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第2章:ダンジョン攻略編(女神ダンジョン)

第68話 ジャイアントキリング前編

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 ゲートに飛び込んだって言ったよね。台湾チームとの合同チームが飛び込んだというゲート。それって僕が一番恐れてた物だったんだ。

 そこにある輝く魔法陣。それこそがボスエリアへの転送ゲートだった。

 この戦いが始まる前に『そのゲートには絶対に近づかないように』という事を伝えそびれてしまったわけだが、それより前にすでに使用されていたようだ。最悪な状況だ。

 本来ならここの階層の魔物を一掃しないと開かないはずのゲートが何かの加減で開いてしまっていた。もしかしたらそれは僕の存在が影響していたのかもしれない。
 ここのダンジョンの情報が刻々と僕の中に入ってくる。それは、僕の周りにいくつものモニターがあるような感じだ。必要なものだけを選び、あまり影響が出ないものを意識の外に追いやっていたのだ。

 そうしていないと情報が洪水のように押し寄せ、押しつぶされてしまうからだ。

 僕はその中の一つ『ボスエリア』となっていた情報に集中した。するとその中に表示されていた青い点が、散り散りになりつつ、次々に消えて行く様が見えるのだ。

「やばい、やばいよ……」

 台湾チームのリーダーとの再会で、旧交をあたためている大熊さんに、
「あの、ちょっとすいません!ごめんなさい、急いでますから!」
 そう言って『なんだ、なんだ』と訳が分からない風の大熊さんの手を引っ張って、焦って塔の窓際へと連れて行った。

「あれ、見てください!」

 僕が指さした、その光景を見た大熊さんは、一瞬何がなんだか分からないようで、それをじっと見やる。そして、それが単なる風景や映像でない事を知り、驚愕で混乱してしまったようだ。

 だが、大熊さんはハッ!として一瞬にして我に返った。流石だ!

「あれは、一体何なんだ?!」

 大熊さんもそれを指さす。そんな僕たち二人の姿を不思議そうに見ていたシーカーさん達が、なんだ?なんだ?と近くへやって来る。

「どうしたんだ?何かあるのか?」

 皆が一斉に外を見たその刹那、全員が驚愕の為に固まってしまった。

「あれは何だ!何なんだよーーー!!」

 辛うじて誰かが声を発した。

 まるで『旧約聖書』に登場する陸に住む巨大な怪物。モデルが象だとか?カバだとか?魔物というよりすでにモンスターだ。いやいや、あれはもう怪獣だ。

 魔塔から見えていた地球ではありえない風の景色。実はそこにあるその景色全体がボスエリアだったのだ。その中に巨大な怪獣が暴れている。ゲートから転移して来たシーカー達を襲う。そして、逃げ惑うシーカー達を巨大なキバで薙ぎ払っていたのだ。

「マジか、あれ、どうすんだよ……」

 その怪獣との戦いを想像するに、とあるモンスターを討伐するゲームに出てくるハンターのようなイメージが湧いてきた。

「俺たちはシーカーならぬハンターにならないとだな……」

 誰かが、そう呟いたのだった。

◇◇◇

「蓮、あいつの情報は得られるか?」

「はい、あのダンジョンボスの単身討伐レベルは100です。高レベルのシーカーが五人ほどか、それ以外でも二十人ほどで入れ替わりながら、連携をとっての代わる代わる戦えば、なんとか倒せるのではないかと…」

 何かあっても、最終的に脱出は可能だが、その判断は大熊さんに一任すると伝えた。

 それを聞いて、大熊さんは皆にどうするかを問うたのだ。

「あまり悠長にはしてられないが、あんな怪物がダンジョンボスだなんて聞いてない。このまま見なかった事にして、このダンジョンから脱出する手もあるんだ。お前たちはどうする?」

 それを聞いた日本チームは、皆あのボスと戦ってみたい、参加すると強く答える。ここに集ったシーカー達はどうも戦闘狂のようだ。

「そうか、分かった。蓮、退出の転移ゲートはどこにある?まずは疲弊しているホン達とポーターを脱出させないといけない」

 そう言う大熊さんの言葉を遮って、ホンさんが声を上げた。

「待ってくれ、俺たちはもう大丈夫だ。頼む、一緒に戦わせてくれ」

 パーティーメンバーの全員の意向だそうだ。足手まといにはならない。少しでも役に立ちたいとのことだ。

「何を言ってる。さっきまで重傷を負ってたんだぞ。それにだ、あいつらはお前たちを見捨てた奴らだ。そんな奴の為に命を張る必要はない」

「大丈夫だ。回復のポーションで、すでに体力も満ちている。充分戦えるさ。それにだ、日本チームに助けられた恩に報わないとな。お前との、昔の約束は忘れていない」

 ホンさんは、自分の胸をこぶしで叩いた。それに、『怨みに報ゆるに徳を以てす』、それが彼らの信条だそうだ。

「分かった!一緒に戦おう。ホン、お前の力を貸してくれ」

 そう言うと大熊さんも自分の胸をこぶしで叩く。

「よーし!お前ら、準備はいいか!気合を入れろ!」
「うおおおぉぉぉ!」

 皆が士気を高め鼓舞する為に一斉に鬨の声を上げ、忽ちにゲートへと駆けだした。
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