フェアリーゲート

第８章 久し振りの日本

ゴブリンの巣窟 １

　コボルトの件から数日が過ぎた。

　あれ以来、依頼が入ることも無く平穏な日々が続いていた。

　ある日、協会の発行する適合者専門誌を読んでいると、とある県で大規模なゴブリ

ンのコロニ一が発見され、大規模な討伐隊が編成されたという記事に目が引かれた。

　専門誌が届いて数日が経っている。少しは、事態の変化があったかとテレビを点け

ると、ちょうどテレビ中継をしていた。

　物々しい、機動隊が封鎖する道路を、鎧兜に身を固めた集団や現代風な装備で統一

した集団等々が機動隊が開放した道路を歩いて進んで行く。

　レポーターが興奮したように何かを喋っているが耳に入らない。

　集団の中程に居たのは、以前ゴブリン討伐の依頼で揉めた、侍という同業者だった

　しかし、映像に映っていた討伐隊は５０人程と例を見ない程の規模だった。

　最近では、一部の機動隊にも錬金術師製の警戒棒や特殊警棒、大楯等々が配備され

つつあるという。

　道路を封鎖しているのは、大輸２台３０人１個小隊っと言ったところか？

　いささか、少ない気がする。

　専門誌では、大規模なっとわざわざ太字でアピールする程ということは１００や２

００匹では利かないだろうそれを５０人足らずで制圧できるものなのだろうか？

　勿論、テレビに映っていないだけで、別動隊がいる可能性はあるが。

　そこまで、考えていて、ようやくレポーターの声が耳に入るようになって来た。

　それによると、現場は古い遺跡を現代に復元したアトラクションで、発覚当時１０

０人を超える高校生が修学旅行に訪れており、３日経った今も安否は不明だそうだ。

　「何だそりゃ！！」

　思わず大きな声を出してしまった。

　「どうしました？」

　「何か有りました？」

　同じ事務所内にいた井上と松浦がびっくりして声を掛けて来た。

　「２人とも〇〇県のゴブリンのコロニ一の件でウチに連絡は無かったよな？」

　「はい、連絡は受けていません。」

　「私も有りません。」

　不味い、協会の対応は不味過ぎた。

　専門誌に載せる暇が有れば片っ端から、モンスター討伐を生業とする業者に連絡を

付け、その日は無理でも、翌日には突入するべきだった。

　それが、３日経ってから悠々と討伐に向かうところをテレビに映ってしまっている

　ゴブリンのような、人類の天敵とも言うべき存在は発見次第に討伐すべきだ。

　残念ながら、高校生達は絶望的だろう半分も生きて帰って来れば恩の字だろう。

　精神面では、どうかも分からないが。

　しかも、ウチに連絡が来てないことで分かるように、全力の戦力ですらない。

　これで、失敗でもしたら、どうなることやら。

　協会のお偉方の首が何本飛ぼうが知ったことでないが、これで協会の組織改革等行

われて、適合者が公務員扱いされて、行きたくも無い討伐に無理矢理行かされるよう

になったら最悪だ。

　会社が無くなれば、井上と松浦を路頭に迷わすことにもなってしまう。

　「決めた。松浦、協会に連絡を取れ！井上、全力出撃だ！！」

　武器ロッカールームから錬金術師製なボウガンの矢から何やら全部持ち出す。

　「松浦！！協会の野郎に出撃する旨を伝えたら、同じように討伐に参加してなさそ

うな同業者に片っ端から連絡を取れ！進撃するぞ！！仕度金はウチが出す！！」