目立たず静かに大人しく?

ふゆの桜

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1年

精霊魔法1

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「ただいまー」
「あれっ、フィラー先生のところへ行くんじゃなかったの?」

 放課後フィラー先生の部屋に呼ばれていた僕が予想よりも早く戻ったので、マシューに驚かれてしまった。多分マシューが寮に着いてからさほど時間は経ってないくらいだ。そりゃ驚くか。

「先生のところへは行ったんだけどね、急用ができたとかで無しになったんだ」
「へぇ~。ま、セイン的には都合が良かったんじゃね?」
「そうだね。明日に延期とも言ってなかったから、もう行かなくても良いかも」

 目立たない普通の生徒でいたい僕としては、先生の急用はとても都合が良かったと思うよ。そしてこのまま僕を呼んだことを忘れてしまってくれたら万々歳ってカンジかな。もう少ししたらクラスで魔法が使える子が増えるから、そしたら僕は他の子たちと同じに見えると思うんだ。と言うか、そう見えて欲しい。

「じゃあ僕も宿題やろっかな」

 機嫌良くそう呟いてから、僕は課題ノートを開いた。



◇◇◇ ◇◇◇

「え~大変喜ばしいことに、昨日、我が学園の生徒が精霊魔法の行使に成功した。精霊魔法の使い手は我が国では大変珍しく、彼が三人目となる。近日中に魔法協会から魔導師が派遣されてくると思われるので、見かけたら失礼のないように気をつけて欲しい。彼らは白いローブを着ているので見間違えることは無いだろう」

 翌朝上機嫌で教室に入ってきたフィラー先生は、ニコニコしながら我が国三人目となる精霊魔法使いのことを話しだした。一時間目の授業はどうやら特別授業になったらしく、そのまま精霊魔法について説明し始めたんだ。簡単にまとめるとこんなカンジかな。

 我が国では精霊は物語の中の想像の生き物だと言われていたが、二百年くらい前に実在するモノと言う認識が他国より齎された。その国には昔から精霊魔法使いが少数ではあるものの存在していて、彼らには他人に見えない精霊が見えていた。そんな彼らは精霊と意思疎通を行い、彼らの力を借りながら様々な魔法を行使した。
 僕たち魔力がある人間が詠唱または無詠唱で魔法を発動するのは、基本的に素質がある系統の魔法だけだ。それ以外は陣と言う方法を使って発動させる。でも精霊魔法の場合、素質が無い系統の魔法も陣を使わずに発動させることが出来る。特殊な言語、一般には精霊言語とか精霊呪文とか言われる言葉を使うことで発動が可能となる。

「以前は精霊魔法は精霊が見える人のみが使えると言われていたのだが、近年では見えない人でも使えると言う報告がされている。要は精霊がいる場所で正しい精霊言語をを使えばきちんと発動するそうだ。ただ問題は、精霊魔法使いの素質の見極め方が未だ不明なことだな」

 パカッと口が開いてしまった。僕の記憶では、精霊魔法とは精霊にお願いして発動してもらう魔法なんだ。嗚呼……そっか、見えなくても会話さえ出来れば問題ないってことなのか。僕が前世、ではなく前々世のときの大先輩に教えてもらったところでは、精霊魔法使いの第一条件は精霊が見えることだったんだよ。次に意思疎通ができること。魔法の行使をお願いするんだから当たり前だよね。
 ちなみに精霊魔法使いは大昔にはこの国にも少数だけど存在したんだよ。知られていないのはその誰しもが国へ報告しなかったからなんだ。むやみやたらと精霊と意思疎通してはならないってのが先人たちの言葉だ。精霊たちへのお願いの対価は自身の魔力だから、場合によってはガッツリと魔力を持っていかれて危険なんだもの。それもそうだし、人間の都合でいろいろ魔法を使わせすぎて、自然のバランスが崩れるのを危惧したってのが大きいかな。

 先生の話はまだ続く。

「他国の研究により、精霊言語そのものも最近ではかなり簡略化されている。昔の精霊言語と今の精霊言語では必要とする魔力量が倍近く違っているそうだ。なので魔力量が少ない人でも数発は行使できるそうだぞ。魔力科では3年になったら精霊言語の勉強も始めるから、興味がある人はそのときまで楽しみにしていてくれたまえ」

 またまた口がパカッと開いちゃった。言語によって使用魔力量が違うってどう言う意味だろう? もしかしてお願いのしかたで魔力量が違うのかな? すっごく気になる。大図書館で調べることが増えちゃったみたいだ。うん、さっそく今日から調べてみよう。

「せんせーい、それで何て人が精霊魔法を使えるようになったんですかー?」
「嗚呼、スマンスマン、言ってなかったか。精霊魔法を使えるようになったのは、魔法科5年のロドリス・グレゴイアス君だ。ティタン君の兄君だな。彼の家は昔から多くの魔導師を輩出していて、我が国最初の精霊魔法使いであるカールマイヤー氏もそこの出だ」

 その言葉でクラスメイト全員がティタン君を見た。僕も見たよ。彼は胸を張ってとても誇らしい顔をしていた。

「ティタン君の家では小さい頃から精霊言語を勉強すると聞いたのだが、君もやはり勉強してるのかい?」
「ハイ。僕も兄と一緒に勉強してました」
「つまり君も精霊魔法使いを目指してるのかな?」
「ハイ。兄は火ですが僕は水の精霊魔法使いを目指してます」
「ほうほう。もう少し聞きたいから、放課後私の部屋へ来てくれるかい?」
「ハイ!」

 ティタン君は元気良く返事をした後、僕の方をチロッと見たような気がする。ドヤ顔って言うんだっけ? 一瞬だったけど多分そんな顔だった。

 授業が終わった休み時間、クラスメイトのほとんどがティタン君の周りに集まっていた。皆精霊魔法使いのことをもっと知りたいんだろうね。そんな彼らを僕とマシューも席についたまま眺めてたんだ。

「精霊魔法って、セイン知ってた?」
「ん? んんー……」
「知ってたっぽいな。オレ今まで聞いたことないぞ」
「とりあえずその話は部屋に帰ったらするね」
「分かった。あまり外で話したくないみたいだな」
「うん、そうだね」

 前々世の教えで、大っぴらに話すもんじゃないって言われてるからね。

「何言ってるんだよ、精霊なんて見えるワケないじゃん! しゃべれないから声も聞こえない。精霊はそこに漂っているだけのもので、空気みたいなものだってさ。ホントの事言うと、精霊魔法は特別な言葉を使って精霊の力を引き出すだけのものだ。兄様が言ってたけど、昔の人が言った精霊が見えるって話はウソだってさ」

 突然聞こえてきたティタン君の言葉に僕はビックリしてしまった。
 見えないの? 声も聞こえないの?
 それでどうやって精霊魔法使いになったんだろう?

「……見えるし、声も聞こえるんだけどなぁ」

 思わず小さな声で呟いていた。
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