異世界で王城生活~陛下の隣で~

文字の大きさ
40 / 57

30 二人の関係は?

しおりを挟む
 告白され、時間があれば一緒に過ごすようになってから皆が仕事を終えた後にまた私の部屋にやって来るようになった陛下。
 以前と同じように行政の事や日常の事を話しながらお酒を飲んで行くんだけど、やっぱり何か今までとは違うよ。
 前は向かい合うかテーブルの角を挟んで座っていたんだけど、最近はテーブルではなくて気付けばソファに並んで座るようになっていた。
 あれ以来濃厚なキスされる事もなくね……まあ、良いんだけどね。挨拶程度の軽ーいキス。うん、良いんだけど。
 
 ある時、私の方が酔ってしまい陛下にもたれ掛かって寝てしまったらしい。
 気付いたら明け方で……
 なんと、目が覚めたら夫婦の寝室である大きなベッドの上で、陛下に抱きしめられてられていてびっくりした。
 いや、何も無かった事は直ぐに分かったけれど。
 陛下も目を覚まし

 「ユリカをここへ運んだら自分も眠気に負けそのまま寝てしまった。悪かった」

 と謝り自分の部屋に戻ろうとしていて。
 こんな時間に私の部屋から出て行くところを誰かに見られたらと思ったら、ヤバいんじゃないとかと思った私は後先を考えずにあの扉の鍵を開けてしまったのだ。
 そして隣の陛下の自室に押し込んだ訳で、取敢えず陛下がお泊りしてしまった事は周囲には気づかれなかった筈。

 でもそれが失敗だったことに後から気付くこととなった。
 それからというもの部屋を訪ねて来た時はここに泊まっていくようになってしまい……
 自分の部屋へ戻ってくれと頼んでも「ユリカが隣にいるとよく眠れる」とか言って帰ってくれない。
 そして明け方にあの扉から自分の部屋に戻るようになってしまったのだ。
 一応気を使って侍女ズが来る前に部屋に戻っていき、私は毎回すぐに鍵を掛けている。

 何もないとはいえ良いのか?
 恋人同士みたいだから良いのか?
 絶対に侍女ズ、特にアンは気付いているよね?

 だって、彼女は陛下がお泊りした日の朝はシーツを直しながら何か悪そうな笑みを浮かべている気がするんだもん。
 シーツを見れば清い関係であるのは判ると思うけど、なんか気まずい。


*ー*ー*


「シリウス、ユリカ嬢とはどうなっているんだ?あの時話したんだろう?」
 執務室でキャステルはシリウスと二人だけになったのを見計らい尋ねてきた。

「どうとは?」
 そ知らぬ口調で反対に聞き返すシリウスに彼は呆れれてしまう。

「お付き合い宣言をしたあと人目を忍んで彼女の部屋に行っているらしいじゃないか」

「ああ、時折部屋を訪ね酒を飲んでいる」

「はーん、酒をね。それでそのまま自室に戻らずか」

「何故そう思う」

「バレてないと思ってるのか?笑えるな」

 カップを持つユリウスの指がぴくりと動いた。

「メアリーアンが気付かない訳がないだろう?彼女はシーツに二人分の温もりが残っていると言っていたぞ」

「…………」

「まあ、もう覚悟を決めたようだから良いんだけどな。正式に発表をする間でちゃんと避妊はしておけよ」
「…………心配ない。添い寝はしているがキャステルが心配するようなことはしていない」

「えっ!?」

「メアリーアンも温もりはあっても事後の痕跡はないと判っている筈だ」

「そうなのか?そこまでは聞いていなかったが……」

「信じられないのか?」

 あまりにも真面目な顔で言われキャステルは言葉を失ってしまう。

「私はユリカを手に入れるつもりだが、彼女の気持ちを無視してまで推し進めるつもりはない。好意は寄せてくれていると言ってくれ口づけまではした。これからは本当の婚約者として接するとも伝えた。今は彼女の言う『恋人同士の愛』をはぐんでいる最中で友梨香の気持ちが決まるまで待つつもりだ」

「そ、そうなのか。早とちりしてわかるかった。でも、ユリカ嬢はあの鍵を開けてくれたんだろう?」

「ああ、だがそれは私が部屋に戻る時だけで、直ぐに鍵は閉められる。私の部屋からは勝手に入って行けぬのだ。だから訪ねる時は通常通り廊下からちゃんと行っているぞ。ユリカが断れば無理に押し入ったりはしていない」

「へっ、お前って結構まじめだったんだな」

「ふん」

 仮面をし浮名を流した男が何度もユリカの元を訪れているのにもかかわらず、キスどまりで自分が思っていたことはしていないと平然として言う。

 シリウスが彼女の気持ちをそれだけ大切に考えていた事に対し下世話な事を考えていた自分を恥じたキャステルでありました。

 その後、次の夜会で正式に友梨香を妃候補とすることが発表されるとの噂が広まっていく。





***************
※今回はR15で登録しておりますので表現がなかなか難しい(汗)
 ついいつもの調子で書かないように気を付けているところであります。
 
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。 前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。 恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに! しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに…… 見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!? 小説家になろうでも公開しています。 第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品

せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?

志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。 父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。 多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。 オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。 それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。 この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!

元貧乏貴族の大公夫人、大富豪の旦那様に溺愛されながら人生を謳歌する!

楠ノ木雫
恋愛
 貧乏な実家を救うための結婚だった……はずなのに!?  貧乏貴族に生まれたテトラは実は転生者。毎日身を粉にして領民達と一緒に働いてきた。だけど、この家には借金があり、借金取りである商会の商会長から結婚の話を出されてしまっている。彼らはこの貴族の爵位が欲しいらしいけれど、結婚なんてしたくない。  けれどとある日、奴らのせいで仕事を潰された。これでは生活が出来ない。絶体絶命だったその時、とあるお偉いさんが手紙を持ってきた。その中に書いてあったのは……この国の大公様との結婚話ですって!?  ※他サイトにも投稿しています。

キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる

藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。 将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。 入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。 セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。 家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。 得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。

『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています この物語は完結しました。 前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。 「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」 そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。 そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?

ヒロインに躱されて落ちていく途中で悪役令嬢に転生したのを思い出しました。時遅く断罪・追放されて、冒険者になろうとしたら護衛騎士に馬鹿にされ

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
第二回ドリコムメディア大賞一次選考通過作品。 ドジな公爵令嬢キャサリンは憎き聖女を王宮の大階段から突き落とそうとして、躱されて、死のダイブをしてしまった。そして、その瞬間、前世の記憶を取り戻したのだ。 そして、黒服の神様にこの異世界小説の世界の中に悪役令嬢として転移させられたことを思い出したのだ。でも、こんな時に思いしてもどうするのよ! しかし、キャサリンは何とか、チートスキルを見つけ出して命だけはなんとか助かるのだ。しかし、それから断罪が始まってはかない抵抗をするも隣国に追放させられてしまう。 「でも、良いわ。私はこのチートスキルで隣国で冒険者として生きて行くのよ」そのキャサリンを白い目で見る護衛騎士との冒険者生活が今始まる。 冒険者がどんなものか全く知らない公爵令嬢とそれに仕方なしに付き合わされる最強騎士の恋愛物語になるはずです。でも、その騎士も訳アリで…。ハッピーエンドはお約束。毎日更新目指して頑張ります。 皆様のお陰でHOTランキング第4位になりました。有難うございます。 小説家になろう、カクヨムでも連載中です。

【完結】断頭台で処刑された悪役王妃の生き直し

有栖多于佳
恋愛
近代ヨーロッパの、ようなある大陸のある帝国王女の物語。 30才で断頭台にかけられた王妃が、次の瞬間3才の自分に戻った。 1度目の世界では盲目的に母を立派な女帝だと思っていたが、よくよく思い起こせば、兄妹間で格差をつけて、お気に入りの子だけ依怙贔屓する毒親だと気づいた。 だいたい帝国は男子継承と決まっていたのをねじ曲げて強欲にも女帝になり、初恋の父との恋も成就させた結果、継承戦争起こし帝国は二つに割ってしまう。王配になった父は人の良いだけで頼りなく、全く人を見る目のないので軍の幹部に登用した者は役に立たない。 そんな両親と早い段階で決別し今度こそ幸せな人生を過ごすのだと、決意を胸に生き直すマリアンナ。 史実に良く似た出来事もあるかもしれませんが、この物語はフィクションです。 世界史の人物と同名が出てきますが、別人です。 全くのフィクションですので、歴史考察はありません。 *あくまでも異世界ヒューマンドラマであり、恋愛あり、残業ありの娯楽小説です。

処理中です...