孤独なメイドは、夜ごと元国王陛下に愛される 〜治験と言う名の淫らなヒメゴト〜

当麻月菜

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【夜の治験 初級編】 そうして始まるメイドとしての日々 

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 そんなこんなでファルナは、グリジットのメイドになって既に半月が経過した。

 そろそろ日常になりつつあるメイド生活は、厄災続きだったことが嘘かのように、大変静かで穏やかだった。……ただ、一つだけ不満があるとするなら、暇で暇で仕方がない。

 与えられた仕事は、狭い屋敷の掃除と日に三度の食事の用意。それとお茶を入れること。ただそれだけ。

 洗濯は通いの洗濯婦が毎日汚れ物を受け取りに来る。そして洗濯済みのそれを渡してくれる。しかもご丁寧に、パリッと糊までかけてくれるから、ファルナはアイロン掛けをする必要がが無い。

 食材も3日に一度、契約しているお店が届けに来てくれるから、買い出しの必要はない。しかもグリジットはファルナの為に女性が喜びそうな菓子まで注文してくれる。

 最初は一口食べるごとに給与天引きされるのかと思ったけれど、そんなケチなことはしなかった。

 それどころか、グリジットは大変太っ腹で身一つで採用されたファルナの為に、身の回り品をすべてポケットマネーで用意してくれた。有難すぎて、ファルナは眩暈を起こしてしまった。

 とどのつまり、グリジットは大変良いご主人様なのだ。

 でも、あまりに良い人すぎるご主人様に、ファルナは感謝しつつも申し訳ない。

 だって働くことでしか恩を返すことができないのに、仕事が無く暇を持て余してしまっているから。

 


「……そろそろ、雪が降るかな?」

 庭に出ているファルナは、空を見上げてぽつりと呟いた。真新しいホウキを手にして。

 3日に一度、庭師がやって来るので、庭掃除はファルナの仕事に含まれていない。しかし、晩秋の今、落ち葉はどれだけ掃いても無くならない。

 庭掃除がたくさんある仕事の一つなら苛立つのかもしれないが、無い仕事を探すことに忙しいファルナとしたら、枯葉に感謝したいくらいだった。

 そんなわけでファルナは、納戸で見付けた新品ホウキを手にして、せっせこせっせこ落ち葉を集める。

 どんよりとした曇り空の下、木枯らしがびゅんびゅん吹く午後の庭でもウール素材のメイド服は寒さを感じさせない。パリッと糊がきいた真っ白なエプロンが、風に吹かれてやたら靡くのだけが少々困るだけ。

「ふんふんふーん。ららーりらー……あー、もう無いか……」

 鼻歌交じりに庭掃除をしていても、この屋敷───もとい病院の庭は狭い。

 あっという間に枯葉は一か所に集まり、やっと見つけたお仕事も終わりを迎えようとしている。

(焼き芋作るのはアリかな……いや、さすがに病院の庭で焼き芋はナシだろう。うん、ナシだ)

 働き始めて半月経つが、ファルナは患者を一度も目にしたことが無い。

 そんな閑古鳥が鳴く病院の庭で焚き木をしたところで、咎められる気はしないけれどやっぱり自制すべきだろう。何よりここは自分の住み慣れた屋敷ではない。勝手なことはできないのだ。

 そんなふうに自問自答した末、集めた落ち葉を麻袋に詰めることにした。そうしておけば、通いの庭師が処分してくれる。

 しかし近くの植え込みに置いてあった麻袋を取ろうと体の向きを変えた途端、ひょいと手にしていたホウキが消えた。

「ファルナ、こんな寒い中、何をやっているんだ?」

 スマートにホウキを没収しながらそう問いかけたのは、ご主人様であるグリジットだった。 
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