大聖女と言われ転生しましたが、大きな仕事もせずに第二王子に愛されています。

文字の大きさ
36 / 111
第4章*隣国の王女

王女の訪問とユリと花②

しおりを挟む
「やはり戻っているな」

 そう呟きくとアンナの元へ戻り既に寝息を立て始めている彼女の事を暫し見つめて
「アンナ、君のお陰かな」
 と微笑み部屋から出て行きました。

 バージルが執務室から出ると外にはダニエルが待機していました。
「アレ?随分早いね」
「アンナは頭痛が取れ眠っているから暫く寝かせて置け。誰も近づけるな」
「何かしたのか?」
「何もしてない。疲れているようだから睡眠魔法で1時間ほど眠らせた」
「なーんだ、でもお前のその目の色・・・」
「なんだよ」
 ・・・・・・・・・
「いや、いいんだ。どうせなら添い寝してくればよかったのに。せっかく二人にしてやったんだぜ」

「ばっ、馬鹿言うな。添い寝なんかしたら止まらん!」

「流石に寝てる子に手は出せないだろうけど、お嬢が起きた時一人ぼっちじゃ可哀そうだろう?」
「あぁ、そいう事なら起きそうな時を見計らって戻って来るさ。とてもじゃないがあの可愛い寝顔をずっとは見ていられない」
「はぁー、ヘタレだね、バージルは」
 顔を赤らめるバージルにダニエルは呆れて溜息を吐いたのでした。


 アンナが寝ている間に晩餐の準備は着々と進んでいた。

 その間フェリーシア王女の相手をさせられていたデオドールは王女の湯あみと着替えでやっと解放されげんなりとしていました。

「兄上、大丈夫ですか?」
「駄目だ・・・これが一週間続くと思うと。。。」
「そんなにキツイですか_?」
「ああ、マシンガントークで話していたかと思うと急に甘えた声で迫って来るし、ほとほと疲れる」
「兄上の様に女性の扱いに慣れている方にも手に負えないとは」
「変わって、バージル」
 縋る様な目をしてバージルの手を取るデオドール。
「むっ、無理ですよ」
 その手を振り払うバージル。
 そんなこと言わずに助けてと縋るデオドールを引き離し
「そろそろアンナを起こしにいかなくてはと無情に去る弟を恨めしく見送る兄デオドールでした。


「アンナ、そろそろ起きようか」
「ん。。。ジル様?」
 仮眠ベッドで目覚めるアンナに軽くキスを落とすバージル。
 アンナはつい先ほどの熱いキスを思い出し、カァーと熱くなり毛布を頭からかぶってしまいました。

「駄目だよそんな頭から被ったら。乱れた髪で君の部屋まで行く事になってしまうよ」

 そう言われ慌てて起き上がります。
 執務室から乱れた髪で出て行くなんてとんでもない!誤解されたら大変だわと焦りまくる。

「ビオラが執務室で待っているから一緒にお行き」
「はっ、はい」
 アンナはベッドから降りると服の乱れを直し、隣の部屋で待つビオラの元へと向かった。

「あら、まだ寝ぼけ眼じゃないですか」
 ビオラに笑われる。
「何だか頭痛の後急に眠くなっちゃって」
「あら、頭痛なんて珍しいわね、これから晩餐もあるから湯あみしてリラックスした方が良いわよ」
「そうね、行きましょう」

 ビオラが寝て少し崩れた髪を治しくれ、バージルとダニエルに挨拶をして二人は執務室を後にしました。

◆◆◆

 エスメラルダの王女を迎えての晩餐が始まった。
 楽団が入りゆったりとした音楽が流れる。
 今回の晩さん会は長テーブルで向かい合うものではなく、円型のテーブルで親近感を出すよう指示されていました。
 上座の大きめのテーブルに両陛下とフェリーシア王女。
 王女の隣にはデオドール、そしてバージルと婚約者ジュリアンの間に聖女マリーが座りました。

「我が国の料理はお口に合いますかな?」
 陛下の問い掛けに
「ええとっても美味しゅうございます」
 と笑顔で答えるフェリーシア王女。
「それは良かった。旅の疲れが取れたら王都の名所などを周られるとよい」
「お心使い感謝いたします。陛下」

 おてんば娘と聞いていたが公の場ではちゃんとしている。流石王女ですね。
 王女はアンナの方を見ると
「バージル殿下はもうご婚約されているとか。ご婚約者のジュリアンナ様はその髪色も瞳の色もとても綺麗。お年はおいくつなのでしょうか?」
 といきなり振って来ました。
「はい、フェリーシア王女様、私はもう少しで十六に御座います」
「まぁ、私よりも二つも年下ですのね!」
 驚いたように自分の前で両手を合わせます。
「バージル殿下も精悍なお顔立ちで素敵ですよね。おモテになるでしょうからご心配になりませんか?」
「あっ、そんな事は」
 アンナが困っているとマリーがナイフとフォークを置き
「王女様、バージルお兄様の方がジュリアンナお姉さまにメロメロなので心配御座いませんわ」
 と、すまして言う。
 これには両陛下も思わず吹き出してしまいそうになった。
「こら、マリー」
 バージルがマリーを窘めます。
「うふふ、メリメロですか。でしたら私くしもデオドール殿下にメロメロと云う事ですわ」
 今度はデオドールが吹き出しそうになる。
 周りにいる者はどう返して良いか分からず作り笑いをした。

「でもこの国は王族の方も聖女様も含め本当に仲がよろしくて羨ましいですわ」

 確かに王女の国エスメラルダでは次期王権争いが起きており水面下での派閥荒いも勃発していたのでした。

「儂の後継者は王妃の産んだデオドールとバージルだけだからの。側室を迎え男子が生まれておったらそうもいかんだろう。無駄な権力争いはない方が良い。周りの貴族たちには側室を持つことを勧められたが、それもその者達の私利私欲からと分かり切っておるからな。どちらにしても儂はクリスティーナ以外は愛せぬ」
 陛下はそう言って妻の手を握ると王妃クリスティーナも夫の顔を見ながら優しく微笑んだ。

「父上、母上、二人の世界に入らないで下さい。マリーもいるのですよ」
 デオドールの言葉に照れる両陛下。
 なんか素敵です。
 その時じっと聞いていたフェリーシアが顔をほんの少し歪ませたのをアンナだけは気付き他の誰しも知る由は無かった。

 その事よりアンナはまたじわじわと頭が痛くなってきた事に懸念を抱いていた。
『なんだろう、まただ。やはりこの香りじゃないかしら』
 丸テーブルの中央に広がるようにアレンジされたユリの花。
 バージルの顔色を伺うと彼もまたこめかみ辺りを時々抑えている。

『絶対にこれだわ!』
 バージルにもこちらを見て来たのでさり気なく目配せをするとウンと頷いた。
 さて、この場を何と言って退席するべきか。
 食事は殆ど済み歓談の場となり中央ではダンスも披露されている最中だからお花摘みとでも言って席を立とうかと思案していると、バージルとアンナの間に座っていたマリーがうとうとし始めた。

 マリー様ナイス!!!

「ご歓談中失礼いたします。マリー様がお眠いようなのでお部屋までお連れさせていただきます」
 会話を中断させてしまった事を詫びると
「なら他の者に運ばせよう」
 陛下に声を掛けられてしまった。

 あちゃー、そうじゃなくて。アンナはもう一度バージルを見る。
「いや、私とアンナで連れて行きます」
 バージルはすっと席を立ち、ウトウトと船を漕ぐマリーを抱き上げるとスタスタと歩き始めました。
 アンナは「失礼いたします」と頭を下げ慌ててバージルの後を追いその場を後にしました。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~

しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。 豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。 ――食事が、冷めているのだ。 どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。 「温かいごはんが食べたい」 そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。 地下厨房からの高速搬送。 専用レーンを爆走するカートメイド。 扉の開閉に命をかけるオープナー。 ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!? 温かさは、ホッとさせてくれる。 それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。 冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、 食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ! -

聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました

AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」 公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。 死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった! 人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……? 「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」 こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。 一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

​『5階にトラック突撃!?ポンコツ女神の使役権と地球通販を得た医学生、辺境の村でワスプ薙刀と現代医療を駆使し最強防衛ライフを始める』

月神世一
ファンタジー
マンションの5階でカレーを作っていたら、なぜかトラックが突っ込んできた件。 ​外科医を目指す医学生・中村優太(24)は、特製の絶品バターチキンカレーを食べる寸前、マンションの「5階」に突撃してきた理不尽なトラックによって命を落としてしまう。 ​目を覚ますと、そこはコタツでカップ麺を啜るジャージ姿の駄女神・ルチアナの部屋だった。 「飲み会があるから定時で帰りたい」と適当な理由で異世界転移をさせられそうになる優太だったが、怒りのガラポン抽選でユニークスキル【地球ショッピング】と【女神ルチアナこき使い権】を引き当てる! ​かくして、ポンコツ女神を強制連行して剣と魔法の世界『アナステシア』に降り立った優太。 しかし、彼にはただのチートスキルだけではない、元SEALs直伝の「CQB(近接戦闘術)」、有段者の「薙刀術」、そして何より「現代医療の知識」があった――! ​降り立った辺境のポポロ村で彼を待っていたのは、クセが強すぎる住人たち。 ​キャルル: マッハの飛び蹴りを放つ、ファミレス大好きなウサ耳村長。 ​リーザ: タダ飯とポイ活に命を懸ける、図太すぎる地下アイドル人魚。 ​ルナ: 善意で市場や生態系を破壊する、歩く大災害の天然エルフ。 ​ルチアナ: 優太のポイントでソシャゲ課金と酒を目論む、労働拒否の駄女神。 ​優太は【地球ショッピング】で召喚した現代物資と、自身のサバイバル能力&薙刀術で野盗や魔物を無双! さらには特製のスパイスカレーで異世界人の胃袋を完全に掌握していく。 ​そして、村人に危機が迫った時。 優太の「絶対に命を救う」という善意の心が、奇跡の黄金ガチャを引き起こす……! ​「俺は医者だ。この村の命も、平和な日常も、俺の戦術(スキル)で全部守り抜く!」 ​現代の【医療・戦術・料理】×【理不尽ギャグ】×【異世界サバイバル】! 凶悪な「ワスプ薙刀」を振るい、ヤバすぎる仲間たちと送る、最強医学生のドタバタ辺境防衛ライフが今始まる!

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、すれ違いの末に離れ離れになった夫婦の物語。 再会したとき、二人が選ぶのは「離婚」か、それとも「再構築」か。 妻を一途に想い続ける夫と、 その想いを一ミリも知らない妻。 ――攻防戦の幕が、いま上がる。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

処理中です...