盲目王子の策略から逃げ切るのは、至難の業かもしれない

当麻月菜

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庇護欲をそそるという言葉は、何も女子供に向けてのものだけじゃない

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 雨が降っている。ざあざあと窓を叩きつけるように。

 ここハニスフレグ国は、季節の変わり目には必ず長雨になる。それは至る所にいる精霊が天からの恵である雨を降らせるよう精霊王に頼んでいるからだといわれている。

 精霊を見ることができない魔力ゼロのノアでは、それが嘘か本当なのか確認することはできない。だが、大多数の人間がそうだと言っているならそれで良いと思っている。

 ただ、もし精霊が人の為に雨を降らしてくれるなら、屋根に穴が空いている貧乏孤児院にだけは降らせないで欲しいとも思っていたりする。

 でも魔力ゼロのノアは、精霊を見ることも、訴えるができないので、孤児院の皆には力を合わせて乗り切って欲しいという結論に至った次第である。

 


 ─── ボーン、ボーン。

 小鳥の彫刻が美しいご立派な柱時計の2本の針がカチッと揃った瞬間、ずっしりと重たい音が鳴り部屋に響き渡る。

(……ああ、時間だ)

 ソファでだらしなく座っていたノアは、手にしていたキノコ図鑑をパタンと閉じた。ついでに、こっそりため息も吐く。

 グレイアス先生の底上げ事件から半月経過した。

 ノアは未だにアシェルの仮初の婚約者として頑張っている。しかし、次のお給料日で目標額が達成するので、あと3日で退職するつもりだ。

 でも、アシェルには、まだ伝えてなかったりする。

 それは彼との契約を軽んじて、当日に言えば良いじゃんと思っているわけじゃない。

 また万が一、急な出費が必要になるかもしれないから保険をかけてギリギリに伝えようとセコイ考えを持っているわけでもない。

 ただ単に言い出せないのだ。アシェルが何かにつけて「一緒に居られて嬉しい」と口にするもんで。

 誰かに必要とされるとは純粋に嬉しい。

 要らないと捨てられた過去が、余計にそう感じさせているだけだとわかっているが、やっぱり嬉しいものは嬉しい。

 逆に、自分の言動のせいで相手ががっかりするのは、見たくない。

 だから明日伝えよう、明日こそ伝えよう、明日は絶対に言おう!そんなことを繰り返して、残り3日となってしまったのだ。

 そして今日も「まぁ、ディナーのお時間に伝えよう」と狡い結論を下す。

 そんなわけで、先延ばしにしたノアは何食わぬ顔をして、グレイアス先生の元に行かなければいけない。でも、気が重いし、ぶっちゃけ行きたくない。

「ノア、時間だけど今日はお休みするかい?」

 キノコ図鑑をぎゅっと抱きしめて、むむむっと唸っていれば、すぐ横から気遣う優しい声が降ってきた。

 今更ではあるが、ノアは現在アシェルの執務室にいる。

 そしてアシェルは、そこで絶賛お仕事中だったりもする。 
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