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その後のSARA
■プロポーズ(高村と由美子)
夜のSARA。
カウンターにはいつもの席に貴史、間を置いて由美子と高村が並んで座っています。
高村は三年前のバレンタインデーに後輩の高梨と営業周りの帰りに初めて訪れた。
当初は香織狙いで色々アプローチもしていたのだけれど、貴史と付き合い始めたと知り諦めた一人です。
由美子が初めて来店したのは二年近く前。
イケメンのDV男と別れた帰りにここへ立ち寄ったのでした。
それから常連となり忘年会や香織たちの結婚式にも参加するほど打ち解けています。
去年のバレンタインデーに高村に想いを寄せていることが発覚して、その後の結婚式の後本格的にお付き合いを始めたようです。
「香織ママ、ランチも始めたって聞いたけど頑張ってるね」
「うん、でも帰りも早くなったし楽しくやってるのよ。高村君こそ忙しそうね。由美子ちゃんが寂しいってここで愚痴ってるわよ」
香織が揶揄うように言うと
「香織さん、それ言っちゃう?」
由美子がちょっと拗ねてみせる。
「あっ、いやマジここんところ忙しくてさ。来月になったら少し落ち着くと思うから」
少し焦りながら高村が彼女の顔色を伺い申し訳なさそうな顔をしたのを見て由美子は
「あっ、全然大丈夫。ここで松山さん達と楽しく飲んでるので高村さんはお仕事頑張って下さーい」
とあっけらかんと言った。
「えっ、なにそれ。寂しくないってか?」
それを聞いて香織と貴史が笑いだした。
由美子のこうした茶目っ気のあるところが可愛く好きだと香織は思う。
「寂しいのはあるけどお仕事ですもん。大丈夫ですよ。埋め合わせはたっぷりしてもらいますから」
いつも漫才をしているような二人が微笑ましく見えます。
「あれ、香織さんそのピアス可愛い」
「あっ、これね。結婚記念日に貰ったの」
香織はピアスを触りながら少しだけ顔を染めた。
「そうなんですか!素敵♪さすが須藤さんだな~」
「あはは、ありがとう」
貴史が嬉しそうに微笑む。
「あー。香織さん達の結婚式から1年以上経つんですものね。綺麗だったなーウェディングドレス姿」
由美子は懐かしそうな目でチャペルの風景を思い出していた。
そんな彼女にカウンターの貴史が声を掛ける。
「次は由美子さんの番でしょう?」
その言葉に頬を染める由美子を見て高村が驚いたように言う。
「えっ、そうなの?」
高村に問いかけられた由美子は彼の顔を見て「えっ?」という表情で固まっている。
どういう訳かいつも大事なところでいつも他人事みたいな言葉を発してくる高村に香織は呆れてしまい
「そうなのって・・・高村君」と思わず口を挟んでしまった。
「香織のブーケ受け取ったのは由美子さんだったでしょう?だから次は由美子さんかなと思って言ったんだけど」
貴史にに言われ高村もその場面を思い出したようだ。
「そうでした。そうでしたね」と両掌で顔を覆ったまま暫く沈黙したのち
「来年あたり如何でしょうか・・・」と蚊の鳴くような小さな声で続けた。
「へっ?」
由美子の突拍子もない声に香織と貴史が同時に二人の事を見る。
「だから・・・須藤さんとママが次は由美子ちゃんだというから」
高村は照れ隠しなのか目を逸らし頭を掻いている。
「い、今のってもしかしてプロポーズですか?お二人に言われたからって、そのついでみたいな言い方で。
酷い・・・
プロポーズってなんかもっとこう・・・夢見てたのに」
由美子が真っ赤になりながら涙目で訴える。
「何怒って・・・」
高村は訳が分からず狼狽えていた。
「だって・・・」
とうとう由美子がは泣き出してしまった。
香織はカウンターから出てきて由美子の背中をさすりながら高村に諭すように言う。
「高村ちゃん、女子ってね、誰でもプロポーズって夢みたいなものを持ってるの。もっと由美子ちゃんの気持ち考えてあげて」
香織の言葉に高村はやっと自分のしでかした事に気づいたのか
「ご、ごめん。悪かった。あらためて今度ちゃんと言わせて貰います」と立ち上がり頭を下げた。
高村の頭を下げる姿に由美子も驚き暫く呆然と彼の事を見ていたが、
「はい、お願いします」と泣きながら答えたのでした。
二人が帰った後、店の片づけを終えた香織が貴史の横に座る。
「何か疲れたね」
「ああ、でも結果オーライだったからね」
「そうだけど、ほら去年のバレンタインの時もそうだったじゃない?」
「思い出したよ、チョコレート催促するのも空気読んでなかったものな」
由美子が自分に想いを寄せている事に気付かず、常連たちの前で告白させてしまうという場面があった。
貴史はその時のことを思い出してクスクスと口元に手を充てて笑っている。
「はぁー。営業マンなのに空気読まなさ過ぎよ」
貴史はため息を付く香織の頭を抱き寄せ撫でながら『あの二人はこれからも色々あるな』と何やら楽しそうに微笑んだ。
「さっ、僕たちも帰ろう」
そう言って香織の肩をポンポンと叩く。
「ん」
午前零時、二人は手を繋いで家路に着いたのであります。
そして由美子から花束を持ってコテコテのプロポーズをされたと聞いたのはその日から1週間後の事でした。
カウンターにはいつもの席に貴史、間を置いて由美子と高村が並んで座っています。
高村は三年前のバレンタインデーに後輩の高梨と営業周りの帰りに初めて訪れた。
当初は香織狙いで色々アプローチもしていたのだけれど、貴史と付き合い始めたと知り諦めた一人です。
由美子が初めて来店したのは二年近く前。
イケメンのDV男と別れた帰りにここへ立ち寄ったのでした。
それから常連となり忘年会や香織たちの結婚式にも参加するほど打ち解けています。
去年のバレンタインデーに高村に想いを寄せていることが発覚して、その後の結婚式の後本格的にお付き合いを始めたようです。
「香織ママ、ランチも始めたって聞いたけど頑張ってるね」
「うん、でも帰りも早くなったし楽しくやってるのよ。高村君こそ忙しそうね。由美子ちゃんが寂しいってここで愚痴ってるわよ」
香織が揶揄うように言うと
「香織さん、それ言っちゃう?」
由美子がちょっと拗ねてみせる。
「あっ、いやマジここんところ忙しくてさ。来月になったら少し落ち着くと思うから」
少し焦りながら高村が彼女の顔色を伺い申し訳なさそうな顔をしたのを見て由美子は
「あっ、全然大丈夫。ここで松山さん達と楽しく飲んでるので高村さんはお仕事頑張って下さーい」
とあっけらかんと言った。
「えっ、なにそれ。寂しくないってか?」
それを聞いて香織と貴史が笑いだした。
由美子のこうした茶目っ気のあるところが可愛く好きだと香織は思う。
「寂しいのはあるけどお仕事ですもん。大丈夫ですよ。埋め合わせはたっぷりしてもらいますから」
いつも漫才をしているような二人が微笑ましく見えます。
「あれ、香織さんそのピアス可愛い」
「あっ、これね。結婚記念日に貰ったの」
香織はピアスを触りながら少しだけ顔を染めた。
「そうなんですか!素敵♪さすが須藤さんだな~」
「あはは、ありがとう」
貴史が嬉しそうに微笑む。
「あー。香織さん達の結婚式から1年以上経つんですものね。綺麗だったなーウェディングドレス姿」
由美子は懐かしそうな目でチャペルの風景を思い出していた。
そんな彼女にカウンターの貴史が声を掛ける。
「次は由美子さんの番でしょう?」
その言葉に頬を染める由美子を見て高村が驚いたように言う。
「えっ、そうなの?」
高村に問いかけられた由美子は彼の顔を見て「えっ?」という表情で固まっている。
どういう訳かいつも大事なところでいつも他人事みたいな言葉を発してくる高村に香織は呆れてしまい
「そうなのって・・・高村君」と思わず口を挟んでしまった。
「香織のブーケ受け取ったのは由美子さんだったでしょう?だから次は由美子さんかなと思って言ったんだけど」
貴史にに言われ高村もその場面を思い出したようだ。
「そうでした。そうでしたね」と両掌で顔を覆ったまま暫く沈黙したのち
「来年あたり如何でしょうか・・・」と蚊の鳴くような小さな声で続けた。
「へっ?」
由美子の突拍子もない声に香織と貴史が同時に二人の事を見る。
「だから・・・須藤さんとママが次は由美子ちゃんだというから」
高村は照れ隠しなのか目を逸らし頭を掻いている。
「い、今のってもしかしてプロポーズですか?お二人に言われたからって、そのついでみたいな言い方で。
酷い・・・
プロポーズってなんかもっとこう・・・夢見てたのに」
由美子が真っ赤になりながら涙目で訴える。
「何怒って・・・」
高村は訳が分からず狼狽えていた。
「だって・・・」
とうとう由美子がは泣き出してしまった。
香織はカウンターから出てきて由美子の背中をさすりながら高村に諭すように言う。
「高村ちゃん、女子ってね、誰でもプロポーズって夢みたいなものを持ってるの。もっと由美子ちゃんの気持ち考えてあげて」
香織の言葉に高村はやっと自分のしでかした事に気づいたのか
「ご、ごめん。悪かった。あらためて今度ちゃんと言わせて貰います」と立ち上がり頭を下げた。
高村の頭を下げる姿に由美子も驚き暫く呆然と彼の事を見ていたが、
「はい、お願いします」と泣きながら答えたのでした。
二人が帰った後、店の片づけを終えた香織が貴史の横に座る。
「何か疲れたね」
「ああ、でも結果オーライだったからね」
「そうだけど、ほら去年のバレンタインの時もそうだったじゃない?」
「思い出したよ、チョコレート催促するのも空気読んでなかったものな」
由美子が自分に想いを寄せている事に気付かず、常連たちの前で告白させてしまうという場面があった。
貴史はその時のことを思い出してクスクスと口元に手を充てて笑っている。
「はぁー。営業マンなのに空気読まなさ過ぎよ」
貴史はため息を付く香織の頭を抱き寄せ撫でながら『あの二人はこれからも色々あるな』と何やら楽しそうに微笑んだ。
「さっ、僕たちも帰ろう」
そう言って香織の肩をポンポンと叩く。
「ん」
午前零時、二人は手を繋いで家路に着いたのであります。
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