2 / 68
1年
目立たず静かに大人しく? 2
しおりを挟む
学園の歴史の授業は午前中いっぱい続いた。僕とマシューの名前は、面白い偶然だねってことで終わってくれたからほっとしたよ。一般には知られてなかった名前だから本当にビックリだよね。
そうそう、学園の歴史ではニノの名前も出たよ。実はニノは僕の後を継いで学園長になったんだ。歴史の授業では、ニノは学園長としての期間は短かったものの、創設された学園をよりしっかりとした形にした人だと紹介された。僕もマシューも自分たちの息子の名前が出て、ニンマリしちゃったし。やっぱり嬉しいもんだね。
午後の授業は魔法の基礎ってことで、屋内訓練場でだった。
「魔法の基礎はまずは自分の中の魔力を感じることろから始める。感じることが出来るようになったら、それを少しずつ動かして指先まで持っていくんだ。それが出来てやっとスタートラインに立ったことになる。初級魔法はそこまで出来た者から教える。
ただし、この学園に入学する前に魔法を習った者もいるだろう。一応ここに資料はあるが、既に魔法を使える者は手を挙げてくれ」
仕方なく手を挙げた。入学するときに質問されたから、資料には僕が魔法を使えることが載ってるんだ。これは仕方ないね。隣のマシューは一度も魔法を使ったことが無かったらしく、手は膝の上だ。でもね、前世の記憶が頭に入ってきた時点でマシューも魔法が使えるんだよ。
入学前に魔法を習ってたのは僕を含めて四人だった。全員が先生のところへ移動する。
「四人だね。君たちが使える魔法は一応この資料に載ってるんだ。どのくらいのレベルなのかを知りたいから、ひとりずつ披露してくれるかな? 念のために結界で囲うから、遠慮する必要は無いぞ。じゃあ君から。名前とどの魔法を使うかを言ってから始めてくれ」
最初の子は光球だった。回復系だから僕と同じ無試験入学の子だ。次の子は炎球で、その炎球を目の前で動かしてみせた。すごいね、彼のレベルは初級の中でもかなり高い方かも。三人目は水球の予定だったけど、緊張しすぎたみたいで出来なかった。涙が出てたからすごく可哀想だと思った。
「おまえ出来ないじゃんかよ」
炎球を出した子がその子に向かって文句を言ってた。意地悪な子なのかな。
「じゃあ最後は君だね」
「セインです。水球を出します」
言われた通り名前と魔法の種類を言ってから水球を目の前に浮かせた。目立ちたくないから動かさないよ。他の魔法は申請してないから、ここでやるつもりは無い。
「ほお……、すごいねセイン君。君は無詠唱で水球を出せるのか。これからが楽しみだ。
自分に素質のある魔法は、頑張ればセイン君のように無詠唱で放つことが出来るようになる。最初は正しく呪文を唱えるところから始めるが、慣れれば短縮、もっと慣れれば無詠唱が可能だ。皆もセイン君を目標に頑張って欲しい。セイン君も皆に質問されたらアドバイスとかしてあげて欲しいね。
今ここで魔法を披露してくれた子たちに拍手を。……じゃあ、君たちは皆のところへ戻って」
や……やってしまった。マシューと会う前の僕だったらしっかりと呪文を唱えてから水球を出してたよ。無詠唱なんてやったことも無かったし。なのになのに、前世の記憶が僕に飛び込んできた途端に、魔法も前世同様に使えるようになっちゃったんだ。だからつい前世の癖で無詠唱でやっちゃったってワケ。うぅぅ……、これじゃ自分から目立ちにいったようなものじゃないか。
真っ赤になってお辞儀してから戻った。炎球を出した子は僕のことを睨んでたよ。彼が炎球を動かしたときは拍手があったのに、先生に褒められたのは僕の方だったんだ。
マシューは僕の方を見ても無表情だった。でもね……、隣に座ったからよく分かるんだ。顔は平常心を装ってるけど、身体がね、小刻みに揺れてるんだよ。これは笑うのをガマンしてるところだ。だから思わず文句が出てしまった。
「マシュー、酷いよ」
「クククッ!」
「…………」
「目立たないんじゃなかったっけ? やっぱセインはセインだ」
僕だって目立たない予定だったんだよ!
自業自得だから文句も言えず、僕はため息をついてから前を見た。その後の魔法の授業では各自が魔力を感じる訓練に入った。皆の前で魔法を披露した僕たち三人は、訓練はせずに先生の助手として、他の生徒の手助けをお願いされたんだ。
「魔力はね、血と一緒に身体の中をグルグル回ってるんだ。で、一番魔力を感じやすいのは、先生も言った通りおへその下あたりだよ。身体の血がおへその下に集まって、そこがじんわり温かくなるのをイメージしてみて。そしたら本当に温かくなるから。それが魔力」
「んー……。あっ、ホントだ! ものすごく温かい! セイン君てすごいね。僕ここへ来る前にも魔法を習いに行ってたんだよ。でも全然出来なくてさぁ。なのにセイン君のアドバイス通りやったら出来ちゃった!」
「えっ? えーっと……」
身体の中の魔力を感じるなんてのは、魔力持ちなら少し意識するだけで全員が出来ることなんだ。たいして難しくなんか無いんだよ。むしろ難しいのはその先、意識して魔力を動かすことだ。だから僕としてはものすごく簡単なアドバイスをしただけなのに、何故か相手は大げさに喜んで、そしてそれを見ていたクラスメイトが僕の周りに集まってきてしまった。
先生はニコニコしながら僕を見てる。マシューはニヤニヤ、さっき炎球を出した子はまた僕を睨んでた。
おかしい。目立たないようにするつもりだったのに、何でこんなに目立ってるんだろう?
「セイン君、今日の授業が終わったら私のところへ来てくれ」
「えーっと、僕、特別授業があるんですけど」
「嗚呼、それは私の方から担当の先生へ言っておくから問題無い」
「……ハイ、わかりました」
授業が終わったとき、先生は僕にそんなことを言ってから訓練場を出て行った。ニコニコしてて、誰が見ても上機嫌だってのが丸分かりだった。
「おい、おまえ! 無詠唱だからっていい気になるなよ!」
そして僕は、例の炎球を出した子に敵認定されたらしい。
「マシュー……。僕の幸せのんびり計画は、初日から頓挫したみたいだ」
背後にいたマシューの方を向いてそう呟いたら、マシューはお腹をかかえて大笑いしだした。
「やっぱりセインはセインだったな」
僕の頭を撫でながら、マシューはにこやかな顔でそう言った。
僕はガックリと項垂れた。
そうそう、学園の歴史ではニノの名前も出たよ。実はニノは僕の後を継いで学園長になったんだ。歴史の授業では、ニノは学園長としての期間は短かったものの、創設された学園をよりしっかりとした形にした人だと紹介された。僕もマシューも自分たちの息子の名前が出て、ニンマリしちゃったし。やっぱり嬉しいもんだね。
午後の授業は魔法の基礎ってことで、屋内訓練場でだった。
「魔法の基礎はまずは自分の中の魔力を感じることろから始める。感じることが出来るようになったら、それを少しずつ動かして指先まで持っていくんだ。それが出来てやっとスタートラインに立ったことになる。初級魔法はそこまで出来た者から教える。
ただし、この学園に入学する前に魔法を習った者もいるだろう。一応ここに資料はあるが、既に魔法を使える者は手を挙げてくれ」
仕方なく手を挙げた。入学するときに質問されたから、資料には僕が魔法を使えることが載ってるんだ。これは仕方ないね。隣のマシューは一度も魔法を使ったことが無かったらしく、手は膝の上だ。でもね、前世の記憶が頭に入ってきた時点でマシューも魔法が使えるんだよ。
入学前に魔法を習ってたのは僕を含めて四人だった。全員が先生のところへ移動する。
「四人だね。君たちが使える魔法は一応この資料に載ってるんだ。どのくらいのレベルなのかを知りたいから、ひとりずつ披露してくれるかな? 念のために結界で囲うから、遠慮する必要は無いぞ。じゃあ君から。名前とどの魔法を使うかを言ってから始めてくれ」
最初の子は光球だった。回復系だから僕と同じ無試験入学の子だ。次の子は炎球で、その炎球を目の前で動かしてみせた。すごいね、彼のレベルは初級の中でもかなり高い方かも。三人目は水球の予定だったけど、緊張しすぎたみたいで出来なかった。涙が出てたからすごく可哀想だと思った。
「おまえ出来ないじゃんかよ」
炎球を出した子がその子に向かって文句を言ってた。意地悪な子なのかな。
「じゃあ最後は君だね」
「セインです。水球を出します」
言われた通り名前と魔法の種類を言ってから水球を目の前に浮かせた。目立ちたくないから動かさないよ。他の魔法は申請してないから、ここでやるつもりは無い。
「ほお……、すごいねセイン君。君は無詠唱で水球を出せるのか。これからが楽しみだ。
自分に素質のある魔法は、頑張ればセイン君のように無詠唱で放つことが出来るようになる。最初は正しく呪文を唱えるところから始めるが、慣れれば短縮、もっと慣れれば無詠唱が可能だ。皆もセイン君を目標に頑張って欲しい。セイン君も皆に質問されたらアドバイスとかしてあげて欲しいね。
今ここで魔法を披露してくれた子たちに拍手を。……じゃあ、君たちは皆のところへ戻って」
や……やってしまった。マシューと会う前の僕だったらしっかりと呪文を唱えてから水球を出してたよ。無詠唱なんてやったことも無かったし。なのになのに、前世の記憶が僕に飛び込んできた途端に、魔法も前世同様に使えるようになっちゃったんだ。だからつい前世の癖で無詠唱でやっちゃったってワケ。うぅぅ……、これじゃ自分から目立ちにいったようなものじゃないか。
真っ赤になってお辞儀してから戻った。炎球を出した子は僕のことを睨んでたよ。彼が炎球を動かしたときは拍手があったのに、先生に褒められたのは僕の方だったんだ。
マシューは僕の方を見ても無表情だった。でもね……、隣に座ったからよく分かるんだ。顔は平常心を装ってるけど、身体がね、小刻みに揺れてるんだよ。これは笑うのをガマンしてるところだ。だから思わず文句が出てしまった。
「マシュー、酷いよ」
「クククッ!」
「…………」
「目立たないんじゃなかったっけ? やっぱセインはセインだ」
僕だって目立たない予定だったんだよ!
自業自得だから文句も言えず、僕はため息をついてから前を見た。その後の魔法の授業では各自が魔力を感じる訓練に入った。皆の前で魔法を披露した僕たち三人は、訓練はせずに先生の助手として、他の生徒の手助けをお願いされたんだ。
「魔力はね、血と一緒に身体の中をグルグル回ってるんだ。で、一番魔力を感じやすいのは、先生も言った通りおへその下あたりだよ。身体の血がおへその下に集まって、そこがじんわり温かくなるのをイメージしてみて。そしたら本当に温かくなるから。それが魔力」
「んー……。あっ、ホントだ! ものすごく温かい! セイン君てすごいね。僕ここへ来る前にも魔法を習いに行ってたんだよ。でも全然出来なくてさぁ。なのにセイン君のアドバイス通りやったら出来ちゃった!」
「えっ? えーっと……」
身体の中の魔力を感じるなんてのは、魔力持ちなら少し意識するだけで全員が出来ることなんだ。たいして難しくなんか無いんだよ。むしろ難しいのはその先、意識して魔力を動かすことだ。だから僕としてはものすごく簡単なアドバイスをしただけなのに、何故か相手は大げさに喜んで、そしてそれを見ていたクラスメイトが僕の周りに集まってきてしまった。
先生はニコニコしながら僕を見てる。マシューはニヤニヤ、さっき炎球を出した子はまた僕を睨んでた。
おかしい。目立たないようにするつもりだったのに、何でこんなに目立ってるんだろう?
「セイン君、今日の授業が終わったら私のところへ来てくれ」
「えーっと、僕、特別授業があるんですけど」
「嗚呼、それは私の方から担当の先生へ言っておくから問題無い」
「……ハイ、わかりました」
授業が終わったとき、先生は僕にそんなことを言ってから訓練場を出て行った。ニコニコしてて、誰が見ても上機嫌だってのが丸分かりだった。
「おい、おまえ! 無詠唱だからっていい気になるなよ!」
そして僕は、例の炎球を出した子に敵認定されたらしい。
「マシュー……。僕の幸せのんびり計画は、初日から頓挫したみたいだ」
背後にいたマシューの方を向いてそう呟いたら、マシューはお腹をかかえて大笑いしだした。
「やっぱりセインはセインだったな」
僕の頭を撫でながら、マシューはにこやかな顔でそう言った。
僕はガックリと項垂れた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる