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第二章リディア
9/ 思春期らしいです
しおりを挟むリディアの実年齢は十五才だが、六才児から十才の体に戻れただけでも嬉しくて堪らない。
レオナルドが留守の時は、殆どの時間を王宮の私室で過ごしているが、時々離宮で留守番をする事もあった。
そんな時は護衛のドラフトを呼び、庭に出て遊んでもらいながら、少しずつ体を動かして体力をつけていった。
あれから何度か池には入っているが、変化はなかった。
今は池の淵に腰を下ろし、足だけ入れて妖精たちと遊んでいる最中である。
「ロロ、十才の体に戻れたけれど、今の年齢の体にもなれるのかしら?」
『それは、ボクも分かんない』
『ララもわかんない』
「そうだよね……」
『リディは十五才のカラダになりたい?』
「うーん、なりたいけど、ちょっと不安もあるの。私は十三才までの体しか知らないでしょう?その後の二年ちょっとは未知の世界だもん」
『でも、十三も十五もカラダ的にはそんなに変わらないんじゃないの?』
「どうかな?背が少し伸びて、胸がもう少し大きくなって女らしくなるとか?」
『おんならしくー』
ララがクルクル回って、光の花を撒き散らす。
「ララ、それ綺麗だわ♪」
微笑みながら光の花を手の平で受け止めた。
『リディ、十五は成人だよ』
「うん、そうね。十四才で妖精の世界から戻って来たけど、五才児ぐらいの体だったから、十五のデビュタントは出来なかったのよね。けれど、中身は成人してるんだもの。それにあっという間に十六になっちゃうわ」
苦笑するリディアの顔をララが覗き込んできた。
『リディははやくぜんぶおとなになりたいの?』
「うーん、何というか……小さい体の時は諦めもあって、そんなに思わなかったけれど。今こうしてちょっと大きくなると、何か心と体のバランスが微妙に悪いと言うか……」
『今は思春期に入ったばかりなんだね。第二次性徴期って言うんだよ』
「ロロは難しい言葉を知ってるのね。五年前……私が十才だった時は、こんな気持ちにならなかったのに」
『当たり前じゃん。今のリディの心は十五才なんだもん。十五の心でレニーに恋をしてるからだよ』
――恋……恋……レニーの事は大好きだったけど、恋だったの?――
『リディははやくじゅうごさいのからだになって、レニーとむすばれたいの?』
「ええっ!?そ、そんなこと……」
妖精の口から、それもララに言われて、体がカァーと熱くなる。
『そっかー、なら早く十五才のカラダになれると良いね』
ロロが笑いながら言う。
「違うってば!そういう意味で言ったんじゃないのっ!」
真っ赤になるリディアの周りを、妖精たちはキラキラ光る花を撒きながら飛び交った。
部屋に戻って来たリディアは、クッションを抱えながら動揺する気持ちを押さえようとしていた。
――思わず口に出た言葉だったけど、ララの言うようにレニーと結ばれたいとどこかで思っているのかな……
何だか十才のこの体が急にもどかしく感じた。
小さいままで良いと言っていたレニーはどうなんだろう?
嫁いで来る馬車の中で、体が戻ったら覚悟して置けって言ってた気がする。
覚悟……閨の事よね――
そう思った途端、一気に赤面しまた動悸が激しくなる。
リディアはバフッとクッションに顔を埋めてしまうが、見えている耳や項まで赤く染まっていた。
愛しい番がそんな事を思い一人悶えているとは、全く知らないレオナルド。
妖精宮に戻って来たレオナルドは、相変わらず甘い。
膝の上に乗せたリディアの首から上に何度も口付けをしてくる。
もちろんお風呂も一緒だ。
◇◆◇
「レニーは私に早く十五の体になって欲しい?」
手のひらにある泡をふぅーと吹きながらレニーに聞いてみた。
「急にどうした?」
浴槽の外で髪を洗ってくれているレニーが、私の顔を覗き込んでくる。
「何となく聞いてみたかっただけ」
自分の髪から泡を手に取り、またその泡を吹き飛ばす。
「そう聞かれれば、その通りだが。でもそれは天に任せるよ」
「うん、今すぐなりたいって言ってもなれる訳ではないけど……私が大人の体になったら……その……やっぱり、そういう事もしたいでしょう?」
「んん?……ああ。そうだな。今以上にリディの体を隅々まで愛して可愛がりたいと思うぞ」
レニーが優しく何度か湯を掛け、泡を流し落としてくれる。
彼は軽く水けを拭き取ると、香油をつけ櫛で梳かし器用にタオルで巻き上げた。
「隅々って……」
浴槽に入って来たレニーに、いつも通り後ろから抱きかかえられた。
「隅々とは、ココやココ。それから……」
項から徐々に手を下ろすと、背中を撫で脇の下から前へと手を回して小さく膨らみを持ち始めた胸を、手のひらで包み先端を指で挟んだ。
「あっ」
「この美味しそうな蕾がもう少し膨らんだら舐めて齧りたい」
私の心臓がトクンと跳ね、締め付けられるような気がした。
体はそれほど感じてないのに、今までとは何か違う感情が生まれ戸惑ってしまう。
「か、齧ったらだめよ!血が出ちゃうわ」
焦る私が胸を隠すと、ハハハと笑いながら両手首を掴まれお腹の前で拘束されてしまった。
片方の手がまた戻って来きて、胸の上を滑らせる。
「もう少し成長したら気持ちよくなるのだろうな」
「気持ちいい?……全然分かんない」
「ふふ、まだ分からなくて当然だ。だが、相応の体に戻れる可能性が出て来たと分かると、やっぱり欲が出てしまうな。リディが私の手で、気持ち良くなってくれる日が待ち遠しいよ」
「?」
振り向くといつものレニーとは違う人のような笑顔が見えた。
いつもとなにか違う……
「レニー、お願い離して」
訳が分からず、どうしていいのか分からない。
レニーが拘束していた手を離して私を横向きに変え、突然鎖骨の辺りに口づけて来た。
「レ、レニー!」
チリッとした痛みが走った。
「何をしたの?」
思わず痛みを感じた場所に手を当てた。
顔を上げたレニーは満足そうな笑みを浮かべて、口づけした場所を見ている。
恐る恐る、押さえた手を外してみると、赤くうっ血している?
「私の物だという印をリディに付けたのだ」
「えっ、?」
「キスマークと言うのだよ」
「キスマーク……」
言葉を聞いただけでも顔中が熱くなってしまう。
レニーはそんな私を見て、少し悪そうな顔をしながらニヤリと笑った。
「早くこの印をリディの体中に付けたい」
そう言いながらキスマークの上を指でなぞって来た。
「それは……ちょっと」
「大丈夫、暫くすれば消える。それにまだここまでにしかしないよ」
私は少し安堵したけど、胸だけでも大変なことだと気付いてしまう。
焦った顔で彼を見上げると、「大丈夫だから」と言いながら微笑み返されてしまった。
大丈夫だからって、何が大丈夫なの?
ここまでにしかって何?
私はまたのぼせてしまい、レニーに寝室まで運ばれてしまうのだった。
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