女帝の遺志(第二部)-篠崎沙也加と女子プロレスラーたちの物語

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第七章・壮行試合 ― 女帝と“最後の男”

修平の覚悟と、歓喜の裏側

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試合開始。

直美はいつも通り静かに構える。
修平は拳を握り、真正面から挑む。

最初の接触。

ドッ。

直美のジャブ一発で、修平の頬が大きく揺れた。

「ぐっ……!」

一瞬で膝が折れる。
だが倒れない。歯を食いしばって、立っている。
直美の目が、わずかに細まった。

(……立ったか。成長したな)

次の瞬間。
直美の蹴り。
修平が吹き飛び、コーナーに激突。
女子たちが悲鳴をあげる。

「修平!」「立って!修平さん!」
「まだだ!まだ行ける!」

直美は容赦しない。
ボディブロー。
ヒザ蹴り。
ショートレンジのエルボー。
全攻撃が即KO級。

それでも修平は――倒れない。
いや、倒れるのだが、すぐに立ち上がる。
千鳥足でも、血を流しながらでも。
立ち上がるたびに、観客席から拍手が起きた。

「修平ーーー!!」
「負けんなーー!!」
「あんた強いよ!!」

志桜里は泣きながら絶叫していた。

「いけぇぇぇぇ修平ーーーッッ!!」

直美は、いつもの冷静な試合運びとは違う感情に気づいていた。

(……これ以上やったら、壊しちゃう。でも……)

これは壮行試合。
修平が全力で立ち向かっている。
手加減なんて逆に失礼だ。
直美は心の中で呟いた。

――修平、ありがとう。
  あなたの必死さが、あたしを前へ押してくれる。

リングサイドの沙也加は、静かに拳を握っていた。

(修平……今日のあなたの姿は、直美にもブレバリーズにも必要なの)

ほぼ抵抗もできないまま攻撃を受け続け、早や15分。
修平はもう、ほぼ視界がない。
息も荒い。立つのが精一杯。

直美はラストを決めるため、一歩前へ。

(ありがとう、修平。ここで終わらせる)

その瞬間。
修平の“本能”が動いた。
ふらついたまま、直美の足元へ。
大きな蹴りを入れる直前の一瞬の体重移動を、完璧に捉えていた。
偶然のように、しかし見事なタイミングで――

直美の身体を丸め込み、エビ固めの体勢に!!

観客全員が立ち上がった。

レフェリーが滑り込みカウント。

「ワンッ!」

完全に不意を突かれた直美は、驚き、一瞬遅れる。

「ツーッ!!」

女子全員が泣きながら叫ぶ。

「がんばれーーーーー!!!」
「押さえて修平!!!」
「あと一秒!!!!!」

「スリーッ!!!」

ゴォォォォォォン!!

会場が爆発した。
修平、逆転勝ち。
---------------------------------------------
**月**日、〇〇体育館、直美選手壮行試合
●直美
(19分10秒、片エビ固め)
〇山崎修平
帝プロリングに向かうチャンピオン・直美選手の壮行試合。
直美選手の攻撃を受け続けた山崎選手が、一瞬の丸め込みでまさかの逆転勝利!
---------------------------------------------

修平は倒れ込む。
直美は驚きながらも微笑み、修平を抱き起こした。

「……やるじゃん、修平。
 まさか、あそこで丸められるとはね」

修平は泣き笑いの顔で叫んだ。

「直美さん! いってらっしゃい……!
 絶対、勝って帰ってきてください!」

女子選手たちがリングへ駆け込んだ。
志桜里が修平に抱きつき、号泣する。

「バカッ……あんたほんとに……!!
 でも、すっげぇよ……!」

環もSatomiも泣きながら修平を抱きしめる。

観客は総立ち。

「修平!修平!修平!!」
「直美!直美!!」
「ブレバリーズ!!」

修平が壮行試合にて、直美から奇跡のフォール勝ち!
会場全体が、興奮から冷めやらない。

沙也加はゆっくりとリングに上がり、
直美と修平の手を取って掲げた。

「――これが、ブレバリーズです」

照明の中、直美は仲間たちを見回した。

胸が熱くなり、涙が溢れる。

――この団体があったから、自分はここまで来れた。
  帝プロでも必ず勝つ。
  ブレバリーズを背負って。

直美はマイクを取り、

「みんな本当にありがとう。
 帝プロで、必ず最強を証明してくる!」

観客は割れるほどの拍手を送った。

***

試合終了後、歓声の裏で――

会場外の暗がり。
黒いパーカーの男たちが、無言でリングを見つめていた。

新堂翔が吐き捨てるように言った。

「……仲良しこよしの感動劇かよ。反吐が出る」

長身の男が笑う。

「直美がいなくなる。タイミングは絶好だ。
 残ったやつら……すべて潰してやるよ」

桐生剛士が拳を鳴らす。

「楽しみだな……“復讐戦”はここからよ」

彼らの瞳は、獲物を見る獣のそれだった。
誰も気づかない。

ブレバリーズの未来に、
静かに、確実に――
闇が忍び寄り始めていたことに。



=== 第三部につづく ===


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