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第三章
4/ 義母とオディーヌ
しおりを挟む今日は義母である王妃アメリアに呼ばれサロンでお茶をする事になっていた。
その席にはサミュエルの婚約者であるオディーヌも参加すると聞き、リディアのテンションは上がっていた。
「リディア様、やっとお話が出来ますね」
「はい、オディーヌ様。楽しみにしておりました」
「うふふ、二人の義娘が揃ってあたくしも嬉しいわ」
義母アメリアもご機嫌である。
オディーヌはリディアよりも二才上でスレンダーでしなやかな体つきの猫姫だ。
肌は白く髪は栗色で耳と尾のが濃いめの茶色。目はオッドアイでツンと気高い猫姫と言ったところだろうか。
「レオナルドお義兄さまにこんな可愛らしい番が見つかり本当に良かったですわ」
大きな目を細め微笑むオディーヌは美しい。
「ホント、オディーヌの言う通りよ。側妃も迎える事を拒み、番もあのまま見つからなかったらと思うと……リディアちゃんと出会うことが出来て本当に良かったわ」
義母アメリアは公務以外は飾らない言葉を使って話す。気取らず自然体な義母がリディアは好きだと思っていた。
「あの、オディーヌ様はサミー様に番だと言われた時、どう思われたのですか?」
「私は……束縛されるのが嫌だったから即お断りしたわ。でも諦めてもらえなかったの」
ちろっと赤い舌を出して苦笑するオディーヌを見て、アメリアが笑う。
「ふふふ、それは無理だわ。竜の雄は番を見つけたら絶対に逃さない。あっ、他の獣人も同じだけど、その中でも竜人の男の執着は比べ物にならないもの」
「ええ、四年も逃げ回りましたが、逃げ切れなかったのでもう諦めました」
「凄い!四年も断り続けたのですね」
番への思いは聞いているけど、それを断り続けたというオディーヌに脱帽する。
「うふ、最後はこれでもかっていうくらいの条件を付けましたけどね」
「そうなんですね!」
「レニーの婚姻も済んだから、次はサミーとオディーヌの番よ。あなたたち三年も婚約しているのに、サミーが兄上が結婚してからなんて言うものだから」
アメリアはオディーヌの肩に手を乗せ、ごめんなさいねと溜息を吐く。
「お義母様、私は気にしていません。猫族はそれ程結婚に拘らない種族ですから。
それにお義兄が側妃を迎えられないのならば、サミー様に竜妃を迎えて黒竜の子を産んで頂かなくてはならない事も了承済みですわ」
「ごめんなさい。人族の私ではきっと……黒竜の子は産めないでしょうから。レニー様もサミー様にお願いする事になると仰っていました。
でも、本当に宜しいのでしょうか?」
自分が人族ゆえに、サミュエルとオディーヌに負担をかけてしまう事になる。リディアは申し訳ない気持ちで一杯だった。
「リディア様が気にしなくてよくてよ。竜妃が黒竜を生めばその子はお義兄様とリディア様の養子となる訳だし。
竜王国の為にサミー様が側妃を持つなら許せるわ。私はサミー様に自分が一番愛されているって分かっているもの。
でも浮気だったら……絶対に許さないけれどね(笑)」
満面の笑みで答えるオディーヌにリディアは見とれてしまった。
「リディアちゃん、そこは気にしなくても大丈夫。私達は人族とは考え方が違うから。あっ、人族でも色々あるわよね。
王家の者やそれに嫁ぐものはきっちり弁えているから安心して」
「はぁ」
「あたくしは王妃だけど、まだ出会っていない番をダグラスが見つけたら側妃に下がっても良いと思っているのよ。番が見つかった場合離縁も認められているけど、あたくしは離縁はしないわ。だって、ダグラスを愛しているんですもの」
「お母様……」
誇らしげに話す義母アメリアは、美しかった。
「ふふふ、レニーとリディアちゃんの子はどんな子が生まれてくるのか今から楽しみね」
「お義母様、美貌のお義兄様とこんなに可愛らしいしいリディア様のお子ですもの。もうどうしようもないくらい可愛い子に決まっていますわ」
「そうよねー」
二人に顔を覗くように見られて赤面してしまうリディアであった。
「リディ」
女だけの楽しいお茶の時間も、レオナルドがリディアを迎えに来てお開きとなる。
「まぁ、もう迎えに来たの?早すぎるんじゃないの」
「そうですわ、お義兄様、もっとリディア様とお話したいのに」
「もう十分楽しまれたでしょう、母上もオディーヌも。リディは返して頂きますよ」
「レ、レニー様」
レオナルドは座っているリディアを抱き上げるとそのまま歩きだしてしまう。
「ふふ、仕方ないわ。リディアちゃんまた一緒にお茶をしましょうねー」
アメリアが手を振ってくれる。
「リディア様、わたしのところにも遊びに来て下さいね」
「お、お義母様、オディーヌ様、すいません。お先に失礼します」
抱かれたまま首を伸ばし、二人に挨拶をするとアメリアとオディーヌは堪え切れず笑い出していた。
「レニーったら酷いわ」
膨れながら言うリディアにレオナルドが嬉しそうに笑う。
「くくっ、久しぶりにリディの膨らんだ頬を見たよ」
つい癖が出てしまったリディアは恥かしさのあまり、レオナルドの胸に顔を押し付ける。
廊下ですれ違う者たちは、微笑ましい二人の姿に癒されるのであった。
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