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兄と殿下②
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早朝の兄の部屋にフェルド殿下がいる。
その状況を目にしたミルフィはゆっくりと瞬きをしてから、とりあえず淑女らしい礼を取ることにした。
「おはようございます。殿下。ご機嫌麗しゅうございます」
「ミルフィ、そんな堅っ苦しい挨拶はしなくて良いよ。一先ずお入り」
そう言ったのは、殿下ではなく兄だった。
立場的にその発言はあまりにもおかしい。殿下に咎められること間違いない。でもミルフィは、あっさり兄の言葉に従った。
だって、兄と殿下は幼馴染でもある。なのでこういう発言はしょっちゅうだから、もう慣れっこだ。一々、気にする必要はない。
そんなわけでミルフィは、兄の言葉に素直に頷きソファへと着席した。
「ーーで、こんなに朝早くどうしたんだい?」
「あ……ちょっと……」
ポットから自分の為にお茶を淹れてくれるディアスを上目遣いで見ながら、膝の上でもじもじとする。
なにせ目の前に座っている殿下が、ワクワク顔でこっちを見ているのだ。言いにくいことありゃしない。
「ミルフィ、二人っきりで話した方が良いかい?」
「……そうできるなら、ぜひとも」
ちょっと悩んで頷けば、ディアスはフェルドに顔を向けた。
「そういうことですから、殿下、お帰りください」
ディアスの口調は穏やかではあるが、有無を言わせない何かがあった。
「えー……もうちょっとここに居たらダメ?夜会の翌日は、城にいると色々面倒くさいんだけど」
フェルドは王族云々と言う前に、25歳の立派な大人である。こんな発言は少々、年齢にそぐわない。
しかし彼は金髪碧眼の申し分無いイケメンであるため、少年みたいに首をこてんと倒して甘える仕草は、王子としての威厳は無いがとても可愛らしい。
でも長年の付き合いであるディアスにとったら、見慣れたもの。やや視線に冷たさが増しただけだった。
「それらを対応するのも殿下の仕事の一つです」
「正論だね。だが人は正論だけでは生きていけない。たまには遊び心も必要だ」
「そういうことは毎日真面目に生きている人間に向ける言葉です。さ、お帰り下さい。……っていうか、さっさと帰れ」
最後はまさかの命令形だった。しかもディアスは窓を開けて、まるでここから出ろと言わんばかりに顎でしゃくる。
さすがにそれは行き過ぎた言動である。
しかしミルフィは傍観しながら涼し気にお茶を飲んでいる。
対してフェルドは「ちぇー。冷たいんだから」とぶつくさ言いながら窓枠に足を掛けた。
「じゃあ、また後でな、ディアス。お前こそ遅刻するなよ。あとミルフィ、早朝から君の顔を見れて良かった。じゃあね!」
そんな別れの言葉を紡いだ途端、フェルドは窓から飛び降りた。
「ーーなんだか、申し訳ないことをしました。殿下は兄が大好きなのに。私が二人の時間を邪魔してしまいましたね」
去り際のフェルドの寂しげな表情を思い出して、ミルフィはしゅんと肩を落とした。
しかし窓を閉めているディアスは、思いっきり不快そうな顔をしている。
「ミルフィ、誤解を招くような発言はやめてくれ」
「……誤解?」
きょとんとするミルフィは、兄と殿下が道ならぬ恋をしているという噂を知らない。
無論、ディアスはその噂をミルフィに伝えるつもりは無い。
付け加えると、フェルドが寂しい顔をしていたのはディアスと過ごす時間が中断されたからではなく、片思いしている女性との嬉しい邂逅をその兄に邪魔されたから。
でもディアスは、そのことをミルフィには絶対に伝えないと決めている。
その状況を目にしたミルフィはゆっくりと瞬きをしてから、とりあえず淑女らしい礼を取ることにした。
「おはようございます。殿下。ご機嫌麗しゅうございます」
「ミルフィ、そんな堅っ苦しい挨拶はしなくて良いよ。一先ずお入り」
そう言ったのは、殿下ではなく兄だった。
立場的にその発言はあまりにもおかしい。殿下に咎められること間違いない。でもミルフィは、あっさり兄の言葉に従った。
だって、兄と殿下は幼馴染でもある。なのでこういう発言はしょっちゅうだから、もう慣れっこだ。一々、気にする必要はない。
そんなわけでミルフィは、兄の言葉に素直に頷きソファへと着席した。
「ーーで、こんなに朝早くどうしたんだい?」
「あ……ちょっと……」
ポットから自分の為にお茶を淹れてくれるディアスを上目遣いで見ながら、膝の上でもじもじとする。
なにせ目の前に座っている殿下が、ワクワク顔でこっちを見ているのだ。言いにくいことありゃしない。
「ミルフィ、二人っきりで話した方が良いかい?」
「……そうできるなら、ぜひとも」
ちょっと悩んで頷けば、ディアスはフェルドに顔を向けた。
「そういうことですから、殿下、お帰りください」
ディアスの口調は穏やかではあるが、有無を言わせない何かがあった。
「えー……もうちょっとここに居たらダメ?夜会の翌日は、城にいると色々面倒くさいんだけど」
フェルドは王族云々と言う前に、25歳の立派な大人である。こんな発言は少々、年齢にそぐわない。
しかし彼は金髪碧眼の申し分無いイケメンであるため、少年みたいに首をこてんと倒して甘える仕草は、王子としての威厳は無いがとても可愛らしい。
でも長年の付き合いであるディアスにとったら、見慣れたもの。やや視線に冷たさが増しただけだった。
「それらを対応するのも殿下の仕事の一つです」
「正論だね。だが人は正論だけでは生きていけない。たまには遊び心も必要だ」
「そういうことは毎日真面目に生きている人間に向ける言葉です。さ、お帰り下さい。……っていうか、さっさと帰れ」
最後はまさかの命令形だった。しかもディアスは窓を開けて、まるでここから出ろと言わんばかりに顎でしゃくる。
さすがにそれは行き過ぎた言動である。
しかしミルフィは傍観しながら涼し気にお茶を飲んでいる。
対してフェルドは「ちぇー。冷たいんだから」とぶつくさ言いながら窓枠に足を掛けた。
「じゃあ、また後でな、ディアス。お前こそ遅刻するなよ。あとミルフィ、早朝から君の顔を見れて良かった。じゃあね!」
そんな別れの言葉を紡いだ途端、フェルドは窓から飛び降りた。
「ーーなんだか、申し訳ないことをしました。殿下は兄が大好きなのに。私が二人の時間を邪魔してしまいましたね」
去り際のフェルドの寂しげな表情を思い出して、ミルフィはしゅんと肩を落とした。
しかし窓を閉めているディアスは、思いっきり不快そうな顔をしている。
「ミルフィ、誤解を招くような発言はやめてくれ」
「……誤解?」
きょとんとするミルフィは、兄と殿下が道ならぬ恋をしているという噂を知らない。
無論、ディアスはその噂をミルフィに伝えるつもりは無い。
付け加えると、フェルドが寂しい顔をしていたのはディアスと過ごす時間が中断されたからではなく、片思いしている女性との嬉しい邂逅をその兄に邪魔されたから。
でもディアスは、そのことをミルフィには絶対に伝えないと決めている。
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