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1.初めての夜、始まりの夜

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「ああっ……あっあっ♡」
 ドチュッドチュッバチュッ!

 血生臭い夜に嬌声と水音が響く。
 私の中に極太の肉棒が出し入れされ、接合部では白濁液と愛液の混ざった物が泡を立てる。鼠蹊部やお尻の双丘に深い毛が当たって擽ったい。
 分厚く長い舌が露わになった私の乳房や乳首を舐め上げる。それだけで私の身体はビクビクと震え、引っ掻き傷の沢山付いた肌に熱い鼻息が掛かる。
 見下ろすその口には鋭い牙が幾つも並び、黒い塊が私の上で腰を振っている。
 私は毛むくじゃらの異形、狼の魔物に犯されていた。

「あっ♡ あうう♡ ひあっ♡」

 魔狼の舌が私の乳首をなめ回す度、私は身体を震わせた。その牙が触れる程度に軽く私の乳首を齧っただけで私は甘い快感に打ち震えた。
 彼の大きく硬い肉棒が私の身体を貫き、そのピストンが激しくなるにつれて私は大きな喘ぎ声を漏らした。
 私はいつしか激しいピストンに合わせて腰を動かし、淫らな音を立てていた。私は彼の肉棒を受け入れ、彼の快楽に従い、私の中の愛液が彼の肉棒を潤滑にし、より深い愉悦を呼び起こした。私は目を閉じ、彼の行為に身を任せた。
 本当はこんな繋がり、あってはいけない。
 それなのに私の体は熱く、汗ばんでいた。私は魔狼に犯され、彼の荒々しい動きに身体を揺さぶられ、それに悦んでいた。

「ああっ、あっ……ひあああっ♡」

 魔狼が私を突きまくる度に、私の中に熱いものが注がれていくような感覚があった。私は魔狼の動きに合わせて身体を反らせ、深い快感に浸っていた。
 そして魔狼が私の中で果てた瞬間、私はその熱い物が私の中で爆発的に広がっていくのを感じた。私は声を上げながら激しい快楽に身を任せた。
 私のお腹の中も頭の中も真っ白に染め上がった。


 ◆


 私の名前はルナという。それはそれは月の綺麗な晩に生まれたらしい。
 私は狼の耳と尻尾を持つ獣人だ。髪も毛並みも銀色で、瞳は深い湖のような青色をしている。本当は美人だと言われたいのだが、会う人は皆可愛いと言うので成人済みなのに子供っぽい顔立ちなのかもしれない。

「やぁルナちゃん、干し肉ができあがったよ」
「ありがとうおじさん。こっちもカボチャが採れたから、後で持って行くね」

 森の中にある小さな村が私の故郷だ。私の両親は高い戦闘能力を持っていたが、私はそれを継承できなかった。私は誰かを攻撃するということができない。小さな野兎や鶏を捌くことすらできず、村の人がそんなことをしている場面に出くわすと眼を覆って逃げた。
 両親はそんな私に対して悲しむでもなく「ルナは優しい子だね」と言って頭を撫でてくれた。けれど私が子供の頃に父は魔物の討伐に行って命を失い、私が成人する頃に母も病で亡くなった。
 私は悲しかったけれど、村の人達に助けられて生活することができた。この村は小さいので皆助け合いの精神が育まれている。
 私も小さいながらに家の裏に畑を持っていて、そこで育てた野菜の一部を村人達と物々交換したり、時々やって来る行商人に売ったりして生活していた。畑には私が育てた野菜の他にも、木の実や果物がたくさん生えている。
 私は毎日、太陽が昇る前に起きて、夜が訪れる前には家に戻るようにしていた。生活は質素だが、平和で温かなものだった

 その日も、普段と変わらぬ静かな夕闇が村を包んでいた。
 私は野菜の収穫を終え、夕食の準備をしていた。すると遠くで狼の遠吠えが聞こえ始めた。最初は遠くの森で狩りをしている狼達の声かと思ったが、徐々にその声は近付いて来るようだった。

「ぎゃああああっ!」

 突然、誰かの悲鳴が聞こえた。
 何事かと窓の外を見ると、真っ赤な目をした大型の狼達が村に入ってきていた。彼らは逃げ惑う村人に襲い掛かり、村は混乱に陥った。
 黒い毛皮に不気味に光る目。あれは魔狼と言われる魔物の一種だ。彼らは普通の狼より二回りは大きく、とても凶暴だが頭が良い。時折二足歩行をしたり簡単な道具を使うこともでき、罠にも掛からないという。
 普段は森の奥で暮らしているが獲物が減ると人里を襲うこともある、と昔父が教えてくれた。この近くにはいないと思っていたが何処かから流れてきたのだろうか。

「こ、こいつめ! さっさと出て行け!」
「来るな、こっちに来るんじゃな……うわあああっ!」

 村の男達が農具を手に立ち向かったが、魔狼は鋭い牙と爪で彼らを簡単に倒し、私は思わず目を瞑った。だが魔狼達が肉や骨を貪る音が聞こえ、新鮮な血の臭いが微風に乗って漂って来た。
 また別の方向では親身になって話してくれるおばさんが子供を連れて逃げようとしたが複数の魔狼に襲い掛かられた。私は足の力が抜け、立っていられずその場にへたり込んだ。しかし至る所で起こる悲鳴は聞こえ続け、自分の命も危険な状況にあることを痛感した。
 窓を閉めなければ。私が顔を上げた瞬間だった。

「ひっ……!」
ジョロロロロ……

 窓枠に1匹の魔狼が飛び乗り、こちらを見ていた。悲鳴を上げることすらできなかった。
 私は身動ぐこともできず、ただ自分の股間が温かく濡れていくのを感じた。スカートの下に水溜りが広がっていくがどうすることもできない。
 魔狼は私に飛びかかり、床に押し倒した。その瞬間、私の心臓は激しく高鳴り始めた。私の身体が魔狼の重みで潰れそうになる中、その爪が私の服を一瞬で引き裂き、私の肌に触れた。

「いやぁっ!」
「グルルルル……」

 殺される。
 私はそう思って眼を固く瞑り、襲い来るであろう痛みに身構えた。
 だが私の露出した胸や腹に触れたのは鋭い爪や牙ではなく、温かく湿ったものだった。恐る恐る眼を開けると、それは魔狼の舌だった。
 魔狼は私を食べることはなかった。代わりに、私の全身を舐め回すように舐め回した。身体がくすぐったくなり、私は不快感に襲われて思わず身体をよじらせた。
 何故こんなことをされているのかわからない。いっそ早く喉笛に噛み付いて終わらせてほしい。それか、これは隙なのだろうか。
 私は意を決して自分の身体を守る為に必死で抵抗しようとした。だが魔狼の力は私には遥かに勝っており、その前足で押さえ付けられるだけで私の身体は思うように動かせなかった。恐怖に震える中、私はその舌の動きと鼻息がますます激しくなっていくのを感じた。魔狼は私に対して、何らかの欲望を持っていたように感じられた。

「っ……!」

 そして私は気付いてしまった。魔狼の股間に堂々と隆起した物が見えた。
 同時にその舌先が敏感な箇所を探り当てる度に、私の身体は震え上がった。次第に私はその行為が何を意味するのか確信を持つざるを得なかった。私の胸や腹、そして失禁したにも関わらず股間を執拗に舐め回す魔狼の様子を見て、その目的が性的なものであることに気づいたのだ。
 そんなことあり得ない。私は必死に否定したが、私の身体はおかしくなってしまったようだった。魔狼の舌が触れる場所がピリピリとして、不思議な感覚が全身を貫く。
 それは快楽だった。

「いや……いや……」
ピチャッピチャッ……チュプッ……

 魔狼の舌が私の陰唇を掻き分け、私は初めて感じた快感に身体が震えた。獣の荒々しい動きにもかかわらず、その舌の動きはしなやかで、私の感じ方を熟知しているかのようだった。愛液がぬるぬると溢れ、私は身体をくねらせた。
 魔狼は私の愛液に興奮を募らせ、ますます激しく舐め回した。私は魔狼の強靭な肉体に押し潰されるように感じたが、同時にそれが私に快感をもたらすことを認識した。恐怖と快楽が絡み合い、私は自分自身を抑えられなくなった。
 こんなことあり得ない。あってはいけない。何かの間違いだ。
 そう思い込みたいのに、私の吐息は熱くなった。

「やめて……」
グチュッグチュッ……!

 魔狼は私の股間や下腹部に猛った肉棒を擦り付け始めた。私は人間や獣人のそれを見たことは無いけれど、どう考えてもそれよりは太く長い物だった。もしもそれが中に入ったら腹のどこまで届くかを想像してしまい、私は首を横に振った。
 だが魔狼の肉棒が私の股間に擦りつけられる度、陰核を擦り上げられてビリビリとした快感が奔り、愛液が大量に滴り落ちた。私は身体中が火照り、胸が高鳴っていた。
 それでも私は抵抗し続けた。私は処女だった。初めてがこんなけだものだなんて嫌だった。
 しかし魔狼はそれを無視して私の中に侵入しようとする。どんなに悲鳴を上げても助けなど来なかった。身体をよじらせて拒んだが、魔狼は私をしっかりと抑え込んだ。

「いやぁぁああっ!」
ジュプッ!

 そして魔狼の肉棒が私の中に入った瞬間、激しい痛みが走り、私は叫び声をあげた。しかし魔狼はそれに全く反応しなかった。魔狼の肉棒は私の中で大きく膨らんでいた。その大きさに私は驚き、恐怖を感じた。

「痛い……や、やめて……!」
ジュプッ……グチュッ、グチュッ……!

 当然のように魔狼は私の声には耳を貸さず、寧ろ私を更に激しく突き上げるように腰を動かし始めた。結合部には赤が滲んでいた。私は身体をよじらせ、痛みに耐えていると次第に別の感覚が襲ってくるのを感じた。

「あっ……あぁ……!」
ドチュッ! ドチュッ! ブチュッ!

 私の中に突き刺さった魔狼の肉棒が腰を振られる度に私の中をゆっくりと拡張していく感覚があった。初めは痛みと共に絶望と恐怖が支配していたが、それでも魔狼の動きは止まらない。肉棒が私の中で暴れ回る度に、私は耐え難い痛みとともに感じる快感に身体を震わせた。
 信じられなかった。
 こんな化け物に犯されていて、怖くて絶望しているのに、私の身体は悦んでいた。どうしてなのかわからない。魔狼が私を犯すことに抵抗しながらも、身体はその快感に従順になっていった。
 魔狼の肉棒が膨らみ、私の中で熱い液体が吐かれた。もう出されてしまったのかと思ったが、魔狼はまだ激しく腰を振っていた。接合部から漏れた液体が泡を立て、いやらしい水音が部屋に響く。
 こんなの駄目なのに。私は身体が熱くて堪らなかった。
 魔狼の腰の動きに合わせて私もおずおずと腰を揺らすと、より深い快楽が響いた。私は恥ずかしさと快感に打ち震え、魔狼に犯されることに完全に身を任せた。

「ああっ、うそ、何これ……っ♡」
グチッグチッ……ビクビクビクッ!

 そして、私は初めての絶頂を迎えた。全身が震えて頭の中が真っ白になる。夜、ベッドで1人自分の胸や秘所に触れることはあっても、こんなにも強い快楽を得たことはなかった。
 その間に魔狼は瘤の付いた根元まで巨根を押し込んだ。入口から奥までみっちりと詰まり、苦しくて堪らない。なのに私のお腹の中はキュンキュンと疼いていた。
 魔狼は私の中で一瞬硬直した後、熱い白濁液を私の中に注ぎ込んだ。私はその瞬間、再び激しい快感に襲われて悶えた。

「出てる……いっぱい出てる……♡」
ビュルルルル! ビューッビューッ!

 しかも濃厚な白濁液は数分間注がれ続けた。魔狼の熱い白濁液が私の中に注がれる度に、私は身体がより一層燃え上がるのを感じた。まるで火が付いたように快楽に溺れていた。
 同時に現実が私の脳裏に浮かんできた。獣に犯され、種付けされてしまった。背徳感、絶望感、恐怖感が襲ってきた。
 だが、それでも身体は止まらなかった。魔狼の肉棒が私の中で脈動し、白濁液が流れ出てくるのを感じる度に、身体は快楽で震えていた。

「ああ……んんっ、はぁっ……♡」
ビュッビューッ! ビュルルルル!

 私はただ喘いだ。言葉にならない快感に、身体が痙攣していく。魔狼も私の反応を見て、更なる快楽を求めて腰を奥へと擦り付けた。
 根元の瘤が入口付近の敏感な部分を潰し、魔狼の鼠蹊部の毛がチクチクと陰核を刺激する。それらによって再び絶頂が訪れた時、私は完全に自制を失っていた。獣の肉棒に突き上げられ、私の中からも潮吹きが起こり、身体が大きく震えた。同時に、魔狼も私の中で勢い良く白濁液を発射し、私は最後の一滴まで注がれるのを感じた。

「んっ、あああぁぁっ♡」
グチュッグチュッ……ビクビクビクッ!

 魔狼が最後に果てた後、私は疲れ果ててぐったりしていた。肉棒が引き抜かれると、一気に私の中から白濁液が流れ出した。気持ち悪さと深い満足感が入り混じって私を襲った。
 魔狼はやることをやって興味を失ったのか私から離れたが、私は起き上がることもできずそのまま床に寝そべっていた。息が切れて身体中が汗だくだった。
 私の股間に流れる液体は臭く不快だったが、魔狼の肉棒が私の中に入っていたことを思い出し、背徳的な快感に襲われた。

「なんてこと……してしまったの……」

 私は呟いたが、ふと窓の方に視線をやって驚愕した。いつの間にかそこには別の魔狼が現れていた。
 私は咄嗟に逃げようとしたが身体が上手く動かなかった。さっきまで私を犯していた魔狼が勝手口のドアを一瞥すると、閂を掛けるだけの単純な鍵など口で咥えて外してしまった。そして新たに現れた1匹と共に私の周りに僅かに残った服を咥えて引っ張った。
 畑に連れ出された私は土だらけになるのも厭わず四つん這いで地面を進むしかなかった。だが逃げられる訳も無く、私の周囲には他の魔狼が集まっていた。中には鮮血に口元を染めているものもいる。恐怖と絶望に襲われた私は、声を上げて叫んだ。

「やめてぇ……!」

 しかし魔狼達を止めることはできなかった。魔狼達は次々に私に近づいてきて、私の身体を舐め回した。唸り声と鼻息が周囲からして恐ろしさに身が震える。
 そして私の背後から2匹目の魔狼がのしかかってきて、まさしく獣のような姿勢で肉棒を挿入した。既に白濁液塗れの私の蜜壺はすんなりそれを受け入れてしまった。
 私は自分がどれだけ獣達に陵辱されているのかを理解できず、ただただ悲鳴をあげ、涙を流していた。獣の肉棒は私の中で動き、私はその度に深い苦痛と快楽を味わった。

「あっ……ああああっ♡」
 ドチュッドチュッバチュッ!

 魔狼が私を犯しながら首の後ろを甘噛みした時、私は獣の本能が目覚めたように感じた。その甘い痛みが私の身体に快感を与え、脳内には何かが溢れ出してくるかのようだった。私は狼達に服従し、その快感に身を任せた。
 1匹が時間を掛けて私の中に精子を吐き、満足して離れるとまたすぐに別の1匹が私を犯した。魔狼達は私の身体を好き放題に扱い、私はそれに抗う術は無かった。彼らの肉棒が私の中を往復する度に、私は絶頂に達していた。そして首の後ろを噛まれる度に、身体が痙攣していくのがわかった。
 私は魔狼達に犯されることで初めて、こんなにも激しい快感があることを知った。獣のような勢いで私を求める彼らの身体、野性的な雄の匂い、荒々しい動き、すべてが私を狂わせるような快感を与えてくれた。そして彼らが私を貪り尽くす様子を見ることで、私は自分自身を見失ってしまった。

「ああっ♡ はぁっ♡ ひあっ♡ ひんっ♡」
パンッパンッグチュッバチュン!

 私は獣のように腰を振り、喘ぎ声をあげながら魔狼達に貪り尽くされた。彼らが私を甘噛みする度に快感は更に増幅し、私の中の獣欲が燃え上がった。私は自分自身がこんなにも本能的な快楽を求めていることに驚いたが、止められなかった。
 そして最後の魔狼が私に中出しした瞬間、私は絶頂に達した。全身が痺れ、息が止まるかと思うほどの快感に襲われた。私は自分が彼らに貪り尽くされることでしか快楽を得られない存在になってしまったのかもしれない。恐怖と背徳感を覚えたが、どうすることもできなかった。
 それでも私は、魔狼達に犯され続けることを求めていた。彼らにとって私はただの餌食に過ぎないかもしれないが、私にとっては彼らが与えてくれる快楽こそが全てだった。
 もっと欲しいのに。
 去って行く魔狼達の後ろ姿を見ながら私は意識を失った。


 ◆


 朝日が私の顔に当たり、ゆっくりと目を開けた私は目の前に広がる風景に戸惑った。畑に横たわっていた私は、全身が痛くて身動きが取れなかった。意識が朦朧としている中で、夜に何があったのか、そして自分が魔狼達に犯されたことを思い出し震えが止まらなかった。
 私は力無く手を伸ばして自分の体を確かめると、至る所にある引っ掻き傷から薄く出血していた。股間からはぼたぼたと白濁液が流れ落ちている。ほとんど破れて役目を果たしていない服や肌は土に汚れ、自分がいかに凄惨な目に遭っていたかを痛感した。
 私が魔狼達との肉体関係に飲み込まれた痕跡は身体の至る所に残っていた。今はもう快楽の熱は引き、代わりになんて悍ましいことをしてしまったのかという後悔と恐怖が襲った。私は、何が起きたのか、どうすればいいのか、頭が混乱していた。
 目の前には、魔狼に踏み荒らされた畑が広がっていた。柔らかな土に残った大きな足跡を見ると魔狼達の獰猛な姿が思い出され、不安でいっぱいになった。
 それでも私は必死で立ち上がり、家へと戻ろうとした。すると被害の見回りをしていたらしい村人達が私を見付けた。

「ルナ! 生きていたんだね! 良かった、大丈夫か!?」
「だがその姿は……」
「い、いや、見ないで……!」

 彼らが絶句するのも無理は無い。私は明らかに獣にレイプされたとわかる姿をしていたのだから。私はその場で縮こまると、彼らは女性を呼びに向かった。
 近所に住むおばさんが私を毛布で包み、風呂や着替えの用意をしてくれた。おばさんの夫と子供達は皆魔狼に食われてしまったと言い、風呂上がりの私を抱き締めた。

「ルナ、あなたは生きていてくれてよかった」

 おばさんにつられて私は涙が溢れた。魔狼に犯されて悦んでしまった自分が情けなくて申し訳無かった。私は自分がそんなことをしたという現実を受け入れることができなかった。
 私が身を清めて軽い食事を摂り、疲労のあまりベッドで軽く休んでいるともう夕方近くになっていた。家のドアがノックされ、開けるとそこには疲労困憊の表情をした村長が立っていた。

「我々は多くの人手を失った。もうこの村を放棄しようと思う」

 私は昨晩の惨状を思い出した。元々人の少ない村だ、働き手を失ったら存続はできない。故郷を離れるのが寂しくはあったが、仕方無いと私は頷いた。
 だが次に告げられた言葉に私は驚愕した。

「ルナ、申し訳無いがお前さんは連れて行けない。お前さんはその……魔狼に気に入られた。お前さんを追って魔狼がまた現れるかもしれない」

 私は目の前が真っ暗になったような気がした。
 遠回しではあったが、私が魔狼と遭遇したにも関わらず食われることなく、犯されたことを指していることは察しられた。確かに風呂に入ってどんなに身体を洗ってもまだ獣の臭いがしているような気がした。魔狼は鼻が良いから臭いを辿って私を追跡することもできるだろう。
 私は俯いた。とても悲しかったが、涙するおばさんを思い出した。辛うじて生き残った人や新天地の人々を更なる危険な目には遭わせたくない。その気持ちは村長も私も同じだった。
 この森の中の村にたった1人で残ることが実際は何を指すか、私にもわかっていた。でも私はそれでいいと思った。

「わかってくれるか、ルナ」
「ええ、構わないわ。これまでどうもありがとう」
「……すまない……本当にすまない……俺は村長なのに、何も守れず……」
「泣かないで村長さん。貴方が泣いたら皆が困ってしまうわ」

 彼も辛い立場だったのだろう、目頭を押さえる様子に私も鼻の奥がツーンとしたが笑って送り出した。
 村人達は最後の餞別として残っていた食べ物や道具などを私に譲ってくれた。おばさんは私を抱き締めて謝りながら泣いていたが、他の村人の中には私のことを睨んだり、嘲笑したり、陰口を叩く者もいた。村の仇である魔物の手籠めになったのだから憎悪されても仕方が無いと思ったが、悲しさは拭い切れなかった。それでも私はこれまで共存してくれた人々にお礼を言い、別れを告げた。
 私はこれから1人きりで生きていかねばならなかった。

 寂しさに胸が潰れそうになる中、また夜がやって来る。
 私が家で貰った物を片付けていると、遠くで狼の遠吠えが聞こえ始めた。私は身構えて静かに耳を澄ませた。
 私は恐怖に震えていた。村人達が去ってしまった今、私には本当に頼れる人が1人もいなかった。魔狼たちが再び私を襲ってくるかもしれない、今度こそ食べるつもりなのかもしれないという不安が頭をよぎった。
 同時に、下腹部に疼きを感じた。腹の奥に残っていた魔狼達の粘液は洗い切れず、1日経ってようやく垂れ落ちて来た感覚があった。その部分に触れたい。大きな物を咥えたい。私は身体がその快楽を求めていることに気づいた。自分自身の反応に自己嫌悪を感じながらも、私はその疼きを抑えることができなかった。
 私は、そっとドアの方へと歩んだ。

 
〈続く〉
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