『厄災の姫』である。最近になって生存が判明したが、いまさら王家に迎え入れることも始末することもできない——悩んだ末、国王は序列一位のシェフィールド公爵家に押しつけたのだ。

【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」 婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からなくなっていました。 婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。 ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/10/01  FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過 2022/07/29  FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過 2022/02/15  小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位 2022/02/12  完結 2021/11/30  小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位 2021/11/29  アルファポリス HOT2位 2021/12/03  カクヨム 恋愛(週間)6位

【完結】婚約破棄された令嬢の毒はいかがでしょうか

まさかの
恋愛
皇太子の未来の王妃だったカナリアは突如として、父親の罪によって婚約破棄をされてしまった。 己の命が助かる方法は、友好国の悪評のある第二王子と婚約すること。 カナリアはその提案をのんだが、最初の夜会で毒を盛られてしまった。 誰も味方がいない状況で心がすり減っていくが、婚約者のシリウスだけは他の者たちとは違った。 ある時、シリウスの悪評の原因に気付いたカナリアの手でシリウスは穏やかな性格を取り戻したのだった。 シリウスはカナリアへ愛を囁き、カナリアもまた少しずつ彼の愛を受け入れていく。 そんな時に、義姉のヒルダがカナリアへ多くの嫌がらせを行い、女の戦いが始まる。 嫁いできただけの女と甘く見ている者たちに分からせよう。 カナリア・ノートメアシュトラーセがどんな女かを──。 小説家になろう、エブリスタ、アルファポリス、カクヨムで投稿しています。

ループした悪役令嬢は王子からの溺愛に気付かない

咲桜りおな
恋愛
 愛する夫(王太子)から愛される事もなく結婚間もなく悲運の死を迎える元公爵令嬢のモデリーン。 自分が何度も同じ人生をやり直している事に気付くも、やり直す度に上手くいかない人生にうんざりしてしまう。 どうせなら王太子と出会わない人生を送りたい……そう願って眠りに就くと、王太子との婚約前に時は巻き戻った。 それと同時にこの世界が乙女ゲームの中で、自分が悪役令嬢へ転生していた事も知る。 嫌われる運命なら王太子と婚約せず、ヒロインである自分の妹が結婚して幸せになればいい。 悪役令嬢として生きるなんてまっぴら。自分は自分の道を行く!  そう決めて五度目の人生をやり直し始めるモデリーンの物語。

噂の悪女が妻になりました

はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。 国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。 その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。