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2年
2年生になりました3
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2年になってからの授業は、魔法についてはより本格的になった。1年の頃は治癒魔法とクリーン、それから自分が持ってる系統の魔法をひとつ覚えるだけでも良かったんだ。もちろんそれ以上を頑張るのも良いし、そうでなくても良い。きっとこれからも魔法を学びたいって思えるように仕向けるための授業だったと思うな。事実選択科目の魔法初級は、僕たち魔法科の授業よりのんびりしたペースだって聞いてるから。
魔法実習での進級合格条件は、自分が持ってる系統の初級魔法全マスターなんだ。ひとつでも出来ない魔法があったら留年決定だよ。その条件で行くと、複数系統持ちにはものすごく厳しいよね。だから一応救済措置として、三系統以上の生徒は、二系統の初級魔法全マスターとなってる。もちろんそれ以上なら尚良しだ。
「あ~あ、また失敗したぁぁぁ」
ランス君が、がっくりとしゃがみ込んだ。
今は魔力制御の時間で、自分が出来る一番簡単な魔法を使って自在に動かすってことをやってるんだ。ランス君の場合はミニシールドを出して、それをゆっくり動かす練習だ。魔力を出し続けて魔法が消えないようにして、尚且つそれを動かす。二つのことを一緒にやるから、慣れるまではやっぱり大変。皆頑張って!
「セイン君、もう一回やってみせてくれる?」
「いいよ。ゆっくりやるから見ててね」
僕はランス君の目の前でミニシールドを出し、それを円を描くようにゆっくりと回し始めた。
「すっごく簡単そうに見えるんだけどさぁ、何が違うんだろう?」
「慣れ? 僕小さい頃からたくさん練習したから」
「やっぱそうなのかなぁ。うーん、悔しいぜ」
「だったらさぁ、まずはミニシールドを出した状態で歩いてみたら? 歩きながらシールドを出し続けることが出来たら、きっと動かすのも出来るようになると思うよ」
「へえ。ならちょっとやってみっか」
僕から出来るアドバイスはこれくらいかな。
最初の頃は魔法は立ったままの状態で出すから、少しでも身体を動かすと消えちゃうことが多いんだ。身体を動かす方に気がいって、魔力を出し続ける方が疎かになっちゃうの。だから本当はこっちを先にやる方が良いんだよね。今のカリキュラムにはそれが入ってないから、皆苦労してるみたい。
「セイン君のアドバイスって結構有益よね。私もそっちからやろうっと!」
「へえ~。じゃあ、オレもそっちからやってみる」
マイン先生は何も言わず黙って見てるだけだ。今はまだ様子を伺ってるのかな?
そんな風に思ってたんだけど実際は違ってて、マイン先生が何も言わなかったのは、フィラー先生の言葉に従ったからなんだって。きっと僕が何かアドバイスするだろうからって……。先生に僕の行動を読まれてるみたい。これって良いことなのかなぁ?
魔力制御の次はマナーの授業だ。今日習ったのは『魔導師の礼』だよ。正式な魔導師の礼は、片膝を立てて手を胸の前で組んでするんだ。略式は立ったまま。懐かしいね。これは僕が前々世の頃から全く変わってなかった。さすがにこの礼だけは一発で合格って言われたよ。ダメ出しされたら凹んでたかもしれない。
◇◇◇ ◇◇◇
「へぇ~。騎士科も今日はマナーの授業があってさ、騎士の礼だったぜ」
「どの科も一番最初は敬礼からなんだね」
授業が始まってからは、毎晩マシューとお互いの授業を報告しあってるんだ。騎士科と魔法科だと授業内容って全然違うからね、お互い聞いてるだけで楽しいってカンジ。中には同じ授業もあるけど、今回のマナーの授業みたいに、やっぱり微妙に違ってるんだ。
「騎士科は他にはどんな授業をやったの?」
「剣の授業では、軽く素振りをした後に組になっての打ち合いだな。その様子を見ながら、副担任の先生がアドバイスしてくんだ」
「そうなんだ。僕たちの方も、魔法実習では副担任が忙しそうだったよ」
「フィラー先生は?」
「何もしてない? きっと全体を見てたとは思うけど」
「ふうん」
「ただね……、結構フィラー先生の視線を感じたんだよね。だから変に緊張したって言うか」
「そのうちにボロが出るかもな」
「うん。無詠唱しちゃいそうになるから大変なの」
「贅沢な悩みだ」
水球だけは無詠唱バレちゃったけどね、それ以外の魔法では無詠唱は出来ないんだよ。複数魔法の同時展開も、もちろん出来ないよ。陣なんてもってのほか。知識すらありません! ……ってことになってる。表向きは。
「まだ授業は始まったばかりだけどさ、思いっきり魔法が使いたいって思うよ」
「あはは。まあ今はガマンだな。リロイさんたちも今は忙しいだろうし」
「そうだね。じゃあ僕は魔力制御の訓練しようっと」
そう言って僕は、部屋の隅に立てかけてある盥と、洗濯物が入ってるカゴを持ってきた。まずは水球を作ってその中に洗濯物と洗剤を入れて、それから風魔法を加えて水球の中で洗濯物をぐるぐる回すんだ。水球は異物が入ると崩れるからね、そうならないようにするのも訓練なんだよ。ある程度洗ったらもう一つ別の水球を作って、そっちに洗濯物だけを移動。魔法で移動させるのは面倒だから手作業だ。洗剤入りの水球の方は洗面所まで移動させて流す。残った水球にまた風の魔法を合わせて……。ようは洗濯だね。最後は洗濯物だけを風魔法で乾燥させて終了。
「しかしまあ……。セインの魔法って、本当に生活に根差してるよな」
「えー、普通だと思うよ」
「そうか?」
「昔の魔導師は、そうやって日々工夫してたってことだよ」
「まあそうだな。いつかセイン式の洗濯を披露してみたらどうだ? 絶対全員驚くと思うぜ」
「洗濯用の魔道具と同じじゃん」
「だとしてもだ。それを魔道具じゃなく普通に魔法でやるってのが凄いんだよ。セイン以外にはやる人いないと思うぜ」
「そうかなぁ? 風と水の魔法が使える人なら誰でもやってそうだけどなぁ」
そんなに凄いことをやってるつもりは無いんだどね。しかもこれ、魔力制御の訓練にもってこいなんだ。他には包丁を使わずに野菜を切るとかも訓練になるんだよ。魔力制御も、突き詰めていけば魔法制御になるってこと。地味な訓練もこうやって工夫したら沢山できるからね、僕としては良い方法だと思ってるんだ。
2年生になったばかりの今はマシュー以外には披露することは出来ないけど、いつかチャンスがあったら誰かにアドバイスしても良いかも。僕のアドバイスで少しでも皆が魔法を上達できたなら、それが僕にとって一番嬉しいことだ。
※※※
洗濯の魔法は超高度です。もし学園で披露したら、先生方の口と目が大きく開きます。
魔法実習での進級合格条件は、自分が持ってる系統の初級魔法全マスターなんだ。ひとつでも出来ない魔法があったら留年決定だよ。その条件で行くと、複数系統持ちにはものすごく厳しいよね。だから一応救済措置として、三系統以上の生徒は、二系統の初級魔法全マスターとなってる。もちろんそれ以上なら尚良しだ。
「あ~あ、また失敗したぁぁぁ」
ランス君が、がっくりとしゃがみ込んだ。
今は魔力制御の時間で、自分が出来る一番簡単な魔法を使って自在に動かすってことをやってるんだ。ランス君の場合はミニシールドを出して、それをゆっくり動かす練習だ。魔力を出し続けて魔法が消えないようにして、尚且つそれを動かす。二つのことを一緒にやるから、慣れるまではやっぱり大変。皆頑張って!
「セイン君、もう一回やってみせてくれる?」
「いいよ。ゆっくりやるから見ててね」
僕はランス君の目の前でミニシールドを出し、それを円を描くようにゆっくりと回し始めた。
「すっごく簡単そうに見えるんだけどさぁ、何が違うんだろう?」
「慣れ? 僕小さい頃からたくさん練習したから」
「やっぱそうなのかなぁ。うーん、悔しいぜ」
「だったらさぁ、まずはミニシールドを出した状態で歩いてみたら? 歩きながらシールドを出し続けることが出来たら、きっと動かすのも出来るようになると思うよ」
「へえ。ならちょっとやってみっか」
僕から出来るアドバイスはこれくらいかな。
最初の頃は魔法は立ったままの状態で出すから、少しでも身体を動かすと消えちゃうことが多いんだ。身体を動かす方に気がいって、魔力を出し続ける方が疎かになっちゃうの。だから本当はこっちを先にやる方が良いんだよね。今のカリキュラムにはそれが入ってないから、皆苦労してるみたい。
「セイン君のアドバイスって結構有益よね。私もそっちからやろうっと!」
「へえ~。じゃあ、オレもそっちからやってみる」
マイン先生は何も言わず黙って見てるだけだ。今はまだ様子を伺ってるのかな?
そんな風に思ってたんだけど実際は違ってて、マイン先生が何も言わなかったのは、フィラー先生の言葉に従ったからなんだって。きっと僕が何かアドバイスするだろうからって……。先生に僕の行動を読まれてるみたい。これって良いことなのかなぁ?
魔力制御の次はマナーの授業だ。今日習ったのは『魔導師の礼』だよ。正式な魔導師の礼は、片膝を立てて手を胸の前で組んでするんだ。略式は立ったまま。懐かしいね。これは僕が前々世の頃から全く変わってなかった。さすがにこの礼だけは一発で合格って言われたよ。ダメ出しされたら凹んでたかもしれない。
◇◇◇ ◇◇◇
「へぇ~。騎士科も今日はマナーの授業があってさ、騎士の礼だったぜ」
「どの科も一番最初は敬礼からなんだね」
授業が始まってからは、毎晩マシューとお互いの授業を報告しあってるんだ。騎士科と魔法科だと授業内容って全然違うからね、お互い聞いてるだけで楽しいってカンジ。中には同じ授業もあるけど、今回のマナーの授業みたいに、やっぱり微妙に違ってるんだ。
「騎士科は他にはどんな授業をやったの?」
「剣の授業では、軽く素振りをした後に組になっての打ち合いだな。その様子を見ながら、副担任の先生がアドバイスしてくんだ」
「そうなんだ。僕たちの方も、魔法実習では副担任が忙しそうだったよ」
「フィラー先生は?」
「何もしてない? きっと全体を見てたとは思うけど」
「ふうん」
「ただね……、結構フィラー先生の視線を感じたんだよね。だから変に緊張したって言うか」
「そのうちにボロが出るかもな」
「うん。無詠唱しちゃいそうになるから大変なの」
「贅沢な悩みだ」
水球だけは無詠唱バレちゃったけどね、それ以外の魔法では無詠唱は出来ないんだよ。複数魔法の同時展開も、もちろん出来ないよ。陣なんてもってのほか。知識すらありません! ……ってことになってる。表向きは。
「まだ授業は始まったばかりだけどさ、思いっきり魔法が使いたいって思うよ」
「あはは。まあ今はガマンだな。リロイさんたちも今は忙しいだろうし」
「そうだね。じゃあ僕は魔力制御の訓練しようっと」
そう言って僕は、部屋の隅に立てかけてある盥と、洗濯物が入ってるカゴを持ってきた。まずは水球を作ってその中に洗濯物と洗剤を入れて、それから風魔法を加えて水球の中で洗濯物をぐるぐる回すんだ。水球は異物が入ると崩れるからね、そうならないようにするのも訓練なんだよ。ある程度洗ったらもう一つ別の水球を作って、そっちに洗濯物だけを移動。魔法で移動させるのは面倒だから手作業だ。洗剤入りの水球の方は洗面所まで移動させて流す。残った水球にまた風の魔法を合わせて……。ようは洗濯だね。最後は洗濯物だけを風魔法で乾燥させて終了。
「しかしまあ……。セインの魔法って、本当に生活に根差してるよな」
「えー、普通だと思うよ」
「そうか?」
「昔の魔導師は、そうやって日々工夫してたってことだよ」
「まあそうだな。いつかセイン式の洗濯を披露してみたらどうだ? 絶対全員驚くと思うぜ」
「洗濯用の魔道具と同じじゃん」
「だとしてもだ。それを魔道具じゃなく普通に魔法でやるってのが凄いんだよ。セイン以外にはやる人いないと思うぜ」
「そうかなぁ? 風と水の魔法が使える人なら誰でもやってそうだけどなぁ」
そんなに凄いことをやってるつもりは無いんだどね。しかもこれ、魔力制御の訓練にもってこいなんだ。他には包丁を使わずに野菜を切るとかも訓練になるんだよ。魔力制御も、突き詰めていけば魔法制御になるってこと。地味な訓練もこうやって工夫したら沢山できるからね、僕としては良い方法だと思ってるんだ。
2年生になったばかりの今はマシュー以外には披露することは出来ないけど、いつかチャンスがあったら誰かにアドバイスしても良いかも。僕のアドバイスで少しでも皆が魔法を上達できたなら、それが僕にとって一番嬉しいことだ。
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洗濯の魔法は超高度です。もし学園で披露したら、先生方の口と目が大きく開きます。
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