女帝の遺志(第二部)-篠崎沙也加と女子プロレスラーたちの物語

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第七章・壮行試合 ― 女帝と“最後の男”

ゴング前の静寂

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ブレバリーズ名物の満員アリーナ。
だが、この日はいつもと空気が違った。

直美の帝プロ参戦という、前代未聞のニュース。
そしてその壮行試合の相手が――山崎修平。

観客はざわつきながらも、誰もが“胸に何か”を抱いていた。

「直美さん……本当に行くんだな」
「俺たちの直美が……!」
「で、相手が修平ってのも……泣けてくるよ……」

リングに向かう通路。

修平は深呼吸を繰り返していた。
膝は震えていた。

だが――

志桜里が後ろから背中を叩いた。

「ビビってんじゃねーよ、修平。
 ……あたしが鍛えたんだから、胸張って行け」

その声には、いつものきつさの奥に“優しさ”があった。

Satomiは手を握りながら言った。

「あなたの努力、ずっと見てきたわ。
 あとは出すだけよ」

環はニコニコしながら、涙を浮かべた。

「修平くん、がんばってね。
 女子みんな、応援してるよ!」

沙也加もゆっくりと歩み寄り、修平の肩に手を置いた。

「今日のあなたは、ブレバリーズ男子の代表よ。
 胸を張りなさい」

修平は深く頭を下げた。

「ありがとうございます……必ずやり切ってきます」

***

リングに向かう修平を、見送る沙也加
しかし、気になる思いが、頭を離れていなかった。

……仁志が、会場に姿を現していない

選手が一人、ブレバリーズを代表して、晴れ舞台に向かおうとする試合である。
本来であれば、社長である仁志に、会場で激励をしてもらいたいところである。

しっかりとスケジュールを確認し、念を押したはずであったが、仁志は来ていない。
それどころか、もう1週間近くも、ブレバリーズの選手の誰とも会っていなかった。

(直美の壮行試合なのに、社長が音信不通だなんて……)

不安が募るが、いまは試合に集中するよう、自分に言い聞かせていた。

――そして、ゴングが鳴る。


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