末っ子第三王女は竜王殿下に溺愛される【本編完結】

文字の大きさ
33 / 60
第二章リディア

9/ 思春期らしいです

しおりを挟む

 リディアの実年齢は十五才だが、六才児から十才の体に戻れただけでも嬉しくて堪らない。

 レオナルドが留守の時は、殆どの時間を王宮の私室で過ごしているが、時々離宮で留守番をする事もあった。
 そんな時は護衛のドラフトを呼び、庭に出て遊んでもらいながら、少しずつ体を動かして体力をつけていった。

 あれから何度か池には入っているが、変化はなかった。
 今は池の淵に腰を下ろし、足だけ入れて妖精たちと遊んでいる最中である。

「ロロ、十才の体に戻れたけれど、今の年齢の体にもなれるのかしら?」

『それは、ボクも分かんない』
『ララもわかんない』

「そうだよね……」

『リディは十五才のカラダになりたい?』

「うーん、なりたいけど、ちょっと不安もあるの。私は十三才までの体しか知らないでしょう?その後の二年ちょっとは未知の世界だもん」

『でも、十三も十五もカラダ的にはそんなに変わらないんじゃないの?』

「どうかな?背が少し伸びて、胸がもう少し大きくなって女らしくなるとか?」

『おんならしくー』
 ララがクルクル回って、光の花を撒き散らす。
「ララ、それ綺麗だわ♪」
 微笑みながら光の花を手の平で受け止めた。

『リディ、十五は成人だよ』
「うん、そうね。十四才で妖精の世界から戻って来たけど、五才児ぐらいの体だったから、十五のデビュタントは出来なかったのよね。けれど、中身は成人してるんだもの。それにあっという間に十六になっちゃうわ」
 苦笑するリディアの顔をララが覗き込んできた。

『リディははやくぜんぶおとなになりたいの?』

「うーん、何というか……小さい体の時は諦めもあって、そんなに思わなかったけれど。今こうしてちょっと大きくなると、何か心と体のバランスが微妙に悪いと言うか……」

『今は思春期に入ったばかりなんだね。第二次性徴期って言うんだよ』

「ロロは難しい言葉を知ってるのね。五年前……私が十才だった時は、こんな気持ちにならなかったのに」

『当たり前じゃん。今のリディの心は十五才なんだもん。十五の心でレニーに恋をしてるからだよ』

――恋……恋……レニーの事は大好きだったけど、恋だったの?――

『リディははやくじゅうごさいのからだになって、レニーとむすばれたいの?』
 
「ええっ!?そ、そんなこと……」
 妖精の口から、それもララに言われて、体がカァーと熱くなる。
 
『そっかー、なら早く十五才のカラダになれると良いね』
 ロロが笑いながら言う。

「違うってば!そういう意味で言ったんじゃないのっ!」
 真っ赤になるリディアの周りを、妖精たちはキラキラ光る花を撒きながら飛び交った。

 部屋に戻って来たリディアは、クッションを抱えながら動揺する気持ちを押さえようとしていた。

――思わず口に出た言葉だったけど、ララの言うようにレニーと結ばれたいとどこかで思っているのかな……

 何だか十才のこの体が急にもどかしく感じた。
 小さいままで良いと言っていたレニーはどうなんだろう?
 嫁いで来る馬車の中で、体が戻ったら覚悟して置けって言ってた気がする。
 覚悟……閨の事よね――
 そう思った途端、一気に赤面しまた動悸が激しくなる。

 リディアはバフッとクッションに顔を埋めてしまうが、見えている耳やうなじまで赤く染まっていた。

 愛しい番がそんな事を思い一人悶えているとは、全く知らないレオナルド。
 妖精宮に戻って来たレオナルドは、相変わらず甘い。
 膝の上に乗せたリディアの首から上に何度も口付けをしてくる。
 もちろんお風呂も一緒だ。


◇◆◇


「レニーは私に早く十五の体になって欲しい?」
 手のひらにある泡をふぅーと吹きながらレニーに聞いてみた。

「急にどうした?」
 浴槽の外で髪を洗ってくれているレニーが、私の顔を覗き込んでくる。

「何となく聞いてみたかっただけ」
 自分の髪から泡を手に取り、またその泡を吹き飛ばす。

「そう聞かれれば、その通りだが。でもそれは天に任せるよ」

「うん、今すぐなりたいって言ってもなれる訳ではないけど……私が大人の体になったら……その……やっぱり、そういう事もしたいでしょう?」

「んん?……ああ。そうだな。今以上にリディの体を隅々まで愛して可愛がりたいと思うぞ」
 レニーが優しく何度か湯を掛け、泡を流し落としてくれる。
 彼は軽く水けを拭き取ると、香油をつけ櫛で梳かし器用にタオルで巻き上げた。

「隅々って……」
 浴槽に入って来たレニーに、いつも通り後ろから抱きかかえられた。

「隅々とは、ココやココ。それから……」
 項から徐々に手を下ろすと、背中を撫で脇の下から前へと手を回して小さく膨らみを持ち始めた胸を、手のひらで包み先端を指で挟んだ。

「あっ」
「この美味しそうな蕾がもう少し膨らんだら舐めて齧りたい」
 私の心臓がトクンと跳ね、締め付けられるような気がした。
 体はそれほど感じてないのに、今までとは何か違う感情が生まれ戸惑ってしまう。

「か、齧ったらだめよ!血が出ちゃうわ」
 焦る私が胸を隠すと、ハハハと笑いながら両手首を掴まれお腹の前で拘束されてしまった。
 片方の手がまた戻って来きて、胸の上を滑らせる。

「もう少し成長したら気持ちよくなるのだろうな」
「気持ちいい?……全然分かんない」
「ふふ、まだ分からなくて当然だ。だが、相応の体に戻れる可能性が出て来たと分かると、やっぱり欲が出てしまうな。リディが私の手で、気持ち良くなってくれる日が待ち遠しいよ」

「?」

 振り向くといつものレニーとは違う人のような笑顔が見えた。
 いつもとなにか違う……
「レニー、お願い離して」
 訳が分からず、どうしていいのか分からない。
 レニーが拘束していた手を離して私を横向きに変え、突然鎖骨の辺りに口づけて来た。

「レ、レニー!」
 チリッとした痛みが走った。
「何をしたの?」
 思わず痛みを感じた場所に手を当てた。
 顔を上げたレニーは満足そうな笑みを浮かべて、口づけした場所を見ている。
 恐る恐る、押さえた手を外してみると、赤くうっ血している?

「私の物だという印をリディに付けたのだ」
「えっ、?」
「キスマークと言うのだよ」
「キスマーク……」
 言葉を聞いただけでも顔中が熱くなってしまう。
 レニーはそんな私を見て、少し悪そうな顔をしながらニヤリと笑った。

「早くこの印をリディの体中に付けたい」
 そう言いながらキスマークの上を指でなぞって来た。

「それは……ちょっと」

「大丈夫、暫くすれば消える。それにまだまでにしかしないよ」

 私は少し安堵したけど、胸だけでも大変なことだと気付いてしまう。
 焦った顔で彼を見上げると、「大丈夫だから」と言いながら微笑み返されてしまった。

 大丈夫だからって、何が大丈夫なの?
 までにしかって何?
 
 私はまたのぼせてしまい、レニーに寝室まで運ばれてしまうのだった。





しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜

雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。 彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。 自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。 「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」 異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。 異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。

【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~

tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。 番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。 ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。 そして安定のヤンデレさん☆ ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。 別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。

番が見つけられなかったので諦めて婚約したら、番を見つけてしまった。←今ここ。

三谷朱花
恋愛
息が止まる。 フィオーレがその表現を理解したのは、今日が初めてだった。

何年も相手にしてくれなかったのに…今更迫られても困ります

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢のアンジュは、子供の頃から大好きだった幼馴染のデイビッドに5度目の婚約を申し込むものの、断られてしまう。さすがに5度目という事もあり、父親からも諦める様言われてしまった。 自分でも分かっている、もう潮時なのだと。そんな中父親から、留学の話を持ち掛けられた。環境を変えれば、気持ちも落ち着くのではないかと。 彼のいない場所に行けば、彼を忘れられるかもしれない。でも、王都から出た事のない自分が、誰も知らない異国でうまくやっていけるのか…そんな不安から、返事をする事が出来なかった。 そんな中、侯爵令嬢のラミネスから、自分とデイビッドは愛し合っている。彼が騎士団長になる事が決まった暁には、自分と婚約をする事が決まっていると聞かされたのだ。 大きなショックを受けたアンジュは、ついに留学をする事を決意。専属メイドのカリアを連れ、1人留学の先のミラージュ王国に向かったのだが…

旦那様、政略結婚ですので離婚しましょう

おてんば松尾
恋愛
王命により政略結婚したアイリス。 本来ならば皆に祝福され幸せの絶頂を味わっているはずなのにそうはならなかった。 初夜の場で夫の公爵であるスノウに「今日は疲れただろう。もう少し互いの事を知って、納得した上で夫婦として閨を共にするべきだ」と言われ寝室に一人残されてしまった。 翌日から夫は仕事で屋敷には帰ってこなくなり使用人たちには冷たく扱われてしまうアイリス…… (※この物語はフィクションです。実在の人物や事件とは関係ありません。)

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

【完結】お前を愛することはないとも言い切れない――そう言われ続けたキープの番は本物を見限り国を出る

堀 和三盆
恋愛
「お前を愛することはない」 「お前を愛することはない」 「お前を愛することはない」  デビュタントを迎えた令嬢達との対面の後。一人一人にそう告げていく若き竜王――ヴァール。  彼は新興国である新獣人国の国王だ。  新獣人国で毎年行われるデビュタントを兼ねた成人の儀。貴族、平民を問わず年頃になると新獣人国の未婚の娘は集められ、国王に番の判定をしてもらう。国王の番ではないというお墨付きを貰えて、ようやく新獣人国の娘たちは成人と認められ、結婚をすることができるのだ。  過去、国の為に人間との政略結婚を強いられてきた王族は番感知能力が弱いため、この制度が取り入れられた。  しかし、他種族国家である新獣人国。500年を生きると言われる竜人の国王を始めとして、種族によって寿命も違うし体の成長には個人差がある。成長が遅く、判別がつかない者は特例として翌年の判別に再び回される。それが、キープの者達だ。大抵は翌年のデビュタントで判別がつくのだが――一人だけ、十年近く保留の者がいた。  先祖返りの竜人であるリベルタ・アシュランス伯爵令嬢。  新獣人国の成人年齢は16歳。既に25歳を過ぎているのに、リベルタはいわゆるキープのままだった。

最初で最後の我儘を

みん
恋愛
獣人国では、存在が無いように扱われている王女が居た。そして、自分の為、他人の為に頑張る1人の女の子が居た。この2人の関係は………? この世界には、人間の国と獣人の国と龍の国がある。そして、それぞれの国には、扱い方の違う“聖女”が存在する。その聖女の絡む恋愛物語。 ❋相変わらずの、(独自設定有りの)ゆるふわ設定です。メンタルも豆腐並なので、緩い気持ちで読んでいただければ幸いです。 ❋他視点有り。 ❋気を付けてはいますが、誤字脱字がよくあります。すみません!

処理中です...