君がすべてを教えてくれた。

美桜

文字の大きさ
上 下
5 / 23
春 ー出会いー

期待と恐怖

しおりを挟む
昨日までは半日授業であったが、今日は本格的に授業が始まる。
いつもだったら行きたくないなと思う瑠奈だけれど、今日はなぜか違った。足が軽く、いつもよりも早めに家を出た。
瑠奈は、いつもの道を歩くときは特に、何度も後ろを振り返っていた。


瑠奈:何を…期待してたんだろ…


そう思いながら、学校に着き靴を履き替え、教室に入ると、数人がもうグループを作って和気あいあいと話していた。瑠奈は、足が震えていた。教室に入れずにいた時、後ろから誰かが肩をたたいた。


瑠奈:っ…!!!!

新藤:うわっ!ごめん!そんなにびっくりした??

瑠奈:あ、先生……すいません…少し驚いちゃって

新藤:ごめんごめん(笑)中々教室に入らないからどうしたのかと思ってさ

瑠奈:……ちょっと…入りづらくて…(笑)

新藤:……あの友達は?まだ来てない?

瑠奈:そう…みたいです…

新藤:…丁度よかった!手伝ってほしいことがあってさ、職員室まで来てくれない??

瑠奈:え、あ…私でいいなら…


気づけば瑠奈の足の震えは収まっていた。そのまま瑠奈は新藤先生についていき、職員室に入ると
先生の机の上には、日誌やら教材の本が山積みだった。


新藤:あ……これは…ちょっと準備に戸惑っててさ(笑)

瑠奈:随分…大変そうですね(笑)

新藤:だからさ、これを教室に持って行ってくれないかな?今日の一限目に使うプリント

瑠奈:え、今日の一限目の授業って先生が?

新藤:最初の授業です…(笑)いやーー緊張しててさ!プリント落として授業に間に合わなかったらどうしようとか考えちゃってさ(笑)

瑠奈:先生でもそんなこと考えるんですね(笑)

新藤:俺だって不安に駆られることだってあるよ、じゃあお願いね


新藤から瑠奈は手伝いを頼まれ、再び教室に入る機会が巡ってきた。まだ亜美は来ておらず、不安に思いながらも
頼まれたことを成し遂げるために、瑠奈は一歩教室に足を踏み入れた。いざ入ると、一瞬でクラスの視線が瑠奈へと向いた。どこに視点を合わせたらいいのか、震えをどう抑えたらいいのか分からず、立ちすくんでいた。


クラスメイト:このプリントどうしたの?


下を向いていた瑠奈に一人のクラスメイトが話しかけてきた。


瑠奈:えっと…新藤先生に次に使うプリントだから持っていくように頼まれて…

クラスメイト:えっ!一限目って新藤先生の授業なの!?

瑠奈:…うん、そうみたい…

クラスメイト:やったね!!!じゃあこれ配るの手伝うよ!


新藤先生というフレーズが出てきた途端、女子が慌てるようにプリントを手に取り、次の授業を楽しみにしていた。
さっきまで、瑠奈は言葉も出ない、動けない状態だったのに、気づけば自分の席に座れていた。
瑠奈は思った。あの時、新藤先生が話しかけてくれなかったら、今こうできていただろうかと。
朝の始まりに苦戦していた瑠奈ではあったが、少しずつ、変わる兆しが見えていた。
しおりを挟む

処理中です...