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仕組みし者=鍵を操りし者
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怪物を倒した後、一人の男と少女が姿を見せた。
少女は巧と悠馬の周りをぐるりと周回する。
「ふむ、その様子だと自分達が何を得たのか分かっていない様子だ」
「そうよ、まだ私達は彼等に何も話してないわ」
そうだった、と男は答えた。
「申し遅れた。私の名前は『ランドルフ・カーター』。ある神話の物語を追いし者だ」
ランドルフ、カーター?
巧と悠馬はその聞き覚えのない名前に反応できなかった。
そして、『神話』と彼は口遊んだ。
「我々はある『神』をこの世界に呼ぼうとしている。それがこの世界に対しての『救済』だからだ」
「どういう事だ!それよりも、分からない事が多過ぎるんだよ!!」
「それもそうだな、『アンロッカー』。そしてそこの彼は『ロッカー』だな。一から説明したいのは山々だが、それではゲーム性がないな。如何せんどうしたものか」
「それならこうすればいいのではないかしら?彼等が目的に近付いてく度に私達が答えを示す。今回は貴方の名前だけでもいいのではないかしら?」
そうだな、とランドルフは納得した。
彼は木箱を取り出し、二人にその中身を見せる。
そこには銀色に輝いた鍵が鎮座していた。
「君達の最終目標は我々が配置した怪物、『キービースト』を倒しこの『銀の鍵』を目覚めさせる事だ。まぁ、詳しい話はこれから先で話そう」
そう言い、少女が魔術らしき力で空間に『穴』を作成した。
「彼女の名前は『アビゲイル』だ。彼女もまた姿を見せるだろう。さぁ、話を進めてくれ給え。それが答えを知る一歩目だ」
ランドルフはそのまま『穴』に入っていき、姿を消した。
アビゲイルと呼ばれた少女もまたその『穴』の中に入っていく。
二人の姿が消え、『穴』も消滅した。
「何だったんだ、今のは・・・」
「さぁな。海城君、このまま俺の会社に来てくれ。ここでは人目が付きやすい」
巧は頷き、そのままの姿で地下から悠馬の会社の地下駐車場に入っていった。
変身を解除し、社長室で二人はあのランドルフの話を考察していた。
「どうだ?何か思い当たったか?」
「いえ・・・。何もかもが急過ぎて、しかも俺の理解の範疇を超えてますよ」
「・・・そうか。それは俺も同じだ。ランドルフ・カーター、という男、世界に神を呼ぶつもりなのか?」
ランドルフの言葉を思い出す。
彼等はある『神』を崇拝している。
そして、その『神』とやらを呼ぶ事がおそらくの目的だろう。
だが、それよりも先を見る事ができない。
そしてあの少女『アビゲイル』。
特殊な能力を持ち、『穴』を開ける事ができる。
「ランドルフ、か」
悠馬はパソコンを開き、彼の名前を検索する。
本来であれば引っかかる事のない単語だろうが、今回は数百以上に上る検索結果が出てきてしまった。
「有名人なんですか?」
パソコンの画面を覗いていた巧がそう呟く。
だが、そうじゃないと悠馬は判断した。
検索した記事を見ると、それは絶対にあり得ないからだ。
「何せ、小説の中に出てくる登場人物なんだからな・・・」
昔、ラブクラフトと呼ばれる作家がいた。
彼は小説の題材を作る為にある創作神話を作り出した。
それは『クトゥルフ神話』である。
そしてそれを題材とした小説や設定の中に『ランドルフ・カーター』、と記された登場人物がいた。
彼は学者であり、同じく『銀の鍵』を作り出した張本人である。
だが、問題点はランドルフは架空の人物であり実在している訳ではない。
「あのランドルフを騙った男が言っていたのはあの化物、『キービースト』とやらを倒していくしかないな」
「そうですね。あれってもしなんですけど、ほっといたら人を殺し続けるんですかね?」
「恐らく、な。奴等は人間を襲っているようだが、その理由は見えてこない。そしてあの怪物を倒した時に出現したあの鍵、あれが『銀の鍵』に関係があるのだろう」
テーブルに並べられた鍵。
そしてそれを起動する装置。
「この装置は呼称を『キーズドライバー』と名付ける事にした」
「名前、必要ですか?」
「まぁな。一応、だ。俺のキーズドライバーはうちの分析に長けてる部門で検査を通す。当分はお前一人であの怪物と戦ってくれ」
「げっ、マジっすか・・・」
巧は嫌そうな表情をする。
「仕方ないだろ。俺は本社にいる分、安全だがお前の場合はそうじゃない。命を狙われる危険性を考えたらお前からキーズドライバーを取り上げるのは愚策だ」
「分かってますけど・・・。そんな命を投げ売るまでの問題なんですか?」
「それが分からんから調べるまでの間の話をしてるんだ」
「そうですけど・・・」
先程からの巧から感じる情は情けないものだった。
まるで誰かの為に戦いたくない、と言わんばかりである。
「巫山戯るのも大概にしろ。これはお前にしかできない事だ」
「そうやって自分の意見を押し通すの、止めてくださいよ。誰しもが貴方みたいな傑物じゃないんですから」
そう言い、巧は社長室を後にした。
涼花はあれから巧を探したが、何処にもいない。
「どこに行ったのよ・・・」
あの鎧の男。
あれは恐らく、いや間違いなく巧だ。
涼花は胸の中にある引っかかりを感じていた。
巧だったら、この役目から逃げ出す。
巧にとって、あの装置は『柵』だ。
そんな役目からは逃げ出すのが巧である。
今までもそうやって暮らしてきた。
それなこの結果となるのであれば、巧は逃げ出して目の前の出来事から目を背ける。
「巧・・・」
「どうしたんだよ?涼花」
背中からいつもの声がした。
巧本人が自分の目の前にいる。
「巧!大丈夫だった、の?」
「いや、まぁ、うん」
はぐらかす時はいつも自分の調子が悪い時だ。
「もしかしてまた・・・」
「瀬上さんも悪い人だって。なんでこんな役目を俺に背負わせるんだよ!!」
「どうしたの?」
巧は涼花に悠馬との遣り取りを話した。
涼花はそれを聞いているだけだった。
「そうかもしれないよね。でも、瀬上さんが背負おうとしてるんだったら、巧も・・・」
「俺はそんなできた人間じゃないんだよ!お前だって分かってるだろ!?」
「で、でも・・・」
巧はいつものように自分が悪い、という認識がない。
自分を中心に考え、自分を巻き込む、巻き込もうとする流れに嫌気が差していた。
「第一、俺はこんな大事になるような事はしたくないんだよ。静かに暮らしたい。金だって楽して手に入れたい。でも、なんでこううまく行かないんだ」
「巧・・・」
少女は巧と悠馬の周りをぐるりと周回する。
「ふむ、その様子だと自分達が何を得たのか分かっていない様子だ」
「そうよ、まだ私達は彼等に何も話してないわ」
そうだった、と男は答えた。
「申し遅れた。私の名前は『ランドルフ・カーター』。ある神話の物語を追いし者だ」
ランドルフ、カーター?
巧と悠馬はその聞き覚えのない名前に反応できなかった。
そして、『神話』と彼は口遊んだ。
「我々はある『神』をこの世界に呼ぼうとしている。それがこの世界に対しての『救済』だからだ」
「どういう事だ!それよりも、分からない事が多過ぎるんだよ!!」
「それもそうだな、『アンロッカー』。そしてそこの彼は『ロッカー』だな。一から説明したいのは山々だが、それではゲーム性がないな。如何せんどうしたものか」
「それならこうすればいいのではないかしら?彼等が目的に近付いてく度に私達が答えを示す。今回は貴方の名前だけでもいいのではないかしら?」
そうだな、とランドルフは納得した。
彼は木箱を取り出し、二人にその中身を見せる。
そこには銀色に輝いた鍵が鎮座していた。
「君達の最終目標は我々が配置した怪物、『キービースト』を倒しこの『銀の鍵』を目覚めさせる事だ。まぁ、詳しい話はこれから先で話そう」
そう言い、少女が魔術らしき力で空間に『穴』を作成した。
「彼女の名前は『アビゲイル』だ。彼女もまた姿を見せるだろう。さぁ、話を進めてくれ給え。それが答えを知る一歩目だ」
ランドルフはそのまま『穴』に入っていき、姿を消した。
アビゲイルと呼ばれた少女もまたその『穴』の中に入っていく。
二人の姿が消え、『穴』も消滅した。
「何だったんだ、今のは・・・」
「さぁな。海城君、このまま俺の会社に来てくれ。ここでは人目が付きやすい」
巧は頷き、そのままの姿で地下から悠馬の会社の地下駐車場に入っていった。
変身を解除し、社長室で二人はあのランドルフの話を考察していた。
「どうだ?何か思い当たったか?」
「いえ・・・。何もかもが急過ぎて、しかも俺の理解の範疇を超えてますよ」
「・・・そうか。それは俺も同じだ。ランドルフ・カーター、という男、世界に神を呼ぶつもりなのか?」
ランドルフの言葉を思い出す。
彼等はある『神』を崇拝している。
そして、その『神』とやらを呼ぶ事がおそらくの目的だろう。
だが、それよりも先を見る事ができない。
そしてあの少女『アビゲイル』。
特殊な能力を持ち、『穴』を開ける事ができる。
「ランドルフ、か」
悠馬はパソコンを開き、彼の名前を検索する。
本来であれば引っかかる事のない単語だろうが、今回は数百以上に上る検索結果が出てきてしまった。
「有名人なんですか?」
パソコンの画面を覗いていた巧がそう呟く。
だが、そうじゃないと悠馬は判断した。
検索した記事を見ると、それは絶対にあり得ないからだ。
「何せ、小説の中に出てくる登場人物なんだからな・・・」
昔、ラブクラフトと呼ばれる作家がいた。
彼は小説の題材を作る為にある創作神話を作り出した。
それは『クトゥルフ神話』である。
そしてそれを題材とした小説や設定の中に『ランドルフ・カーター』、と記された登場人物がいた。
彼は学者であり、同じく『銀の鍵』を作り出した張本人である。
だが、問題点はランドルフは架空の人物であり実在している訳ではない。
「あのランドルフを騙った男が言っていたのはあの化物、『キービースト』とやらを倒していくしかないな」
「そうですね。あれってもしなんですけど、ほっといたら人を殺し続けるんですかね?」
「恐らく、な。奴等は人間を襲っているようだが、その理由は見えてこない。そしてあの怪物を倒した時に出現したあの鍵、あれが『銀の鍵』に関係があるのだろう」
テーブルに並べられた鍵。
そしてそれを起動する装置。
「この装置は呼称を『キーズドライバー』と名付ける事にした」
「名前、必要ですか?」
「まぁな。一応、だ。俺のキーズドライバーはうちの分析に長けてる部門で検査を通す。当分はお前一人であの怪物と戦ってくれ」
「げっ、マジっすか・・・」
巧は嫌そうな表情をする。
「仕方ないだろ。俺は本社にいる分、安全だがお前の場合はそうじゃない。命を狙われる危険性を考えたらお前からキーズドライバーを取り上げるのは愚策だ」
「分かってますけど・・・。そんな命を投げ売るまでの問題なんですか?」
「それが分からんから調べるまでの間の話をしてるんだ」
「そうですけど・・・」
先程からの巧から感じる情は情けないものだった。
まるで誰かの為に戦いたくない、と言わんばかりである。
「巫山戯るのも大概にしろ。これはお前にしかできない事だ」
「そうやって自分の意見を押し通すの、止めてくださいよ。誰しもが貴方みたいな傑物じゃないんですから」
そう言い、巧は社長室を後にした。
涼花はあれから巧を探したが、何処にもいない。
「どこに行ったのよ・・・」
あの鎧の男。
あれは恐らく、いや間違いなく巧だ。
涼花は胸の中にある引っかかりを感じていた。
巧だったら、この役目から逃げ出す。
巧にとって、あの装置は『柵』だ。
そんな役目からは逃げ出すのが巧である。
今までもそうやって暮らしてきた。
それなこの結果となるのであれば、巧は逃げ出して目の前の出来事から目を背ける。
「巧・・・」
「どうしたんだよ?涼花」
背中からいつもの声がした。
巧本人が自分の目の前にいる。
「巧!大丈夫だった、の?」
「いや、まぁ、うん」
はぐらかす時はいつも自分の調子が悪い時だ。
「もしかしてまた・・・」
「瀬上さんも悪い人だって。なんでこんな役目を俺に背負わせるんだよ!!」
「どうしたの?」
巧は涼花に悠馬との遣り取りを話した。
涼花はそれを聞いているだけだった。
「そうかもしれないよね。でも、瀬上さんが背負おうとしてるんだったら、巧も・・・」
「俺はそんなできた人間じゃないんだよ!お前だって分かってるだろ!?」
「で、でも・・・」
巧はいつものように自分が悪い、という認識がない。
自分を中心に考え、自分を巻き込む、巻き込もうとする流れに嫌気が差していた。
「第一、俺はこんな大事になるような事はしたくないんだよ。静かに暮らしたい。金だって楽して手に入れたい。でも、なんでこううまく行かないんだ」
「巧・・・」
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