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第2章:ダンジョン攻略編(女神ダンジョン)

第69話 ジャイアントキリング後編

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 飛び込んで行った先、そこには広大な世界が広がっていた。

 しかし、それはダンジョンが作り出した仮想空間であり、それはバーチャル・リアリティ、所謂『仮想現実』なのだ。

 『仮想現実』ではあるが、そこで暴れている巨大な怪物『ベヒモス』は、確実に実体があり、巨大な二本の牙を振り上げて、雄たけびを上げている。
 
 それにだ、ここは『運命《さだめ》のダンジョン』であり、リビングデッドのダンジョンでもあるのだ。

 やはり、そいつはゾンビってた。ゾンビであるという事は、こちらがどんなに攻撃を与えようが、痛みを感じないためにグイグイと攻めてくる、相当に難儀な敵だ。

 やっぱり、「腐ってやがる。くさ過ぎなんだ。

 転移して来た僕たちに気付いたのか、その巨体で足踏みをしだし、こちらに向かって突進する準備を始めた。その足踏みは大地を揺らし、地響きで立っているのが困難になってしまうほどだ。

 盾持ちのタンク職が<挑発>を放った事で、怪物の気がそちらに向き、腐った肉片をまき散らしながら大盾に向かって突撃してくる。その巨体から辛うじて逃げるも、そこに咆哮が放たれ、前衛の攻撃陣が吹き飛ばされてしまった。

 しかしすかさず魔法と弓担当が一斉に攻撃を与えて、一時足止めに成功したところで、大熊さんが、大きな声で皆に指示をだした。

「打合せた通りに先鋒で出る者が、とりあえず10分戦うぞ。次鋒はその戦闘をよーく観察して置いてくれ。それと前衛は後衛には敵の咆哮が飛ばないように誘導しろ!」

「ラジャ!」

「蓮、あいつの弱点の魔力の付与を頼むぞ」

「了解!」

「中堅以降の手が空いている奴は、吹っ飛ばされた合同チームのシーカーを回収しておいてくれ。治療できればよろしく」

「よーし、最初から全力で行くぞ!気を抜くな!」

 そうして、巨大怪獣『ベヒモスゾンビ』との戦闘が開始された。


 ◇◇◇


 蓮が出してくれた武器はかなりの性能だった。盾や斧、両手剣、鎗、弓、全てにおいて、強力であり、また丈夫である。どんな金属で造られているかは知らないが、この地球上にあるものでは無い事だけは分かる。

 あいつが異世界帰りであると言う事を聞いて、最初は半信半疑であったが、奴の戦い方や有能なスキル、それに出してくれた武器たちは俺たちを驚愕させ、信じるに値するものだった。

 この武器は彼が転移した場所で知り合った有名な鍛冶職人の作品で、収納スキルがある事で、万が一の時に使えと大量に渡していてくれたものだそうだ。

 その中から自分にあった武器を選ぶ。俺が選んだ武器は剣斧と盾だ。大きさや見た目と違って、意外に軽く手に馴染む。まるでハンターにでもなった気分だ。

 その剣斧に蓮から浄化と氷の付加をして貰い、その力でドンドン攻撃を入れる。二極のバフが面白いほど敵にダメージを与えているようで、手ごたえが半端ない。こんな感覚は初めてだ。今までに感じていなかったほど、楽しい!

 その上、配られた万能ポーションは、傷の治りも早く、また疲れ知らずだ。

 他の奴らも同じようで、彼らの顔からは笑みがこぼれていたりする。戦いが楽しくて仕方ないようなのだ。

 そんな状態で戦いは続いて行く。そしてローテーションを数回か回し、小一時間ほど戦った所で怪物は前足の膝を突き、その後しばらくして、その巨体は横倒しになり、粒子となり消えていった。

 この『運命《さだめ》のダンジョン』のダンジョンボスとの戦闘は、俺たちハンター、もとい、シーカー達の勝利で幕を閉じたのだった。

 そして、周りを見渡すと、踏みつけられ、踏み荒らされた草木に、穴の開いた大地、疲れからか座り込んだり、大の字で寝転がってる者達が見える。兵者《つわもの》どもの夢の跡だ。

 だが、そこに蓮の姿はない。無事、あっちに行けたんだと、俺のミッションクリアだなと、少しホッとした。

 よーし、俺もミッションコンプリー……。

「おい!クマさん、アレ、アレ何やっているんだ!」

 指差された方向を見たとたん、俺は慌ててしまった。瀕死だったはずの助け出された合同チームの奴らが、ボスが倒されて剥き出しになったダンジョンコアに飛び掛かって、今にも破壊しようとしているではないか。

 そして、それを必死で阻止しようとしてるのはホンだ。ホンが必死になり飛び掛かっていた。
「お前たちは、なんでいつも恩を仇で返す!」

 そう怒鳴りながらのホンが合同チームの奴らを殴っているが、時すでに遅し。ダンジョンコアは真っ二つに割られてしまったのだ。

 そして、このダンジョンに警告音が響き、鳴り響く警告音と共に退出を促す。

 なんてこった、あれほど蓮と約束した事が、ここで無になってしまったではないか。

「すまない……」

 俺は宙を睨んで、今は何処にいるかは分からない蓮に向かってそう告げたのだった。

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