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プロローグ
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俺にとってはこの世界は生き辛い場所だった。
何でも金を要求され、終いには給料は大した金額じゃない。
自由、というのは人間にとって存在がしない空白のようなものだ。
俺は最後の一万円を賭けとして使ったが、これは大ハズレ。
金を増やす手段、というのはやはり存在しない。
だが、真っ当に生きたからと言ってボーナスが貰える訳じゃない。
頑張っても、評価されないなら何をすればいい?
評価ではなく自分で運命を掴もうとする事を神様は認めちゃくれない。
俺の人生にとって、金というものは俺を縛り付ける呪印でしかなかった。
正直な所、そんなのは好きじゃないし何で必要なのかも理解できない。
貰えるなら貰うが、それ以上の価値は無い。
そんな人生に嫌気が差したのは誕生日を過ぎた数日後。
どうしようもなくなり、俺は遂に決断する。
この命を投げ捨てよう、と。
最後の晩餐を食し、タイマーをセットする。
朝の時間帯。
俺は駅に向かい、切符を購入しホームの中に入る。
ここで全てが終わらせるんだ。
こんな親不孝の子供を許してください、と念じながら快速急行を待つ。
俺は決心し、電車の前に立った。
ハイスピードで突っ込んでくる電車は俺の姿を捉えても止められない。
それは考えた通り、俺の身体を轢いた。
その瞬間で意識が途絶え、俺の身体だったものは辺り一面に散り散りとなって赤一色に染め上げたのだった。
俺は、死んだのか。
真っ白で何もない世界だった。
いや、世界というよりも空間だ。
やっぱ、自殺ってのはどうしようもない行為だったんだな。
俺の死後も見れないし、辺りには何もない。
俺は大の字になって寝転んだ。
空ですら真っ白だ。
こんな所に居たら気が狂っちまう。
ここは本当に死後の世界なのか?
俺は辺りを見渡してみるが、検索した内容と間違う事がある。
ここには黒い人がいるらしい。
だが、そんなのは見当たらない。
ここにいるのは俺一人だ。
おーい、と出ているかどうか分からない声で叫んでみる。
声だけが遠くの方に掠め取られ、何も聞こえなくなった。
五感はちゃんと動いている、というのが不気味だった。
痛みは感じないが、試しに自分の腹を殴ってみる。
うん、何も感じないどころか普通に痛かった。
「こんにちわ、迷える魂よ」
「・・・は?」
突然、俺の目の前に出てきたのは黒い服に見を包んだ女性。
おいおい、こんな夢まで見せてくれるのかよ。
自殺したら何もないんじゃないのか?
「そんな事は無いわ。寧ろ自殺者の方がチャンスかもしれない」
「どういう意味だよ、それ」
「貴方は今、神様から与えられた寿命を全うできなかったのよ。だから地獄にも天国にもいけない」
「そんなもん存在してたまるかよ」
「そうね。だけどそれは真っ赤な嘘。宗教の勝手な考えかしら?寧ろ地獄というのは自殺者にこそ与えられるこの世界で最も厳しい罰なのよ」
罰、か。
俺にとっちゃお誂え向きだな。
「それで?それは何だってんだ」
「貴方には別の世界に行ってもらうわ。それはそれは苦しい世界よ。本当に貴方がどうにかしなければ貴方自身が消滅してしまう。でも、もし別の世界で今度こそ役目を果たせたのならばもう一度チャンスを与える事ができるわ。貴方は、世界を変える事ができるかしら?」
世界を、変える?
「そんなのはどうだか知らねえが、もし変えた先に未来を変えられるんなら俺はやってやるさ」
「なるほど。貴方、そういう事言えるなら自殺しなければ良かったのに」
「あのな、生者ってのはしんどいんだよ。特に金銭面だな。あの世界こそ地獄そのものじゃねえか。あんな所に思い入れはねえけど、やり直せんならやり直してやるよ」
「ふっ、貴方は生きる世界が違えば強い人だったのかも知れないわね」
「そうかもな。それじゃどうするんだよ?その別の世界とやらに案内してれんのか?」
「えぇ、それじゃこれを渡しておくわ。次、目が覚めた時には別の世界。鏡世界と言うの。その世界では貴方が想像しているよりも遥かに厳しいわ。だけど貴方なら道を切り拓けるわ。それじゃ、また会いましょう」
彼女はそう言い、俺の胸にあるアイテムを押し込んだ。
その瞬間、俺の体中に激痛が走った。
まるで時が戻ったようにあの時の痛みが走っている。
また俺は意識を飛ばし、目を閉じた。
そして次の瞬間、俺の目の前には想像を絶する世界が広がっていた。
何でも金を要求され、終いには給料は大した金額じゃない。
自由、というのは人間にとって存在がしない空白のようなものだ。
俺は最後の一万円を賭けとして使ったが、これは大ハズレ。
金を増やす手段、というのはやはり存在しない。
だが、真っ当に生きたからと言ってボーナスが貰える訳じゃない。
頑張っても、評価されないなら何をすればいい?
評価ではなく自分で運命を掴もうとする事を神様は認めちゃくれない。
俺の人生にとって、金というものは俺を縛り付ける呪印でしかなかった。
正直な所、そんなのは好きじゃないし何で必要なのかも理解できない。
貰えるなら貰うが、それ以上の価値は無い。
そんな人生に嫌気が差したのは誕生日を過ぎた数日後。
どうしようもなくなり、俺は遂に決断する。
この命を投げ捨てよう、と。
最後の晩餐を食し、タイマーをセットする。
朝の時間帯。
俺は駅に向かい、切符を購入しホームの中に入る。
ここで全てが終わらせるんだ。
こんな親不孝の子供を許してください、と念じながら快速急行を待つ。
俺は決心し、電車の前に立った。
ハイスピードで突っ込んでくる電車は俺の姿を捉えても止められない。
それは考えた通り、俺の身体を轢いた。
その瞬間で意識が途絶え、俺の身体だったものは辺り一面に散り散りとなって赤一色に染め上げたのだった。
俺は、死んだのか。
真っ白で何もない世界だった。
いや、世界というよりも空間だ。
やっぱ、自殺ってのはどうしようもない行為だったんだな。
俺の死後も見れないし、辺りには何もない。
俺は大の字になって寝転んだ。
空ですら真っ白だ。
こんな所に居たら気が狂っちまう。
ここは本当に死後の世界なのか?
俺は辺りを見渡してみるが、検索した内容と間違う事がある。
ここには黒い人がいるらしい。
だが、そんなのは見当たらない。
ここにいるのは俺一人だ。
おーい、と出ているかどうか分からない声で叫んでみる。
声だけが遠くの方に掠め取られ、何も聞こえなくなった。
五感はちゃんと動いている、というのが不気味だった。
痛みは感じないが、試しに自分の腹を殴ってみる。
うん、何も感じないどころか普通に痛かった。
「こんにちわ、迷える魂よ」
「・・・は?」
突然、俺の目の前に出てきたのは黒い服に見を包んだ女性。
おいおい、こんな夢まで見せてくれるのかよ。
自殺したら何もないんじゃないのか?
「そんな事は無いわ。寧ろ自殺者の方がチャンスかもしれない」
「どういう意味だよ、それ」
「貴方は今、神様から与えられた寿命を全うできなかったのよ。だから地獄にも天国にもいけない」
「そんなもん存在してたまるかよ」
「そうね。だけどそれは真っ赤な嘘。宗教の勝手な考えかしら?寧ろ地獄というのは自殺者にこそ与えられるこの世界で最も厳しい罰なのよ」
罰、か。
俺にとっちゃお誂え向きだな。
「それで?それは何だってんだ」
「貴方には別の世界に行ってもらうわ。それはそれは苦しい世界よ。本当に貴方がどうにかしなければ貴方自身が消滅してしまう。でも、もし別の世界で今度こそ役目を果たせたのならばもう一度チャンスを与える事ができるわ。貴方は、世界を変える事ができるかしら?」
世界を、変える?
「そんなのはどうだか知らねえが、もし変えた先に未来を変えられるんなら俺はやってやるさ」
「なるほど。貴方、そういう事言えるなら自殺しなければ良かったのに」
「あのな、生者ってのはしんどいんだよ。特に金銭面だな。あの世界こそ地獄そのものじゃねえか。あんな所に思い入れはねえけど、やり直せんならやり直してやるよ」
「ふっ、貴方は生きる世界が違えば強い人だったのかも知れないわね」
「そうかもな。それじゃどうするんだよ?その別の世界とやらに案内してれんのか?」
「えぇ、それじゃこれを渡しておくわ。次、目が覚めた時には別の世界。鏡世界と言うの。その世界では貴方が想像しているよりも遥かに厳しいわ。だけど貴方なら道を切り拓けるわ。それじゃ、また会いましょう」
彼女はそう言い、俺の胸にあるアイテムを押し込んだ。
その瞬間、俺の体中に激痛が走った。
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また俺は意識を飛ばし、目を閉じた。
そして次の瞬間、俺の目の前には想像を絶する世界が広がっていた。
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