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第119話 模型! 玩具箱を返した少女達の行進曲! (Aパート)
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「ここが盗っ人怪人の根城ってわけね」
みあは目をギラつかせて言う。
「ただの廃工場みたいですけど」
紫織が言う。
「だからこそ人目につかなくて、広いスペースを確保できるのよね。秘密基地にはもってこいっていうか……」
かなみは訝しげにその門を見つめる。
閉じた門の奥に広がる寂れた廃工場が不気味さを醸し出している。
これが夜だったら絶対に近寄りたくない心霊スポットになっていただろう。
そう考えると、昼にやってきてよかった、と、かなみは密かに思った。
朝一番に溢れ出る魔力により体調不良で熱を出したみあに代わって、プラモを買いに模型屋に行ったのだけど、そこでみあ目当てのプラモを怪人に万引きされてしまった。その怪人プラッターを追いかけたら、人間や物体を怪人に変える魔法・ダークマターにより、プラモが本物みたいに動き出して襲いかかってきた。苦戦しつつもなんとか勝利した。
しかし、プラッターがプラモを盗み出したのはこれが初犯ではなく、常習犯だったらしく、鯖戸が集めた情報によるとこの廃工場に相当な数のプラモがコレクションされているらしい。しかも、それがプラッターがダークマターを使っていて、そのプラッターがいなくなったとなればひとりでに動き出して、最悪暴れ出すかもしれない。
往年のロボットアニメ『次元合金ディー・スペリオン』のアスリオンのプラモがプラッターの手によって、アニメと同じ設定で動き出して、七つの特殊能力を駆使して苦戦を強いられた。一体だけでもそれだけ苦戦したというのに、それが何体も暴れ出したとなったら、嫌な想像がしてしまう。
鯖戸から正式に社命が出て、そのプラッターが根城にしていた廃工場に赴くことになった。
熱が引いたばかりのみあはすぐ行くと言ってきかなかったけど、かなみはアスリオンとの戦いで消耗していたので一休みしてから行こうと言ったので対立した。
みあが一人ででも行くと言ったのだけど、紫織も引き止めたので仕方ないと昼食後に出向くということで妥協してくれた。
そんなわけで昼過ぎに廃工場に来たわけなのだけど。
「門が閉まってるんだけど、どうやって入るの?」
「抜け道があるみたいだよ」
マニィが言う。
「こっちだよ」とマニィは、かなみの肩から降りて廃工場の隣の民家に入っていく。
「人の家に勝手に入っていいんでしょうか?」
「そういうの、ネズミは得意でしょ」
紫織が不安げに訊くと、かなみは面倒そうに言う。
「あっちも空き家だから問題ないでしょ」
みあはそう言って、堂々と入っていく。
「空き家でも問題あるんじゃないですか?」
紫織は疑問を口にするけど、かなみは聞かなかったことにして進んだ。
空き家の庭に入っていくと、庭の塀で一箇所穴が空いていた。
「え、ここから出入りしていたの? あの、大きな身体で……」
穴は子供が出入りできそうなくらいの大きさだけど、
かなみが見たプラッターは大男の体格をしていた。とてもこの穴で出入りできるとは思えない。
「そんなことどうだっていいわよ」
みあは気にせず、穴へ入り込んでいく。土に汚れることも気にせず。
「今日のみあちゃん、積極的……」
かなみはちょっと引いていた。
「何してるの! 早く来なさい!」
塀の向こうに行ったみあが急かしてくる。
「仕方ないわね……」
かなみは仕方なく、四つん這いになって穴を通り抜ける。
「なんだか似合ってるような気がします……」
紫織はそんなかなみの後ろ姿を見て思わずコメントする。
「ん、ちょっと狭いわね」
穴を通る時、肩とお尻がちょっとつっかえた。
「太ったからじゃないの?」
みあが心無い一言を投げかける。
「そ、そんなことないわよ! 最近母さんの料理が上手くなってるけど!」
「むしろ、かなみさんの場合ちゃんと食べた方がいいんじゃないでしょうか?」
いつの間にか紫織も穴を通ってきた。
これで三人とも廃工場の敷地内に入れた。
門に入る前からみえた外観の静けさを中に入っていても保っていた。
「ここまでは静かだから、プラモが暴れだすなんて取り越し苦労だったのかしらね」
かなみはこれで安全が確認できたら十万だといいなと思った。
「そうだといいけど……なんか物音してない?」
みあがそんな不吉なことを言って、かなみはドキリとする。
「……え? み、みあちゃん、冗談よね?」
「あたしが冗談言うように見える?」
「こういうときはいいそう」
かなみが正直にそう答えると、みあはプイッと不機嫌になって先を行く。
「あ、待って!」
かなみは慌てて追いかける。
ドスン
廃工場に近づいたことで、かなみにも聞こえた。
「この足音……!」
確実に廃工場の中に何かいる。
しかも、人間のそれではない。
「気づくのが遅いのよ。少しはあの地獄耳を見習ったらどうなの?」
「あれは、母さんが異常だから……」
実際、涼美から何度も特訓を受けたけど、涼美ほど耳が良くなった実感は無い。
『もっと長い目でみるのよぉ、確実に成長してるからぁ』
とはその涼美の談。
そんなこともあり、今のかなみは一般人に比べてちょっと耳が良い程度であった。
むしろ、気配察知に優れているみあの方が耳が良いくらい。
「んで、この足音なんだけど、ロボットね」
「そんなことまでわかるの?」
「そのくらい聞き分けられるわよ。『アイ・アム・アイアン』のアイン・アイアンの足音と同じじゃない」
みあは当然のように言う。
「そんなの、みあちゃんしかわかんないよ……」
「ま、ともかくマニィや鯖戸が言ってたことが起きちゃってるみたいね」
みあのその一言で、何の面倒事もなくボーナスをもらえる、という希望は泡沫と消えた。
「足音からして一つや二つじゃないわね!」
「ええ、そんな……聞き間違いじゃないの?」
「そんな虚しい望みは捨てなさい」
みあは容赦なかった。
「そんな……」
「あ、あの……頑張りましょう」
「う、うん……ありがとう、紫織ちゃん」
紫織の励ましがありがたかった。
とはいえ、あの怪人プラッターのダークマターはアニメの設定と同じ能力を得ることができる。
アスリオン一体であれだけ苦戦したのに、それが複数もいるなんて考えるだけで恐ろしい。
(厳しい戦いになりそう……それに私はほとんど連戦だし……)
一応休んだとはいえ、疲労感はある。
みあや紫織がいてくれて本当に助かる。
(みあちゃんが全部やってくれるといいんだけど……)
一人で全部やってしまいそうなはりきりようにみえる。
ガシャガシャ
みあは入り口のドアノブに手をかける。鍵がかかっていないようだった。
「さて、いくか!」
みあははりきって廃工場に入っていく。
「あ、ちょっと、みあちゃん!」
止める時間が無かった。
かなみと紫織は慌てて入る。
「――おぉッ!?」
みあが感嘆の声を上げているのが聞こえる。
「みあちゃん、どうしたの?」
と聞いた直後に、二人は絶句した。
そこには機械が撤去されて広々した工場の空間に、整列しているプラモのロボット達。
「あ、悪夢ね……」
かなみは思わず口にする。
「と、というより、夢に出てきそうですね……」
紫織の発言に、かなみは同意する。
かなみどころかみあより小さいプラモから工場の高い天井に届きそうなプラモまで大小様々で統一感が無い。
ざっと数えると三十くらい。大きいプラモの陰に隠れているのもありそうで実際の数は倍以上いるかもしれない。
「ちょっとした壮観な光景ね……」
みあの声色に喜びが混ざっている。
このまま持ち帰れない? とか提案するんじゃないかと思った。
「この工場をそのまま倉庫にかえて保管できないものか……」
しかし、実際口にしたことはもっとやばい提案だった。
「みあちゃん、私達はあのプラモを退治するために来たんだよ」
「そんなことわかってるわよ!」
みあはムキになって否定する。
ギロン!
プラモ達から視線を感じる。
物言わぬ玩具でしかないプラモ達。しかし、今はダークマターの魔法を受けて悪の秘密結社の尖兵となっている。
つまり、かなみ達の敵だった。
その視線からは明確な敵意を感じる。
不思議なものだった。
金属質で意思が通いそうにない冷たいロボット。ダークマターの魔法を受けているとはいえ、本来ならひとりでに動くことがないプラモなのに、その感情は明確に感じる。
「そんじゃ、いくわよ! かなみ! 紫織!」
「ええ!」「はい!」
みあの号令で、かなみと紫織はコインを取り出して、一斉に放り投げる。
「「「マジカルワークス!!!」」」
三つのコインが宙を舞い、三色の光が降り注ぐ。
そして、光のカーテンから三人三色の魔法少女が姿を現す。
「愛と正義と借金の天使、魔法少女カナミ参上!」
「勇気と遊戯の勇士、魔法少女ミア登場!」
「平和と癒しの使者、魔法少女シオリ登場!」
プラモ達は、カナミ達の口上を受けて、動き出す。
あるものは走ってカナミ達に向かい、あるものは足のローラーを回してカナミ達に向かい、あるものは手に持った銃の銃口をカナミ達に向けて、あるものは棟のタイマーのカウントダウンを始め、あるものは目を文字通り光らせる。
「わあああ、くるわくるわ!」
「ミアちゃん、楽しそうね」
「そんなわけないでしょ! くらえ、ビッグ・ワインダー!」
ミアは反論して、ヨーヨーをプラモの一体へ投げつける。
ゴォン!
ヨーヨーは銀色の色をしたプラモ・ギンガンの横腹に命中して甲高い金属音が鳴る。
「まるで太鼓ね、そりゃ!」
ミアは腕を振り上げて、もう一撃与える。
ゴォン! ゴォン! ゴォン! ゴォン!
ヨーヨーとプラモの体が次々と当たって小気味いい音がする。
「かったいわね! マシンガンをはじくだけあるわ、ギンガン! 欲しいわね」
ミアは楽しそうに言う。
本人は否定しているつもりだけど、隠しきれていない。
とはいえ、それを指摘している余裕はカナミ達には無かった。
カナミやシオリの方にもプラモ達が襲いかかってきた。
バァン! バァン!
カナミは魔法弾を撃って応戦するものの、よほど装甲が硬いのか弾かれてしまう。
「アスリオンもそうだったけど、こういうのって硬いわね!」
「それでしたら、私が!」
シオリが大きく振りかぶって、マジカルバットを振るう。
「弾丸ライナー!!」
カキィィィン!!
シオリのスイングがプラモを捉えて、打ち上がる。
しかし、間髪入れずに次のプラモが襲いかかる。
「キャッ!?」
プラモの拳で殴られて、シオリは後ろへ倒れる。
「シオリちゃんをよくも!」
カナミは魔法弾でプラモを撃つ。
プラモの装甲はアスリオンほどじゃないものの魔法弾では貫けないほど硬い。
一体一体倒すには神殺砲を撃つ必要がある。そう考えるだけで気が滅入る。
アスリオンとの戦いの魔力はリュミィのおかげで全回復しているけど、精神的には消耗している。
これだけの数を倒すには、神殺砲が何発必要になるだろうか。
「リュミィ、いざとなったらまた!」
『はいはい、どんどんやっちゃって!』
リュミィは元気よく答えてくれる。
そのおかげでこっちのやる気も出てくる。
「バーニング・ウォーク!!」
燃えて火の玉になったミアのヨーヨーがプラモに命中する。
「あーこりゃダメージ無いわ!」
「弾丸ライナー!」
シオリはマジカルバットでプラモへ当てる。
プラモは吹っ飛び、壁まで叩きつけられる。
しかし、それでもまだそのプラモは動いてくる。
「二人ともこっち!」
ミアが呼びかけて、カナミとシオリはミアのもとへ集まる。
「敵の連中はかなり硬いわ。どいつもこいつも銃弾を軽く弾く設定の装甲だからね。全力の攻撃ならまだわからないけど」
「神殺砲だったら、いけると思うけど」
「それじゃ、あんたの負担が大きいわね! 一つ、試したことがあるわ」
「試したいこと?」
「二人とも下がって」
ミアの提案に釈然としないまま、したがって、二人は下がる。
「さあて、この大怪獣の力を試してみるか!」
ミアの身体から魔力が湧き上がってくる。
「ミアちゃん、その魔力は!?」
カナミはミアの小さな身体に不釣り合いなほど大きくて荒々しい魔力に不安を覚える。
その魔力の荒ぶりようは、以前戦った大怪獣の咆哮を想起させるものだった。
「スチール・スピナー!」
力強く投げ込まれたヨーヨーは銀色の光を纏って、プラモの装甲を貫く。
「すごい! すごいよミアちゃん!?」
カナミはその威力に称賛する。
「まだまだ!!」
ミアはそのヨーヨーを手元へ引き戻す。その戻す勢いでさらに別のプラモの装甲を貫く。
「さらにダブルッ!!」
そして、二つのヨーヨーを両手に持って、投げつける。
二つのヨーヨーで二体のプラモの装甲を貫く。
パシン!
そして、手に戻したヨーヨーを掴んでビシッと決める。
「かっこいいですミアさん!」
「フフン、それほどでもないけど!」
そう言いつつもミアは得意満面だった。
「それじゃ、ここはミアちゃんにまかせて大丈夫だね!」
「カナミ、あたしもそういきたいところなんだけど……」
「なんだけど?」
「――これ、メチャクチャ疲れるわ」
ミアは両肩をダラリと下げて、汗だくになってぜいぜいしている。
「えぇッ!?」
「使えるチカラかと思って、初めて使ってみたけど……思ったより疲れるわね、これ……特訓すればもっと使えるんだけど……」
「あ、うん、そんな気がしたけど……」
大怪獣のチカラをミアの小さな身体でふるうには負担が大きい。
ちょっと想像すればわかることだ。ましてやミアは病み上がりのような状態。
「というわけで、あとはあんたがなんとかして」
「無茶言わないで!」
そんなやり取りをしていると、プラモ達が襲いかかってくる。
ドスン!
奥に控えていた一際巨大なプラモが動き出す。
一歩踏み出すだけで轟音とともに地鳴りが起きる。
「『ガイア・マキナ』!」
ミアはその名前を口にする。
「名前からしてすごく強そうですね」
「強い!」
シオリがコメントすると、ミアは力強く断言する。
「いつどこで作られたかわからないけど、巨大な機械仕掛けの神で、世界を滅ぼしかねない悪魔を一撃で倒してしまう巨神よ。指一本だけでも城ほどの大きさがあって、腕が地上に顕現しようものなら天変地異が起きるわね。真の姿は異次元の狭間にしかなくて本編の最後まで地上に出てくることはなかったわ。その真の姿をプラモ化したものなんだけどさすがに真の姿をダークマターで再現できなかったみたいね」
「いやいや十分大きすぎるんだけど!」
嬉々として語るミアに、カナミはツッコミを入れる。
「いや、だってレンガロイズに比べたら遥かに小さいじゃない」
「あれは……」
ミアの反論で、カナミは思い出す。
以前、ミアの父親が社長しているおもちゃの製造工場でおもちゃが大量に盗まれたことがあった。
それがレンガロイズだったのだけど、そのレンガロイズが一斉に合体して高層ビルに比肩するほど巨大ロボットになった。
確かにミアが言う通り、あの時のレンガロイズに比べたら、工場の高い天井に届きそうなくらいのガイア・マキアは子供に思えてしまう。
「いやいや、それでも十分大きいから! 大きいからね!!」
とはいえ、魔法少女からしてみれば十分巨大な敵であることはには変わりなかった。
「それだったら、あのデカブツはカナミがなんとかしなさい! 残りは、シオリがなんとかするから!」
「わ、私ですか!?」
シオリは突然振られて戸惑う。
「ミアちゃん、いくらなんでもそれは無茶だよ」
カナミが指摘する。
「無茶でもなんでもやるしかないでしょ! あたし、疲れてるし」
「頑張ってよ!」
「しょうがないわね」
カナミに言われて、ミアはため息ついて了解する。
「とはいっても、あたしの消耗は激しいからシオリもしっかりやりなさいよ!」
「は、はい!!」
シオリはバットを、ミアはヨーヨーをそれぞれ構える。
「それじゃ、私達も!」
『はい!』
カナミが呼びかけて、リュミィが光になってカナミの背中に羽を形成する。
「フェアリーフェザー!!」
カナミは天井近くまで飛び上がる。
「神殺砲! ボーナスキャノン!!」
即座に神殺砲の砲弾を撃ち込む。
バァァァァァァァン!!
砲弾はガイア・マキアの頭部に直撃する。
「えッ!?」
ガイア・マキアは直撃したものの、それをものともせずに悠然と立っている。
「神殺砲がまったくきいていない!」
「カナミ、下!?」
ミアの叫びが、カナミの耳へ届く。
バァン! バァン! バァン! バァン!
床の方からプラモ達が銃を一斉に撃ち放ってきた。
「わわッ!?」
カナミは天井を跳び回って、これをかわす。
ダダダダダダン!!
銃弾が天井に当たってけたたましい音が雨だれのように鳴り響く。
「これなら見てからでもかわせるわ!」
『よゆう! よゆう!』
「って、バカ! 油断してると危ないわよ!!」
ミアの激が飛んでくる。
「え?」
その直後に、カナミは気づく。
ガイア・マキアの腕が飛んできて、カナミを掴んできた。
「うそ、なんで!?」
カナミは驚愕した。
カナミは銃弾をかわしつつ、ガイア・マキアの動きにも気を配っていた。腕どころか動き出す気配すら感じなかった。
にも関わらず、腕がカナミを掴んできた。
「言ったでしょ、そいつは神出鬼没で、身体の一部だけでも地上に出てくるようなやつだから、腕とか指とかどこにでも出現してくるのよ!」
「そ、そんな無茶苦茶な!?」
「設定とはいえ、神様なんだからもう無茶苦茶も当然よ! っていうか、本当にアニメの設定通りだったらあたし達に勝ち目なんてないわよ!」
「それはそうだけど……グゥッ!?」
カナミを掴んだ腕に力がこもる。
身体を圧迫されて息が詰まる。
それに身がつまらせる。身体が折り曲げられる痛みで意識も遠のく。
「まったく世話が焼けるわね」
ミアはヨーヨーを投げて、ガイア・マキアの腕へ巻きつける。
「シオリ!」
「はい!」
ミアはシオリを抱き寄せる。
そこからヨーヨーはワイヤーの要領で引き寄せられて、二人は飛び上がる。
「シオリ、やって!!」
「はい! カナミさんをはなしてください!!」
シオリは渾身の力を込めて、バットを腕へと叩きつける。
カキィィィィィィン!!
けたたましい金属音とともに衝撃が迸る。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」
その衝撃でカナミを掴む腕の力が少し緩んだ。
その緩みをチャンスとみて、カナミは抜け出すために力を込める。
裂帛の気合とともに、妖精の羽はガイア・マキアの指を弾く。
「神殺砲! ボーナスキャノン!!」
その弾いて脱出した勢いで、砲弾をガイア・マキアの頭部に叩き込む。
バァァァァァァァン!!
砲弾は頭部に直撃する。
「もう一発!」
すかさずもう一発、砲弾を撃ち放つ。
その反動で、カナミはガイア・マキアと距離を取る。
「ミアちゃん! シオリちゃん! 散って!!」
「これやばいやつね、シオリ!」
「はい!」
ミアとシオリは、カナミの号令に従って、ヨーヨーのワイヤーで脱出する。
カナミは砲台にできる限り魔力を注ぎ込む。
さっき砲弾を撃った分の魔力は妖精の羽が空気中に集めてくれる。
そのおかげで全力の砲弾を撃ち込むことができる。
そうでもしないとこの巨大なプラモは倒せないと思ったからだ。
「ボーナスキャノン・アディション!!」
ありったけの魔力を注ぎ込んで放たれた砲弾は、ガイア・マキアの胸部に直撃した。
バァァァァァァァァァァァァァァァァン!!
砲弾は直撃したガイア・マキアを飲み込み、廃工場の天井にまで届く。
爆煙が晴れた時、ガイア・マキアの棟から上はキレイさっぱり吹き飛んでいた。
みあは目をギラつかせて言う。
「ただの廃工場みたいですけど」
紫織が言う。
「だからこそ人目につかなくて、広いスペースを確保できるのよね。秘密基地にはもってこいっていうか……」
かなみは訝しげにその門を見つめる。
閉じた門の奥に広がる寂れた廃工場が不気味さを醸し出している。
これが夜だったら絶対に近寄りたくない心霊スポットになっていただろう。
そう考えると、昼にやってきてよかった、と、かなみは密かに思った。
朝一番に溢れ出る魔力により体調不良で熱を出したみあに代わって、プラモを買いに模型屋に行ったのだけど、そこでみあ目当てのプラモを怪人に万引きされてしまった。その怪人プラッターを追いかけたら、人間や物体を怪人に変える魔法・ダークマターにより、プラモが本物みたいに動き出して襲いかかってきた。苦戦しつつもなんとか勝利した。
しかし、プラッターがプラモを盗み出したのはこれが初犯ではなく、常習犯だったらしく、鯖戸が集めた情報によるとこの廃工場に相当な数のプラモがコレクションされているらしい。しかも、それがプラッターがダークマターを使っていて、そのプラッターがいなくなったとなればひとりでに動き出して、最悪暴れ出すかもしれない。
往年のロボットアニメ『次元合金ディー・スペリオン』のアスリオンのプラモがプラッターの手によって、アニメと同じ設定で動き出して、七つの特殊能力を駆使して苦戦を強いられた。一体だけでもそれだけ苦戦したというのに、それが何体も暴れ出したとなったら、嫌な想像がしてしまう。
鯖戸から正式に社命が出て、そのプラッターが根城にしていた廃工場に赴くことになった。
熱が引いたばかりのみあはすぐ行くと言ってきかなかったけど、かなみはアスリオンとの戦いで消耗していたので一休みしてから行こうと言ったので対立した。
みあが一人ででも行くと言ったのだけど、紫織も引き止めたので仕方ないと昼食後に出向くということで妥協してくれた。
そんなわけで昼過ぎに廃工場に来たわけなのだけど。
「門が閉まってるんだけど、どうやって入るの?」
「抜け道があるみたいだよ」
マニィが言う。
「こっちだよ」とマニィは、かなみの肩から降りて廃工場の隣の民家に入っていく。
「人の家に勝手に入っていいんでしょうか?」
「そういうの、ネズミは得意でしょ」
紫織が不安げに訊くと、かなみは面倒そうに言う。
「あっちも空き家だから問題ないでしょ」
みあはそう言って、堂々と入っていく。
「空き家でも問題あるんじゃないですか?」
紫織は疑問を口にするけど、かなみは聞かなかったことにして進んだ。
空き家の庭に入っていくと、庭の塀で一箇所穴が空いていた。
「え、ここから出入りしていたの? あの、大きな身体で……」
穴は子供が出入りできそうなくらいの大きさだけど、
かなみが見たプラッターは大男の体格をしていた。とてもこの穴で出入りできるとは思えない。
「そんなことどうだっていいわよ」
みあは気にせず、穴へ入り込んでいく。土に汚れることも気にせず。
「今日のみあちゃん、積極的……」
かなみはちょっと引いていた。
「何してるの! 早く来なさい!」
塀の向こうに行ったみあが急かしてくる。
「仕方ないわね……」
かなみは仕方なく、四つん這いになって穴を通り抜ける。
「なんだか似合ってるような気がします……」
紫織はそんなかなみの後ろ姿を見て思わずコメントする。
「ん、ちょっと狭いわね」
穴を通る時、肩とお尻がちょっとつっかえた。
「太ったからじゃないの?」
みあが心無い一言を投げかける。
「そ、そんなことないわよ! 最近母さんの料理が上手くなってるけど!」
「むしろ、かなみさんの場合ちゃんと食べた方がいいんじゃないでしょうか?」
いつの間にか紫織も穴を通ってきた。
これで三人とも廃工場の敷地内に入れた。
門に入る前からみえた外観の静けさを中に入っていても保っていた。
「ここまでは静かだから、プラモが暴れだすなんて取り越し苦労だったのかしらね」
かなみはこれで安全が確認できたら十万だといいなと思った。
「そうだといいけど……なんか物音してない?」
みあがそんな不吉なことを言って、かなみはドキリとする。
「……え? み、みあちゃん、冗談よね?」
「あたしが冗談言うように見える?」
「こういうときはいいそう」
かなみが正直にそう答えると、みあはプイッと不機嫌になって先を行く。
「あ、待って!」
かなみは慌てて追いかける。
ドスン
廃工場に近づいたことで、かなみにも聞こえた。
「この足音……!」
確実に廃工場の中に何かいる。
しかも、人間のそれではない。
「気づくのが遅いのよ。少しはあの地獄耳を見習ったらどうなの?」
「あれは、母さんが異常だから……」
実際、涼美から何度も特訓を受けたけど、涼美ほど耳が良くなった実感は無い。
『もっと長い目でみるのよぉ、確実に成長してるからぁ』
とはその涼美の談。
そんなこともあり、今のかなみは一般人に比べてちょっと耳が良い程度であった。
むしろ、気配察知に優れているみあの方が耳が良いくらい。
「んで、この足音なんだけど、ロボットね」
「そんなことまでわかるの?」
「そのくらい聞き分けられるわよ。『アイ・アム・アイアン』のアイン・アイアンの足音と同じじゃない」
みあは当然のように言う。
「そんなの、みあちゃんしかわかんないよ……」
「ま、ともかくマニィや鯖戸が言ってたことが起きちゃってるみたいね」
みあのその一言で、何の面倒事もなくボーナスをもらえる、という希望は泡沫と消えた。
「足音からして一つや二つじゃないわね!」
「ええ、そんな……聞き間違いじゃないの?」
「そんな虚しい望みは捨てなさい」
みあは容赦なかった。
「そんな……」
「あ、あの……頑張りましょう」
「う、うん……ありがとう、紫織ちゃん」
紫織の励ましがありがたかった。
とはいえ、あの怪人プラッターのダークマターはアニメの設定と同じ能力を得ることができる。
アスリオン一体であれだけ苦戦したのに、それが複数もいるなんて考えるだけで恐ろしい。
(厳しい戦いになりそう……それに私はほとんど連戦だし……)
一応休んだとはいえ、疲労感はある。
みあや紫織がいてくれて本当に助かる。
(みあちゃんが全部やってくれるといいんだけど……)
一人で全部やってしまいそうなはりきりようにみえる。
ガシャガシャ
みあは入り口のドアノブに手をかける。鍵がかかっていないようだった。
「さて、いくか!」
みあははりきって廃工場に入っていく。
「あ、ちょっと、みあちゃん!」
止める時間が無かった。
かなみと紫織は慌てて入る。
「――おぉッ!?」
みあが感嘆の声を上げているのが聞こえる。
「みあちゃん、どうしたの?」
と聞いた直後に、二人は絶句した。
そこには機械が撤去されて広々した工場の空間に、整列しているプラモのロボット達。
「あ、悪夢ね……」
かなみは思わず口にする。
「と、というより、夢に出てきそうですね……」
紫織の発言に、かなみは同意する。
かなみどころかみあより小さいプラモから工場の高い天井に届きそうなプラモまで大小様々で統一感が無い。
ざっと数えると三十くらい。大きいプラモの陰に隠れているのもありそうで実際の数は倍以上いるかもしれない。
「ちょっとした壮観な光景ね……」
みあの声色に喜びが混ざっている。
このまま持ち帰れない? とか提案するんじゃないかと思った。
「この工場をそのまま倉庫にかえて保管できないものか……」
しかし、実際口にしたことはもっとやばい提案だった。
「みあちゃん、私達はあのプラモを退治するために来たんだよ」
「そんなことわかってるわよ!」
みあはムキになって否定する。
ギロン!
プラモ達から視線を感じる。
物言わぬ玩具でしかないプラモ達。しかし、今はダークマターの魔法を受けて悪の秘密結社の尖兵となっている。
つまり、かなみ達の敵だった。
その視線からは明確な敵意を感じる。
不思議なものだった。
金属質で意思が通いそうにない冷たいロボット。ダークマターの魔法を受けているとはいえ、本来ならひとりでに動くことがないプラモなのに、その感情は明確に感じる。
「そんじゃ、いくわよ! かなみ! 紫織!」
「ええ!」「はい!」
みあの号令で、かなみと紫織はコインを取り出して、一斉に放り投げる。
「「「マジカルワークス!!!」」」
三つのコインが宙を舞い、三色の光が降り注ぐ。
そして、光のカーテンから三人三色の魔法少女が姿を現す。
「愛と正義と借金の天使、魔法少女カナミ参上!」
「勇気と遊戯の勇士、魔法少女ミア登場!」
「平和と癒しの使者、魔法少女シオリ登場!」
プラモ達は、カナミ達の口上を受けて、動き出す。
あるものは走ってカナミ達に向かい、あるものは足のローラーを回してカナミ達に向かい、あるものは手に持った銃の銃口をカナミ達に向けて、あるものは棟のタイマーのカウントダウンを始め、あるものは目を文字通り光らせる。
「わあああ、くるわくるわ!」
「ミアちゃん、楽しそうね」
「そんなわけないでしょ! くらえ、ビッグ・ワインダー!」
ミアは反論して、ヨーヨーをプラモの一体へ投げつける。
ゴォン!
ヨーヨーは銀色の色をしたプラモ・ギンガンの横腹に命中して甲高い金属音が鳴る。
「まるで太鼓ね、そりゃ!」
ミアは腕を振り上げて、もう一撃与える。
ゴォン! ゴォン! ゴォン! ゴォン!
ヨーヨーとプラモの体が次々と当たって小気味いい音がする。
「かったいわね! マシンガンをはじくだけあるわ、ギンガン! 欲しいわね」
ミアは楽しそうに言う。
本人は否定しているつもりだけど、隠しきれていない。
とはいえ、それを指摘している余裕はカナミ達には無かった。
カナミやシオリの方にもプラモ達が襲いかかってきた。
バァン! バァン!
カナミは魔法弾を撃って応戦するものの、よほど装甲が硬いのか弾かれてしまう。
「アスリオンもそうだったけど、こういうのって硬いわね!」
「それでしたら、私が!」
シオリが大きく振りかぶって、マジカルバットを振るう。
「弾丸ライナー!!」
カキィィィン!!
シオリのスイングがプラモを捉えて、打ち上がる。
しかし、間髪入れずに次のプラモが襲いかかる。
「キャッ!?」
プラモの拳で殴られて、シオリは後ろへ倒れる。
「シオリちゃんをよくも!」
カナミは魔法弾でプラモを撃つ。
プラモの装甲はアスリオンほどじゃないものの魔法弾では貫けないほど硬い。
一体一体倒すには神殺砲を撃つ必要がある。そう考えるだけで気が滅入る。
アスリオンとの戦いの魔力はリュミィのおかげで全回復しているけど、精神的には消耗している。
これだけの数を倒すには、神殺砲が何発必要になるだろうか。
「リュミィ、いざとなったらまた!」
『はいはい、どんどんやっちゃって!』
リュミィは元気よく答えてくれる。
そのおかげでこっちのやる気も出てくる。
「バーニング・ウォーク!!」
燃えて火の玉になったミアのヨーヨーがプラモに命中する。
「あーこりゃダメージ無いわ!」
「弾丸ライナー!」
シオリはマジカルバットでプラモへ当てる。
プラモは吹っ飛び、壁まで叩きつけられる。
しかし、それでもまだそのプラモは動いてくる。
「二人ともこっち!」
ミアが呼びかけて、カナミとシオリはミアのもとへ集まる。
「敵の連中はかなり硬いわ。どいつもこいつも銃弾を軽く弾く設定の装甲だからね。全力の攻撃ならまだわからないけど」
「神殺砲だったら、いけると思うけど」
「それじゃ、あんたの負担が大きいわね! 一つ、試したことがあるわ」
「試したいこと?」
「二人とも下がって」
ミアの提案に釈然としないまま、したがって、二人は下がる。
「さあて、この大怪獣の力を試してみるか!」
ミアの身体から魔力が湧き上がってくる。
「ミアちゃん、その魔力は!?」
カナミはミアの小さな身体に不釣り合いなほど大きくて荒々しい魔力に不安を覚える。
その魔力の荒ぶりようは、以前戦った大怪獣の咆哮を想起させるものだった。
「スチール・スピナー!」
力強く投げ込まれたヨーヨーは銀色の光を纏って、プラモの装甲を貫く。
「すごい! すごいよミアちゃん!?」
カナミはその威力に称賛する。
「まだまだ!!」
ミアはそのヨーヨーを手元へ引き戻す。その戻す勢いでさらに別のプラモの装甲を貫く。
「さらにダブルッ!!」
そして、二つのヨーヨーを両手に持って、投げつける。
二つのヨーヨーで二体のプラモの装甲を貫く。
パシン!
そして、手に戻したヨーヨーを掴んでビシッと決める。
「かっこいいですミアさん!」
「フフン、それほどでもないけど!」
そう言いつつもミアは得意満面だった。
「それじゃ、ここはミアちゃんにまかせて大丈夫だね!」
「カナミ、あたしもそういきたいところなんだけど……」
「なんだけど?」
「――これ、メチャクチャ疲れるわ」
ミアは両肩をダラリと下げて、汗だくになってぜいぜいしている。
「えぇッ!?」
「使えるチカラかと思って、初めて使ってみたけど……思ったより疲れるわね、これ……特訓すればもっと使えるんだけど……」
「あ、うん、そんな気がしたけど……」
大怪獣のチカラをミアの小さな身体でふるうには負担が大きい。
ちょっと想像すればわかることだ。ましてやミアは病み上がりのような状態。
「というわけで、あとはあんたがなんとかして」
「無茶言わないで!」
そんなやり取りをしていると、プラモ達が襲いかかってくる。
ドスン!
奥に控えていた一際巨大なプラモが動き出す。
一歩踏み出すだけで轟音とともに地鳴りが起きる。
「『ガイア・マキナ』!」
ミアはその名前を口にする。
「名前からしてすごく強そうですね」
「強い!」
シオリがコメントすると、ミアは力強く断言する。
「いつどこで作られたかわからないけど、巨大な機械仕掛けの神で、世界を滅ぼしかねない悪魔を一撃で倒してしまう巨神よ。指一本だけでも城ほどの大きさがあって、腕が地上に顕現しようものなら天変地異が起きるわね。真の姿は異次元の狭間にしかなくて本編の最後まで地上に出てくることはなかったわ。その真の姿をプラモ化したものなんだけどさすがに真の姿をダークマターで再現できなかったみたいね」
「いやいや十分大きすぎるんだけど!」
嬉々として語るミアに、カナミはツッコミを入れる。
「いや、だってレンガロイズに比べたら遥かに小さいじゃない」
「あれは……」
ミアの反論で、カナミは思い出す。
以前、ミアの父親が社長しているおもちゃの製造工場でおもちゃが大量に盗まれたことがあった。
それがレンガロイズだったのだけど、そのレンガロイズが一斉に合体して高層ビルに比肩するほど巨大ロボットになった。
確かにミアが言う通り、あの時のレンガロイズに比べたら、工場の高い天井に届きそうなくらいのガイア・マキアは子供に思えてしまう。
「いやいや、それでも十分大きいから! 大きいからね!!」
とはいえ、魔法少女からしてみれば十分巨大な敵であることはには変わりなかった。
「それだったら、あのデカブツはカナミがなんとかしなさい! 残りは、シオリがなんとかするから!」
「わ、私ですか!?」
シオリは突然振られて戸惑う。
「ミアちゃん、いくらなんでもそれは無茶だよ」
カナミが指摘する。
「無茶でもなんでもやるしかないでしょ! あたし、疲れてるし」
「頑張ってよ!」
「しょうがないわね」
カナミに言われて、ミアはため息ついて了解する。
「とはいっても、あたしの消耗は激しいからシオリもしっかりやりなさいよ!」
「は、はい!!」
シオリはバットを、ミアはヨーヨーをそれぞれ構える。
「それじゃ、私達も!」
『はい!』
カナミが呼びかけて、リュミィが光になってカナミの背中に羽を形成する。
「フェアリーフェザー!!」
カナミは天井近くまで飛び上がる。
「神殺砲! ボーナスキャノン!!」
即座に神殺砲の砲弾を撃ち込む。
バァァァァァァァン!!
砲弾はガイア・マキアの頭部に直撃する。
「えッ!?」
ガイア・マキアは直撃したものの、それをものともせずに悠然と立っている。
「神殺砲がまったくきいていない!」
「カナミ、下!?」
ミアの叫びが、カナミの耳へ届く。
バァン! バァン! バァン! バァン!
床の方からプラモ達が銃を一斉に撃ち放ってきた。
「わわッ!?」
カナミは天井を跳び回って、これをかわす。
ダダダダダダン!!
銃弾が天井に当たってけたたましい音が雨だれのように鳴り響く。
「これなら見てからでもかわせるわ!」
『よゆう! よゆう!』
「って、バカ! 油断してると危ないわよ!!」
ミアの激が飛んでくる。
「え?」
その直後に、カナミは気づく。
ガイア・マキアの腕が飛んできて、カナミを掴んできた。
「うそ、なんで!?」
カナミは驚愕した。
カナミは銃弾をかわしつつ、ガイア・マキアの動きにも気を配っていた。腕どころか動き出す気配すら感じなかった。
にも関わらず、腕がカナミを掴んできた。
「言ったでしょ、そいつは神出鬼没で、身体の一部だけでも地上に出てくるようなやつだから、腕とか指とかどこにでも出現してくるのよ!」
「そ、そんな無茶苦茶な!?」
「設定とはいえ、神様なんだからもう無茶苦茶も当然よ! っていうか、本当にアニメの設定通りだったらあたし達に勝ち目なんてないわよ!」
「それはそうだけど……グゥッ!?」
カナミを掴んだ腕に力がこもる。
身体を圧迫されて息が詰まる。
それに身がつまらせる。身体が折り曲げられる痛みで意識も遠のく。
「まったく世話が焼けるわね」
ミアはヨーヨーを投げて、ガイア・マキアの腕へ巻きつける。
「シオリ!」
「はい!」
ミアはシオリを抱き寄せる。
そこからヨーヨーはワイヤーの要領で引き寄せられて、二人は飛び上がる。
「シオリ、やって!!」
「はい! カナミさんをはなしてください!!」
シオリは渾身の力を込めて、バットを腕へと叩きつける。
カキィィィィィィン!!
けたたましい金属音とともに衝撃が迸る。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」
その衝撃でカナミを掴む腕の力が少し緩んだ。
その緩みをチャンスとみて、カナミは抜け出すために力を込める。
裂帛の気合とともに、妖精の羽はガイア・マキアの指を弾く。
「神殺砲! ボーナスキャノン!!」
その弾いて脱出した勢いで、砲弾をガイア・マキアの頭部に叩き込む。
バァァァァァァァン!!
砲弾は頭部に直撃する。
「もう一発!」
すかさずもう一発、砲弾を撃ち放つ。
その反動で、カナミはガイア・マキアと距離を取る。
「ミアちゃん! シオリちゃん! 散って!!」
「これやばいやつね、シオリ!」
「はい!」
ミアとシオリは、カナミの号令に従って、ヨーヨーのワイヤーで脱出する。
カナミは砲台にできる限り魔力を注ぎ込む。
さっき砲弾を撃った分の魔力は妖精の羽が空気中に集めてくれる。
そのおかげで全力の砲弾を撃ち込むことができる。
そうでもしないとこの巨大なプラモは倒せないと思ったからだ。
「ボーナスキャノン・アディション!!」
ありったけの魔力を注ぎ込んで放たれた砲弾は、ガイア・マキアの胸部に直撃した。
バァァァァァァァァァァァァァァァァン!!
砲弾は直撃したガイア・マキアを飲み込み、廃工場の天井にまで届く。
爆煙が晴れた時、ガイア・マキアの棟から上はキレイさっぱり吹き飛んでいた。
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