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第125話 旧友! 少女と少女の再会の化学反応! (Aパート)
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それは、かなみが学校が終わってオフィスへ向かっていたある日のことだった。
「かなみ! かなみでしょ!?」
急に呼び止められた。
「やっぱり、かなみだ! 全然変わってないね!」
声の主は、制服を着た中学生女子だった。
その顔には見覚えがあるような、ないような、そんな曖昧な印象だった。
向こうが知り合いのように声をかけてきたので、知り合いのようだったけど、かなみにはわからなかった。
「えっと、あの……誰?」
「え?」
彼女はキョトンとする。
「私のこと、忘れちゃった? 小豆沢梢恵!」
「あ、あぁ~!! 梢恵!! 梢恵なの!?」
かなみはそこで気がついた。
彼女は、かなみが小学生四年生まで同級生で友達だった娘だ。
五年生に上がる前の春休みのときに、親の仕事の都合で転校してしまい、それから会うことはなかった。
それがこんなところでたまたま会うなんて思いもよらなかった。
「どうして、こんなところに!?」
「近くに引っ越してきたのよ。かなみは?」
「え、私? 私はちょっと用なんだけど」
「また会えて嬉しい! かなみって全然変わってないからすぐわかったわ!」
「え、そ、そうなの?」
かなみは自分の姿を想像してみる。
「私、変わってない?」
「あ、うん、いい意味で、だけどね」
「そう……でも、梢恵はだいぶ変わったわね。気づかなかった……」
かなみは記憶の中にある梢恵と今の梢恵を比べてみる。
四年生の頃まで同じくらいの背丈だったのに、今はかなみの頭一つ分大きくなっているし、髪もかなみとお揃いのロングだったのだけど、今はショートカットにしていて、活動的に感じる。
「あはは、なんだか懐かしいな。ねえ、せっかくだから色々話さない?」
「あ、ごめん。このあと、用事があるから無理なの」
「え、あ、そうなの……」
梢恵は残念そうにする。
「それじゃ、連絡先交換しよう」
「うん」
その場は連絡先を交換して、別れた。
「あんた、今日はなんか機嫌いいわね」
不意にオフィスでみあから言われた。
「そう?」
「いいことあったの? お金拾ったの?」
「拾ったわけじゃないけど、私のいいことってお金拾うことなの?」
「だって、この前百円玉拾って、浮かれてたじゃない」
「浮かれないわよ」
「ま、そうよね。五百円玉くらいじゃないとね」
「今日のご飯が豪華になるわね。ってそうじゃなくて、ちゃんと交番に届けるわよ」
「え?」
みあは驚いて唖然とする。
「そんなに驚くことないじゃない」
「あんたって、お金拾うとそのまま財布にいれるタイプじゃないの?」
「違うけど……って、いうかなんでお金拾う話になってるの?」
「あんたが機嫌がいいときってそれくらいのことじゃないわよ」
「他にもいっぱいあるわよ!」
「……お金拾うと機嫌が良くなるのは否定しないんですね」
紫織はボソリと言う。
「例えば?」
「昔の友達に久しぶりに会った、とか」
「会ったの?」
「うん、会った」
「……友達、ねえ」
みあは頬杖をついて言う。
「友達に会うってそんなにいいものなの?」
「いいものだけど、みあちゃんってやっぱり友達いないの?」
「やっぱりって何よ!!」
みあは癇癪を起こす。
「自分から話振ったのに……」
かなみは自分の席に着く。
「あの、かなみさん?」
隣の席に座っている翠華が聞く。
「昔の友だちってどういう娘なの?」
「そうですね。小豆沢梢恵っていって、幼稚園の頃から一緒だったんです」
「かなみさんの幼稚園……」
翠華はかなみの幼稚園に通うくらいの幼い姿を想像する。
「小学校も一緒で、クラスもずっと一緒だったんですよ」
「羨ましい……」
そして、翠華は思わずつぶやく。
「よく遊びましたね。一緒に公園行ったり、一緒にピクニック行ったり、あと家にもよく遊びに行きましたね」
「本当に幼馴染って感じね」
「親の転勤で引っ越すことになったときは本当に寂しかったです……」
「そのあと、連絡はとらなかったの?」
「うーん、転勤で引っ越すって言われてすごい悲しくてそんなことまで考えられなかったんです」
「そういうことあるわよね」
「あの時に、連絡先聞いておけば、すぐ寂しくなかったもしれませんのにね、あははは」
「でも、また会えて良かったわね」
「そうなんです! 急に声かけられてびっくりしたんです! すごく変わってて、すぐ気がつかなかったんです!」
「変わってたって、どう変わってたの?」
「すごく背が伸びてて、髪を切っててそれが似合ってて、大人っぽくなったというか……」
「大人っぽいのが、かなみさんの好みなの?」
「え? 好みですか?」
「ううん、なんでもないわ! 忘れて!」
「好み……好みっていうより、羨ましいって感じですね」
「羨ましい……?」
「ほら、私子供っぽいじゃないですか?」
「確かにそうね」
みあが言う。
「みあちゃんの方がよっぽど子供じゃない」
かなみは反論する。
みあにそんな風に言われるとそう反論したくなる。
「子供と子供っぽいっていうのは違うのよ」
「どう違うのよ?」
「あたしより中学生のあんたの方が子供ってこと?」
「そんなことないわよ! ほら! みあちゃんの方が小さいじゃない!」
かなみは立って、みあと並んだ状態で言う。
確かに、かなみの言う通り、みあの方が背が小さく、身体全体が一回り小さい。
かなみは中学二年生で、みあは小学四年生。年齢差はあるのが第一だけど、みあは同級生の中でも背の順で並んだ時、前の方にいる。かなみも前の方だけど。
「そういうこと言ってるんじゃないのよ。子供っぽいところよ」
「みあちゃんに言われるとなんか納得がいかない……」
「あたしもあんたから言われるとね……」
かなみとみあは、しかめっ面でお互い見合う。
「……翠華さん、私子供っぽいですか?」
かなみは翠華に訊いてみる。
「え? そ、それは……?」
翠華は返答に困った。
だけど、翠華としては「理想の魔法少女だから子供っぽい方がいいのかもしれない」というのが正直な気持ちだ。
でも、 かなみは「そうじゃない」と言ってほしいように感じるし、第一に、かなみにそんなことを正直に言えるわけがない。
「……かなみさんはかなみさんのままでいい、と思うわ」
それだけ答えるのが精一杯だった。
「かなみ!」
翌日、学校が終わってオフィスへ向かっている道すがら、再び呼び止められる。
「梢恵! また会ったね!」
「なんかまたかなみに会える気がして」
「あ、そうなの」
「昨日会った時、なんか通い慣れてる気がしてね」
「あはは……」
かなみは笑ってごまかすしかできなかった。
通い慣れているというのは的中しているけど、それを言うわけにはいかなかったからだ。
「今日も何か用なの?」
「う、うん……」
「一緒に遊ぶことはできないんだね?」
「うん、ごめんね」
梢恵は残念そうな顔をする。
「梢恵って、この近くに住んでるの?」
「ええ、親がまた転勤してね。かなみは?」
「う、うーん、親はね……」
「あ、そうか。かなみの親って仕事でほとんど帰ってこないんだったね」
「うん、そうなのよ」
梢恵は幼稚園からの友達。
お互いの家に遊びに行ったり、お邪魔したりすることがあった。
そのため、かなみの両親が仕事――実際仕事だったのかはさておき、で出ていってほとんど帰ってこないことを知っている。そのおかげで、かなみの部屋で何度も遊んだ。
「また遊びたいな」
「う、うん、そのうちね。あ、そういえば梢恵はこの近くに住んでるの?」
「ええ、まあね……」
梢恵は言いづらそうにしていて、かなみは違和感を憶えた。
「そろそろ、時間だから私行くね」
「かなみ? 用事が終わるのってどのくらいになるの?」
「え? そ、それは……」
かなみは返答に困った。
十二時くらい正直に言うわけにはいかないし、かといって久しぶりに会った友達に嘘をつくわけにもいかない。
「すぐ終わるの? ねぇ?」
梢恵は迫ってくるので、ますます困る。
「え、えぇ……ごめん! すぐに終わらないから、また今度!」
かなみは逃げるようにその場を走り去る。
「はぁ~」
オフィスビルに入るなり、階段を駆け上がって、オフィスへと入って、大きくため息をつく。
「どうしたの? いつもより大きなため息ついて」
既にオフィスにいたみあが訊いてくる。
「私にそんなにため息ついてる?」
「ええ、とりあえずため息をつかせることしか表現できない小説家の小説くらいしてるわよ」
「何そのたとえ……」
意味はよくわからないけど、かなみは微妙な気分になった。
「んで、今日のため息は何?」
「ほら、昨日友達に会ったって言ったじゃない?」
「そういえばそう言ってたわね。それがどうしたの?」
「また今日会ったのよ。同じ場所で」
「え、同じ場所?」
みあは訝しんだ。
「それはおかしい話ね」
「私もびっくりしたけど、多分近くに引っ越したらしいのよ」
「それじゃ、よく会えるってわけね。なんで、ため息つくのよ?」
「それでその娘が、この後一緒に遊ぼう、って言われたのよ」
「え、それ無理じゃん」
「うん、無理だから断ろうと思ったんだけど、中々断れなくて……」
「あんた、押しが弱いからね」
みあにそう言われても、かなみは否定できなかった。
「それで、適当に言って、こっちに来たのよ」
「――逃げたのね」
「……うん」
正直もっと言い方があるのだろうけど、逃げたと言われてもその通りとしか言いようがない。
「私も久しぶりに会ったから遊びたいんだけどね……」
「今の生活じゃ難しいでしょ」
「うーん……」
かなみは頭を抱える。
「また会って誘われても断らないといけないのよね……」
「あんたも大変ね……そんなの遊べないってはっきり言えばいいじゃない」
「みあちゃんみたいにはっきり言えたらいいんだけどね」
「ふうん、友達付き合いも大変ね」
「みあちゃんも友達ができればわかるわよ」
「フン!」
みあは不機嫌に鼻を鳴らして、そっぽ向いてしまう。
かなみは余計なことを言ってしまったと少し反省する。
二度あることは三度ある。
と、ことわざはあるもののさすがに三日連続で会うことはないかな、と、かなみは思いながら翌日、学校を終えてオフィスへと向かう。
「かなみ!」
そんな道中で、三度目があった。
「梢恵、どうしたの!?」
かなみは驚く。
これでこの道で会うのは三日連続。偶然ですますにはあまりにも出来すぎている。
「ここに行けば、かなみにまた会えると思って!」
「会えると思ったからって……そんなに私に会いたかったの?」
「会いたかった!」
梢恵はあまりにもはっきり答えたせいで、かなみは喜んでいいやらたじろいでいいやら複雑な想いになった。
「そ、そう……?」
「まあ、かなみと遊びたいというのもあるけど、今日は言いたいことがあるの!」
「言いたいこと?」
なんだろう、と、かなみは不安になった。
「――昨日何してたの?」
かなみはドキリとした。
昨日は逃げるようにして別れてしまったから後ろめたい。
しかし、それだけじゃない気がする。
問い詰めてくる梢恵は何か不審がる視線を向けている。
「……な、何って、用事があったのよ……」
「その用事が何って訊いてるのよ」
さらに問い詰めてくる。
「え、えぇ、それは……」
「私、見たのよ!」
「え、見たって何を?」
「かなみが怪しいビルに入っていくの!」
「ええ、見ちゃったの!? なんで!?」
「なんでって、かなみを追いかけてたら見たのよ」
「なんで追いかけるのよ!?」
「だって、かなみが逃げるから!」
「うぅ……」
そう言われると、かなみも悪い気がしていたので、言い返せない。
「それでいつまで経っても出てこなくて……」
「いつまで経っても、ってどのくらい待ってたのよ?」
「うーん、と、たしか……夜の八時くらい……」
「結構、待ってたわね……」
かなみは呆れる。
「かなみ、もしかしてあのビルに寝泊まりしてるの? 住んでるの?」
「え、ええ、違うけど……」
「じゃあ、あのビルで何してたの?」
「え、うーんと、それはね……」
「言えないことなの? やばいことなの?」
やばいことなのは事実だけど、本当のことを言うわけにはいかない。
「かなみさん? どうしたの?」
そこへ翠華がやってくる。
「翠華さん!」
「あの……あんたは?」
梢恵は訝しげに翠華へ問いかける。
「私はかなみさんの先輩の青木翠華よ」
翠華は丁寧に自己紹介する。
「かなみ! かなみでしょ!?」
急に呼び止められた。
「やっぱり、かなみだ! 全然変わってないね!」
声の主は、制服を着た中学生女子だった。
その顔には見覚えがあるような、ないような、そんな曖昧な印象だった。
向こうが知り合いのように声をかけてきたので、知り合いのようだったけど、かなみにはわからなかった。
「えっと、あの……誰?」
「え?」
彼女はキョトンとする。
「私のこと、忘れちゃった? 小豆沢梢恵!」
「あ、あぁ~!! 梢恵!! 梢恵なの!?」
かなみはそこで気がついた。
彼女は、かなみが小学生四年生まで同級生で友達だった娘だ。
五年生に上がる前の春休みのときに、親の仕事の都合で転校してしまい、それから会うことはなかった。
それがこんなところでたまたま会うなんて思いもよらなかった。
「どうして、こんなところに!?」
「近くに引っ越してきたのよ。かなみは?」
「え、私? 私はちょっと用なんだけど」
「また会えて嬉しい! かなみって全然変わってないからすぐわかったわ!」
「え、そ、そうなの?」
かなみは自分の姿を想像してみる。
「私、変わってない?」
「あ、うん、いい意味で、だけどね」
「そう……でも、梢恵はだいぶ変わったわね。気づかなかった……」
かなみは記憶の中にある梢恵と今の梢恵を比べてみる。
四年生の頃まで同じくらいの背丈だったのに、今はかなみの頭一つ分大きくなっているし、髪もかなみとお揃いのロングだったのだけど、今はショートカットにしていて、活動的に感じる。
「あはは、なんだか懐かしいな。ねえ、せっかくだから色々話さない?」
「あ、ごめん。このあと、用事があるから無理なの」
「え、あ、そうなの……」
梢恵は残念そうにする。
「それじゃ、連絡先交換しよう」
「うん」
その場は連絡先を交換して、別れた。
「あんた、今日はなんか機嫌いいわね」
不意にオフィスでみあから言われた。
「そう?」
「いいことあったの? お金拾ったの?」
「拾ったわけじゃないけど、私のいいことってお金拾うことなの?」
「だって、この前百円玉拾って、浮かれてたじゃない」
「浮かれないわよ」
「ま、そうよね。五百円玉くらいじゃないとね」
「今日のご飯が豪華になるわね。ってそうじゃなくて、ちゃんと交番に届けるわよ」
「え?」
みあは驚いて唖然とする。
「そんなに驚くことないじゃない」
「あんたって、お金拾うとそのまま財布にいれるタイプじゃないの?」
「違うけど……って、いうかなんでお金拾う話になってるの?」
「あんたが機嫌がいいときってそれくらいのことじゃないわよ」
「他にもいっぱいあるわよ!」
「……お金拾うと機嫌が良くなるのは否定しないんですね」
紫織はボソリと言う。
「例えば?」
「昔の友達に久しぶりに会った、とか」
「会ったの?」
「うん、会った」
「……友達、ねえ」
みあは頬杖をついて言う。
「友達に会うってそんなにいいものなの?」
「いいものだけど、みあちゃんってやっぱり友達いないの?」
「やっぱりって何よ!!」
みあは癇癪を起こす。
「自分から話振ったのに……」
かなみは自分の席に着く。
「あの、かなみさん?」
隣の席に座っている翠華が聞く。
「昔の友だちってどういう娘なの?」
「そうですね。小豆沢梢恵っていって、幼稚園の頃から一緒だったんです」
「かなみさんの幼稚園……」
翠華はかなみの幼稚園に通うくらいの幼い姿を想像する。
「小学校も一緒で、クラスもずっと一緒だったんですよ」
「羨ましい……」
そして、翠華は思わずつぶやく。
「よく遊びましたね。一緒に公園行ったり、一緒にピクニック行ったり、あと家にもよく遊びに行きましたね」
「本当に幼馴染って感じね」
「親の転勤で引っ越すことになったときは本当に寂しかったです……」
「そのあと、連絡はとらなかったの?」
「うーん、転勤で引っ越すって言われてすごい悲しくてそんなことまで考えられなかったんです」
「そういうことあるわよね」
「あの時に、連絡先聞いておけば、すぐ寂しくなかったもしれませんのにね、あははは」
「でも、また会えて良かったわね」
「そうなんです! 急に声かけられてびっくりしたんです! すごく変わってて、すぐ気がつかなかったんです!」
「変わってたって、どう変わってたの?」
「すごく背が伸びてて、髪を切っててそれが似合ってて、大人っぽくなったというか……」
「大人っぽいのが、かなみさんの好みなの?」
「え? 好みですか?」
「ううん、なんでもないわ! 忘れて!」
「好み……好みっていうより、羨ましいって感じですね」
「羨ましい……?」
「ほら、私子供っぽいじゃないですか?」
「確かにそうね」
みあが言う。
「みあちゃんの方がよっぽど子供じゃない」
かなみは反論する。
みあにそんな風に言われるとそう反論したくなる。
「子供と子供っぽいっていうのは違うのよ」
「どう違うのよ?」
「あたしより中学生のあんたの方が子供ってこと?」
「そんなことないわよ! ほら! みあちゃんの方が小さいじゃない!」
かなみは立って、みあと並んだ状態で言う。
確かに、かなみの言う通り、みあの方が背が小さく、身体全体が一回り小さい。
かなみは中学二年生で、みあは小学四年生。年齢差はあるのが第一だけど、みあは同級生の中でも背の順で並んだ時、前の方にいる。かなみも前の方だけど。
「そういうこと言ってるんじゃないのよ。子供っぽいところよ」
「みあちゃんに言われるとなんか納得がいかない……」
「あたしもあんたから言われるとね……」
かなみとみあは、しかめっ面でお互い見合う。
「……翠華さん、私子供っぽいですか?」
かなみは翠華に訊いてみる。
「え? そ、それは……?」
翠華は返答に困った。
だけど、翠華としては「理想の魔法少女だから子供っぽい方がいいのかもしれない」というのが正直な気持ちだ。
でも、 かなみは「そうじゃない」と言ってほしいように感じるし、第一に、かなみにそんなことを正直に言えるわけがない。
「……かなみさんはかなみさんのままでいい、と思うわ」
それだけ答えるのが精一杯だった。
「かなみ!」
翌日、学校が終わってオフィスへ向かっている道すがら、再び呼び止められる。
「梢恵! また会ったね!」
「なんかまたかなみに会える気がして」
「あ、そうなの」
「昨日会った時、なんか通い慣れてる気がしてね」
「あはは……」
かなみは笑ってごまかすしかできなかった。
通い慣れているというのは的中しているけど、それを言うわけにはいかなかったからだ。
「今日も何か用なの?」
「う、うん……」
「一緒に遊ぶことはできないんだね?」
「うん、ごめんね」
梢恵は残念そうな顔をする。
「梢恵って、この近くに住んでるの?」
「ええ、親がまた転勤してね。かなみは?」
「う、うーん、親はね……」
「あ、そうか。かなみの親って仕事でほとんど帰ってこないんだったね」
「うん、そうなのよ」
梢恵は幼稚園からの友達。
お互いの家に遊びに行ったり、お邪魔したりすることがあった。
そのため、かなみの両親が仕事――実際仕事だったのかはさておき、で出ていってほとんど帰ってこないことを知っている。そのおかげで、かなみの部屋で何度も遊んだ。
「また遊びたいな」
「う、うん、そのうちね。あ、そういえば梢恵はこの近くに住んでるの?」
「ええ、まあね……」
梢恵は言いづらそうにしていて、かなみは違和感を憶えた。
「そろそろ、時間だから私行くね」
「かなみ? 用事が終わるのってどのくらいになるの?」
「え? そ、それは……」
かなみは返答に困った。
十二時くらい正直に言うわけにはいかないし、かといって久しぶりに会った友達に嘘をつくわけにもいかない。
「すぐ終わるの? ねぇ?」
梢恵は迫ってくるので、ますます困る。
「え、えぇ……ごめん! すぐに終わらないから、また今度!」
かなみは逃げるようにその場を走り去る。
「はぁ~」
オフィスビルに入るなり、階段を駆け上がって、オフィスへと入って、大きくため息をつく。
「どうしたの? いつもより大きなため息ついて」
既にオフィスにいたみあが訊いてくる。
「私にそんなにため息ついてる?」
「ええ、とりあえずため息をつかせることしか表現できない小説家の小説くらいしてるわよ」
「何そのたとえ……」
意味はよくわからないけど、かなみは微妙な気分になった。
「んで、今日のため息は何?」
「ほら、昨日友達に会ったって言ったじゃない?」
「そういえばそう言ってたわね。それがどうしたの?」
「また今日会ったのよ。同じ場所で」
「え、同じ場所?」
みあは訝しんだ。
「それはおかしい話ね」
「私もびっくりしたけど、多分近くに引っ越したらしいのよ」
「それじゃ、よく会えるってわけね。なんで、ため息つくのよ?」
「それでその娘が、この後一緒に遊ぼう、って言われたのよ」
「え、それ無理じゃん」
「うん、無理だから断ろうと思ったんだけど、中々断れなくて……」
「あんた、押しが弱いからね」
みあにそう言われても、かなみは否定できなかった。
「それで、適当に言って、こっちに来たのよ」
「――逃げたのね」
「……うん」
正直もっと言い方があるのだろうけど、逃げたと言われてもその通りとしか言いようがない。
「私も久しぶりに会ったから遊びたいんだけどね……」
「今の生活じゃ難しいでしょ」
「うーん……」
かなみは頭を抱える。
「また会って誘われても断らないといけないのよね……」
「あんたも大変ね……そんなの遊べないってはっきり言えばいいじゃない」
「みあちゃんみたいにはっきり言えたらいいんだけどね」
「ふうん、友達付き合いも大変ね」
「みあちゃんも友達ができればわかるわよ」
「フン!」
みあは不機嫌に鼻を鳴らして、そっぽ向いてしまう。
かなみは余計なことを言ってしまったと少し反省する。
二度あることは三度ある。
と、ことわざはあるもののさすがに三日連続で会うことはないかな、と、かなみは思いながら翌日、学校を終えてオフィスへと向かう。
「かなみ!」
そんな道中で、三度目があった。
「梢恵、どうしたの!?」
かなみは驚く。
これでこの道で会うのは三日連続。偶然ですますにはあまりにも出来すぎている。
「ここに行けば、かなみにまた会えると思って!」
「会えると思ったからって……そんなに私に会いたかったの?」
「会いたかった!」
梢恵はあまりにもはっきり答えたせいで、かなみは喜んでいいやらたじろいでいいやら複雑な想いになった。
「そ、そう……?」
「まあ、かなみと遊びたいというのもあるけど、今日は言いたいことがあるの!」
「言いたいこと?」
なんだろう、と、かなみは不安になった。
「――昨日何してたの?」
かなみはドキリとした。
昨日は逃げるようにして別れてしまったから後ろめたい。
しかし、それだけじゃない気がする。
問い詰めてくる梢恵は何か不審がる視線を向けている。
「……な、何って、用事があったのよ……」
「その用事が何って訊いてるのよ」
さらに問い詰めてくる。
「え、えぇ、それは……」
「私、見たのよ!」
「え、見たって何を?」
「かなみが怪しいビルに入っていくの!」
「ええ、見ちゃったの!? なんで!?」
「なんでって、かなみを追いかけてたら見たのよ」
「なんで追いかけるのよ!?」
「だって、かなみが逃げるから!」
「うぅ……」
そう言われると、かなみも悪い気がしていたので、言い返せない。
「それでいつまで経っても出てこなくて……」
「いつまで経っても、ってどのくらい待ってたのよ?」
「うーん、と、たしか……夜の八時くらい……」
「結構、待ってたわね……」
かなみは呆れる。
「かなみ、もしかしてあのビルに寝泊まりしてるの? 住んでるの?」
「え、ええ、違うけど……」
「じゃあ、あのビルで何してたの?」
「え、うーんと、それはね……」
「言えないことなの? やばいことなの?」
やばいことなのは事実だけど、本当のことを言うわけにはいかない。
「かなみさん? どうしたの?」
そこへ翠華がやってくる。
「翠華さん!」
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