末っ子第三王女は竜王殿下に溺愛される【本編完結】

文字の大きさ
28 / 60
第二章リディア

4/ リディは番に揶揄われる

しおりを挟む
 結果……今日は水の中でキスをしても何も起こらなかった。

「昨日の今日では無理か」
「そうみたいね」
 二人は今、湯船の中である。そして広い浴槽の端と端で向かい合って、浸かっているのだ。

「ねぇ、レニー。今まで会った人達。まだほんの数人だけど、竜族の人は身体に鱗があるでしょう?」
「ああ、そうだな」
「レニーは鱗がない」
「私は特別だからな。でも、生まれた時は全身鱗で覆われていたらしいぞ」
「えっ!ホントに?」
「ああ、一才くらいまではあったらしいぞ」
「全身鱗なんて、すごいわ!」
「真っ黒な鱗だらけの赤子など可愛くはなかっただろうな」
 そう言ってレオナルドは笑った。

「何故、そこに?」
「だって……」
「いつものように、私の上に座ればよいではないか」
「だって……」
「リディ?」
「……」
 手を引かれそのままレオナルドを跨ぐように向かい合ってしまう。

「私たちは夫婦なのだよ。昨日までと何も変わらない、恥ずかしがる必要はないぞ」
「そんな事言ったて……なんか恥ずかしいだもん」
 レオナルドがリディアの額にキスをする。
「胸も少し膨らんでいるな」
 大きな手がまだ膨らみ始めたばかりの胸に宛がわれた。

「きゃっ、何するの!」
 両手で彼の手を退けようとするが阻止されてしまう。
「当たり前だがまだ触っても感じる事は無いか」
 笑いながらポツンとあるまだ小さな乳首を指の腹で撫でた。
 リディアはくすぐったいだけで、当然まだ感じる事は無い。

「レニーの意地悪!」
 バシャっと、レオナルドの顔にお湯を掛け逃げようとするも、「逃がすものか」と掴まり、いつもように後ろから抱えられてしまう。その弾みで彼が腰に巻いていたタオルが外れてしまい、直接お尻がレオナルドの肌に触れた。

「ひゃっ!」
 いつもと違う感触に思わずリディアはお尻を浮かせる。
「どうした?」
 多分後ろで笑っているだろうと思われる彼の声に「何でもない」答えるリディア。
 レオナルドはリディアの腰を引き寄せもう一度座らせる。
 もちろん勃起などしてはいないが、彼のそれはそのままの状態でも存在感が大きかった。妖精の国から戻ったリディアは、後の一年で色々な勉強もしてきたので、自分のお尻の下にあるものが何なのかは知っている。しかし、まだ実際に目にしたことは無かった。レオナルドは入浴の際、いつもタオルを巻くか、下履きを穿いていたので、直に目にする事も無かったのだ。

「リディはを見た事があるか?」
「あっ、ある訳ないです!」
「見てみるか?」
「いえ、結構です!」
 興味はあるが、「はい」などと返事が出来る筈もない。
 きっぱりと断ったが、お尻に当たる物の実体は気になる。お湯が揺れるたびにそわそわとそれがお尻に当たり、くすぐったくて、もぞもぞとお尻を動かしてしまう。
「おい、あまり動いてくれるな」
 レオナルドが笑いを堪えながら言う。
「えー、そんな事言ったって。お尻に当たるんだもん」
 もぞもぞと動く柔らかなリディアの肌に刺激され、僅かだが彼の男根がむくっと頭をもたげる。
「えっ?!」
「ほら、リディの所為だぞ」
「なになに、レニーこれー!」
 驚いて腰をずらした場所が悪かった。
 リディアが前ではなく、レオナルドの腹の方に下がったため、彼女の股の間から彼のがこんにちはと顔を出したのだった。
 レオナルドもリディアの肩越しに覗いて見る。

「あはは、これはなかなか良い光景だな」

 思わずリディアが足を閉じてしまうが、太腿の間からまだ頭だけが見えている状態だ。リディアは逃げようとするが、レオナルドが腰を抱えているので逃げる事も出来ない。
「レニーお願い引っ込めて!」
「そうは言ってもな、クククッ」
 何故か彼は楽しそうだ。リディアは思わず太腿の間から出ているを手の平で押し込もうとした。
「あまり刺激を与えるともっと大きく固くなってしまうぞ」
「えっ!」
 振り向いた彼女にレオナルドが口づける。
「うっぷ」
「リディ、やはり早く元の体にに戻って欲しいな。ふふ、そのままじっとしていろ。その内小さくなる」
「そ、そんな事言ってもー」

 お陰でのぼせてしまったリディアを、レオナルドは全裸のままベッド運び寝かせ、魔法で身体を乾かす。
「大丈夫か、リディ?」
「あっ、うん」
 目を開けた先には全裸のレオナルド。
 彫刻のような身体が目の前にあった。そして股間にはレオナルドの黒い下生えの間から先ほどのと思われる物体が!!!
 リディアは真っ赤になり、背を向けてしまう。
「レニー、早く服を着てしまって!」
「ああ、そうか」
 相変わらず笑いながら答える、レオナルドだった。

 あれから一週間。
 一日一回池に入ってキスをしてきたが、変化はなかった。
 それでも二人は焦る事なくのんびりと過ごしている。

 ―― 蜜月も半ばを過ぎた。
 どうやらリディも今の体『十才くらい』に馴れたようなので、父上にも報告せねばならないな。
 リディのドレスも作るとしよう。
 嘸かし母上も驚かれる事だろう。サミーの反応も楽しみだ。
 私にとっても……いきなり十五のリディにならなくて良かったのかもしれない。どんな姿でも私の番は可愛い。私の知らない成長期を見れるのもまた嬉しい事だ ――

 レオナルドは顎に手を当て緩む口元を押さえながら、リディアがお昼寝をしている間にリールーとミルミルを呼びつけた。昼寝から目覚めたリディアを留守の間の頼むと言い、足早に王宮へと向かったのだった。


◆◇◆


「それは真か!」
 父親である国王陛下の私室には母と弟のサミュエルが呼ばれていた。
 
「レニー本当なの!?」

 家族間では私はレニーと呼ばれる。家族以外ではどんなに親しくしていても、この呼び名を呼ぶことは許さなかった。そんな愛称を私は初対面のリディア王女に自ら名乗って、呼んで欲しいと言ったのだ。
 あれは本能からリディが家族だと認めていたからだ。

「ええ、母上。精霊が授けてくれた水のお陰でリディは十才ほどの体に戻っております」
「うわっ!信じられないけど凄いね、兄上!何、その精霊の水は飲む系?」
「違う、サミー。妖精の池に入れた精霊の水だ。最初はリディが池に呼ばれていると言い二人で入った。その時急に光に包まれた後十才のカラダになったのだ。その後は毎日そこで水浴びをしている。妖精たちの話では掛けた魔法が少しずつ解けて来たらしい」

「おお、なんと。それは凄い!精霊の加護か。それで、妖精妃は大丈夫なのか?」
「そうですよ、そんな急に戻って大丈夫なの?」
「はい、トラフィスの診断では至って健康だそうです」

「ちっ、あやつめ!知っていて、儂に内緒にしておったのだな」
 身内の自分が知らないのに他人のトラフィスが知っていた事を悔しがる竜王。

「で、兄上の妖精妃ちゃんは、どんな感じなの?」
「ああ、以前と変わらなく愛らしく、そして十才とは思えない程美しい」
 リディアの事を思い出し、口元が緩むレオナルドに、皆の期待が高まっていく。

「いつ、いつ会わせてくれるの?蜜月はもすぐ終わるわよね?レニー」
「そうだ、早く会わせろ!」
「可愛いレディになっているんだろうな~」
 興奮する三人を見てレオナルドは苦笑してしまう。普段のサザーランド王家はこの様な感じなのである。

「三人とも落ち着いてください。今ドレスを用意させています。成長したリディに、私が贈る新しいドレスを着せたいのです。蜜月が終わりそれが用意できましたら会わせて差し上げますよ」

「それじゃ、半月近く先になるじゃないの!そんなに待てないわ。そうね、私のお針子に申し付けて、早急に仕上げるように言うわ」
「おお、頼むぞアメリア」
「楽しみだな。早速オディーヌにも教えてあげよう」

「皆に知らせるのはもう少し待ってくれないか。もしかすると、実年齢の体に戻るかも知れないのです。それからお披露目した方がいと思う。オディーヌに話すなら口留めして置いてくれ」

「ああ、うん。分かったよ兄上。それにしても本当に嬉しそうだね」
「ええ、レニーのこの様な顔は子供の頃以来だわ」
「ああ、儂も嬉しく思うぞ。美味い酒がある。一緒に飲もう!」

「ありがとうございます。でも蜜月の間は番と一時も離れていたくはないので、私は妖精宮に戻ります」

 そう言い残し、レオナルドはそそくさと王の私室を後にした。

「楽しみですわね、あなた」
「ああ、あのような子供の姿も可愛くて捨てがたいが、あっ、まだ十才ぐらいと申しておったか。それでもやはりレニーの事を考えるとあのままではな。いや良かった、本当に良かった」
「早く会いたいですよね。妖精宮に籠ってもう半月以上ですから」
「私も番ちゃんとお話がしたいわ」
「しかし、アイツの事だ。父と同じように囲って、我々にも会わせなくなる可能性もあるぞ」
「お義父様は徹底していましたからね」
「お爺様が番のお婆様を見つけたのは四十を過ぎていたのでしょう?」
「ああ、そうだ。側室はおったが、子は出来てなかった。やっと見つけた番だ。儂は父が五十の時の子だ。母は年上だったから五十五だったかな」
「それからの溺愛ですもの。やはり、竜の血の濃いものは我々とは違いますね」
「母上も黒竜ゆえ父上に付き合えたが、リディアは人族だからな。黒竜の秘薬を飲めば、寿命は延びるが、レニーの溺愛に長い時年月耐えきれるか心配だ」

「あっ、それ。一応オーレア王国にいた時、リディア王女が番ってわかった時点で、兄上には言いましたよ。お婆様みたいに束縛されたら人族の王女に嫌われちゃうよってね」
「そうか、当然だ。しかし……それでも心配だな」
「ええ」

 竜王家三人組はこれから始まると思われる、レオナルドの番に対する今以上の溺愛に、不安を拭えないでいた。



しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

ただの新米騎士なのに、竜王陛下から妃として所望されています

柳葉うら
恋愛
北の砦で新米騎士をしているウェンディの相棒は美しい雄の黒竜のオブシディアン。 領主のアデルバートから譲り受けたその竜はウェンディを主人として認めておらず、背中に乗せてくれない。 しかしある日、砦に現れた刺客からオブシディアンを守ったウェンディは、武器に使われていた毒で生死を彷徨う。 幸にも目覚めたウェンディの前に現れたのは――竜王を名乗る美丈夫だった。 「命をかけ、勇気を振り絞って助けてくれたあなたを妃として迎える」 「お、畏れ多いので結構です!」 「それではあなたの忠実なしもべとして仕えよう」 「もっと重い提案がきた?!」 果たしてウェンディは竜王の求婚を断れるだろうか(※断れません。溺愛されて押されます)。 さくっとお読みいただけますと嬉しいです。

【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜

雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。 彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。 自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。 「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」 異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。 異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。

番が見つけられなかったので諦めて婚約したら、番を見つけてしまった。←今ここ。

三谷朱花
恋愛
息が止まる。 フィオーレがその表現を理解したのは、今日が初めてだった。

【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~

tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。 番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。 ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。 そして安定のヤンデレさん☆ ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。 別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

呪われた黒猫と蔑まれた私ですが、竜王様の番だったようです

シロツメクサ
恋愛
ここは竜人の王を頂点として、沢山の獣人が暮らす国。 厄災を運ぶ、不吉な黒猫─────そう言われ村で差別を受け続けていた黒猫の獣人である少女ノエルは、愛する両親を心の支えに日々を耐え抜いていた。けれど、ある日その両親も土砂崩れにより亡くなってしまう。 不吉な黒猫を産んだせいで両親が亡くなったのだと村の獣人に言われて絶望したノエルは、呼び寄せられた魔女によって力を封印され、本物の黒猫の姿にされてしまった。 けれど魔女とはぐれた先で出会ったのは、なんとこの国の頂点である竜王その人で─────…… 「やっと、やっと、見つけた────……俺の、……番……ッ!!」 えっ、今、ただの黒猫の姿ですよ!?というか、私不吉で危ないらしいからそんなに近寄らないでー!! 「……ノエルは、俺が竜だから、嫌なのかな。猫には恐ろしく感じるのかも。ノエルが望むなら、体中の鱗を剥いでもいいのに。それで一生人の姿でいたら、ノエルは俺にも自分から近付いてくれるかな。懐いて、あの可愛い声でご飯をねだってくれる?」 「……この周辺に、動物一匹でも、近づけるな。特に、絶対に、雄猫は駄目だ。もしもノエルが……番として他の雄を求めるようなことがあれば、俺は……俺は、今度こそ……ッ」 王様の傍に厄災を運ぶ不吉な黒猫がいたせいで、万が一にも何かあってはいけない!となんとか離れようとするヒロインと、そんなヒロインを死ぬほど探していた、何があっても逃さない金髪碧眼ヤンデレ竜王の、実は持っていた不思議な能力に気がついちゃったりするテンプレ恋愛ものです。世界観はゆるふわのガバガバでつっこみどころいっぱいなので何も考えずに読んでください。 ※ヒロインは大半は黒猫の姿で、その正体を知らないままヒーローはガチ恋しています(別に猫だから好きというわけではありません)。ヒーローは金髪碧眼で、竜人ですが本編のほとんどでは人の姿を取っています。ご注意ください。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

処理中です...