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1年
反論できない
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部分クリーンの、先生との一件をマシューに話したところ、溜息をつかれてしまった。マシュー曰く、僕はどこか抜けてる部分があるんだそうだ。仕事だけはしっかりやるけれど、それ以外の部分では目を離すと危ないんだって。酷いよね?
「初日に無詠唱しちゃったのがそもそもの原因じゃん。フィラー先生って、先生の中でも魔法バカの筆頭らしいぞ」
「そうなの?」
「たまたま先輩が話してるを聞いたんだ。上級生には有名らしい」
「そんな先生が何で1年の担任なんだろう?」
「去年は最上級生の担任だったんだよ」
「受け持ちが卒業したからかぁ……」
「来年もセインの担任かもな」
「ぅげ……」
無詠唱で水球出しちゃったときもそうだったけど、先生の目が異様に輝いてたんだよね。迫力がありすぎてちょっと近寄りたく無いって言うか……。僕の勘が言ってるんだ、静かに学園生活を送るためには近づかない方が良いって。放課後先生の部屋に行くのがものすごく気が重いよ。
「ところで、左手首の泥は消さないのか?」
「あー忘れてた……っと」
「あっ、バカ!」
「えっ?」
「あーもう……。セイン油断しすぎ。今どうやって魔法発動させた?」
「どうやって……て……、あ」
「アホだ……」
部分クリーン魔法初無詠唱。寮で練習してたからそろそろ出来ると思ってたけど、すごいね、無意識にやっちゃったよ。そして成功しちゃったよ。
でもこれをやった場所が悪い。だって教室だよ。先生は見てなかったと思うけど、もしかしたらクラスメイトの誰かが見てたかもしれない。万が一聞かれたら詠唱したって言い張るつもりだけど、やっぱり僕ってマシューの言う通りなのかも。
「自分が抜けてるって自覚したか?」
「……うん。でも言い訳してもいい?」
「言い訳?」
「先生の攻撃で、精神的ダメージを受けたのが原因」
「あー、その言い訳は通用しないな。完全にセインの不注意だ」
今僕の頭の中には、『自業自得』とか『墓穴』とかって単語が浮かんでるよ。
僕にとっては魔法が使えるのは当たり前のことなんだ。前世を思い出してからそれほど時間が経ってないのもあって、魔力制御はまだ甘い状態だ。これを前世のレベルに戻すのはかなり時間がかかると思ってる。でも普通に単発で魔法を使うこと自体は全く問題が無いんだよ。もちろん無詠唱がデフォルトだよ。
そんな僕が魔法を習い始めたばかりの子たちと一緒にいるのはかなり無理があると思うんだ。事情が事情だから仕方ないけど、今後もやっぱり不安かも。
「ねえねえ、さっき無詠唱してなかった?」
「えっ、してないよ」
「そうかなぁ? 詠唱してるようには見えなかったけどな」
「小さい声で詠唱してたよ。さすがに無詠唱はムリだって」
「うーん……、まっ、セインがそう言うならそうか!」
マシューが先生に呼ばれたタイミングでアルト君が声かけてきたんだ。さっきの部分クリーンを見てたみたい。僕が否定したから引き下がったけど、きっとあんまり信じてないんだろうなぁ。はぁ……、参った。
今僕に声かけてきたアルト君ともうひとり、トーマ君て子とは仲良くしてて、よく四人でお昼を食べたりしてるんだ。トーマ君は一番最初の授業で水球を出そうとして失敗した子。あのときは緊張しちゃって上手くいかなかったんだって。アルト君は今は魔力制御の練習中。そろそろ魔法が成功するかもってレベルになったと言ってたよ。
「あ、おかえりマシュー。どうだった?」
「三回目で成功した。部分クリーンは失敗、もう少し繰り返したら成功するって先生が言ってた」
「すげー。じゃあ一度も成功しなかったのはオレだけ?」
「成功したのクラスの半分くらいみたいだな。アルトだってもう少しでできるんじゃね?」
「うーん……。ま、頑張るしかないか」
にこやかにアルト君と話すマシュー。そんなマシューを僕は今ジト目で見ているよ。だってマシューが失敗するワケ無いんだもの。僕と一緒に寮で練習して、普通に使えるをの知ってるんだもの。出来ないフリするなんて、ズルイなぁ。
「睨んでもダメ。オレはここに入学して初めて魔法を習うんだから」
「ぶーぶーぶー」
「ちなみにセインは出来ないフリはムリだな。もう先生に目をつけられてるから」
「うー……」
そんなこんなで魔法の授業終了。屋内訓練場を出て行く先生の足取りが、とても軽かったのを付け加えておこう。
「次は素振りの時間だな」
「違うよー。今日は全員で学び舎の周りを走るんだよ」
「そう言えば、昨日そんなこと言ってたっけ」
「僕走れるかな?」
「あー、まあ頑張れ」
今日の剣の授業は、素振りじゃなくて学び舎の周りを走るんだ。学び舎はとても大きいから、一周するだけでもかなりの距離があるんだよ。授業時間が終わるまでに走り終わらないと、居残り特訓が待ってるんだ。多分素振りかな。逆に時間より早く走り終わった人は、その時点で授業終了。あとは好きにして良いんだってさ。
これは体力測定の一種なんだ。入試でやる体力測定に持久力が無かったから、ここできちんと把握しておこうってことみたい。魔法や剣の授業は、クラス単位の授業の形をとりつつ実際は個人指導に近いんだよ。
「じゃあセイン、頑張れよぉ。晩御飯の時間くらいに探しに行くから!」
マシューは騎士科専攻なだけあって、授業が終わってから毎日走ってるらしいんだ。だから学び舎一周は余裕らしいよ。ちなみに僕はその時間は、たいてい大図書館で調べものしてるかな。体力面ではかなりマシューに遅れをとってるから、時々は僕も走った方が良いのかも。
スタートの合図と共に飛び出して行ったマシューを見ながらそんなことを思ってた。
のんびり走って居残り特訓受けようかな?
そうしたらフィラー先生の部屋に行けなくなるよね。
走りながら浮かんだアイディアはとても良いような気がするんだけど、どう思う?
その後の結果だけど、ギリギリアウトになるように走ったにもかかわらず僕だけ特訓免除になったんだ。理由はフィラー先生に呼ばれてるから。万が一居残り特訓になっても先生の部屋に行くのを優先するようにって、事前にお願いされてんだって。
僕のこの小細工と言う名の努力は、結局は無駄骨になってしまったようだ。ものごとって上手くいかないね。しみじみそう思ったし。
「初日に無詠唱しちゃったのがそもそもの原因じゃん。フィラー先生って、先生の中でも魔法バカの筆頭らしいぞ」
「そうなの?」
「たまたま先輩が話してるを聞いたんだ。上級生には有名らしい」
「そんな先生が何で1年の担任なんだろう?」
「去年は最上級生の担任だったんだよ」
「受け持ちが卒業したからかぁ……」
「来年もセインの担任かもな」
「ぅげ……」
無詠唱で水球出しちゃったときもそうだったけど、先生の目が異様に輝いてたんだよね。迫力がありすぎてちょっと近寄りたく無いって言うか……。僕の勘が言ってるんだ、静かに学園生活を送るためには近づかない方が良いって。放課後先生の部屋に行くのがものすごく気が重いよ。
「ところで、左手首の泥は消さないのか?」
「あー忘れてた……っと」
「あっ、バカ!」
「えっ?」
「あーもう……。セイン油断しすぎ。今どうやって魔法発動させた?」
「どうやって……て……、あ」
「アホだ……」
部分クリーン魔法初無詠唱。寮で練習してたからそろそろ出来ると思ってたけど、すごいね、無意識にやっちゃったよ。そして成功しちゃったよ。
でもこれをやった場所が悪い。だって教室だよ。先生は見てなかったと思うけど、もしかしたらクラスメイトの誰かが見てたかもしれない。万が一聞かれたら詠唱したって言い張るつもりだけど、やっぱり僕ってマシューの言う通りなのかも。
「自分が抜けてるって自覚したか?」
「……うん。でも言い訳してもいい?」
「言い訳?」
「先生の攻撃で、精神的ダメージを受けたのが原因」
「あー、その言い訳は通用しないな。完全にセインの不注意だ」
今僕の頭の中には、『自業自得』とか『墓穴』とかって単語が浮かんでるよ。
僕にとっては魔法が使えるのは当たり前のことなんだ。前世を思い出してからそれほど時間が経ってないのもあって、魔力制御はまだ甘い状態だ。これを前世のレベルに戻すのはかなり時間がかかると思ってる。でも普通に単発で魔法を使うこと自体は全く問題が無いんだよ。もちろん無詠唱がデフォルトだよ。
そんな僕が魔法を習い始めたばかりの子たちと一緒にいるのはかなり無理があると思うんだ。事情が事情だから仕方ないけど、今後もやっぱり不安かも。
「ねえねえ、さっき無詠唱してなかった?」
「えっ、してないよ」
「そうかなぁ? 詠唱してるようには見えなかったけどな」
「小さい声で詠唱してたよ。さすがに無詠唱はムリだって」
「うーん……、まっ、セインがそう言うならそうか!」
マシューが先生に呼ばれたタイミングでアルト君が声かけてきたんだ。さっきの部分クリーンを見てたみたい。僕が否定したから引き下がったけど、きっとあんまり信じてないんだろうなぁ。はぁ……、参った。
今僕に声かけてきたアルト君ともうひとり、トーマ君て子とは仲良くしてて、よく四人でお昼を食べたりしてるんだ。トーマ君は一番最初の授業で水球を出そうとして失敗した子。あのときは緊張しちゃって上手くいかなかったんだって。アルト君は今は魔力制御の練習中。そろそろ魔法が成功するかもってレベルになったと言ってたよ。
「あ、おかえりマシュー。どうだった?」
「三回目で成功した。部分クリーンは失敗、もう少し繰り返したら成功するって先生が言ってた」
「すげー。じゃあ一度も成功しなかったのはオレだけ?」
「成功したのクラスの半分くらいみたいだな。アルトだってもう少しでできるんじゃね?」
「うーん……。ま、頑張るしかないか」
にこやかにアルト君と話すマシュー。そんなマシューを僕は今ジト目で見ているよ。だってマシューが失敗するワケ無いんだもの。僕と一緒に寮で練習して、普通に使えるをの知ってるんだもの。出来ないフリするなんて、ズルイなぁ。
「睨んでもダメ。オレはここに入学して初めて魔法を習うんだから」
「ぶーぶーぶー」
「ちなみにセインは出来ないフリはムリだな。もう先生に目をつけられてるから」
「うー……」
そんなこんなで魔法の授業終了。屋内訓練場を出て行く先生の足取りが、とても軽かったのを付け加えておこう。
「次は素振りの時間だな」
「違うよー。今日は全員で学び舎の周りを走るんだよ」
「そう言えば、昨日そんなこと言ってたっけ」
「僕走れるかな?」
「あー、まあ頑張れ」
今日の剣の授業は、素振りじゃなくて学び舎の周りを走るんだ。学び舎はとても大きいから、一周するだけでもかなりの距離があるんだよ。授業時間が終わるまでに走り終わらないと、居残り特訓が待ってるんだ。多分素振りかな。逆に時間より早く走り終わった人は、その時点で授業終了。あとは好きにして良いんだってさ。
これは体力測定の一種なんだ。入試でやる体力測定に持久力が無かったから、ここできちんと把握しておこうってことみたい。魔法や剣の授業は、クラス単位の授業の形をとりつつ実際は個人指導に近いんだよ。
「じゃあセイン、頑張れよぉ。晩御飯の時間くらいに探しに行くから!」
マシューは騎士科専攻なだけあって、授業が終わってから毎日走ってるらしいんだ。だから学び舎一周は余裕らしいよ。ちなみに僕はその時間は、たいてい大図書館で調べものしてるかな。体力面ではかなりマシューに遅れをとってるから、時々は僕も走った方が良いのかも。
スタートの合図と共に飛び出して行ったマシューを見ながらそんなことを思ってた。
のんびり走って居残り特訓受けようかな?
そうしたらフィラー先生の部屋に行けなくなるよね。
走りながら浮かんだアイディアはとても良いような気がするんだけど、どう思う?
その後の結果だけど、ギリギリアウトになるように走ったにもかかわらず僕だけ特訓免除になったんだ。理由はフィラー先生に呼ばれてるから。万が一居残り特訓になっても先生の部屋に行くのを優先するようにって、事前にお願いされてんだって。
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