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1年
そんなこと言われても……
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魔力制御の基礎の基礎は、身体の中の魔力を感じることだ。魔力は僕たちの身体の中をグルグル回ってて、一番感じやすいのはおへその下あたりなんだ。たぶん身体の中の魔力の大半がここに集まってるんだと思う。
魔力を感じることが出来たら次にやることは、意識してその魔力を動かすこと。おへその下あたりにある魔力を少しずつ上に移動させ最終的には指先に集める、ここまで出来たら魔法が使える準備が出来たってことになるんだよ。おへその下で感じる魔力はほんのり温かい気がするから、イメージとしてはその温かいものが移動してるってカンジかな。無理矢理にでもそうイメージすることで動かすことが出来るようになるよ。あとは反復練習。そのうちに無意識に指先に持ってくることが出来るようになるから。
本当のことを言うと、身体の中の魔力を動かさなくても魔法を発動できるんだよ。最低限身体の中の魔力を感じさえできれば可能だ。でもその場合魔法の発動が安定しなくて不発に終わることも多いんだ。まあ初級魔法はギリギリなんとかなるかな。でも中級以降は発動させることはほぼ出来ない。
初級魔法が使える人が中級を学んだ途端に躓くのは、この魔力制御がしっかり出来てないからだ。地味な修行だけど、これだけはしっかりやる必要があるんだよ。
「今日は順番にクリーン魔法を教えていくことにする。呼ばれた者から先生のところへ来るように。それ以外は引き続き魔力制御の練習だ。じゃあまずはティタン君、教科書を持ってこっちへ来なさい」
僕たちのクラスは午後に魔法と剣――実際は単なる素振り――の授業があるんだ。今日は午後一が魔法の授業。お腹いっぱいの時間だから、魔力制御をやってるうちに眠っちゃう子もいるんだよ。もちろんそんなときは先生の拳骨で起こされるけど。
魔力制御の授業中は僕も真剣にやってるよ。と言っても僕の場合は魔力を素早く細かく分ける練習かな。イメージとしては各指先に魔力を送って、更にそれを細かく分けるんだ。これは複数の魔法を同時展開させるための訓練。前世ではしっかり出来てたことだから、それを目指して地味に練習するべし。どんなときでも基礎は一番大事ってことだね。
「セイン君、教科書を持って先生のところへ来なさい」
「ハイ」
僕が呼ばれたのはティタン君、ライムさんに続いて三番目だった。先生は既に魔法が使える子から順番に呼んでるみたいだ。あっ、ティタン君てのは授業初日に炎球を披露した子だよ。
「セイン君も既に魔法が使えるから、とりあえず呪文を唱えてクリーン魔法を発動させてみようか。水球を出すのと同じようにやるだけで大丈夫だ。まあ最初から上手くいかなくても問題無いぞ。初心者はそれが普通だ」
そう言いながら先生は僕の両手首に棒を使って泥を塗り付けた。
「この泥が消えたら魔法が成功したことになる。あとは繰り返すだけだな。呪文は覚えてるかい? 覚えてないなら教科書を見ながら唱えてみてくれ」
もちろん呪文は覚えてるし、実を言うとあと少しで無詠唱が実現できるくらいまで練習済みだ。でもそんなことはしないよ。さすがに失敗するのだけは僕のプライド的に無理だけど。と言うことで、教科書を見ながら暗記済みの呪文を唱えた。そして僕の両手首はみごとにキレイになったよ。
「ふむ……。教科書は見ていたが、その様子からするとほぼ呪文は暗記してたようだね。君もティタン君同様一発成功か。それじゃあついでに部分クリーンも挑戦してみようか」
にっこり笑いながら再度僕の両手首に泥を塗りつける先生……。先生がティタン君の名前を出したからなのか、彼は僕のことをキツイ目で睨んできた。何でか彼は、僕のことを目の敵にしてるみたいなんだよね。
「ほいっ。部分クリーンは右手首の方にしよう。さあやってみて」
そこで僕は教科書の部分クリーンの呪文のページを開き、呪文を唱えながら魔法を発動させた。呪文は普通のクリーンとほんのちょっと違うだけなんだ。だから間違えると両手首の泥が消えるんだよ。魔法発動後、もちろん右手首だけがキレイになったよ。でもそれと同時に『ひょっとしてこれって拙いかも……?』とも思った。だってね……。
「ほう……、さすがだねぇ。どうやらセイン君の魔力制御は、1年生レベルは卒業しているらしい」
「あの?」
「ちょっとしたイタズラだったんだけど、もしかしたらセイン君ならと思ってね。右手首に部分クリーンをかけるためには、魔力は左手に移動させないといけないからねぇ。それに部分クリーンは通常のクリーンよりもちょっとだけ扱いが難しい。いやあ、試してみるもんだよ」
やられた! すっかり油断してたよ。そう言えば初日の魔法の授業で先生に目を付けられてたんだっけ。ここんとこ何も言ってこなかったから、もう大丈夫だって思ってたのに。
そうなんだよ。魔力を動かす先は、一番最初は右手の人差し指なんだよ。これが出来るようになったら他の指で、右手が終わった次は左手なんだ。これについては国で決められてて、必ずこの順番にやるんだよ。そうすることで教える人が変わっても大丈夫なようにしてるんだ。
部分クリーンはキレイにしたい箇所を指さして魔法を発動させるからね、右手首の場合は左で指さすことになる。つまり僕は魔力制御に限り初心者レベルを卒業してるってことになるんだ。まさか先生が僕を試すようなことをするとは思わなかったよ。もう……苦笑いしか出ないんだけど。
「バグズダッド先生から、セイン君の特別授業は暫くお休みだと聞いている。と言うことで、今日こそ放課後僕の部屋へ来るように」
「……ハイ」
僕は力なく頷いた。何でかな。魔法に関してはなるべく目立たないように目立たないようにって気を付けてるつもりなのに、全く上手くいってない。やっぱり最初のクリーンを失敗するべきだったのかな。プライドが邪魔して発動させちゃったのが敗因だよね。でもどうしても譲れなかったんだよなぁ……。
「おいっ。いい気になるなよ。お前なんか直ぐに追い越してやるからな」
すんなり魔法が成功しちゃったからこの場で練習する必要は無い。ならば魔力制御の続きでもやろうかと元いた場所に戻ろうとしたところ、ティタン君に声かけられた。と言うより捨て台詞を吐かれたってのが正解かも。しかもティタン君は、再び僕を睨むことは忘れなかったようだ。
そんなこと言われても……と思う。時間差で炎球を二個出せるティタン君だから、もしかしたら僕を追い越せるかもしれないね。でも魔法は才能だけで出来るものじゃないから、直ぐってのはムリだと思うな。きっとそんなことを冷静に考えられる僕だから、いい気になってるって風に見えるのかもしれない。それは反省だね。今の僕はエンダル学園1年生のセインなんだから。
それにしても放課後先生の部屋に行くのは気が重いよ。
魔力を感じることが出来たら次にやることは、意識してその魔力を動かすこと。おへその下あたりにある魔力を少しずつ上に移動させ最終的には指先に集める、ここまで出来たら魔法が使える準備が出来たってことになるんだよ。おへその下で感じる魔力はほんのり温かい気がするから、イメージとしてはその温かいものが移動してるってカンジかな。無理矢理にでもそうイメージすることで動かすことが出来るようになるよ。あとは反復練習。そのうちに無意識に指先に持ってくることが出来るようになるから。
本当のことを言うと、身体の中の魔力を動かさなくても魔法を発動できるんだよ。最低限身体の中の魔力を感じさえできれば可能だ。でもその場合魔法の発動が安定しなくて不発に終わることも多いんだ。まあ初級魔法はギリギリなんとかなるかな。でも中級以降は発動させることはほぼ出来ない。
初級魔法が使える人が中級を学んだ途端に躓くのは、この魔力制御がしっかり出来てないからだ。地味な修行だけど、これだけはしっかりやる必要があるんだよ。
「今日は順番にクリーン魔法を教えていくことにする。呼ばれた者から先生のところへ来るように。それ以外は引き続き魔力制御の練習だ。じゃあまずはティタン君、教科書を持ってこっちへ来なさい」
僕たちのクラスは午後に魔法と剣――実際は単なる素振り――の授業があるんだ。今日は午後一が魔法の授業。お腹いっぱいの時間だから、魔力制御をやってるうちに眠っちゃう子もいるんだよ。もちろんそんなときは先生の拳骨で起こされるけど。
魔力制御の授業中は僕も真剣にやってるよ。と言っても僕の場合は魔力を素早く細かく分ける練習かな。イメージとしては各指先に魔力を送って、更にそれを細かく分けるんだ。これは複数の魔法を同時展開させるための訓練。前世ではしっかり出来てたことだから、それを目指して地味に練習するべし。どんなときでも基礎は一番大事ってことだね。
「セイン君、教科書を持って先生のところへ来なさい」
「ハイ」
僕が呼ばれたのはティタン君、ライムさんに続いて三番目だった。先生は既に魔法が使える子から順番に呼んでるみたいだ。あっ、ティタン君てのは授業初日に炎球を披露した子だよ。
「セイン君も既に魔法が使えるから、とりあえず呪文を唱えてクリーン魔法を発動させてみようか。水球を出すのと同じようにやるだけで大丈夫だ。まあ最初から上手くいかなくても問題無いぞ。初心者はそれが普通だ」
そう言いながら先生は僕の両手首に棒を使って泥を塗り付けた。
「この泥が消えたら魔法が成功したことになる。あとは繰り返すだけだな。呪文は覚えてるかい? 覚えてないなら教科書を見ながら唱えてみてくれ」
もちろん呪文は覚えてるし、実を言うとあと少しで無詠唱が実現できるくらいまで練習済みだ。でもそんなことはしないよ。さすがに失敗するのだけは僕のプライド的に無理だけど。と言うことで、教科書を見ながら暗記済みの呪文を唱えた。そして僕の両手首はみごとにキレイになったよ。
「ふむ……。教科書は見ていたが、その様子からするとほぼ呪文は暗記してたようだね。君もティタン君同様一発成功か。それじゃあついでに部分クリーンも挑戦してみようか」
にっこり笑いながら再度僕の両手首に泥を塗りつける先生……。先生がティタン君の名前を出したからなのか、彼は僕のことをキツイ目で睨んできた。何でか彼は、僕のことを目の敵にしてるみたいなんだよね。
「ほいっ。部分クリーンは右手首の方にしよう。さあやってみて」
そこで僕は教科書の部分クリーンの呪文のページを開き、呪文を唱えながら魔法を発動させた。呪文は普通のクリーンとほんのちょっと違うだけなんだ。だから間違えると両手首の泥が消えるんだよ。魔法発動後、もちろん右手首だけがキレイになったよ。でもそれと同時に『ひょっとしてこれって拙いかも……?』とも思った。だってね……。
「ほう……、さすがだねぇ。どうやらセイン君の魔力制御は、1年生レベルは卒業しているらしい」
「あの?」
「ちょっとしたイタズラだったんだけど、もしかしたらセイン君ならと思ってね。右手首に部分クリーンをかけるためには、魔力は左手に移動させないといけないからねぇ。それに部分クリーンは通常のクリーンよりもちょっとだけ扱いが難しい。いやあ、試してみるもんだよ」
やられた! すっかり油断してたよ。そう言えば初日の魔法の授業で先生に目を付けられてたんだっけ。ここんとこ何も言ってこなかったから、もう大丈夫だって思ってたのに。
そうなんだよ。魔力を動かす先は、一番最初は右手の人差し指なんだよ。これが出来るようになったら他の指で、右手が終わった次は左手なんだ。これについては国で決められてて、必ずこの順番にやるんだよ。そうすることで教える人が変わっても大丈夫なようにしてるんだ。
部分クリーンはキレイにしたい箇所を指さして魔法を発動させるからね、右手首の場合は左で指さすことになる。つまり僕は魔力制御に限り初心者レベルを卒業してるってことになるんだ。まさか先生が僕を試すようなことをするとは思わなかったよ。もう……苦笑いしか出ないんだけど。
「バグズダッド先生から、セイン君の特別授業は暫くお休みだと聞いている。と言うことで、今日こそ放課後僕の部屋へ来るように」
「……ハイ」
僕は力なく頷いた。何でかな。魔法に関してはなるべく目立たないように目立たないようにって気を付けてるつもりなのに、全く上手くいってない。やっぱり最初のクリーンを失敗するべきだったのかな。プライドが邪魔して発動させちゃったのが敗因だよね。でもどうしても譲れなかったんだよなぁ……。
「おいっ。いい気になるなよ。お前なんか直ぐに追い越してやるからな」
すんなり魔法が成功しちゃったからこの場で練習する必要は無い。ならば魔力制御の続きでもやろうかと元いた場所に戻ろうとしたところ、ティタン君に声かけられた。と言うより捨て台詞を吐かれたってのが正解かも。しかもティタン君は、再び僕を睨むことは忘れなかったようだ。
そんなこと言われても……と思う。時間差で炎球を二個出せるティタン君だから、もしかしたら僕を追い越せるかもしれないね。でも魔法は才能だけで出来るものじゃないから、直ぐってのはムリだと思うな。きっとそんなことを冷静に考えられる僕だから、いい気になってるって風に見えるのかもしれない。それは反省だね。今の僕はエンダル学園1年生のセインなんだから。
それにしても放課後先生の部屋に行くのは気が重いよ。
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