冴えないリーマンがイケメン社長に狙われて腹と尻がヤバイ

鳳梨

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第2章.エスカレートしてません!?

1.部下の前で【★】

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「神河さん、最近何か良いことありました?」
「へっ!?」

 激動の夜から数日。昼休憩の入り際でそんなことを言われて思わず声が裏返った。
 見れば、今年の新入社員が真面目な顔を向けている。
 林田はやしだ千明ちあき君。24歳の小柄な青年で、細縁の眼鏡がよく似合う優等生タイプ。性格は几帳面で生真面目、知識も豊富で論理的。正直営業より開発の方が向いている気がするが本人がこの部署を熱望したらしい。
 風貌からして神経質そうだが若干童顔ながらキレのある眼差しは女性人気があるらしい。俺が社長の相談役になるまで指導担当をしていたのだが、交代後も上手くやっていると今のメンターから話は聞いている。

「……まぁ、ちょっとね」
「恋人でもできましたか? 何だか機嫌が良いように見えます」
「……林田君がそんなこと言う人だって思わなかったな」

 社長と身体を重ねて告白しましたなんて正直に言えるわけもない。
 そもそも相談役になったことだって営業部で知っているのは俺と部長だけだ。だが林田の視点からすれば、理由を明確に告げられずに指導担当が変更になった形だから訝しんでもおかしくはない。
 本来ならもっと冗談めいた口調で話されるであろう話題なのに尋問の雰囲気が漂っているのは恐らくそのせいだろう。

「俺が仮に浮かれてたとしても、仕事に影響は出してないと思うけどな?」
「……はい、そうですね」

 緩く笑いつつもこれ以上踏み込むなと暗に牽制する。確かに相談役となって以降、社長からの連絡に一喜一憂していた節はあれど、それで他人からとやかく言われるようなことはしていないはずだ。
 頭の良い彼はそれを理解している。ただほんの少しだけ不貞腐れたように、ついと視線を外すと追及をやめた。

「すみません、差し出がましいことを言って」
「いやいいんだよ。午後も頑張ろうな」

 そう言って肩を軽く叩くと、眼は合わせないまま「失礼します」と会釈して彼はその場を立ち去った。それを眼で追うと同期や先輩達に囲まれて何やら話している。
 なるほど、噂好きの同僚達から斥候を頼まれたのか。この前まである意味俺の一番近くにいたのは林田だからわからない人選ではない。だからって警戒を緩める俺ではないが。
 これだから人間関係は面倒臭い。デスクで持参した弁当を開けながら俺は小さく溜息をついた。
 確かに心理的には俺は浮かれていた。誰かと身も心も繋がり合う幸福を知った。だが冷静に考えれば男同士での恋愛やセックスなんて、他者に知られれば高確率で気持ち悪いと思われるだろう。寧ろそれだけで済めば良い方で、俺はここに居辛くなったらまた転職すればいいが、社長の方は親会社まで巻き込むスキャンダルになりかねない。
 もしも俺が社長を受け入れず、レイプされたと喧伝したら終わりだったのに。今思えば社長は全てを擲つ覚悟だったと思うと、嬉しいような烏滸がましいような、何とも言えない幸福感とプレッシャーが綯交ぜになって心を乱す。

……グギュ~……グルルル……
「……っ!」

 そんな心理もあってのことなのだろうか、それとも手荒な行為の後遺症か。
 隠してはいたが、俺は浮かれているのとは別に仕事への影響が出ている部分があった。
 昼休みも終わって数時間、外回りしている者も多い営業部のオフィスには半分程しか人がいない。それをいいことに、俺は自分のデスクに座りながらそっと腹を摩る。
 これまでずっと健康にやってきたのだが、あの夜から消化器が弱っているらしい。食事して暫く経つと腹痛が起こり、時には下すようになっていた。
 せめてこの資料は完成させたいとキーボードに手を置くも、腹の唸りはどんどん大きくなり腸が蠢いているのが自分でもわかる。
 このまま治まることもあるのだが今日は無理そうだ。遂には一気に尻への圧が高まるのを感じて俺は席を立った。
 幸い部屋を出てすぐの廊下にトイレがある。他に誰もいないことを横目で確認しながら早足で個室に入ると、服を下ろして便座に座った。もう二度と漏らしたくはない。

……ブリュッ、モリュモリュモリュ……ドポンッ!
「~~ッ!」

 尻を緩めるとすぐに柔らかで辛うじて形を保っているバナナ状の便が出て来る。それが水に落ちる大きな音が響いて思わず顔を赤らめた。
 慌てて後から水流音の流れるボタンを押す。男の場合個室を使っている時点で大とわかってしまうし所定の場所で生理現象を解決することの何が恥ずかしいのかとこれまでの俺は使ってなかった。だがあの夜以来、特に下痢をするのを知られたくなくて使用するようにしていた。
 鈍い腹の痛みと共に軟便が幾つも落ちて行く。これぐらいならまだマシだろう、徐々に治っていると思いたい。

ムリュリュ……ブッ、ブーッ!
「……ッ!」

 これで出し切ったと油断したのもあり、規定時間が経った流水音がフェードアウトした後に盛大にガスを出してしまった。充満する悪臭と音に再度顔を赤らめながら尻を拭いて水を流す。その最中にチラリと見えた排泄物は黄土色の不健康そうなものだった。
 次に社長に誘われるまでに体調を整えなければと思いながら身支度をして外に出る。とにかくこれでひとまずは安心だ、仕事に戻れる。
 そのはずだった。

「あっ……!」
「えっ……あ、お、お疲れ様……」

 丁度小便を終えて手を洗いに行く林田と目が合ってしまった。直後に眼を逸らしたその表情と動きに俺は直感する。
 聞かれた。いつから彼がいたかはわからないが、恐らくあのオナラは確実に耳に入ったろう。その前の流水音では消えない水音も知られたかもしれない。心臓が早鐘を打つ。
 だが動揺を見せていたのは彼も同じだった。幾ら優等生でもこんな場面に遭遇した時どうすればいいかはわからないのだろう。気まずそうにやたらと長く手を洗っている。

「あ、あの……大丈夫、ですか……?」
「ああ、もう……——ッ!」
グギュゥゥゥゴロギュルルル!

 そうやって気遣ってくれる時点でバレているのは確定。後は俺も何食わぬ顔で手を洗って戻ればいい、はずだった。
 だが突然腹痛が激しさを増すと、第三者にも聞こえる程の大きな蠕動音と共に急激に熱い物が尻へと殺到した。

「ちょ、すまん……!」
「神河さん!?」
ゴロゴロゴロゴロッ! ブッ、ブジューーーッ!!

 恥も外聞も無く腹と尻を手で押さえると再び個室に飛び込んだ。完全に催して切羽詰まっているとわかる体勢だが繕う余裕は無い。
 ドアの鍵を閉める時間すら惜しんでスラックスとパンツを下ろすと、中腰の姿勢で弱った尻が決壊する。汚らしい音と共に噴き出した軟便が便座の後部を汚した。

「はっぁ……んっ……あぁっ……!」
ブビューッブビビッブジュジュジュ……ドポポポポ!
ビチビチビチ、ブリュリュリュ!

 何とか便座に腰を下ろしてドアの鍵を閉め流水音を流す。だがそんなものではガス混じりの汚い排泄音をかき消すことはできない。酷く緩く、大量に下していると誰が聞いてもわかる音だった。
 幸い姿は見えないはずだが、俺がどんなに情けない姿でいるかは簡単に想像できるだろう。彼はああ見えて俺が指導担当をしていた頃、俺に尊敬を抱いているような素振りを見せていたのに、きっと失望したに違いない。
 それ以上に恥ずべきは、俺がそんな無様な恥辱を感じながら、完全に勃起していることだった。
 嘘だろ、と思っても身体は正直だ。駄目だ、ここは会社なんだからと邪念を振り払おうとしても泥状の便を噴き出す程に欲求は募っていく。
 少しだけ。1回抜くだけ、許してほしい。
 俺は我慢できずに硬くなった竿を手で握り込んだ。仮に下痢が治まったとしてもこのままでは仕事には戻れない。必死で心の中で誰かに言い訳し続けるが、熱い物を尻から垂れ流す感覚も確かに快楽の一助になってしまっているのは先日の行為のせいだろう。
 排泄で性的に興奮するようになったらどうしよう。そんな恐れていた事態が起きてしまっていた。

「……神河さん?」
「っ、はいっ!?」
「その……大丈夫、ですか……?」

 外から控えめなノックがされた時、心臓が口から飛び出るかと思った。
 心優しい部下はまだその場に残っていた。恐らく俺が酷い下痢をしているのを心配しているのだろう。小康状態となったタイミングを見て声を掛けてくれたのだ。
 だが尻穴は未だ断続的に中身を垂れ流しているし、前を扱く手が止まらない。
 全部聞かれている。汚い物を吐き出す音を聞かれて、それに興奮して勃起し先走りを垂れ流し、それを捏ねくり回す音までもさせている。流水音が消えればそれは顕著になるがやめられない。臭いだって外まで届いているだろうに。
 会社のトイレで、部下と扉1枚挟んだだけの状態で散々恥ずかしい音をさせながら下痢をして、オナニーしている。バレたら何を言われるかわからないのに、その禁忌と背徳と恥辱が脳を焼き、今にも達しそうになっていた。
 ヤバイ。これヤバイ、気持ち良すぎる。

ブッ……ブリュ、ビチャビチャ……
「はぁっ……林田君……大丈夫、だから……先に戻ってて……」
「で、でも……」
「俺も……すぐ、いく、から……」
「……わかりました……」

 向こうは純粋に心配してくれているだろうに申し訳無い。けれど昂った身体はもう我慢ができない。せめて話している間ぐらいは出さずにいたいのに締めているつもりの尻はすぐ緩んで汚泥を垂れ流す。
 すまない林田、君が尊敬する男は、下痢の音を聞かれて興奮して、君と話している間も自慰がやめられないぐらい淫乱なんだ。それを明かして絶望する顔も見たいが、それをやったら本当に全てが終わってしまう。
 そうならない為にも渋々ながらも足音が遠ざかるまで待ってから、今まで以上に力みながら激しく手を動かした。

ブビビビーッブチャブチャブチャ……グチュッグチュッ!
「はぁっはぁっ……♡ んっふっ、はぁっ♡ んっ……出るっ……ぁ、ぁあッ♡」
ブシュウッ、ビュルルルルッ!

 腰を振り、大きな声は出さないように喘ぎ、前と後ろ両方から液体を放つ。
 その快感は強烈で一瞬で意識が遠のく。後に残るのは疲労感と、やってしまったという苦い後悔。
 この後林田と顔を合わせるのが恐ろしく気まずいが、下痢だけであればよくある体調不良だ。彼は周囲に言いふらすような性格ではないが後で何か奢ってやってもいい。誠実な対応をすれば何とかなるだろう。
 ようやく腹も含めて全て出たようで、落ち着きを取り戻したところで便座を汚してしまっていたことを思い出す。こちらの掃除もしなくては。
 立ち上がるのも億劫だがまだ仕事も残っている。大丈夫だ、何も支障は無い、何の問題も無い。
 俺の性癖が少々狂っているだけ。それだけ、それも隠し通せばいいと自分に言い聞かせ、俺は全ての後始末を終えてトイレを出た。


 ◆


「……神河……さん……?」

 男は気付かない。
 立ち去ったかに見えた部下が暫しトイレの出口に佇み聞き耳を立てていたことも。排泄にしては妙に艶やかな吐息や呟き、別の水音を聞いていたことも。男が出て来る気配を察すると近くの給湯室に隠れ、オフィスに戻って行くのを盗み見てからトイレに戻ったことも。
 先程まで使用されていた個室は見た目こそ綺麗だが悪臭が未だ残っている。そこに入った部下はドアに寄り掛かり自分の下半身を困惑の面持ちで見下ろした。
 スラックスの股間が内側から持ち上がっている。どうして、何故、相手は同性の先輩だというのに。しかも瞬きの間に過るのは、腹と尻を押さえてトイレに駆け込む情けない姿。だがその後の布を裂くような汚い音が耳を離れず、ここに座って苦悶の表情を浮かべながら下痢を垂れ流す姿もありありと浮かんでしまう。
 指導担当をしていた時は大抵いつも真顔か険しい表情で、だからごく稀に笑顔が見られるとほっとした。担当を外れてからはどこか表情が和らいだ気がするし、スマホを見て微笑む時間が増えた。
 突然の担当変更といい、絶対に何かあった。部下はそれを確信していたが、同時に理解に苦しむ。

 何故今、性的欲求が募っているのか。
 確かに彼のことは尊敬していたし、指導担当を外れた時は自分のせいかとも、見捨てられたとも思った。本人や今の担当者や上長が君に悪い点は何も無い、上からの命令で、別のプロジェクトに携わることになってとか何とか説明をしてくれたぐらいには、他者から見てもショックを受けた風だったらしい。
 それはそれで仕方がないことだし、直接訊いてみた雰囲気ではプライベートにも関わるようだ。ならば他人が踏み込むことではない。
 なのに何故こんなにも胸が苦しくて下半身が熱いのか。
 あんなにも弱った上司を見たのは初めてで、漏れ聞こえた吐息は彼のものとは信じがたいもので——

 ——いけない。これ以上はいけない。
 同じ部署の上司と部下、先輩と後輩。今の立場はそれでしかないのだから、これ以上踏み込んではいけない。
 きっと今滾っている性欲は衝撃的なシーンに出くわしてしまったが故の誤反応で、汚物やその類に興奮する性癖は持っていない。体調不良が続いているのならそれは人として気遣うべきで、それ以上でも以下でもない。
 もちろん会社で自慰に及ぶなど以ての外だ。それに三十路の男より可愛くて胸の大きな女の子の方が良いに決まっている。
 何度も自分にそう言い聞かせれば身も心も落ち着いてくる。
 そう、何も見ていないし聞かなかった。今日のことは忘れよう。
 仕事をこなす、それだけを考えていればいい。

 故に男は気付かない。部下本人も気付かない。
 誰かの何かが変わったことに、誰もが見て見ぬ振りをした。
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