クビから始まる英雄伝説~俺は【雑用】から【社長】へ成り上がる~

瑞沢ゆう

文字の大きさ
21 / 38

21「耐久戦」

しおりを挟む
「さあ、この局面どう乗り切る?」

仲間と戦術について相談。
一人で考えてもしょうがない。

困った時こそ様々な意見を取り入れ、局面に合った選択をしたい。

ただ、こういう時に多数決は最悪を生みやすい。

多数が間違った選択をした時、少数派の意見を出して却下された者の心が大きく離れていくからだ。

「地道に殲滅するっす!」
「マッドが数体釣ってきて、うちが突撃して減らす!」
「サーシャが残こしたモンスターは、私が討ち取ります!」

なるほど、みんな戦う事に関しては全体一致か……。
俺は帰りたかったんですけどね!
もうそんな事言えないよね!

「じゃあ……マッドには、入り口付近の蜘蛛を数体釣って来て貰う」
「了解っす!」

「そこで釣れた蜘蛛をサーシャが突撃して減らす」
「任せろっつうの!」

「討ち漏らした蜘蛛は、俺が盾を鳴らして敵意を集め、その隙にリリエッタが処理」
「頑張ります!」


「その間、もし他の蜘蛛が現れた時に備えサーシャとマッドが警戒態勢を取る。これでどうだ?」

よし、みんな頷いてるな。
とりあえず作戦は決まった。

これこそP《計画》D《行動》C《評価》A《改善》が試されるな。

計画を決め、行動し、それが正しいか評価。

その中で改善する内容があれば、次の計画に改善要項を盛り込んで行動。そして評価して改善のループ。

さて、先ずは行動してみないと始まらない。

「よっしゃ! みんなやるぞ!」

俺の合図で右手を胸に当て背筋を伸ばす仲間達。
何か選択をして行動する時にするポーズだ。

最初に行動する時に、全員が同じポーズをすれば連携が深まるような気がして決めたポーズ。

そうだよ?  前世のアニメに影響されました。
という訳で、蜘蛛軍団とバトルスタートだ!

最初はマッドの出番。

洞窟の細道からホールのような場所へ駆け、入り口付近の蜘蛛数体を釣って来る役だ。

身のこなしが軽く、素早いマッドならではの役。
大丈夫。あいつなら上手くやってくれる筈だ。

そう信じ少し待つと、マッドが血相かいて戻って来る姿が視界に入ってきた。

「つ、つ、連れて来たっすっっ!!」

マッドの直ぐ後ろには、体長1メートル程の蜘蛛4体が、口元の牙をシャキンシャキンと鳴らして、マッドを追いかけている。

うわ~、この役やらなくて良かった~!
やれって言われても絶対拒否だね。

「良くやったマッド!」
「次はうちの番だっつうの!」

マッドがはけると、次はサーシャの出番。
4体の蜘蛛目掛けて突撃をかます。

「疾風薙ぎっっ!!」

スキルを使い槍を高速で薙ぎ払う。

2体の蜘蛛にはクリティカルヒットしたが、残りの2体には素早い動きで避けられてしまった。

「よし! サーシャとマッドは警戒態勢! 後は任せろ!」

盾を鳴らして残った2体の敵意を集める。
1体は俺に向かって突撃。
もう1体は俺の頭上を飛び越えて行ってしまった。

俺に突撃した1体は、蜘蛛の糸を吐き盾に張り付いた。
頭上を越えて行ったもう一体の行く末が気になるが、後ろに気を取られれば前方の蜘蛛に殺られる。

恐らくリリエッタなら問題なく対処してくれるとは思うが、過信は禁物。

安全に戦えるならそれに越した事はない。
ここで俺の新スキル【鷹の目】の出番が来たな。

「イーグルアイ! ……リリエッタ! 蜘蛛の糸を吐こうとしてるから左右に避けてから行動しろ! 糸を出してる隙に回り込んで叩き斬れ!!」

スキルを発動するのに声に出す必要はないのだが、ちょっとかっこつけてみた。

だってみんなやってるもん。
サーシャもやってたもん。

まあ、それは良いとして、俺の新スキル【鷹の目】は、視界を一時的に上空、または上段から見る事が出来る。

それにより客観的な判断が出来、相手の行動に対して冷静に行動または指示する事が可能。

一対一の戦いには不向きだが、多数で入り乱れる戦闘時にはかなり役立つスキルだ。

「了解しました! ――そりゃあっっ!!」

よし、リリエッタが一体を処理してくれた。
最後は俺だな。

相変わらず盾に張り付いている蜘蛛を壁際に押し付けた俺は、盾に空いている隙間から剣を突き出し最後の1体を処理した。

「ふ~、第1フェーズ終了だな……」

油断なく1回目のフェーズを終えた俺達は、改善する所があったか話し合い、次のフェーズへと移行する。

警戒態勢を取るのは、マッド1人で十分だと分かったので、討ち漏らした敵の処理が遅れた場合に備え、サーシャを後詰めにした。

こんな感じで改善をしつつ、その後数時間は蜘蛛退治に明け暮れる事に。

そしてやっと、終わりを迎える。

「もう敵の影は見えないっす! ようやく終わったっす……」
「マジ? やっとおわった~!」
「さすがに堪えましたね……」
「みんなお疲れ様……暫く休憩だ」

戦闘終了の合図でバッタリと倒れる俺達。
今回はさすがに疲れたな……。

まさに耐久戦。
SPは、ほぼ使い切った状態だった。

ここから数時間は休まないとSPは回復しない。
大体、5分で1回復するかな?

1時間で12回復するので、3時間は休憩してSPの回復に努めたい所だ。

「よし、今から3時間ほど休憩する。その間に夕飯を取ろう」

SPの回復に時間がかかるため、2回目の食事を取る事にした。そう言えば、今回の戦闘でみんなのレベルが上がった。

俺は【平社員】15Lv。
マッドは【盗人】10Lv。
サーシャは【鉄砲玉】10Lv。
リリエッタは【影法師】10Lv。

ステータスもそれなりに上昇したので、頑張って戦って良かったと思う。最初に帰りたいと言ったのは、忘れて下さい。

そしてなんと、俺のスキルが更に増えていた!
しかも、初めての攻撃系っぽいスキル。

早く試したい気持ちに駈られたが、そもそもSPを回復しないと試せるものも試せないので、しっかりと休憩します。

「スープ♪ 干し肉♪」
「どうしたんですか? やけに機嫌が良いですね?」
「なんかキモいっす……」
「疲れ過ぎてラリっちゃったんじゃん?」

新しいスキルを獲得して浮かれていると、仲間からドン引きされた。

みんなだって、ちゃんと説明すれば俺の気持ちが分かる筈。新しいゲームを買ったら、早くやりたくなるのが人間の性なのだ。

「うーんとね、実は……」

俺はルンルンで事情を説明しようとした。
だが、その時――

「いやー、助かったよ! お陰で気持ち悪い蜘蛛と対峙しなくて済む。ありがとう! ボンクラさん達!」

そう言って現れたのは、俺の元カノを寝取ったクズ事、イケメン【治療士】だった。

そして、その後ろには4人の女性達。
所謂、ハーレムパーティーという奴だ。

しかもだ、その女性達の中には、ラヴィが居た……。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

寿明結未(旧・うどん五段)
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...