まほカン

jukaito

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第100話 宴会! 色づいた少女の魔法は続く! (Bパート)

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「かなみ~おるか~?」
 煌黄がオフィスへやってくる。
「かなみさんなら外に出てますよ」
 翠華が答える。
「なんじゃ、こっちにもおらんのか」
「こっちにも?」
「アパートにおらんかったからこっちにおるかと思って来たのじゃ」
「ああ、そういうことですね」
「せっかく一仕事終えてきたのにな」
「一仕事?」
「聞いてくれるか、翠華よ?」
 翠華が興味を示したことを、これ幸いに煌黄が詰め寄る。
「は、はい……」
「あるみと涼美が派手に戦いおってな。あやつら山を丸裸にしてしまったんじゃ」
 あるみと涼美が戦ったことは、千歳からある程度聞いている。
 その二人が戦う。
 それを聞いただけで凄まじいものだったことは容易に想像がつく。
「それを戦いを終えたあるみがな、『これを元に戻しておいて』と気安く言うんじゃぞ」
「あ、あぁ……」
 それも容易に想像がつく。
 あるみなら仙人だろうと気安く依頼を投げかけてもおかしくない。
「そりゃ、『あなただから頼めるのよ』とか言われたら、儂も悪い気がせんから仙術で頑張って元通りにしたんじゃ」
「それで山を元通りにしたんですか?」
「そうじゃ。時間はかかったんじゃがどうにか元通りにできたんじゃ」
 はあ~、と煌黄は息をつく。
 幼女の見た目に反して、その様は一仕事終えて疲れ切った妙齢の女性のそれだった。
「元通りに出来たのはすごいですね」
 翠華は素直にそう思ったことを口にした。
「そうじゃろ!」
 煌黄はそれを聞いて、水を得た魚のように活気づく。
「儂の仙術あればこその偉業であるのじゃ! 褒め称えられてしかるべきなのじゃ!」
「は、はあ……」
「つまり、労ってほしいのね」
 千歳が言う。
「うむ、有り体に言えばそうじゃのう」
「凄いわよ、コウちゃん」
「心は感じられんが、言葉はありがたく受け取っておこう」
「素直な仙人なのね」
 千歳は煌黄の頭を撫でる。
「うむ、これは気持ちが良いな。ところで、かなみはいつ戻ってくるんじゃ?」
「えっと、あと二時間くらいと聞いてます」
「二時間か……それならあっという間じゃな」
 仙人の感覚だとそうなるのね、と翠華は思う。
「それではここで帰ってくるのを待つとしよう。何やら宴の準備をしておるようじゃしな」
「わかりますか?」
「うむ。仙人は霞を食らい、空気を読むものじゃからな」
「霞と空気は違うような……」
「細かいことは気にせん方がええぞ。長生きの秘訣じゃ」
 仙人が言うと説得力があるような気がする。
「私はもう幽霊なんだけどね」
 千歳は冗談のつもりで言っているのだろうけど、それは笑えなかった。



「閉まってますね……?」
 シャッターが降りた小売店を前にして紫織は言う。
「定休日?」
「他の店にぃ行ったほうがいいわねぇ」
「ちょっと遠くなるわね」
「仕方ないわねぇ」
「そうね。ろくでなしの母親と一緒に行くのは辛いわね」
 みあは涼美に対して辛辣に言う。
「きっついわねぇ」
 涼美はそれを甘んじて受けているように見えた。
 三人が向かった先は、デパートの中のパーティグッズを売っているコーナーだった。
 そこでまたため息をつく羽目になった。
「シャッターが閉まってますね……」
「見りゃわかるわ……何かあったの?」
「これも定休日ぅ?」
 涼美の発言に、みあは呆れる。
「そんなわけないでしょ。デパートはやってるのよ。ここだけ定休日なんて」
「事件の匂いがするわねぇ」
「あんた、鼻が利くの?」
「耳なら自信あるわよぉ」
 涼美は得意げだ。
「はいはい。地獄耳ね、かなみから聞いてるわよ」
「フフ、かなみがぁ私の話をしてくれてるのねぇ」
「ほとんど愚痴だけど」
 みあはそう言ってから、店員を見つけて呼び止める。
 なんでパーティグッズのコーナーのところだけシャッターが降りてるか訊くためだ。
「盗まれた?」
 その店員が言うには今朝方、パーティグッズの品物だけが盗まれてしまっており、店出し出来ない状態になったらしい。倉庫から在庫を持ってくるのに時間がかかるので明日には再開できるとも。
「パーティグッズだけ盗む人なんているんですね」
「よっぽどぉパーティがしたいのねぇ」
「んなわけないでしょ。ちょっと、鯖戸に聞いてみるわ」
 そう言って、みあは携帯電話を取る。
 しばらく会話して、電話を切ってから、こう宣言する。
「これはネガサイドの怪人の仕業だって」
「……やっぱり」
 紫織は言う。



「そういうわけで、パーディグッズを買うのは遅れるそうだ」
 鯖戸は翠華達に言う。
「それは困りましたね」
 翠華はため息をつく。
 ご飯だけではパーティにならない。
「パーティグッズだけを盗む怪人がいるなんてね」
 萌実は呆れ気味に言う。
「そんなもん盗むということは、大規模なパーティでもする予定でもあるんか?」
「案外一人で盛り上がるだけもしれないわよ」
 そんな話題で会話に花が咲く。
「何の話してるんですか?」
 一人、沙鳴は蚊帳の外だった。



「ここね」
 みあ達はシャッターが降りた空き店舗にたどり着く。
「本当にここに怪人がいるんでしょうか?」
「みあちゃんの探知とぉ私の聴力に~間違いはないわよぉ」
 涼美は得意げに言う。
 あのあと、三件目のパーティグッズを売っている店に行ってみたものの、やはりシャッターが降りていた。鯖戸の許可を得て、店の中に入らせてもらった。
 そこには怪人が残した魔力の足跡そくせきを、みあはきっちり探知した。
 加えて、涼美に探知先に怪人がいるか、聴力で確認をとった。
 そんなわけでパーティグッズを盗んだ怪人が空き店舗に潜入していることを突き止めた。
「お二人が組むと、すごい名探偵になりますね」
 紫織は二人の探知能力をそう評した。
「みあちゃん、今度私と組んでみるぅ?」
「ま、考えないこともないわね」
 打ち解けるにはもう少し時間がかかりそう。
「それで、どうやって入りましょうか?」
 紫織が問いかけた次の瞬間にはガシャンとシャッターがひしゃげる。
「えぇ!?」
 紫織は驚きの声を上げる。

チリリン

 シャッターにぶつけられた黄金の鈴が地面に落ちて、涼し気な音色をたてる。
「さぁ~、開いたわよぉ」
 いうまでもなく涼美の仕業だった。
 涼美は中に入っていく。傍目からみたら完全に強盗なのだけどまったくきにしていない、豪胆だ。
「なんて力技……どっかの誰かみたいね」
「かなみさんはあそこまで強引じゃないと思いますが」
「あたしは別にかなみのことなんて言ってないわよ。今頃どっかで借金やってるバカよ」
 みあはそう言って、涼美のあとに続いて入っていく。
「それって、かなみさん以外いないんじゃ……」
 紫織はそう入る。
 三人が空き店舗の中に入ると、待ち受けていたのはパーティ会場だった。
「ぱーてぃ?」
 涼美は首を傾げる。
「盗んだパーティグッズでパーティする……まあ当然の使いみちだとは思うけど」
「なんだかおかしいですね」
 みあと紫織は辺りを物色する。
 テーブルクロスに飾り付け、お店で買えるパーティグッズを並び立てている。
「何を祝うか決めてないって感じね。ただ並べてるだけって」
「鋭いわねぇ、みあちゃん。主役はちゃんといるのにねぇ」
「おいおい、俺様のパーティに何の用だあ!?」
 奥にいた怪人が姿を現す。
「なんだってパーティなんてしてるのよ? しかも盗んだやつで」
 みあが訊く。
「人間達にパーティをさせないためだ!!」
 怪人は高らかに答える。
「パーティを、させない?」
「何言ってるのぉ?」
 涼美もさすがに戸惑っていた。
「いつもの怪人の戯言よ」
 みあは呆れながらも涼美に言う。
「いいわよ、あんたにも言い分あるから聞いてあげるわよ」
「みあちゃん、寛容~」
「いいだろう。教えてやるぜ! 俺様がパーティグッズを盗み出したのは、人間達にパーティをさせないためだ!!」
「それはもう言ってるでしょ!」
 みあがツッコミを入れる。
「まあきけ、パーティグッズを盗めば人間達はパーティをしなくなる。するとな、人間達はパーティができなくてフラストレーションが溜まり、俺は人間達を征服することができるんだ!!」
「わかっていたことだけど……――聞くだけ無駄だったわ!!」
 みあはコインを放り投げて変身する。
「「マジカルワークス!」」
 赤色と紫色の魔法少女が姿を現す。
「勇気と遊戯の勇士、魔法少女ミア登場!」
「平和と癒しの使者、魔法少女シオリ登場!」
「鈴と福音の奏者・魔法少女スズミ降誕!」
 ついでのようにスズミも変身する。
「ま、魔法少女!? 俺のパーティにわざわざやってきたのか!?」
「んなわけないでしょ!」
「招待してないのに!!」
 怪人は構わず言い続ける。
「うーん、お呼ばれしなくてもぉ来るのが私だからぁ」
「ややこしいこと言わないで」
 ミアはスズミを注意する。
「とりあえず~あなたがいるとぉパーティができないからぁ迷惑なのよねぇ」
 スズミはゴールドエヴァンを投げつける。
「あぎゃぁ!?」
 チリリン、と鈴の音色によって怪人の悲鳴がかき消される。
「このやろう!」
 怪人はクラッカーを鳴らす。

パァン! パァン! パァン!

 鳴ると同時に、鉄砲玉がスズミの方へ飛んでくる。
「小賢しいというのねぇ、こういうのはぁ」
「だったら!!」
 怪人は紐を引く。
 くす玉を割って、大砲の砲弾が飛び出す。
「マジカルバット! 殺人ピッチャー返し!!」
 シオリが前に出て、その砲弾を打ち返す。
「なにぃぃぃッ!?」

バァァァン!!

 打ち返された砲弾は怪人に直撃した。
「こ、こんなバカな……! これはパーティなんだぞ、俺様は主役なんだぜ!?」
「あなたぉの名前はぁ?」
 スズミは問いかける。
「ティエンカ」
「覚えておくわぁ」
 スズミは巨大な鈴を投げ入れる。
「グボァ!?」
 ティエンカは吹っ飛ばされて、壁に叩きつけられる。
「ちくしょう、パーティを! パーティをやりたかったんだ!!」
「だったら、人に迷惑をかけないようにしなさいよ」
 ミアはそう言って、巨大ヨーヨーを投げ落とす。
「Gヨーヨー!!」
 ティエンカはヨーヨーに押し潰される。



「今日は遅くなっちゃった……もう帰りたい……」
 かなみはマニィにぼやきながら、オフィスビルに戻ってきた。
 時間はすっかりもう真夜中になっていて、疲れ切っていた。
 今回はとにかく逃げ足の早い怪人で、かなみと相性が悪かった。
 魔法少女になって身体能力が上がってる状態で追いかけても、中々捕まらなかった。
 「ボーナス! ボーナス!」を掛け声にひたすら追いかけて、怪人の方は「お前はしつこすぎるだろが!?」と根負けした。
 倒したときには、あまりの疲労困憊ぶりにその場で倒れ伏した。このまま眠っちゃうのもいいかななんて思ってしまったほどだ。
「いっぱい走ったからお腹すいた……ねえ、今日くらいいっぱい買ってもいいでしょ」
「君、自分の財布の中身把握してるのかい?」
「ボーナスが入る予定だから、私の財布はパンパンよ」
「そう言ってパンパンになったことないでしょ」
「そう言われると……ううん、今回は違うんだから!」
 気合を入れると、かなみはオフィスへの扉を開く。
「ただいま」

パァーン! パァーン! パァーン!

 突然のクラッカー三連発。
「え……?」
 敵襲かと思った直後に、矢が飛んでくる。
「わあ!?」
「チ、外したか」
 萌実が舌打ちした。
「外したかって、どういうこと!?」
「俺はかなみならよけると思っていた」
「ヨロズ!?」
 萌美の隣には、当たり前のようにヨロズがいた。
「なんで、あんたがここに!?」
「私がぁ招待したのよぉ」
「母さん!?」
 そこへ失踪したはずの涼美までいた。
「母さん、どこへ行ってたの!?」
「そこらへんで油売ってた」
 みあがテキトーに答える。
「油売ってたって母さん……」
 かなみはジト目で恨めしそうに見つめる。
「あはははははぁ、こまかぁいことはぁ気にしないで~」
「細かくない!」
「ケーキ買ってきたからぁ」
「ケーキ!?」
 かなみは目を輝かせる。
 疲れ切っているので、甘い物は喉から手が出るほど欲しい。
「たかがケーキで……ちょろいわ、こいつ」
 みあは呆れる。
「かなみさん、今日はパーティよ」
 翠華が言う。
「パーティ?」
「社長と部長の許可はもらったから」
「でも、何のですか?」
「そ、それは……」
 翠華は返答に困る。
 『かなみに元気づけるためのパーティ』なんてストレートに言えない。かといって、何かの記念でもない。
「なんでもいいじゃない」
 みあが言う。
「細かいこと気にするんだったら、ご馳走はなしよ」
「ご馳走!?」
 かなみは再び目を輝かせる。
「食べていいの!?」
「いいですよ。かなみさんがいっぱい食べると思って、いっぱい用意しましたから」
 紫織の言葉が天啓のように聞こえた。
「わーい!」
 かなみはさっそく小皿をとって、オードブルセットからとりわけていく。
「ね、見たでしょ?」
 萌実がヨロズへ言う。
「何がだ?」
「あいつを御するにはああして物で釣ったほうがいいってことよ」
「釣りは不得手だ。俺はかなみを釣りたいわけではない、勝ちたいのだ」
「はいはい」
 萌実はつまらなさそうに、料理をとっていく。
「かなみさん、喜んでくれてるのかしら?」
 翠華は不安を口にする。
「あの顔見てわからないの。幸せいっぱいじゃない」
 みあにそう言われて納得する。
 かなみは口の中いっぱいに料理を頬張る幸せいっぱいの顔をしていた。
 ひとまずそれを見て、パーティを開いたことは正解だったと翠華は思うのだった。



 そうして、えんもたけなわになった。
「かなみ様、ピザはどうですか?」
「沙鳴もいたのね」
 かなみは沙鳴がいたことに気づき、萌実やヨロズに視線をやる。
 沙鳴は魔法少女や怪人のことは一切知らない普通の女の子。それゆえに魔法少女や怪人のことを知られるのはまずい。
「どうかしたんですか?」
「ううん、なんでもない。ピザありがたくもらうわ」
 沙鳴の様子から特に何かを知った感じはなさそうだと、かなみは判断した。
「うーん、おいしい!」
「かなみ様に喜んでもらえるよう特注したんですよ」
「私のために? どうして?」
「あるみ様に頼まれまして」
「社長に?」
「パーティを開くからピザを届けて欲しい、と電話が来まして」
「それじゃこのパーティは社長主催なの?」
「それが違うみたいですよ」
「え、違うの?」
 それだったら、誰が……。
「あ、あの……」
「翠華さん、知ってますか?」
「え、ええ……」
 自分の発案だとは言いづらかった。
「だ、誰からでもいいんじゃない」
「え、そうですか?」
「パーティを開きたいと言って、みんな集まって盛り上がることが一番大事なのよ」
「なるほど、それもそうですね」
 かなみはそれでようやく納得する。
「それで、かなみさんそろそろケーキはどう?」
「ケーキ! いいですね!」
「いえいえ、まだデザートには早いですよ。フライドチキンはいかがですか?」
「チキン!?」
 かなみは翠華ケーキ沙鳴チキンを交互に見やる。
「うーん……」
「ケーキ!」
「チキン!」
 翠華と沙鳴は主張する。
「「むむー!」」
 二人が睨み合う。
「どっちにしよう?」
 睨み合っている中、かなみは呑気に発言した。



「あいつトロイから必ず当たると思ったのに」
 萌実はフライドチキンを食いつきながらぼやく。
「問題なく避けると言っただろう」
 ヨロズは事も無げに言う。
「――関東支部長の座、逃したわね」
 萌実が放ったおもちゃの銃の矢。
 それにネガサイド関東支部長の座が賭けられていたことなど、かなみは知るよしもなかった。
 ヨロズが魔法少女のオフィスへやってきたのは、涼美の手引きだった。
 それというのも、ティエンカを倒した後、パーティグッズをどうするかという話になった。
「ティエンカという怪人が俺を呼んでいると聞いた」
 そう言って、ヨロズがやってきた。
 みあと紫織は反射的に身構えたけど、涼美は違った。
「ヨロズじゃないのぉ~どうしたの? パーティしにきたのぉ?」
 娘の友達といった感覚で接したのだった。
「パーティは知らないが、ティエンカが俺を呼んでいると連絡を受けて出向いただけだ。お前は何故ここに?」
「パーティグッズを盗んだ怪人を倒したのよぉ」
「パーティグッズを盗んだ怪人?」
「ティエンカって名乗ってたわねぇ」
「そうか。お前達が倒したのか」
 ヨロズはそれで納得する。
「仇討ちなら受けて立つけどぉ?」
「いや、そのつもりはない。ティエンカは弱いから倒された、ただそれだけの話だ」
「割り切りがいいわねぇ」
 涼美は感心する。
「あ、そうだぁ!」
 涼美は手をポンと叩く。
「これから、かなみのパーティをするからぁ、ヨロズもこない?」
「「えぇ!?」」
 みあと紫織は揃って驚く。
「かなみのパーティ?」
 ヨロズはその単語に興味を惹かれているみたいだ。
「そうよぉ」
「ちょ、ちょっと!」
 みあが涼美の手を引いて、ヨロズから引き離す。
「何考えてんのよ!? こいつをパーティに呼ぶなんて!?」
「かなみがぁ喜ぶと思って~」
「よろこぶ? 驚くの間違いでしょ」
「サプライズ」
 涼美は楽しげに言う。
「サプライズじゃないでしょ。パーティが台無しになるかも、って考えないの?」
「どうして~?」
「あいつは敵でしょ。かなみの顔をみたら戦えってことになるかもでしょ」
「そうはならないわよぉ」
「どうして、そんなこといえるの?」
「ヨロズ?」
 涼美はヨロズへ呼びかける。
「なんだ?」
「パーティに参加するぅ?」
「かなみがいるのなら」
「だったらぁ条件があるのよぉ。パーティで暴れないことよぉ」
「暴れない、か。構わない」
 あっさりと了承した。
 みあは「あんな口約束信用できないわよ!」と反対したけど、紫織は「なんとなく約束を守りそうな気がします」と意見を述べた。
 結局、年長者の涼美に押し切られる形で、ヨロズのパーティへの参加が決まった。
「なんであんたがここに?」
 オフィスに入るなり、萌実とヨロズが顔を合わせた。
 一触即発。そんな雰囲気が流れた。
「かなみのパーティに呼ばれた」
「ふうん。かなみと戦いにきたの?」
「いや、戦わないと約束している」
「あ、そう」
 萌実はつまらなそうに言う。
「ねぇねぇ、ちゃんと約束守るでしょ~?」
 涼美はみあに耳打ちする。
「どうだか……」
「案外、真面目な人なんですね」
 紫織はコメントする。
 そして、いつしか二人は涼美が持ってきたパーティグッズに興味を移す。
「それはピストルか?」
 ヨロズは萌実が手に持ったおもちゃのピストルを見る。
「ええ、そうよ。これをかなみの眉間に撃ち込んだらどういう反応をするか、楽しみね」
「そんなもの、楽しみにするだけ無駄だと思うが」
「どういう意味?」
「かなみならそんなおもちゃに当たらない、と言っている」
 ヨロズにそう言われて、萌実は豆鉄砲をくらったような顔をする。
「当たらないって、よけるってこと?」
「そう言っているが、」
「アハハハハハハ! そんなわけないでしょ! あいつがよけるなんてことないでしょう!」
「いや、かなみはよける」
 ヨロズは断言する。
「マジで言ってるのね?」
 その物言いに、萌実も真剣になってくる。
「だったら、賭けをしましょうか? この銃を撃って、かなみがよけるかどうか」
「いいだろう。私はよける方に、――関東支部長の座を賭けよう」
 ヨロズは一切の迷いなく答える。
 結果は、ヨロズの勝ちだった。
「ところで、賭けに負けた萌実はどうするの?」
 あるみがパーティで歓談している萌実とヨロズの会話に参加する。
「どうするって?」
「ヨロズは関東支部長の座を賭けたんでしょ、それに見合う賭け金を支払わないといけないでしょ」
「ああ……」
 萌実は忌々しそうにあるみを見つめる。
 絶対勝つと思っていたから、そんなこと考えもしなかった。
 正直ヨロズもそのことに関して言及してくる気配がなかったものだから、このまま有耶無耶にできると思っていた。あるみが余計なことさえ言わなければ。
「私に支払えるものなんてないんだけど。関東支部長なんてご立派な地位もないし」
「そうか。では、俺の命令を聞くというのはどうだ?」
 ヨロズが提案する。
「あんたの部下になれってこと?」
「そう受け取って構わない」
「アハハハハハハ! 冗談じゃないわ、って言いたいところだけど、賭けに負けたら仕方ないわね! いいわ、それじゃ命令しなさいよ、かなみを倒せって命令ならすぐにでも実行してあげるから!」
「それは無理だ。――お前に、かなみは倒せない」
 ヨロズに断言されて、萌実は硬直する。
「あんた、むかつくわね」
「気に障ることは言ったつもりはないが」
「そういう性格ね。いいわ、覚えたわ。かなみの前にあんたを先に撃ち抜きたくなったわ」
 そう言って萌実はオフィスから出ていく。
「下剋上」
 二人のやりとりを見守っていたあるみは言う。
「あなたも大変ね。あなたの関東支部長の座を狙っている部下がわんさかいるのだから」
「強い者が座につく。それが摂理だ」
「弱肉強食。単純明快な摂理ね、そう教わったの?」
「いや。この身に宿る本能がそうだと言っている」
「そう。でも、今は人間の身体なんだから、人間の生き方を学んだ方がいいわよ」
「人間の生き方? それはどう学べばいい?」
「かなみちゃんを見ていけばいいのよ」
「そうか」
 ヨロズは納得する。



「パーティは楽しいわねぇ」
 グラスを持った涼美は来葉と鯖戸に語りかける。
「かなみちゃんより楽しんでる感じだね」
 鯖戸が言う。
「昔からパーティが好きだったからね」
「ええぇ、パーティは好きよぉ」
「そういうところはちゃんとかなみちゃんにも遺伝してるわよ」
「そうだったらぁ嬉しいわぁ。」
「かなみ君は、花より団子みたいだけどね」
 鯖戸の一言に、涼美と来葉は微笑む。
「それはそれでいいと思うわよぉ」
「かなみちゃんが幸せならそれでいいのよ」
 来葉は持ってきたカメラで写真を取る。
「ところで、父親の行方のことなんだけど」
「ん?」
 鯖戸の一言から涼美の笑顔が硬直する。
「今のところ、どこにいるかもわかっていない。来葉の未来にも視えなかった。あの人が行方をくらますとなると文字通り雲をつかむような話になってくる」
「そうねぇ、あの人はそうよねぇ」
「涼美さん、正直私は呆れているよ」
 鯖戸は真剣に涼美へ言う。
「あの人に~? 私に~?」
「両方だよ」
 鯖戸はそう言って、グラスのワインを飲み干す。
「あなたと娘をほっぽり出して行方をくらました父親もさることながら、その父親を半死半生にさせたあなたのやり方にもね」
「本当なら殺しちゃうところだったんだけどねぇ」
 少しも悪びれない涼美の態度に来葉はため息をつく。
「かなみちゃんがよく止めてくれたわ」
「本当にそう思うわぁ」
「逃げたくなる父親の気持ちも多少は分かるよ」
 鯖戸はここにはいない父親の心情に同意を示す。
「どこへ逃げたくなるかまではぁ、わからないのねぇ」
「そこまではわからないよ」
 鯖戸は苦笑する。
「まあ、そんなわからないことより今日は楽しみましょう」
 来葉はワインを鯖戸のグラスへ注ぎ、涼美のグラスにも注ぐ。
「かなみちゃんの未来に」
「かぁんぱぁ~い」
 三人はグラスをつける。



「みあちゃん、紫織ちゃん、お疲れ様~」
 千歳はみあと紫織へグラスをつける。
「飾り付け、手伝ってくれてありがとね」
 みあは千歳へ礼を言う。
 千歳はパーティグッズの運び出し、飾り付けをしてくれた。おかげで、かなみが戻ってくるまでに間に合うことができた。
「お安いご用よ。それにしても、私も日本酒とか飲めたらよかったんだけどね」
 千歳の身体は人形の素体でできているため、飲み食いは出来ない。
 パーティの今日くらいは口にできてもいいんじゃないかと、みあと紫織は思ってしまう。
「私のことは気にしないで。どんどん食べてよ」
 千歳は料理を乗せた取り皿を紫織へ渡す。
「こ、こんなに食べられませんよ!」
「かなみちゃんはすぐに平らげたわよ」
「あいつを基準にするのはダメよ」
 かなみは依然としてオードブルセットを食べ続けている。あの小さな身体に、どうやったら入るのか少し疑問に思うみあだった。
「あのくらい食べられたらいいなと思うのだけどね」
 千歳は羨ましげに言う。
「今はとりあえず気分だけにしておきなさい」
「なんじゃ、お主は新しい身体を欲しておるのか?」
 そこへ煌黄がやってくる。
「お主なら修行次第で自分で生成できるようになれそうじゃがな」
「それって本当!?」
 千歳はくいつく。
「修行次第、じゃ」
「修行して仙人になれば、新しい身体が手に入るということね」
「そういうことじゃな」
「それじゃ、私も仙人になってみようかな……」
 千歳は考え始める。
「千歳さんが仙人……」
「ありえないわけじゃなさそうね。ずっと幽霊やってきたんだから、今更仙人になってもおかしくないでしょ」
 みあは言う。
「いいんじゃない、千歳が仙人になっても」
「みあちゃん……」
「一つ考えてみてくれんか? 仙術の習得は容易ではないが、お主ならきっとできると儂は思っておる」
 煌黄は千歳に提案する。
「わかったわ。私、仙人になってみようかしらね」



 やがて時間が経ち、パーティはお開きになった。
 最初にオフィスを出ようとしたのは、ヨロズだった。
 かなみは見送りを申し出て、ビルの外まで見送った。
 ヨロズは最後に、かなみへ「得られるものはあった」と言った。それが何なのか、かなみにはまったくわからなかった。
「母さん、一緒に帰ろう」
 夜がすっかりふけた頃、かなみは涼美へ申し出た。
「――いいの?」
 涼美は訊く。
 それは、「一緒に帰ってもいいの?」と同時に父親を追ってほっぽり出してしまったことを「許してもいいの?」という問いかけだった。
「いいわよぉ」
 かなみはあっさりと答える。
 多分そこまで深くは考えていなかったはず。
 そして、かなみと涼美は手をつないで仲良く帰った。
「借金を返すのはぁ、二人で頑張っていきましょうねぇ」
 月灯りが照らす帰り道で、涼美は小さくかなみへそう言った。
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