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本編 第2章
第12話
そのまま中庭を進んで、私はラインヴァルト殿下にエスコートされるまま移動する。
中庭には休憩用のベンチが設置されており、彼はその一つに私を座らせた。
(……なんて、きれいなのかしら)
周囲をぐるりと見渡して、その美しさに圧倒される。すべてが計算されたような、完璧な配置。
一つ一つの花々が、見事なまでに輝いている。……少なくとも私には、そう見える。
そうしていれば、私の隣にラインヴァルト殿下が腰を下ろされる。少し空いた距離が、なんだかちょっと寂しい。
……なんて感じるのは、どうしてなのだろうか。
(……それにしても、お綺麗だわ)
ちらりと横目でラインヴァルト殿下のお顔を見つめる。ここからでは横顔しか見えないけれど、それでも美しさはわかる。
さらりとした銀色の髪も、吊り上がって見える涼しげな金色の目も。全部、全部美しい。
「……テレジア嬢」
そっと名前を呼ばれた。びくんと肩を跳ねさせる私に、ラインヴァルト殿下はくすくすと声を上げて笑われる。
そして、私に微笑みかけてくださった。……その様子は、昨日の優しい彼そのもの。
ドキドキと高鳴る胸の鼓動に、私自身が戸惑ってしまう。いたたまれなくなって視線を逸らす。
瞬間、膝の上に置いた私の手に、ラインヴァルト殿下の手が重なった。
「殿下……」
静かに彼のことを呼べば、彼がゆるゆると首を横に振った。まるで、幼い子供が間違えたことをしたときのような態度。
……私は、なにか間違えてしまったのだろうか。
「もうそろそろ、その殿下ってのはやめてほしい。……なんだか、他人行儀だろ?」
「……ですが」
確かに他人行儀だけど、私とラインヴァルト殿下の関係は他人……知り合い、みたいなものだと思う。
だから、呼び方を変えることなんて出来ない。
「呼び捨てにしてくれても、いいんだけど」
「それは無理です!」
彼の言葉にぶんぶんと首を横に振る。そんなこと、出来るわけがない。呼び捨てなんて、ハードルが高い。雲よりも高い。
「普通に、不敬ですから……」
ちょっときつく言い過ぎたような気もして、フォローとばかりにそう付け足した。
ラインヴァルト殿下は、狼狽える私の様子を見て笑われる。
「冗談だよ」
「……質の悪い冗談です」
本気にしてしまいそうだったのだから。
そう付け足すよりも前に、ラインヴァルト殿下の手が私の手の上から退いた。
一抹の寂しさを抱く。でも、彼の手はすぐに私に触れた。……今度は、髪の毛に。
「じゃあ、そうだな。……俺がテレジア嬢のことを呼び捨てにすれば、平等か?」
悪戯っ子のように笑った彼の言葉を、すぐには理解できなかった。何度かぱちぱちと目を瞬かせて、言葉の意味をかみ砕く。
……呼び捨て。平等。それは、間違いないのだろうけれど。
(ら、ラインヴァルト殿下が、私のことを呼び捨てになさるの……?)
そんなことをされたら、心臓が持ちそうにない。
胸の鼓動が早くなって、どうしようもなく恥ずかしい。……まだ呼ばれてもいないのに。
「だから、テレジア。……俺のこと、もっと親しみを込めて呼んで」
「……う」
甘く囁かれるようにそう言われて、胸がぎゅっと締め付けられる。
ここまで言われたら、呼んでもいいんじゃないだろうか? それに、ラインヴァルト殿下だって私のことを呼び捨てになさっているもの……。
「……ラインヴァルト、さ、ま」
ゆっくりと、彼のことを呼ぶ。ちょっと声が震えているのは、ご愛嬌。
だって、まさか王太子殿下のことをさま付けで呼ぶなんて。……想像も、していなかったんだもの。
中庭には休憩用のベンチが設置されており、彼はその一つに私を座らせた。
(……なんて、きれいなのかしら)
周囲をぐるりと見渡して、その美しさに圧倒される。すべてが計算されたような、完璧な配置。
一つ一つの花々が、見事なまでに輝いている。……少なくとも私には、そう見える。
そうしていれば、私の隣にラインヴァルト殿下が腰を下ろされる。少し空いた距離が、なんだかちょっと寂しい。
……なんて感じるのは、どうしてなのだろうか。
(……それにしても、お綺麗だわ)
ちらりと横目でラインヴァルト殿下のお顔を見つめる。ここからでは横顔しか見えないけれど、それでも美しさはわかる。
さらりとした銀色の髪も、吊り上がって見える涼しげな金色の目も。全部、全部美しい。
「……テレジア嬢」
そっと名前を呼ばれた。びくんと肩を跳ねさせる私に、ラインヴァルト殿下はくすくすと声を上げて笑われる。
そして、私に微笑みかけてくださった。……その様子は、昨日の優しい彼そのもの。
ドキドキと高鳴る胸の鼓動に、私自身が戸惑ってしまう。いたたまれなくなって視線を逸らす。
瞬間、膝の上に置いた私の手に、ラインヴァルト殿下の手が重なった。
「殿下……」
静かに彼のことを呼べば、彼がゆるゆると首を横に振った。まるで、幼い子供が間違えたことをしたときのような態度。
……私は、なにか間違えてしまったのだろうか。
「もうそろそろ、その殿下ってのはやめてほしい。……なんだか、他人行儀だろ?」
「……ですが」
確かに他人行儀だけど、私とラインヴァルト殿下の関係は他人……知り合い、みたいなものだと思う。
だから、呼び方を変えることなんて出来ない。
「呼び捨てにしてくれても、いいんだけど」
「それは無理です!」
彼の言葉にぶんぶんと首を横に振る。そんなこと、出来るわけがない。呼び捨てなんて、ハードルが高い。雲よりも高い。
「普通に、不敬ですから……」
ちょっときつく言い過ぎたような気もして、フォローとばかりにそう付け足した。
ラインヴァルト殿下は、狼狽える私の様子を見て笑われる。
「冗談だよ」
「……質の悪い冗談です」
本気にしてしまいそうだったのだから。
そう付け足すよりも前に、ラインヴァルト殿下の手が私の手の上から退いた。
一抹の寂しさを抱く。でも、彼の手はすぐに私に触れた。……今度は、髪の毛に。
「じゃあ、そうだな。……俺がテレジア嬢のことを呼び捨てにすれば、平等か?」
悪戯っ子のように笑った彼の言葉を、すぐには理解できなかった。何度かぱちぱちと目を瞬かせて、言葉の意味をかみ砕く。
……呼び捨て。平等。それは、間違いないのだろうけれど。
(ら、ラインヴァルト殿下が、私のことを呼び捨てになさるの……?)
そんなことをされたら、心臓が持ちそうにない。
胸の鼓動が早くなって、どうしようもなく恥ずかしい。……まだ呼ばれてもいないのに。
「だから、テレジア。……俺のこと、もっと親しみを込めて呼んで」
「……う」
甘く囁かれるようにそう言われて、胸がぎゅっと締め付けられる。
ここまで言われたら、呼んでもいいんじゃないだろうか? それに、ラインヴァルト殿下だって私のことを呼び捨てになさっているもの……。
「……ラインヴァルト、さ、ま」
ゆっくりと、彼のことを呼ぶ。ちょっと声が震えているのは、ご愛嬌。
だって、まさか王太子殿下のことをさま付けで呼ぶなんて。……想像も、していなかったんだもの。
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