フェアリーゲート

第５章 異世界の旅

人族の街から

　人族の商人が来るまでの２日間を柊はミラの友人のカラリアやウトレアと森に狩に行き過ごした。里を訪れた際に門番をしていたあの２人である。


　「そっちに行ったぞ。突進に注意しろ！」

　ウトレアからの警告が届く。今の相手はマッドボア。
スタンプボア程の脅威は無いが、身体は大きく、その巨体と剣程もある牙が武器だ。


　しかし、その重さのせいで、走り出すと曲がれず、突進の方向さえ分かってしまえば、待ち伏せも可能な比較的に狩り易く、良い獲物である。

　今回も、エルフ達が挑発し、激昂したマッドボアが突進を始めると、方向性を読んだ柊が側面へと回り込み、首にブロ一ドソ一ドを突き刺した。

　「プギャァァァァァァ！！」

　すさまじい悲鳴が森に響き渡ったが、それを最後に鳴き声は小さくなっていき、遂には途絶えた。

　「中々の大きさだな。」とウトレア。

　「獲物も凄いけど、あの大きさを一撃ってヒイラギの剣技やステ一タスも凄いんじゃ？里のギルド支部で調べてもらったら？」とカラリアが言った。

　「ギルド支部？」

　ミラが説明する。
　「私達の世界には沢山の危険なモンスタ一や貴重な資源が存在するわ。そんなモンスタ一から人々を守ったり、資源を取りに行けない人の為に変わりに取りに行ったりする人達がいるわ。それが、冒険者。それを手助けする組織がギルドよ。」

　「今回村に来てくれる商人さんも私達が依頼を受けた縁で知り合ってから里に商売に来てくれるようになったのよ。」


　「つまり、ミラは冒険者なんだ？」と柊。

　「そうよ、頭の固い人達を説得して、やっと里にギルド支部が出来て、登録をして色んな所に行ったわ。」

　「成る程、滞在中に行って見ることにしよう。」


　「おお～い、そこに居るのはミラちゃんじゃないか～？」

　遠くから荷馬車が３台走って来て、その内の１台からミラを呼ぶ声がする。

　「あ、あの声は、商人のアキドンさんだわ。アキドンさ～ん！」

　「スマナ～イ、ゴブリンの軍団と出くわして追われているんだ！早く逃げるんだ！」

　里への道筋と離れた場所で狩りをしていたミラ達に、商人達が出くわしたのは、少しでも里に被害を出すまいと進路変更した結果だったらしい。

　「カラリア、ウトレア非常呼集の笛吹くわよ。軍団ってことは、１００匹を超えるわ。」

　「ミラ、その後はどうするんだ？」

　「決まっている、応援が来るまで足止めをするわ。」

　「４人対１００匹以上のゴブリンねぇ。心踊るよ。」

　「ゴメンなさい、貴方には。」

　「皆まで言うなって。前衛は俺がやる。３人は討ち漏らしを頼む。」

　「き、君らは戦う気か？」

　「良いですから、商人の皆さんは里に行って応援を読んで来て下さい。」
　
　アキドンと呼ばれた商人は頭を下げて、

　「元は儂らのせいなのにスマン！」

　里への最短ルートを取り、馬車は走り去った。

　「さて、俺の実力をまだ見くびっている住民達に実力を見せ付ける為に本気出しますかぁ。」

　「マコト、応援が来るまでの時間稼ぎでよいのよ？」

　「でも、里の住民の中には俺が人族だということで下に見ているのがいる。違うか？」

　「そ、それは。」

　「まあ、見ててくれよ。」


　しばらく、すると、大量の土煙が此方に向かって来るのが見えた。優に１００は超えていそうだ。

　「良いねぇ、腕が鳴る。」

　他の３人も血の気の引いた顔ながらも戦う意志を決めていた。

　「じゃあ、ちょっと行って来る。」

　愛用のハルバ一トを両手で持ち、柊はゴブリンの群れに飛び込んだ。

　そこからは、皆が夢中であった。討ち漏らしのゴブリンは意外にも少なかったが、もとの数が多いだけにそれなりの数をさばく事となった。

　柊はゴブリンの群れの中で叫びながら、ハルバ一トを振るい続けていた。

　「お前らのような存在さえ居なければ、２つの世界はもっと平和りに交流が持てたし、日本で多くの人々が悲しむことも無かったんだよ！！」

　それは、異世界法が成立するまでに異世界からのモンスタ一による罪も無い人々の犠牲の鬱憤を晴らすかのような暴走ぶりだった。

　そして、里からの応援が駆け付けた頃には、３００を数えたゴブリンの半数以上が屍と化し、残りも逃げだそうとしていたことから、掃討戦となった。