目立たず静かに大人しく?

ふゆの桜

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2年

野営料理入門6

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 今年新設された『野営料理入門』は、僕含めて約三十人の生徒が受講している。最近の新人冒険者に対する愁いから新設されたもののカリキュラム等ほとんど決まってなく、かつ、先生も契約冒険者が持ち回りで行うと言う、ある意味場当たり的な科目でもあるんだ。
 学園側も先生たちもいろいろ混乱してて、授業内容も当初の予定からどんどん変わっていく可能性が高いらしい。事実この野外実習は夏休み後に行う予定だったものだしね。もしかしたら来年は科目名称も変わってるかもしれないし、この科目自体が無くなってる可能性もゼロでは無いそうだ。そう言った観点からいくと、他の科目に比べて自由度が高い科目と言えるかもしれない。

 そして今回の初野外実習は、参加人数が受講数の倍いると言う、授業と言うよりはイベント的なものに変わってるような気がするんだよね。

 何故こんなに人数が増えたかと言うと、この科目を受講してる生徒と同じグループの生徒が参加してるから。しかも、生徒だけじゃなく先生を担当してる冒険者たちも同様だ。
 それから何故か見学冒険者ってのも参加してるよ。彼らは学園の契約冒険者グループに志願してるそうで、この野外実習は、契約冒険者がどのように生徒と接してるかを見学するのに良い機会って学園側が判断したそうだ。もちろん見学なので彼らは僕たち生徒には関わらないよ。ただし、質問された場合は答えるのは自由らしい。でもって、そのときの様子を他の契約冒険者がチェックするんだって。もちろん内緒でね。何故かリロイさんが教えてくれた。

「あー、なんかものすごい人数になってしまったが、今から野外実習を始める。実習をやるのはお前ら生徒だけな。オレたち冒険者は見守るだけだから、基本的に質問は受け付けない。しかも野草やキノコについては先生を担当してるヤツしか知らないから、それ以外には聞くだけ無駄だ。逆に食べれない野草を教えるかもしれないぞ。その場合、お前らには申し訳ないが自己責任でお願いする。つまり訓練でダンジョンへ入るのと一緒だ。ここまで分かったか?」

 先生を代表して説明してるのはジャイルさんだ。『ブルーグレー』と言う冒険者グループのリーダーだよ。グループ名の由来はジャイルさんの好きな色だって聞いてる。そう言う名前の付け方もあるんだね。
 くだけた言い方なのは、ほとんどの生徒が騎士科でジャイルさんと顔見知りだからなんだ。授業もそうだし、サポートとして一緒にダンジョンに入ったこともあるみたい。なので雰囲気としては、授業と言うよりやっぱりイベントだね。もちろんちょっとした野次も飛んでるよ。

 今日の実習スケジュールはまずは土台作成。各グループ毎に調理する場を整えるってことだね。これは火を付ける手前までやって完成だよ。その後は僕とマシューの実演。ウィードさんから聞いてたとおり、今日の為に生け捕りにしたウサギを二羽持ってきてあった。僕とマシューはウサギの命を消すところから始めるらしい。残酷だけど、僕たちが生きていく為には必要なことだ。その後は野草とキノコを採取して料理、食事って流れだ。野草等は集め終わった時点で一旦先生がチェックすることになっている。さすがにそれだけは省けないと思ったみたい。

 僕とマシューは野草集めは免除されてるから、代わりに魚を捕るつもりだ。冒険者側は今回は料理はせず携帯食のみの予定だから、そこに捕った魚を加えてあげようって思ってね。ちなみに僕とマシューの食べる分は、他グループからの差し入れと言う名の味見だ。食べれるレベルのものを差し入れて欲しいと心から願ってる。

「全員土台の方は出来たようだな。じゃあ次はウサギだ。ウサギは後で各グループへ配るから、どうやって食べるかは好きにしてくれ。ただし生はやめてくれよ。腹を壊した場合は、遠慮なく置いてくからな~。
 つうことで……っと、この二羽のウサギは代表して彼らにさばいて貰う。セイン君とマシュー君だ。マシュー君はセイン君の友達で、将来の夢は二人で冒険者になることだそうだ。ちびっ子冒険者に、ハイ拍手~」

 拍手とともに生暖かい視線に包まれた僕とマシューは、ペコリとお辞儀をした後は二人揃って苦笑いだ。特に冒険者さんたちの視線は、先輩ではなく保護者の視線だったと思う。かなり恥ずかしい。

 拍手が鎮まった後は、ジャイルさんの指示に従ってウサギの処理だ。籠から出したウサギを他の人に押さえてもらってからスタート。ウサギはまだ生きてるから、万が一僕たちが逃がさない為の配慮だね。ウサギだって必死だから、当然の配慮だと思う。
 指示に従って僕もマシューも淡々と手を動かしていく。最初は野次を飛ばしてた人たちも、迷いの無い僕たちの手つきに静かになってしまった。「もしかして慣れてる?」なんて言葉が飛んてきたくらいだもの。今世では初めてだけど、この場合どう答えたら良かったのかなぁ……。

「皆は一度習ったと思うが、内臓とかは放置せず土の中に埋めてくれ。それから血が落ちた場所もちゃんと掘り返して別の土を被せておくように」

 時々作業を止めて、何故それが必要かなんてことも説明してたよ。そうやって理由を聞くことによって、手順を抜かすことが無いように仕向けてるんだ。もちろん生徒からの質問にもしっかり答えてたのは言うまでもない。ちなみに不要物の処理だけど、僕の場合は埋めずに雷魔法で一発かな。だってそれが一番簡単なんだもん。

「よーし、これで終了だ。肉は後で配るから、君たちは野草とキノコの採取に向かってくれ。ちなみにどの部位が欲しいかは早い者勝ちな。野草とキノコの採取が合格だったら渡してやる。分かったか? じゃあ頑張れよぉ」

 その言葉を合図に、皆は思い思いの方向へ散らばって行った。

「ご苦労さん。最近の2年生っつうのは凄いんだな。一人くらいは泣くと思ったのが残念だ。当てが外れたよ」
「やっぱり期待してたんですか?」
「そりゃあな。引率で来てるおっちゃんたちだって、少しくらいは娯楽が欲しいからな」
「ひでぇ。普段の授業のときも、そうやって泣かそうとしてるんか?」
「ははは。向いてない子は早めに方向転換させてあげるべきだろう? 優しさってもんだ」
「それからいったら、オレたちは合格か?」
「とりあえず今の時点では合格だな。君は騎士科だっけ? その内にオレが直々に愛の鞭を振ってやろう」
「サポート講師もやってるんだよな。オレが上級生になったら顔を合わせることもあるってことか。じゃあ、そのときはよろしく」
「ははは。授業のときは言葉遣いはちゃんとしろよー」

 にこにことジャイルさんと会話をしながらも、僕たちは血の付いた土を入れ替えていく。他の冒険者さんたちは、散らばった生徒を見守るように付いて行ったようだ。ここら辺は安全な場所ではあるけど、魔物の森だから、やっぱり警戒は必要ってことだね。

「とりあえず君たちの出番はここまでだから、ウィードさんたちと休憩しててくれ」
「はーい」

 むしろ本番はこれからだよ。次は魚捕りだ。
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