目立たず静かに大人しく?

ふゆの桜

文字の大きさ
4 / 68
1年

回復系の役割1

しおりを挟む
※こちらは前話より前、授業初日の放課後から話が始まります。
 日付が前後することをご了承ください。




「問題を解き終わったら手を上げること。その後は時間まで大人しく席についてること。退室は認めない。じゃあ、試験始め!」

 特別授業。回復系の魔法の素質がある子はエンダル学園への入学が義務で、無試験入学な代わりに当面の間放課後に特別授業を受けるんだ。今日がその初日。ウワサではサボリ厳禁でとっても厳しい授業なんだって。サボった場合の罰がものすごく厳しいらしいから、ここ数年はサボる人はいないって話だよ。
 今日の魔法の授業が終わった時点では担任のフィラー先生から特別授業は今日だけ免除って言われたんだけど、結局それは却下されたらしい。まあ僕個人としても担任の部屋に行くよりはこっちの方が良いと思ったからね、却下されて良かったと思ってる。だって何となく目をつけられたような気がするんだもの。なるべく目立ちたくない僕としては、今後も部屋に呼ばないで欲しいと思ってるよ。

 特別授業をしてくれるのはバグズダッド先生と言って、普段は治療室にいる先生だよ。騎士科の生徒がよくお世話になってるらしい。騎士科にも魔力持ちはいるけど回復系以外の人の治癒魔法は効果が小さいからね、どうしても治療室のお世話になる回数が多くなるそうなんだ。と言ってもケガよりも打ち身が多いって話だよ。ちなみにバグスダッド先生は『治療室の熊』もしくは『治療熊』って呼ばれてるらしいよ。うん、その呼び名はピッタリだ。

 今年無試験入学したのは僕を含めて四人だ。他の年に比べると少ないって話だった。でもって僕以外は全員女の子なんだ。これには本当に驚いたよ。男子は僕だけってのはちょっと肩身が狭いね。ちなみに女の子たちはライム、メープル、ドーラって名前で、ライムさんは僕と同じクラスだ。

 今僕たちが受けてるのは、他の生徒たちが受けた入学試験と同じものなんだって。ただしこれは入学判定じゃなく、僕たちの学力がどれくらいあるかを確認するのが目的だ。これによってどのくらいの授業をするかを決めるんだってさ。
 ドキドキしながら問題を見たんだけど、あまりの簡単さに逆に困っちゃったし。簡単な読み書きと計算の問題だからあっという間に解いちゃって、その後二回も見直したけどやっぱり時間が余っちゃって、で結局一番に提出するハメになっちゃった。生徒が四人しかいないから解き終わったのもバレちゃってるからね、仕方ないか。その後は机に突っ伏して時間を潰してたよ。

「終了だ。そこの二人もペンを置くこと。じゃあ答えを確認するから少し待っててくれ」

 時間ギリギリまで問題と向き合ってたのは隣のクラスの二人だったみたい。ライムさんも制限時間より前に解き終わってたんだよ。
 その後は各自の魔法の披露だった。と言っても出来るのは三人だけ。メープルさんはまだ身体の中の魔力を感じることもできないってことだった。まあそれはここに入学したほとんどの生徒がそうだから、恥ずかしいことでも何でも無いんだけどね。一応先生もその点はしっかりフォローしてたよ。
 ちなみに僕は水球を無詠唱で出した。魔法の授業でやっちゃったからね、もう開き直るしか無いって言うか……。先生もポカンと口を開けてたし、僕としても今更とは言えものすごく目立つからいたたまれない。

「ねえねえ、どのくらいやったら無詠唱ができるの?」
「あたしも知りたーい。早く出来るようになるコツとかあるの?」

 授業が終わった後、隣のクラスのメープルさんとドーラさんに話しかけられた。ライムさんは僕たちのことは気にかけず教室を出て行くところだ。同じクラスだけど、仲良くできるかなぁ?

「えーっと……、何回も何回も繰り返したら出来るようになったよ」
「だからどのくらい?」
「どのくらいって……。気が付いたら出来るようになってたから分かんないや。ゴメンね」
「なんだ、つまんな~い」

 つまんないと言われても、それが事実だから仕方ないと思うな。しかもこれは今世でも前世でも無く前々世のことだったりする。記憶が蘇った途端に以前の魔法が全てできるようになる……、不思議だ。ちなみに一番最初の無詠唱は、出来るようになるまでかなり時間がかかるんだよ。一度できたら他の魔法で無詠唱ができるまでの期間は短くなるけど。


 二日目の特別授業は、回復系の役割についてだった。役割と言うか、回復系に求められる仕事だね。

「回復系は別名では光魔法、色で言うと白となっている。役割としては回復とか治療とかの後方支援とあとは『浄化』だな。皆が一番最初に習うクリーンとは別物で、こっちのは土地を浄化するための魔法だ。

 回復系についての説明は授業では簡単にしかやらず、詳しい内容はこの特別授業でやるんだって。これから六年間、定期的に特別授業があるんだってさ。それは知らなかったからビックリ。
 この形になった理由は、『浄化』の魔法が回復系しか出来ないからなんだって。一般知識としては普通の授業でやるけど、それ以外の細かいところは回復系の生徒のみを対象にすることにしたそうなんだ。

「ここ二十年程報告は無いが、昔は魔素溜まりと言うものがよく発生したらしい。これは魔力持ちにだけ見える炎みたいなもんで、大きくなると魔物が生まれると言われている。魔素溜まりが多発する年も定期的にあったと言う話だ。で、これを消すのが回復系の魔法である『浄化』だな。だから君たち回復系が大変だった時期も過去にはあったと言う話だ」
「あの……、魔素溜まりって今はもう無いんですか?」
「無いぞー。百八十年前の当時の国王が国中の『浄化』を命じて、それを十年続けた結果消えたと言われている。と言っても今の私たちは歴史書でしか見ない話だからな、本当かどうかの判断は付かない。まあ本当なんだろうと私は思ってるが」

 サラッと言ってくれてるけど、この話は僕にとっては衝撃的な話だった。だって魔素溜まりだよ。前世であんなに苦労した魔素溜まりが今は無いんだよ。本当に本当なのかな? ちょっと信じられないような気がするけど、考えてみれば今世の僕が生まれてから一度も魔素溜まりなんて単語は聞いたことが無いや。僕が子供だっただけなのかもしれないけど、魔物が発生して騎士が出動したなんてウワサは一度も聞いたことが無いような気がする。
 考えてみれば前世の僕が死んでから四百年くらい経ってるんだよね。いろいろ変わってるのかもしれないな。きっとこれが時代の流れってやつなんだろうな。

しみじみそう思ったよ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

処理中です...