異世界で王城生活~陛下の隣で~

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34ジュノにとってはワンダーランド

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 翌日朝の仕度を終えてすぐ、満を持したオルトランが早朝から友梨香の部屋を訪ねて来た。

「ジュノアール様まだ朝食前ですよ!」
「うーん、ボク待ちきれなくて」

 二人の会話から随分前からの知り合いだったことが伺える。
 思い起こせば、友梨香がこの世界に来るまで、メアリーアンは陛下の侍女をしていたというのだから彼とも面識があるのは当然の事だ。
 しかも、裏の仕事もするメアリーアンに魔道具暗器の提供もしていたと後から聞けば納得である。

「アン、大丈夫よ。キャンちゃんで朝食をとる事にするわ」
「はー、ジュノは言い出したら止まりませんからね。ディア、厨房に朝食は要らないと伝えて来て」
「はい、畏まりました」

 あまり出番の無い侍女ズのクローディアだが、義姉のメアリーアンの指導のもと侍女らしく仕事を熟せるようになってきた。

「じゃあ、行きましょうか」

 友梨香の声にオルトランが二ッと白い歯を出して何度も頷いている姿は、まるで「マテ」をしていたワンコが「ヨシ」と言われ尾っぽをブンブン振っているように見え、友梨香は思わず吹き出してしまった。




「へぇ~、箱の中はこんな風になっていたんだ」

 キャンちゃんの車内を目を丸くして見ているオルトラン。
 車内にはメアリーアンとルードウィックも座っている。

「取敢えず、朝食を食べてから質問は受けますから、ジュノさんも座って下さい」
「あっ、うん」

 友梨香に言われ大人しくルードウィックの隣に腰を下ろすも、周りにある機器が気になって仕方のないオルトランであった。
 そんなオルトランを横目に見ながら友梨香は食パンにマーガリンとケチャップを塗り、刻んだベーコンととろけるチーズをのせてオーブンレンジで焼き始めた。
 キャンに何度も来ているメアリーアンはその間にインスタンコーヒーを手慣れた様子で準備し、砂糖とミルクもテーブルに置いた。
 テーブルの上にはティ〇ァールの電気ケトルが置かれコードをルードウィックが窓際のコンセントに差し込む。
 少し待てば沸々と小さな泡が立ち始め注ぎ口から湯気が立ち上って来た。

「何、コレ!魔石も使わずお湯が沸かせるの?」

「ふふ、そうですよ。電気で沸かしているの」

「電気?」

 オルトランがしげしげとケトルを眺めていると背後から「ピピピ」という音が聞こえて来た。

「何の音?」

「パンが焼けた音」ユリカが笑いながらレンジからオープントーストをそれぞれの皿に乗せててアンに手渡していった。

「うわっ、初めて見る!」

 トーストを持ち上げあちこちを興味深げに見ている。
 サクッ!といい音をさせて一口齧ると、とろけたチーズが糸のように引いてそれをどうしていいか分からず、目を白黒させていた。
 仕方なく指でちぎり口の中のを咀嚼しごくりと飲み込んだ。

「美味しい……」

「良かったです」
 友梨香がにっこりと微笑む。

「ユリカちゃんの世界ではこんなに美味しいパンをいつも食べることが出来るの?これもさっき言ってた電気というので焼いたの?」

「うん、そうよ。オープントーストは他にも色々好きな物を乗せて焼けば良いだけ。誰でも作れる」

「こんな柔らかいパンも初めてだけど、電気というのが凄いな。どんな仕組みになっているんだろう?」
「私には詳しく説明できないけど、水力、火力、風力、太陽熱などを利用して発電させてるの」

「益々興味がそそられる」

 オルトランは目を輝かせて、いろいろ想像をしているみたいだ。

「何だったら、この車の上にソーラーシステムのボードを乗せているから調べてみて良いよ。これからこの国で何かに役に立つヒントがあるかも」

「い、いいのか!?」

「構わないよー、ただ先に調べて良いか陛下に許可を貰ってね」

「うん、分かった!」

 嬉しそうに返事をするとオルトランは思い出しかのように手に持ったままだったトーストにかぶり付き満足げに微笑んだ。
 その様子を見ていた三人も顔を見合わせほっこりとした気持ちになったのだった。

 その後も質問責めになるが友梨香は使い方は説明できても、原理など聞かれても答えることなど出来る筈もなく、オルトランはブツブツと一人で何かを唱えるように独り言を言っていた。

 魔術師って、研究者に近いのかもしれない。
 それにしてもはしゃぐ仕草や言葉使い全てを見ても、私より年が上だとは思えない。
 何かに長けている天才ってみんなこうのかな?

 そんな事を思う友梨香であった。


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