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クロノス編
最初の対決
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あれからバザールには騎士が監視をするようになり、俺が来た時のような活気は街には無かった。
「友輝、そこの棚のもの取って」
「はいよ、っと」
俺といえばあの日以来エリーの店の手伝いをしており、お客さんから外の状況を聞いているだけだった。
エリーとハッターが指導の元、エレメントの力を手懐けるまでには至っている。
だが、ハッターからはガルドルと対決するにはまだまだ能力値が低いらしい。
まだまだ、だがどうにか勝つしかない。
「そろそろ時間じゃないの?」
「そうだな。行ってくるよ」
俺は店を出てハッターのいる役所へと向かう。
大きなバザールだが、やはり活気が薄れている。
随分と怖がられているみたいだな。
「貴様、我々に楯突いておきながらよく外を歩けたものだな」
騎士の一人が俺にそう言う。
無視して歩いていくことにしよう。
絡まれているならそれが一番だ。
笑い声が聞こえるが、それも無視だ。
「お、来たようだな」
ハッターは入り口で俺を待っていたようだ。
「お迎えってのは珍しいな」
「ちゃんと来るかどうか心配していた。先程騎士に喧嘩を売られていたようだからな」
だからあんたは何処で俺達の様子を伺ってんだよ。
まぁ、突っ込んでも仕方ないか。
「いつもの地下か?」
「いや、今日は別の世界に行こう」
「マジか!」
俺はこの世界に来てから他の場所へ行った事が無かった。
何度かエリーは行っているみたいが、俺が行くとややこしくなるらしくチャンスが無かった。
「どこに行くんだよ?」
「テクノワールドだ。あそこにいる知り合いが戦闘シュミレーションを作ったらしく、友輝に試して欲しいという事だ」
「よっしゃ!それじゃ行こうぜ・・・って、俺狙われてるから他の世界に行けんの?」
「それは私も同様だ。なのでカザール商店の荷物に紛れて世界を渡る事にしよう」
俺とハッターはカザール商店へ向かう。
そこにいたのはエリーとカザールさんだ。
カザールさんとはここ数日で会い、よく買い物をしている。
「お前も行くのか?」
「丁度テクノワールドで新しい装置を開発してるから手を貸して欲しいんだって」
「そういう事か」
「ほれ、さっさと荷台に入れ」
カザールさんの荷台に乗り込み、荷物の中に姿を隠す。
荷台が動き出したのが振動で分かった。
少し動いているといきなり立ち止まる。
「検問だな。動くなよ」
荷台に騎士達が入ってくる。
俺達は荷物の中にいるが、連中はそこまで見ていない。
そしてまた動き出した。
ノックが聞こえ、俺達は荷物の中から出た。
「何とかクリアー、だな」
「あぁ、そのようだ」
荷台が動き出し、ゲートを潜った。
その後、もう一度ノックがした。
俺達は荷台から顔を出すと、そこは近未来のもので溢れている。
ここがテクノワールド。
「バザールとは全く違うな」
「えぇ。ここは色んな企業が実験や開発をしているの。ここからは別行動、かな?」
「いや、おそらく依頼人は同じだろう」
カザールさんにお礼を言ってから俺達はある研究所へと到着した。
「ここがステンパス研究所だ。さ、行くぞ」
入り口から入ると、そこには一人のカエル人間が作業をしていた。
「ありゃ!ハッターとエリーか!ようこそ!それ、とこの人が僕のドライバーの適合者!?」
「天野友輝だ」
「僕はステンパス!よろしく、友輝!」
まさかカエル人間、とは。
確か前にエリーからこの世界には人間とは別に亜人というのがいる、と聞いたな。
このカエル、いやステンパスが亜人なのか。
「さて!それじゃ始めようか!」
「頼んだぞ」
「任せといて!」
俺が案内されたのは広い空間。
ここがシュミレーションルームらしい。
『友輝、聞こえているな』
アナウンスからハッターの声が聞こえる。
「あぁ、聞こえる」
『それじゃレベル1からスタートするぞ』
「おう!」
俺はドライバーを腰に当てる。
トリガーを取出し、引鉄を引いた。
「変身!」
そして姿を鎧に纏わせ、気合を入れた。
「エレメントドライバーの力は安定域だね。流石適合者だ」
「あぁ。今まで何人かの適合者はいたが、ここまでの安定域は初めてじゃないか?」
「うん。珍しい、というよりもまさか本当に現れるとは僕も思ってなかったよ」
ステンパスはそう言い、エリーは一つ思い出した。
最初に行った適合したエレメントを調べた時、一つ見えなかったエレメントがあった。
「まさか・・・だけど」
「どうしたんだい?」
「この前、エレメントを調べた時に3つ適合したエレメントがあったの。その内の一つが見えなかった・・・」
「ふむ、それが起因かもしれないな。だが、このクロノスの中では正答率が一番高い術式を使えるのはお前だけである。エリーが見えないエレメント、か」
「それが特殊なエレメントなら可能性としてはあるね。エリーちゃん、術式をシステム化するから手伝ってくれないかな?」
はい、と返事をしたエリーとステンパスは奥の部屋に入っていく。
ハッターは戦っている友輝の姿を見ている。
このシュミレーションは負けるまでレベルが上がっていく方式だ。
追い込んだ先にあるのは何か、と見てみたいのがハッターの思惑である。
「ふぅ、こんなもんか」
休憩タイムとなり、自動で出てくる飲み物を飲む。
今のレベルが5。
強さ的には騎士達と同じくらい、かな?
でも敵じゃない、と俺は感じた。
それ程強くなっている、ということだろう。
『友輝、ガルドルや六騎聖はその倍の強さだ。ここで音を上げていてはまだまだ奴等を倒せんぞ』
「わーってるよ!さ、次行こうぜ!!」
俺は気合を入れ直し、連続で戦闘を熟していく。
それも続かず、体力が切れてしまった。
息を切らしながら俺は戦いを続ける。
限界を超えなければこの先には進めない。
負ける訳にはいかない。
何とかレベル10を倒し、ここで漸く切れ目となった。
そしてここからが倍数。
「やってやる・・・!」
俺は構え直し、攻撃を続けた。
だが、攻撃を受けすぎていたのか足を崩してしまった。
その瞬間、敵に囲まれてしまう。
「やべ・・・!」
攻撃を連続で叩き込まれ、俺は倒れる。
絶対に負けない、負けられない!
強い意思が大きくなる。
そして一定を超えた時、俺の中で何かが動き出した。
時が、止まった。
「なんだ・・・?」
目の前の敵は俺を倒そうとしている、が動く気配がない。
俺の周りの物は全て動きを止めている。
まるで俺が時を止めたような感覚だ。
『漸く力が目覚めたようね』
そこに姿を見せたのは俺をこの世界に送った張本人、エリミラルダ。
彼女は俺の姿を見ると、少しだが表情を変えた。
『まだ覚醒段階、という所ね。まぁ、最近はトレーニングをしているからここまでの極限状態は初めてじゃないでしょう?』
「そう、だけど説明しろ!何で俺がここにいて、それにこのドライバーの適合ができたんだ!」
『それは元々あった素質をエレメントが引っ張り出しただけよ。エレメントを持ってから身体が楽になったのを覚えてないのかしら?』
確かにそうだった。
あんなに動けたのは久々だし、それこそ今迄以上に身体能力が上がってる。
それが関係していたのか?
『まぁ、それが『どの』エレメントなのかは教えてあげないけど』
「それが俺の隠されたエレメントの一つ、って事か」
『えぇ。そして貴方の目的、いいえ、全ての迷い人の目的を成就させるわ』
「なら、早いとこ目覚めないとな」
『そうしてくれると助かるわ。でも・・・』
エリミラルダはそっ、と俺の頬に手を当てた。
『もし、それが掛け替えのない物と引き換えだった時に貴方はどうするのかしらね?』
「・・・どういう意味だ!!」
『それは今後のお楽しみよ。それじゃ、また会いましょう』
その言葉だけを残し、エリミラルダは姿を消した。
同時に目の前の敵もまた動き出す。
俺は攻撃を弾き、全員を一撃で倒した。
「これで、ギブアップだ・・・」
さっきの力の所為なのか、肉体に疲れが押し寄せる。
そして俺はその場に倒れてしまった。
目を覚ますと、そこはさっきの天井とは違っていた。
「あれ、俺・・・」
さっき、俺はエリミラルダと話していた。
それで時を動き出し、疲れで倒れてしまった。
あぁ、ここにいるのはそういう訳か。
「目が覚めたようだな」
「ハッター。俺・・・」
「まぁ、悪くはなかったぞ。及第点だ」
「そうか・・・。それより、エリミラルダと会ったんだ」
「気を失う前、か。なにがあったんだ?」
俺はハッターに事の顛末を話した。
その話を聞いたハッターは考え事をしていた。
「おそらくだが、最後の一つのエレメントが解明した、ような気がする」
「本当か!?それは何だ?」
「いや、まだ伏せておこう。確定条件が少ない」
「なんだよ・・・」
「本来であればあり得ない現象だ。もし、それが私が考えているエレメント属性であったとしてもトリガーが無ければ発動することは無い。そしてこの世界に訪れてからエリミラルダと出会う、という事もだ。迷い人がエリミラルダと出会うのは一度だけだ。だがお前の目の前に二度姿を見せた、という事はお前がそれだけ彼女にとって重要な役割をしていると考えても不思議ではない」
確かにそうだ。
何故、俺なのか。
その問いにあいつは答えてない。
それにこの先、って六騎聖を倒した先なのか。
それとも・・・。
何れにせよ、先に進めば分かるって事ならまだ気の持ちようはある。
「大丈夫!?友輝、倒れたって聞いたけど!」
病室にエリーとステンパスが入ってくる。
エリーは慌てた様子で俺の顔を見ていた。
「だいじょ・・・うぶだ」
あれ、エリーって誰かに似てる気がする。
んー、誰だ?
何だか、重要な事なような気がするが、まぁいいか。
「それより開発が成功したよ!しかも2つ!」
ステンパスは俺に新しい装置を見せてきた。
装置、というよりも武器だ。
「これはエレメントブレード!ドライバーのコアストーンの中に収納できるんだよ!そしてこれを使えばエレメントトリガーの力をブレードに流す事もできるんだよ!」
「へぇ、優れもんじゃんか。有難うな」
「へへっ!それと、もう一つ!」
俺とハッターはエリーとステンパスが入っていた部屋に入る。
そしてそこにはエリーの工房にもあったような魔法陣と見慣れない装置が置かれている。
「これは?」
「更に精度を上げたエレメントを調べる機械だって。しかも私がいなくても起動できるんだってさ」
「それと対応したエレメントトリガーを探す事もできるんだ!さ、友輝!早くここに入ってみて!」
誘導された椅子に座り、機械を作動する。
暫くすると、ステンパスとエリー、ハッターは難しそうな顔をしている。
「んー、やっぱりブレイズとシャインしか分からないや。シャインの座標は・・・マジックワールド、か」
「でもおかしくない?ここに二つの反応があるよ?」
「確かに、な。・・・そういう事か」
「ハッター、何か分かったの?」
「あぁ、判明した。だが、まだ話すべきではないな」
「またそれかよ!それじゃどうすんだよ!!マジックワールドにでも行くか!?」
「そう慌てるな。先にガルドルを倒さなければ自由に世界を移動する事は難しい」
「それはお前の街だからじゃないのか!?ここだってそうだ、さっき騎士がいたじゃねえか!!」
俺は声を荒げ、ハッターに詰め寄った。
ハッターは何も言い返してこない。
「そうだな。お前の言う通りだ。私はお前を使ってバザールを解放しようとした。だが、それから先はどうでも良かったのでな。だが、それでは我々の市民はどうなる!?それも同じ事だ!」
「んなもん分かってんだよ!全部救ってやる!!そう決めたんだ!!なのに、なのに何であんたはそうやって大事な事を隠そうとしてんだよ!!」
俺の言葉にハッターは反応しない。
最初に出会った頃とは大違いだ。
「ハッター、俺と本気で戦え!」
「・・・ちょっと、友輝!!」
「いいんだ、エリー。そうした方が分かりやすいだろう」
ハッターと俺は場所を移し、シュミレーションルームに入った。
俺は深い息を吐き、集中する。
ハッターもまた、鋭い眼差しで俺の目を見ていた。
「行くぞ、ハッター!」
ハッターは無言のまま、杖を構えた。
「いいの?止めなくて」
「・・・そうだね、止めた方がいいかもしれない」
スタンパスとエリーはモニターから二人の様子を伺っていた。
「多分、友輝は負けちゃうよ」
「何で?だってハッターは変身できないんじゃ・・・」
「いいや、できるんだ。何せ、あのドライバーはハッターと僕が開発したんだから」
「それ、どういう事よ?」
「見てればわかるよ」
エリーはモニターに目線を直す。
そして目の前で予期もしなかったコトが起きていた。
「・・・嘘」
それは、ハッターが姿を、友輝と同じくエレメントから抽出した鎧を纏っていたのだった。
俺は腰にドライバーを巻く。
本気だ、といったからには絶対に捻じ伏せる。
だが、あの杖が気になってしまう。
「良いんだな、本当に本気を出すぞ」
「何度も言わせんじゃねえ」
「・・・行くぞ、友輝!!」
杖のスイッチをハッターは押した。
上部が開き、スロットが現れる。
・・・まさか、いや、そんな事あるのか?
そしてハッターは胸ポケットからトリガーを取り出した。
『Mad!』
「・・・変身」
トリガーをスロットに差し込む。
そして彼は姿を変えた。
『Mad!ENERGY SYNCHRONIZED!』
杖から現れた鎧は、エレメントドライバーと同じだ。
鎧はハッターを包んだ。
帽子に触れ、俺にこう言った。
「マッドハッター、と呼び給え」
俺は恐れず攻撃を仕掛けた。
だが、全ての攻撃が弾かれてしまう。
「クソッ!」
「ふむ、まだまだと云う所は変わらんな」
杖で簡単に防がれてしまい、攻撃が通らない。
「これではガルドル、いや他の六騎聖は疎か他の騎士にも怪しいな」
「うっせえんだよ!!」
拳を顔面に叩きつけるが、それもダメージを負った反応はない。
反対にハッターの攻撃を直撃してしまった。
そのまま畳み掛けるように奴は追撃をしてくる。
「私だって分かっていたさ。お前が言うように私は自身の周りの事のみを考えていた。それでも最初はこの世界を救う為に戦おうとした!だが、それは脆くも崩れ去ったのだ!!それも貴様等、迷い人の所為でな!!」
「どういう事だ・・・!」
「お前達こそ、自分の事しか考えていないではないか!エリミラルダに何を言われたのか知らんが、お前達の行動起因は全て自分の人生の為。この世界の住人の事など、知った事ではないだろう!!」
・・・。
俺は呆然と立ち尽くしてしまった。
確かにそうかもしれない。
偉そうな事を言ったが、俺もハッターと一緒だ。
世界を救うなんて、ただの口実に過ぎない。
だけど・・・。
「それでも、俺は守りたいんだ。この世界は俺が思ってた以上に温かいかもしれない。俺がいた現実の世界の方がよっぽど地獄だったかもしれない。今では、そう思えるかもしれないんだ」
「偉そうな事を・・・!!なら、その手で何を掴む!!それは誰の明日だ!!」
「誰の明日だって良い。その先に、その先にあるものが俺の求めているものだって信じてる!!」
「綺麗事を抜かすな!!」
ハッターがスロットからトリガーを抜く。
そして腰のスロットに装填した。
大方、勝負を決めに来ている。
「俺だって自分の事ばっかりさ。周りを守りたいって心底考えているお前の方が高尚なのかもしれない。でもな、それでもって言い続けて、俺は明日を掴むんだ!!」
スロットからハッターへエネルギーが充填された。
『Mad!FULLCHAGEBREAK!!』
拳に貯めたエネルギーが迸っている。
俺もスロットにトリガーを装填し、構える。
『BLAZE!FULLCHAGEBREAK!!』
エレメントは俺の持つ属性。
なら、俺が強く願うんであればもっと力を引き出せる筈だ。
それはこの心を燃やして、誰かを守りたい。
それがエリミラルダが考えている事なら、それをやり遂げてみせる。
『やり遂げる』事は俺の人生で全くできなかった事だ。
だからここでこそ、やり遂げる。
俺の歩んできたもの全てで!!
「行くぞ!!」
拳と蹴りが激突する。
エネルギーの激突でルームの耐久性が耐えきれなくなっていた。
これ以上は、と考える隙も無く、俺とハッターはぶつかり合った。
大きな爆発が起き、俺とハッターは吹き飛ばされる。
同時に壁に激突し、二人共倒れてしまった。
「友輝!!ハッター!!」
「危なかった・・・。研究所が吹き飛ぶ所だったよ」
ステンパスは冷や汗を吹き、一息吐いた。
エリーは急いでシュミレーションルームへと向かう。
二人共無事でいるかどうかは分からない。
ここでは死なない、と言われてもダメージを負ってしまったら・・・と考えてしまう。
ステンパスは慌てて救護ロボを動かそうとした。
が、突然緊急通信が入ったのだった。
「なんだよ、こんな・・・えっ?」
緊急通信はバザールから。
そして識別信号は『EMERGENCY』、と表示されている。
この信号は大掛かりな攻撃をバザールが受けた時に発動される。
そしてそれが作動している、という事は・・・。
ステンパスは別のモニターでバザールのカメラに接続した。
「な、あれは!!」
ガルドルが先頭となり、バザールを攻撃しているのだった。
恐らくだが、三人を炙り出そうとしている。
「た、大変だ!!二人共!!バザールが攻撃されている!!」
俺が目を覚ました時、ハッターもまた目を覚ましていた。
・・・引き分け、か。
俺はその場に寝転び、身体を休める。
幾らこの世界で消滅しないから、と言ってもやはり激痛はある。
「身体、吹き飛ぶと思った」
「それは私の台詞だ。あれだけのエネルギーを耐え切ったお前もそうだろうだがな」
「そういやさ、何で少年とか君、って呼ばなくなったんだよ」
「ん?それであれば一つだけだろう。仲間に他人行儀は良くない、だろ?」
相変わらず憎めねえ奴だな、と思ってしまった。
最後の一撃で俺は何を考えているのか感じた。
喧嘩を終えれば、それはもう仲間だ。
恨み合う必要はない。
「二人共!!」
エリーがシュミレーションルームに入ってくる。
どうやら死んだ、と思われていたのか涙目になって俺達を見ていた。
「何だよ、大丈夫だって」
「バカ!!喧嘩で命を賭ける奴がいるか!!」
「悪かったって。ほら、もう大丈夫・・・ってイッテ!!」
エリーが俺の体を殴る。
そして今にも泣きそうな顔で倒れている俺の目の前に座り込んだ。
「二人共本当に馬鹿だよ。だって、こんなのしなくても分かり合えるじゃない」
「そうだけど、まぁ男同士だし」
「そうだな」
「うっさい!!」
「まぁ、もう蟠りは解けてるから、な?」
「なら、良い」
そう言って彼女は笑いながら俺とハッターを見た。
その時だった。
アナウンスでステンパスの声が聞こえた。
『た、大変だ!!二人共!!バザールが攻撃されている!!』
「友輝、そこの棚のもの取って」
「はいよ、っと」
俺といえばあの日以来エリーの店の手伝いをしており、お客さんから外の状況を聞いているだけだった。
エリーとハッターが指導の元、エレメントの力を手懐けるまでには至っている。
だが、ハッターからはガルドルと対決するにはまだまだ能力値が低いらしい。
まだまだ、だがどうにか勝つしかない。
「そろそろ時間じゃないの?」
「そうだな。行ってくるよ」
俺は店を出てハッターのいる役所へと向かう。
大きなバザールだが、やはり活気が薄れている。
随分と怖がられているみたいだな。
「貴様、我々に楯突いておきながらよく外を歩けたものだな」
騎士の一人が俺にそう言う。
無視して歩いていくことにしよう。
絡まれているならそれが一番だ。
笑い声が聞こえるが、それも無視だ。
「お、来たようだな」
ハッターは入り口で俺を待っていたようだ。
「お迎えってのは珍しいな」
「ちゃんと来るかどうか心配していた。先程騎士に喧嘩を売られていたようだからな」
だからあんたは何処で俺達の様子を伺ってんだよ。
まぁ、突っ込んでも仕方ないか。
「いつもの地下か?」
「いや、今日は別の世界に行こう」
「マジか!」
俺はこの世界に来てから他の場所へ行った事が無かった。
何度かエリーは行っているみたいが、俺が行くとややこしくなるらしくチャンスが無かった。
「どこに行くんだよ?」
「テクノワールドだ。あそこにいる知り合いが戦闘シュミレーションを作ったらしく、友輝に試して欲しいという事だ」
「よっしゃ!それじゃ行こうぜ・・・って、俺狙われてるから他の世界に行けんの?」
「それは私も同様だ。なのでカザール商店の荷物に紛れて世界を渡る事にしよう」
俺とハッターはカザール商店へ向かう。
そこにいたのはエリーとカザールさんだ。
カザールさんとはここ数日で会い、よく買い物をしている。
「お前も行くのか?」
「丁度テクノワールドで新しい装置を開発してるから手を貸して欲しいんだって」
「そういう事か」
「ほれ、さっさと荷台に入れ」
カザールさんの荷台に乗り込み、荷物の中に姿を隠す。
荷台が動き出したのが振動で分かった。
少し動いているといきなり立ち止まる。
「検問だな。動くなよ」
荷台に騎士達が入ってくる。
俺達は荷物の中にいるが、連中はそこまで見ていない。
そしてまた動き出した。
ノックが聞こえ、俺達は荷物の中から出た。
「何とかクリアー、だな」
「あぁ、そのようだ」
荷台が動き出し、ゲートを潜った。
その後、もう一度ノックがした。
俺達は荷台から顔を出すと、そこは近未来のもので溢れている。
ここがテクノワールド。
「バザールとは全く違うな」
「えぇ。ここは色んな企業が実験や開発をしているの。ここからは別行動、かな?」
「いや、おそらく依頼人は同じだろう」
カザールさんにお礼を言ってから俺達はある研究所へと到着した。
「ここがステンパス研究所だ。さ、行くぞ」
入り口から入ると、そこには一人のカエル人間が作業をしていた。
「ありゃ!ハッターとエリーか!ようこそ!それ、とこの人が僕のドライバーの適合者!?」
「天野友輝だ」
「僕はステンパス!よろしく、友輝!」
まさかカエル人間、とは。
確か前にエリーからこの世界には人間とは別に亜人というのがいる、と聞いたな。
このカエル、いやステンパスが亜人なのか。
「さて!それじゃ始めようか!」
「頼んだぞ」
「任せといて!」
俺が案内されたのは広い空間。
ここがシュミレーションルームらしい。
『友輝、聞こえているな』
アナウンスからハッターの声が聞こえる。
「あぁ、聞こえる」
『それじゃレベル1からスタートするぞ』
「おう!」
俺はドライバーを腰に当てる。
トリガーを取出し、引鉄を引いた。
「変身!」
そして姿を鎧に纏わせ、気合を入れた。
「エレメントドライバーの力は安定域だね。流石適合者だ」
「あぁ。今まで何人かの適合者はいたが、ここまでの安定域は初めてじゃないか?」
「うん。珍しい、というよりもまさか本当に現れるとは僕も思ってなかったよ」
ステンパスはそう言い、エリーは一つ思い出した。
最初に行った適合したエレメントを調べた時、一つ見えなかったエレメントがあった。
「まさか・・・だけど」
「どうしたんだい?」
「この前、エレメントを調べた時に3つ適合したエレメントがあったの。その内の一つが見えなかった・・・」
「ふむ、それが起因かもしれないな。だが、このクロノスの中では正答率が一番高い術式を使えるのはお前だけである。エリーが見えないエレメント、か」
「それが特殊なエレメントなら可能性としてはあるね。エリーちゃん、術式をシステム化するから手伝ってくれないかな?」
はい、と返事をしたエリーとステンパスは奥の部屋に入っていく。
ハッターは戦っている友輝の姿を見ている。
このシュミレーションは負けるまでレベルが上がっていく方式だ。
追い込んだ先にあるのは何か、と見てみたいのがハッターの思惑である。
「ふぅ、こんなもんか」
休憩タイムとなり、自動で出てくる飲み物を飲む。
今のレベルが5。
強さ的には騎士達と同じくらい、かな?
でも敵じゃない、と俺は感じた。
それ程強くなっている、ということだろう。
『友輝、ガルドルや六騎聖はその倍の強さだ。ここで音を上げていてはまだまだ奴等を倒せんぞ』
「わーってるよ!さ、次行こうぜ!!」
俺は気合を入れ直し、連続で戦闘を熟していく。
それも続かず、体力が切れてしまった。
息を切らしながら俺は戦いを続ける。
限界を超えなければこの先には進めない。
負ける訳にはいかない。
何とかレベル10を倒し、ここで漸く切れ目となった。
そしてここからが倍数。
「やってやる・・・!」
俺は構え直し、攻撃を続けた。
だが、攻撃を受けすぎていたのか足を崩してしまった。
その瞬間、敵に囲まれてしまう。
「やべ・・・!」
攻撃を連続で叩き込まれ、俺は倒れる。
絶対に負けない、負けられない!
強い意思が大きくなる。
そして一定を超えた時、俺の中で何かが動き出した。
時が、止まった。
「なんだ・・・?」
目の前の敵は俺を倒そうとしている、が動く気配がない。
俺の周りの物は全て動きを止めている。
まるで俺が時を止めたような感覚だ。
『漸く力が目覚めたようね』
そこに姿を見せたのは俺をこの世界に送った張本人、エリミラルダ。
彼女は俺の姿を見ると、少しだが表情を変えた。
『まだ覚醒段階、という所ね。まぁ、最近はトレーニングをしているからここまでの極限状態は初めてじゃないでしょう?』
「そう、だけど説明しろ!何で俺がここにいて、それにこのドライバーの適合ができたんだ!」
『それは元々あった素質をエレメントが引っ張り出しただけよ。エレメントを持ってから身体が楽になったのを覚えてないのかしら?』
確かにそうだった。
あんなに動けたのは久々だし、それこそ今迄以上に身体能力が上がってる。
それが関係していたのか?
『まぁ、それが『どの』エレメントなのかは教えてあげないけど』
「それが俺の隠されたエレメントの一つ、って事か」
『えぇ。そして貴方の目的、いいえ、全ての迷い人の目的を成就させるわ』
「なら、早いとこ目覚めないとな」
『そうしてくれると助かるわ。でも・・・』
エリミラルダはそっ、と俺の頬に手を当てた。
『もし、それが掛け替えのない物と引き換えだった時に貴方はどうするのかしらね?』
「・・・どういう意味だ!!」
『それは今後のお楽しみよ。それじゃ、また会いましょう』
その言葉だけを残し、エリミラルダは姿を消した。
同時に目の前の敵もまた動き出す。
俺は攻撃を弾き、全員を一撃で倒した。
「これで、ギブアップだ・・・」
さっきの力の所為なのか、肉体に疲れが押し寄せる。
そして俺はその場に倒れてしまった。
目を覚ますと、そこはさっきの天井とは違っていた。
「あれ、俺・・・」
さっき、俺はエリミラルダと話していた。
それで時を動き出し、疲れで倒れてしまった。
あぁ、ここにいるのはそういう訳か。
「目が覚めたようだな」
「ハッター。俺・・・」
「まぁ、悪くはなかったぞ。及第点だ」
「そうか・・・。それより、エリミラルダと会ったんだ」
「気を失う前、か。なにがあったんだ?」
俺はハッターに事の顛末を話した。
その話を聞いたハッターは考え事をしていた。
「おそらくだが、最後の一つのエレメントが解明した、ような気がする」
「本当か!?それは何だ?」
「いや、まだ伏せておこう。確定条件が少ない」
「なんだよ・・・」
「本来であればあり得ない現象だ。もし、それが私が考えているエレメント属性であったとしてもトリガーが無ければ発動することは無い。そしてこの世界に訪れてからエリミラルダと出会う、という事もだ。迷い人がエリミラルダと出会うのは一度だけだ。だがお前の目の前に二度姿を見せた、という事はお前がそれだけ彼女にとって重要な役割をしていると考えても不思議ではない」
確かにそうだ。
何故、俺なのか。
その問いにあいつは答えてない。
それにこの先、って六騎聖を倒した先なのか。
それとも・・・。
何れにせよ、先に進めば分かるって事ならまだ気の持ちようはある。
「大丈夫!?友輝、倒れたって聞いたけど!」
病室にエリーとステンパスが入ってくる。
エリーは慌てた様子で俺の顔を見ていた。
「だいじょ・・・うぶだ」
あれ、エリーって誰かに似てる気がする。
んー、誰だ?
何だか、重要な事なような気がするが、まぁいいか。
「それより開発が成功したよ!しかも2つ!」
ステンパスは俺に新しい装置を見せてきた。
装置、というよりも武器だ。
「これはエレメントブレード!ドライバーのコアストーンの中に収納できるんだよ!そしてこれを使えばエレメントトリガーの力をブレードに流す事もできるんだよ!」
「へぇ、優れもんじゃんか。有難うな」
「へへっ!それと、もう一つ!」
俺とハッターはエリーとステンパスが入っていた部屋に入る。
そしてそこにはエリーの工房にもあったような魔法陣と見慣れない装置が置かれている。
「これは?」
「更に精度を上げたエレメントを調べる機械だって。しかも私がいなくても起動できるんだってさ」
「それと対応したエレメントトリガーを探す事もできるんだ!さ、友輝!早くここに入ってみて!」
誘導された椅子に座り、機械を作動する。
暫くすると、ステンパスとエリー、ハッターは難しそうな顔をしている。
「んー、やっぱりブレイズとシャインしか分からないや。シャインの座標は・・・マジックワールド、か」
「でもおかしくない?ここに二つの反応があるよ?」
「確かに、な。・・・そういう事か」
「ハッター、何か分かったの?」
「あぁ、判明した。だが、まだ話すべきではないな」
「またそれかよ!それじゃどうすんだよ!!マジックワールドにでも行くか!?」
「そう慌てるな。先にガルドルを倒さなければ自由に世界を移動する事は難しい」
「それはお前の街だからじゃないのか!?ここだってそうだ、さっき騎士がいたじゃねえか!!」
俺は声を荒げ、ハッターに詰め寄った。
ハッターは何も言い返してこない。
「そうだな。お前の言う通りだ。私はお前を使ってバザールを解放しようとした。だが、それから先はどうでも良かったのでな。だが、それでは我々の市民はどうなる!?それも同じ事だ!」
「んなもん分かってんだよ!全部救ってやる!!そう決めたんだ!!なのに、なのに何であんたはそうやって大事な事を隠そうとしてんだよ!!」
俺の言葉にハッターは反応しない。
最初に出会った頃とは大違いだ。
「ハッター、俺と本気で戦え!」
「・・・ちょっと、友輝!!」
「いいんだ、エリー。そうした方が分かりやすいだろう」
ハッターと俺は場所を移し、シュミレーションルームに入った。
俺は深い息を吐き、集中する。
ハッターもまた、鋭い眼差しで俺の目を見ていた。
「行くぞ、ハッター!」
ハッターは無言のまま、杖を構えた。
「いいの?止めなくて」
「・・・そうだね、止めた方がいいかもしれない」
スタンパスとエリーはモニターから二人の様子を伺っていた。
「多分、友輝は負けちゃうよ」
「何で?だってハッターは変身できないんじゃ・・・」
「いいや、できるんだ。何せ、あのドライバーはハッターと僕が開発したんだから」
「それ、どういう事よ?」
「見てればわかるよ」
エリーはモニターに目線を直す。
そして目の前で予期もしなかったコトが起きていた。
「・・・嘘」
それは、ハッターが姿を、友輝と同じくエレメントから抽出した鎧を纏っていたのだった。
俺は腰にドライバーを巻く。
本気だ、といったからには絶対に捻じ伏せる。
だが、あの杖が気になってしまう。
「良いんだな、本当に本気を出すぞ」
「何度も言わせんじゃねえ」
「・・・行くぞ、友輝!!」
杖のスイッチをハッターは押した。
上部が開き、スロットが現れる。
・・・まさか、いや、そんな事あるのか?
そしてハッターは胸ポケットからトリガーを取り出した。
『Mad!』
「・・・変身」
トリガーをスロットに差し込む。
そして彼は姿を変えた。
『Mad!ENERGY SYNCHRONIZED!』
杖から現れた鎧は、エレメントドライバーと同じだ。
鎧はハッターを包んだ。
帽子に触れ、俺にこう言った。
「マッドハッター、と呼び給え」
俺は恐れず攻撃を仕掛けた。
だが、全ての攻撃が弾かれてしまう。
「クソッ!」
「ふむ、まだまだと云う所は変わらんな」
杖で簡単に防がれてしまい、攻撃が通らない。
「これではガルドル、いや他の六騎聖は疎か他の騎士にも怪しいな」
「うっせえんだよ!!」
拳を顔面に叩きつけるが、それもダメージを負った反応はない。
反対にハッターの攻撃を直撃してしまった。
そのまま畳み掛けるように奴は追撃をしてくる。
「私だって分かっていたさ。お前が言うように私は自身の周りの事のみを考えていた。それでも最初はこの世界を救う為に戦おうとした!だが、それは脆くも崩れ去ったのだ!!それも貴様等、迷い人の所為でな!!」
「どういう事だ・・・!」
「お前達こそ、自分の事しか考えていないではないか!エリミラルダに何を言われたのか知らんが、お前達の行動起因は全て自分の人生の為。この世界の住人の事など、知った事ではないだろう!!」
・・・。
俺は呆然と立ち尽くしてしまった。
確かにそうかもしれない。
偉そうな事を言ったが、俺もハッターと一緒だ。
世界を救うなんて、ただの口実に過ぎない。
だけど・・・。
「それでも、俺は守りたいんだ。この世界は俺が思ってた以上に温かいかもしれない。俺がいた現実の世界の方がよっぽど地獄だったかもしれない。今では、そう思えるかもしれないんだ」
「偉そうな事を・・・!!なら、その手で何を掴む!!それは誰の明日だ!!」
「誰の明日だって良い。その先に、その先にあるものが俺の求めているものだって信じてる!!」
「綺麗事を抜かすな!!」
ハッターがスロットからトリガーを抜く。
そして腰のスロットに装填した。
大方、勝負を決めに来ている。
「俺だって自分の事ばっかりさ。周りを守りたいって心底考えているお前の方が高尚なのかもしれない。でもな、それでもって言い続けて、俺は明日を掴むんだ!!」
スロットからハッターへエネルギーが充填された。
『Mad!FULLCHAGEBREAK!!』
拳に貯めたエネルギーが迸っている。
俺もスロットにトリガーを装填し、構える。
『BLAZE!FULLCHAGEBREAK!!』
エレメントは俺の持つ属性。
なら、俺が強く願うんであればもっと力を引き出せる筈だ。
それはこの心を燃やして、誰かを守りたい。
それがエリミラルダが考えている事なら、それをやり遂げてみせる。
『やり遂げる』事は俺の人生で全くできなかった事だ。
だからここでこそ、やり遂げる。
俺の歩んできたもの全てで!!
「行くぞ!!」
拳と蹴りが激突する。
エネルギーの激突でルームの耐久性が耐えきれなくなっていた。
これ以上は、と考える隙も無く、俺とハッターはぶつかり合った。
大きな爆発が起き、俺とハッターは吹き飛ばされる。
同時に壁に激突し、二人共倒れてしまった。
「友輝!!ハッター!!」
「危なかった・・・。研究所が吹き飛ぶ所だったよ」
ステンパスは冷や汗を吹き、一息吐いた。
エリーは急いでシュミレーションルームへと向かう。
二人共無事でいるかどうかは分からない。
ここでは死なない、と言われてもダメージを負ってしまったら・・・と考えてしまう。
ステンパスは慌てて救護ロボを動かそうとした。
が、突然緊急通信が入ったのだった。
「なんだよ、こんな・・・えっ?」
緊急通信はバザールから。
そして識別信号は『EMERGENCY』、と表示されている。
この信号は大掛かりな攻撃をバザールが受けた時に発動される。
そしてそれが作動している、という事は・・・。
ステンパスは別のモニターでバザールのカメラに接続した。
「な、あれは!!」
ガルドルが先頭となり、バザールを攻撃しているのだった。
恐らくだが、三人を炙り出そうとしている。
「た、大変だ!!二人共!!バザールが攻撃されている!!」
俺が目を覚ました時、ハッターもまた目を覚ましていた。
・・・引き分け、か。
俺はその場に寝転び、身体を休める。
幾らこの世界で消滅しないから、と言ってもやはり激痛はある。
「身体、吹き飛ぶと思った」
「それは私の台詞だ。あれだけのエネルギーを耐え切ったお前もそうだろうだがな」
「そういやさ、何で少年とか君、って呼ばなくなったんだよ」
「ん?それであれば一つだけだろう。仲間に他人行儀は良くない、だろ?」
相変わらず憎めねえ奴だな、と思ってしまった。
最後の一撃で俺は何を考えているのか感じた。
喧嘩を終えれば、それはもう仲間だ。
恨み合う必要はない。
「二人共!!」
エリーがシュミレーションルームに入ってくる。
どうやら死んだ、と思われていたのか涙目になって俺達を見ていた。
「何だよ、大丈夫だって」
「バカ!!喧嘩で命を賭ける奴がいるか!!」
「悪かったって。ほら、もう大丈夫・・・ってイッテ!!」
エリーが俺の体を殴る。
そして今にも泣きそうな顔で倒れている俺の目の前に座り込んだ。
「二人共本当に馬鹿だよ。だって、こんなのしなくても分かり合えるじゃない」
「そうだけど、まぁ男同士だし」
「そうだな」
「うっさい!!」
「まぁ、もう蟠りは解けてるから、な?」
「なら、良い」
そう言って彼女は笑いながら俺とハッターを見た。
その時だった。
アナウンスでステンパスの声が聞こえた。
『た、大変だ!!二人共!!バザールが攻撃されている!!』
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