旦那様、それを「愛してる」とは言いません!! 〜とある侯爵家のご夫婦が、離縁に至るまで〜

当麻月菜

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青天の霹靂

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 ヘンリーの教育宣言がよほど眩しく映ったであろう。母親であるライリットは、納得できない様子ではあったが、その後は口を挟むことはなかった。

 それから半年後、ヘンリーは盛大な式を挙げ、ミレニアを妻に迎えた。

 既に既婚者である貴族仲間からは嫁姑問題がどれほど大変なのか聞かされている。だからアドバイスに従って、ヘンリーは両親を領地の屋敷に住まわせることにして、最高の環境で新妻を迎えた。

 ミレニアとの新婚生活は、とても素晴らしかった。毎日が夢のようだった。

 新婚早々浮気をする男がいるということは耳にしていたが、なぜそんな愚かなことをするのだろうと、本気で頭を悩ませた。まぁ、最終的に浮気をさせた妻に非があるのだという結論に落ち着いた。

 侯爵婦人になったミレニアは、それなりに頑張ってくれていた。

 その働きぶりを評価し、ヘンリーは現役時代の母親と同じ仕事をミレニアに与えることにした。

 といってもミレニアは、最初は不安げな様子でいた。無理もない。男爵家など庶民に毛が生えたようなもの。由緒正しい侯爵家を取り仕切るなど荷が重いことだったのだろう。

 しかしヘンリーはミレニアを励まし、時には嗜め、時には導き、誰もが認める侯爵夫人になるよう教育した。

 無論、教育する側が完璧だとしても、生徒がすぐに完璧になるとは限らない。

 そのこともきちんと理解していたヘンリーは、頭ごなしにミレニアを𠮟ることもなく、より一層教育に力を入れた。

 そんなふうに昼間は底辺貴族を徹底的に教育する立場にあるヘンリーだが、夜となれば一変し、ミレニアを心から愛おしんだ。その甲斐あって、ミレニアは嫁いで1年後、二人の愛の結晶を身ごもった。

 といっても、これだけ回数を重ねているのに、なぜ授からないのだ?と妻の身体の不具合も考えたこともあった。

 だが報告を受けた時は、涙ぐむほど嬉しかった。しかし、「頑張るんだぞ」と肩を叩けば、ミレニアは浮かない顔をしている。

 きっと身分の低い自分が次期侯爵家当主となる子を産む。そのプレッシャーを感じていたのかもしれない。だから、ヘンリーはミレニアを抱き寄せ優しく囁いた。

「大丈夫だよ、ミレニア。この家で産まれた子供は、生まれながらにして侯爵家の一員なんだ。君とは違うのだから、安心して」

 一人胸の中で抱えていた心配事を言い当てられてしまったミレニアは、恥ずかしそうに俯いた。

 その横顔がたまらなく可愛らしくて、ヘンリーは更に強く愛する妻を抱きしめた。




 そして十月十日とつきとおかの年月が経ち、ミレニアは母となった。

 生まれたのは息子だった。元気な産声を上げる息子カイネルの生まれた瞬間を絵師に描かせた自分は、もう父親になったのだと感慨深い気持ちになった。
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