王妃から夜伽を命じられたメイドのささやかな復讐

当麻月菜

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そんなのってアリ?!

「ロッタお前なぁ、そういう不意打ちはやめろ」
「不意打ち? え?」

 きょとんとするロッタはその自覚が無い。

 でも、もやもやの原因はしっかり自覚している。

「あのね聞いて。私ずっともやもやしてたけど、ちょっと違った。自分の不甲斐なさに落ち込んでいたの」
「はぁ」

 神妙な顔つきで語り出したロッタに、アサギは微妙な表情になる。

 自分をとことん振り回してと、文句の一つでも言ってやりたい。

 でも、アサギはロッタに甘い。パンケーキがシロップでべちゃべちゃになるほどの甘さだ。

 だから、ぐっと口角を上げて続きを促す。

「不甲斐ないことは何もしてないと思うけど、具体的にはなんだい?」
「うーん。結果的には上手くいったんだけどね。アサギの策は素晴らしかったんだけどね、何一つ落ち度はなかったし、私一人じゃ絶対に思い付かな」
「うん。賛辞はしっかり受け止めた。ありがとう、ロッタ。だから、そろそろ続きをどうぞ」
「あ、ごめん。でね、なんで落ち込んでいるかっていうと……」

 そこでロッタはアサギから手を離して、一歩距離を取った。

「結局、アサギに助けてもらったことが情けないって思っているの」
「…… そこで落ち込むのか?」
「そこでしか落ち込む要素は無い」
「さいですか」

 もうこれ以上肩を落としたら脱臼してしまう程しょげたロッタに、アサギは儀礼的に頭を撫でた。

「ごめんね、アサギ」
「謝る要素が見当たらないから、受け取れない」
「受け取ってよぉ」

 ロッタは離れてしまった距離を詰める。そして、アサギの胸を軽くたたいた。

「……違うもんなら、喜んで受け取るけどなぁ」

 ボソッと呟いたアサギだけれど、己の胸元をポカポカ殴るのに夢中になっているロッタには届かなかった。

「アサギにはあんまり頼りたくなかった」
「いやそれ、結構マジで傷付くぞ? 俺は」
「なんでよぉ。だって自立したかったんだもん」
「は? もうメイドとして働いているんだから十分自立してるだろ?」
「違うっ。気持ちの面では自立していないのっ」

 感情が高ぶったロッタは、ドンッとアサギの胸を押す。

 でもアサギはびくともしない。対してロッタは、反動でよろめいてしまう。

「おい、危ないっ。なに遊んでんだよ、まったく」

 慌てて自分の元に引き寄せるアサギに、ロッタは大人しく従うが、口を閉じることは無い。

「私、困った時は一番にアサギの顔を浮かべてしまうの。それが嫌なの。アサギのことが大事だから都合よく使いたくないのっ。それに今回の事だって……もしかしたら、アサギは殺されちゃってたかもしれないんだよ。…… それもこれも全部自分が不甲斐ないせいなのっ。だから、ごめんアサギ。危ない目に合わせて」

 アサギは、自分の胸に額をぐりぐり押し当てて、堰を切ったように思いの丈をぶつけるロッタが、可愛くて仕方がなかった。

「んなもん。気にするな。俺がそんなことで死ぬわけないだろう?それに、しっかり一泡吹かせたんだ。もっと嬉しそうにしてくれよ、な?ロッタ」

 膝を折ってロッタを覗き込むアサギは、ちょっとだけ良心が痛んでいる。

 なぜなら王妃に一泡吹かせる為に授けた策は、まだ終わりではない。
 というかこれまでのことは、茶番のようなもの。

 これからが本番だったりもする。
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