異世界で王城生活~陛下の隣で~

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37あれが噂の王女ですね

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「陛下~♡」

 突然抱き付いてきた少女。
 これが噂のローザリー王女なのか。

「殿下、いけません。きちんとご挨拶なさいませ」
 国から付き添って来たと思われる中年の女性、オルビス王国宰相婦人が慌てて窘める。

「ん、もう。ガウザー夫人、陛下にお会い出来たのは久しぶりなんだから少しぐらいいいじゃないの」
「いえ、陛下から殿下が粗相をなさならい様にとご心配され、わたくしを同伴されたのです」
「お父様ったら」

 そんな二人の会話に冷たい視線を向けているシリウス。
 王女は体勢を立て直し、礼儀をとった。
「シリウス陛下にはご機嫌麗しく、この度の夜会への参加をご了承下さり感謝いたします」

「この度の夜会は国内内々のものだったにも関わらず、王女殿下の耳に入ったようであるな。其方にはいつも振り回わされる。もう少し王女としての自覚をお持ちになられた方が良いのではないか?」
「また、そんな冷たいお言葉を。陛下の意地悪」
「殿下!」
 拗ねた仕草でシリウスに寄り添おうとするが、ガウザー夫人に阻止されふて腐れてしまう。
「分かりましたって!でも、陛下……何かいつもと違う香りがするのですけど」

 多分今さっきまで入っていた温泉の匂いが付いていたのだろう。王女は端たなくクンクンとシリウスから漂う香りをかいでいる。

「先ほどまで暫しの休みをと温泉に浸かっていたところを呼び出されたのでな。香水など付けていないから湯の成分の匂いだと思うが」

 シリウスは友梨香との時間を邪魔され、嫌味のつもりで言ったのだが、

「うわー、お暇だったのですね。それってわたくしが泊るお部屋にもある温泉ですか?あまり匂いが無かったと記憶していますが」

 王女に嫌味は通じていなかったらしく、シリウスはため息を一つ吐いた。

「宮中の部屋にある風呂の湯は色も臭いも消してあるからな」
「そうなんですの。えっ、では陛下は何処で?」
「それは……私の秘密の場所ゆえに王女に教えることは出来ない」
「えっ、知りたいですぅ」
「殿下!おやめください」

 少し離れた場所から隠れて見ていた友梨香は、あれが一国の王女なのかと呆れてしまった。

「アン、あの王女様は十四歳って言ってたわよね?」
「はい、そうですね」
「なんか、幼いね」
「甘やかしすぎですわ」
「確かに」

 そんな会話をしながら今は挨拶する時ではないと思いアン、そしてルードと共に自室に戻っていった。



 その夜、王女を迎えた晩餐が行われた。
 この際だから婚約披露前に友梨香を紹介してさっさと諦めて貰おうという事で、友梨香も一緒に食事をする事となった。

「やっぱりコルセットをしなくてはダメ?」
「当然です、ユリカ様。あの王女様にユリカ様の美しさを見せつけなくては!」
「でも、アレを付けると食べた気がしないのよね」
 ドレス着用のためのコルセットを眺めながら友梨香は大きく息を吐く。

「シェフの話ではデザートにユリカ様のパンケーキが出るそうですよ」
「えっ、ホント?なら食事は少なめでも良いか~。それにアイスが付くと最高なんだけどな。料理長が作ってくれたラズベリーソースが合うのよね」
「ええ、本当に。あれはとても美味しかったです!」

 クロ―ディアがドレスの準備をしながら頬を上気させている。
「ふふ、ディアはプリンよりアイス派だもんね」

「はい。でも次回はユリカ様が言っていたレアチーズケーキというのが食べてみたいです」
「そうね。アレも簡単だから今度作ってあげるわ」
「ありがとうございます!アンお姉さま、レアチーズケーキですよ!」
「はい、はい、良かったわね。嬉しいのは分かるけどそんなに力を入れたらドレスに皺が寄ってしまうわ」

 燥ぐクローディアの手から友梨香の着るドレスを取り上げ、こつんと彼女の頭を軽く小突くメアリーアン。
 その様子を見て友梨香は思わず笑ってしまう。

「ユリカ様もそんなお口を開けて笑われてしまうとせっかくのお化粧が崩れてしまいますよ」
「うわっ、私まで叱れちゃったわ」

 ユリカの部屋の前の前を通りかかった者は、部屋から洩れてくる笑い声を聞き自然と口元を緩めた。

「さぁ、準備が整いました。お綺麗です、ユリカ様」
「ありがとう。アン、ディア」

 鏡の中には派手さはないが、若草色のシフォンドレスに身を包んだ王女とは正反対の慎ましやかな黒い瞳の乙女が映っていた。

――コンコン――

「陛下がお見えです」

「はい、只今」

 扉を開け先には正装よりは少し緩めの衣装を着たシリウスが立っていた。
 ユリカのドレス姿を見て一瞬息を呑んだシリウスだが、直ぐにいつもの笑みを浮かべる。

「ほう、美しいな。いつもより大人びて見える」

 シリウスは友梨香の前にやって来て、手を取り口づけを落とすとユリカの頬が僅かにそまった。

「では、我儘姫に私の婚約者を見せつけに行こうか」
「別に普通で良いですよ、普通でお願いします」
「ふむ、私にとっては普通がどういものか分からいのだが」

 そ云って、口元を手で押さえクククと笑う。

「もう、そうやって揶揄っているんでしょう?早く王女様のところへ行きましょう」
「そうだな、待たせるとまた何を言い出すかわらぬからな。ではどうぞ、婚約者殿」

 自然と出された右ひじに友梨香も軽く手を添え二人は晩餐へ向かい部屋を後にしていく。


「お姉さま、陛下とユリカ様は本当にお似合いですね」
「ええ、私もそう思うわ。それじゃ私もお供してきます。ディア、片付けをお願いね」
「はい、いってらっしゃい」

 メアリーアンもユリカの後を追うように部屋を出て行く。

「ユリカ様って本当に素敵。それに凄いわ。だって、あんなに怖そうに見えた陛下が、今はとってもお優しく見えてますもの。やっぱりユリカ様って聖女様かしら?」

 そんな独り言を言いながら、クローディアは主が去ったあとの部屋を黙々と片付けていくのであった。

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