村長？ 町長？ 市長？ 呼び方はどうでも良いですけどお仕事ですよ！

村長！ お仕事です！

村長の家が用意された！ 執務室で最初の仕事をしよう！

「貴方の名前は……そうだ！　ヘルイェス！　それにしましょう！　ここでは『正しい』っていう意味を持ってます」
　目の前の女の子が笑顔で俺の名前を決めてくれた。そうか。それならそうしよう。
　でも、目の前の女の子よ！　君の名は？　名乗ってくれないのであろうか？

　訝いぶかしげに目の前の女の子を見つめる。すると目の前の女の子は顔を赤らめ始めた……。

「あ！　私としたことが……。失礼しました！　名乗りもせずに！　私はアレクサンドラです！」
　目の前の少女、アレクサンドラは大慌おおあわてで名乗りを挙げた。

「そうか。アレクサンドラか。いい名前だな。ところでアレクサンドラ？　俺の記憶はあまりない。仕事に関しては、ここではないどこか大きな都市の役所の職員をやっていたと言う記憶はあるのだがな……。俺が今どういう顔をしているのかも分からない。鏡とか持っているか？」
「ええ！　ヘルイェス様！　今、お見せしましょう！」
　そういってアレクサンドラは無の空間から手鏡を出した……。空間魔法？　魔法が使える世界なのか？

　アレクサンドラの持つ手鏡越しに俺の姿を見ると俺の姿はこうだった。黒髪黒眼、髪の毛はツーブロックソフトモヒカン。目は吊りめ。鼻筋はやや低く唇は薄め。顔のパーツの配置は我ながら整ってるな。ああ、肌の艶が良く俺の若い頃の姿のようだ。黒メガネは何時いつ買ったかは覚えてないが、俺に似合ってる。服装も黒スーツ、白シャツ、黒い革靴、腕時計は１０万円する舶来品。これは……、俺が前世？　の時の服装だったか……。

　さあ、本題だ。俺が村長として何をすべきなのかを問とわねばなるまい。

「アレクサンドラ！　鏡、ありがとう。で、俺はまず何をすればいい？」
「まずはここらへん一帯に人がいるということを世に示さねばなりません！　ここは未開の土地ですからね！　そうだ！　ここに家を建てましょう！」
　おう。そうだな！　家がなければ何もできないからな！

「どころでアレクサンドラはどこに住むのだ？　まさか？　俺と同居するのか？」
「はい！　もちろん！　私は同じ家に住みますよ！　ヘルイェス様と一つ屋根の下で住みます！」
「待て待て！　それは良いのか！」
　いかん！　ちょっと下半身に血が行ってしまった……。紺のブレザーに白のブラウス、茶色のプリーツスカートに黒ニーソという服装。そんな彼女の絶対領域が眩しすぎるんだ！

「大丈夫です！　ヘルイェス様は運命の人ですから！　私の〈アイテムボックス〉には２人の１年分の水、食料がありますから！　安心して下さい！　公私ともにサポートしますよ！」
　安心できることが一つも無い！　アレクサンドラは抜けてるのか？　おバカの子なのか！　俺、大丈夫か？

「もう！　グダグダ言っても仕方有りません！　こんな事もあろうかとここに来る前に家を用意しておきました！　ここに設置します！　えいっ！」
　そういうや否やアレクサンドラは３階建ての大きな家を空間魔法で設置してしまった！

「さあ、ここがヘルイェス様と私の愛の巣・・・です！　さあ、中に入りましょう！　１階の執務室で早速作業開始しましょう！」
　おい！　おーーい！　ちょっと待て！　なんか聞き捨てならないアクセントがあるぞ！
　俺はアレクサンドラに手を掴つかまれて、彼女の設置した家に引きずり込まれた……。連行された……。彼女の手、めっちゃ柔らかいぞ！　いい匂においもする。いかんいかん。何を考えている……。無心になれ！

「さあ、ここがヘルイェス様の執務室です！」
　家に入り直すぐ右の部屋に俺の執務室があった。木目もくめがはっきりとした壁、奥にあるいかにも格調高そうな濃い茶色をした木製の執務机。一見無骨そうに見える部屋だが調度品ちょうどひんの質ははっきりと高いと見て取れる。いくら金を使ったんだ！

「さあ！　座ってください！　これからやることを説明します」
　俺を座らせたアレクサンドラは目の前に立ち、地図を広げる。地図の真ん中は金色の星型の点がある。その周りは薄緑色に囲まれ、その周りには濃い緑色が有る。所々濃い緑の部分に水色の線がある。おそらく平地、森林、川だろうか？

「この地図、魔導地図なんです！　あ、家を建てたことを通知してませんね！　えいっ！」
　アレクサンドラが地図の金色の星型の点を触ると薄緑色の部分の大半の色が銀色の縁取ふちどりがされた赤に変わった。これが建てた家のことを示してるのか……。

「地図の一帯は低いレベルの建物で頑張れば５０００人住める感じです。もちろん建物が良いものになれば、もっと多く住めますけどね？　さあ、その筆を持ってください！　地図の右にパレットがあるでしょう？　茶色が低レベルの道路、薄い赤色が低レベル住宅地、薄い黄色が低レベル商業地、薄い灰色が低レベル工業地です。筆を決めた色のパレットに触って地図に塗るとその一帯の用途が決まります。まずは住宅地を作りましょう！」
　…………。あれか！　俺は都市育成シミュレーションゲームの世界っぽいのに転生したっていうのか！　俺はこの家から離れた川辺の付近に薄い赤色を塗った……。そして、そこからこの家に向けて茶色の線を引いた。

「ヘルイェス様、お見事です！」