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二部 まさかの再会に驚きましたが……何か?
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馬車の周りには、いつでも出立できるよう騎士達が待機している。その中に、着飾った一人の少女が紛れ込んでいた。
「おはようございます。聖皇后殿下」
カレンの姿を認めた少女は、そわそわと落ち着かない様子から、ぱっと笑顔になってこちらに駆け寄ってきた。
もちろんカレンが笑みを返すことはせず、「何、この人?」と露骨に怪訝な表情を浮かべる。
少女は気づいているはずなのに笑顔をくずさず、優雅にスカートの裾を持ち上げ腰を落とした。
「ご機嫌うるわしゅうございます、聖皇后殿下。本日はお願いがあってこちらで待たせていただきました」
「お……お願い?」
「さようでございます。どうしても直接、聖皇后殿下に申し上げたくてずっとここで待っていたのでございます」
(うっわー。ここにもストーカーがいた)
不審者を見る目になったカレンだが、ここではたと気づく。
見かけない顔だと思ったが、この少女を遠目から窓ガラス越しに見たことを思い出した。
(この子、アイツの愛人じゃん)
いつぞやの朝、アルビスを取り囲んで嬉しそうにはしゃいでいた取り巻きの一人だと思い出した途端、カレンの表情はみるみるうちに険しくなる。
去年の冬、シャオエから暗殺者を送られたことは記憶に新しい。あんな経験は一生に一度で十分だし、彼女の首と胴が離れた出来事は、いろんな意味で耐えがたい。
そんな厄介で、面倒で、危険な立場の人からの願い事。これはどう考えても、ロクなものじゃない。
「悪いけど、無理」
「せめて聞くだけでも聞いてくださいませんか?」
「えー、それも嫌なんだけど……」
少女があまりに悲しそうな表情をするものだから、カレンは目を逸らして答えてしまった。
(なんかシャオエと違うタイプの気がするけど……)
見たところ少女は嫉妬や憎しみを抱えていないが、絶対とは言い切れない。
カレンにとってこの世界では、ずっと警戒心を持ち続けなければいけない場所。気を抜けば心と身体をズタボロにされる。
人を疑い続けることに疲れを覚えるけれど、元の世界に戻るためには仕方がない。それに、一刻も早く孤児院に向かいたい。
そんな気持ちから、カレンはリュリュに助けを求めることにした。
自分と違って異世界生まれの異世界育ちのリュリュは、きっと上手に断ってくれるだろう。
「……リュリュさ」
「聖皇后陛下、本日はわたくしもご同行させてくださいな」
「はぁ!?」
許可を得ぬまま申し出た少女の突飛な発言に、カレンは目を剥いて声を張り上げてしまう。
ずっと沈黙を守っていたリュリュが、さすがに我慢できず割って入ろうとするけれど、それを制するように少女が口を開いた。
「実はですね、もう既に聖皇帝陛下から許可はいただいているんです」
にこっと可愛らしい笑みを浮かべた少女の視線は、リュリュに向いていた。
聖皇帝陛下はメルギオス帝国において、法であり秩序でもある。
神様のように敬われる存在が許可したとなれば、リュリュとて少女を止めることはできない。
「……カレン様、陛下に確認を取ってきます」
リュリュが小声で尋ねるが、カレンは頷くことはしない。
(ったく、アイツは何をしたいわけ?)
夜会で自分を助けてくれたと思ったら、今度は愛人同伴で外出しろという。やっていることがメチャクチャだ。
「リュリュさん、行かなくていいよ」
孤児院に到着時刻は伝えてある。こんなくだらないやり取りで遅刻なんてしたくない。
「悪いけど、あなたに構っている時間はないの。今日は諦めて」
「……さようですか。でも……わたくし、聖皇帝陛下から許可を貰ったのに、聖皇后陛下と共に外出できなければお叱りを受けることになります」
しゅんと肩を落とす少女はこの後、アルビスに責められることを本気で恐れているようだ。
アルビスがどう愛人達に接しているわからないカレンは、心がほんの少しだけ揺れ動く。
(……万が一、体罰とか受けて泣かれたりしたら……それかなり後味悪いな)
短い葛藤の末、カレンはお人好しすぎる結論を下してしまった。
「好きにして。でも、邪魔はしないでよ」
「はいっ!もちろんでございます」
ぱぁっと輝かんばかりの笑顔を浮かべる少女は心から喜んでいるようだった。
(はいはい、そうですか)
カレンは見て見ぬふりをして、馬車へと乗り込んだ。
「おはようございます。聖皇后殿下」
カレンの姿を認めた少女は、そわそわと落ち着かない様子から、ぱっと笑顔になってこちらに駆け寄ってきた。
もちろんカレンが笑みを返すことはせず、「何、この人?」と露骨に怪訝な表情を浮かべる。
少女は気づいているはずなのに笑顔をくずさず、優雅にスカートの裾を持ち上げ腰を落とした。
「ご機嫌うるわしゅうございます、聖皇后殿下。本日はお願いがあってこちらで待たせていただきました」
「お……お願い?」
「さようでございます。どうしても直接、聖皇后殿下に申し上げたくてずっとここで待っていたのでございます」
(うっわー。ここにもストーカーがいた)
不審者を見る目になったカレンだが、ここではたと気づく。
見かけない顔だと思ったが、この少女を遠目から窓ガラス越しに見たことを思い出した。
(この子、アイツの愛人じゃん)
いつぞやの朝、アルビスを取り囲んで嬉しそうにはしゃいでいた取り巻きの一人だと思い出した途端、カレンの表情はみるみるうちに険しくなる。
去年の冬、シャオエから暗殺者を送られたことは記憶に新しい。あんな経験は一生に一度で十分だし、彼女の首と胴が離れた出来事は、いろんな意味で耐えがたい。
そんな厄介で、面倒で、危険な立場の人からの願い事。これはどう考えても、ロクなものじゃない。
「悪いけど、無理」
「せめて聞くだけでも聞いてくださいませんか?」
「えー、それも嫌なんだけど……」
少女があまりに悲しそうな表情をするものだから、カレンは目を逸らして答えてしまった。
(なんかシャオエと違うタイプの気がするけど……)
見たところ少女は嫉妬や憎しみを抱えていないが、絶対とは言い切れない。
カレンにとってこの世界では、ずっと警戒心を持ち続けなければいけない場所。気を抜けば心と身体をズタボロにされる。
人を疑い続けることに疲れを覚えるけれど、元の世界に戻るためには仕方がない。それに、一刻も早く孤児院に向かいたい。
そんな気持ちから、カレンはリュリュに助けを求めることにした。
自分と違って異世界生まれの異世界育ちのリュリュは、きっと上手に断ってくれるだろう。
「……リュリュさ」
「聖皇后陛下、本日はわたくしもご同行させてくださいな」
「はぁ!?」
許可を得ぬまま申し出た少女の突飛な発言に、カレンは目を剥いて声を張り上げてしまう。
ずっと沈黙を守っていたリュリュが、さすがに我慢できず割って入ろうとするけれど、それを制するように少女が口を開いた。
「実はですね、もう既に聖皇帝陛下から許可はいただいているんです」
にこっと可愛らしい笑みを浮かべた少女の視線は、リュリュに向いていた。
聖皇帝陛下はメルギオス帝国において、法であり秩序でもある。
神様のように敬われる存在が許可したとなれば、リュリュとて少女を止めることはできない。
「……カレン様、陛下に確認を取ってきます」
リュリュが小声で尋ねるが、カレンは頷くことはしない。
(ったく、アイツは何をしたいわけ?)
夜会で自分を助けてくれたと思ったら、今度は愛人同伴で外出しろという。やっていることがメチャクチャだ。
「リュリュさん、行かなくていいよ」
孤児院に到着時刻は伝えてある。こんなくだらないやり取りで遅刻なんてしたくない。
「悪いけど、あなたに構っている時間はないの。今日は諦めて」
「……さようですか。でも……わたくし、聖皇帝陛下から許可を貰ったのに、聖皇后陛下と共に外出できなければお叱りを受けることになります」
しゅんと肩を落とす少女はこの後、アルビスに責められることを本気で恐れているようだ。
アルビスがどう愛人達に接しているわからないカレンは、心がほんの少しだけ揺れ動く。
(……万が一、体罰とか受けて泣かれたりしたら……それかなり後味悪いな)
短い葛藤の末、カレンはお人好しすぎる結論を下してしまった。
「好きにして。でも、邪魔はしないでよ」
「はいっ!もちろんでございます」
ぱぁっと輝かんばかりの笑顔を浮かべる少女は心から喜んでいるようだった。
(はいはい、そうですか)
カレンは見て見ぬふりをして、馬車へと乗り込んだ。
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