二度目の婚約者には、もう何も期待しません!……そう思っていたのに、待っていたのは年下領主からの溺愛でした。

当麻月菜

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 季節は冬真っ盛り。ルグ領はどこもかしこも銀世界。その為、雪が解けるまでの移動手段は、もっぱらソリだ。

 ルグ領歴2ヶ月のフェルベラは、まだ寒さに弱い。だから普段はソリに幌を付けて移動するのだが、今日は急ぎの為に幌は無し。

 おかげでリヒタスの執務室に顔を出した時には、鼻が真っ赤になってしまっていた。

「ごめん。かなり急がせちゃったようだね。……良かったら飲んで。あったまるから」

 手渡されたのは、ホットショコラ。ガクガク震える身体には、最高の飲み物だ。

「あ、ありがとうございます」 

 ずびっと鼻水を啜りながら、フェルベラは湯気の立つコップを受け取る。

 そして暖炉の前に用意されている椅子に腰掛けてゆっくりと味わう。ああ、五臓六腑に染みわたる。美味しい。

 と、ホットショコラに舌鼓を打てたのはここまでだった。

「早速だけど、フェルベラさんの妹君から夜会の招待状が届いたんだけど」
「……っ!?」

 執務机の引き出しから一通の封書を取り出しながら言ったリヒタスの言葉に、フェルベラは咽た。

「はぁ!?シャーリーから夜会の招待状!?はぁ?!どうして!?」

 コップを持ったま執務机に詰め寄れば、リヒタスは黙って招待状を手渡してくれた。

 一先ずフェルベラは、コップを机に置いて招待状に目を通す。

 待つこと1分。読了したフェルベラは、にこっと笑った。

「今日はいつもより冷え込みますので、もう少し部屋を暖めましょうか」

 そう言ってフェルベラは、ルンルンとスキップをしながら招待状を暖炉に放り込もうとした。だが、寸前のところでリヒタスに止められた。

「薪以外は暖炉に入れては駄目という決まりがありましたか?」
「ないけど、これは燃やしちゃいけないですよ」
「じゃあ、斧で粉砕しましょう。そういう時の為の斧ですよね?」
「……それも駄目です」
「じゃあ、えっと」
「フェルベラさん」
「なんですか、リヒタスさん」

 急に声音が変わったリヒタスに、フェルベラはぎこちなく小首を傾げてみた。

 案の定、予想通りの言葉が返って来た。もんのすごく聞きたくなかったけれど。

「僕は夜会に出席したいと思ってます。フェルベラさんと一緒に」

 こんなにも強く、リヒタスがフェルベラに向けて主張をするのは初めてだ。

 年上という気遣いもあって、リヒタスはこれまでずっとフェルベラの意思を尊重してきてくれた。

 そのことはフェルベラもわかっている。正直、今まで自由に過ごさせて貰っていたのが不思議なくらいである。

 だから本当なら、ここはフェルベラが折れて、リヒタスの要求を吞まなければならない。

 でも、この招待状は、シャーリーと元婚約者の婚約披露パーティなのだ。

 捨てられた女が自分を捨てた男を祝うなんて、とんだ茶番劇だ。自分と一緒に参加するリヒタスは、最高に居心地が悪いだろう。

 そう思っているから、やっぱりフェルベラは彼の要求を呑むことはできなかった。
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