異世界転生したので俺TUEEEを期待してたら戦闘向きの能力じゃなかったので頭を捻ろうと思います。

滝永ひろ

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1章 転生したは良いものの…これでどう戦うんだあ!!

1話 転生

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放課後、近所の寺の境内。この寺には、神隠しのうわさがある。なんでも、神隠しで人が消えたとか...

そういう類の話を信じるわけではないのだが、友達につれられて肝試しに来てしまった。

学校では近寄らないようになんて言われていたが、暴漢もムサイ男3人なんて襲ってこないだろう。どのみち、神隠しなんてあるわけないのだ。
 
そう、思っていた。

「なんだ、これぇ...」

寺の鳥居をくぐった目の前に穴があった。落とし穴とかそういうんじゃなく、空間に開いた穴。世界一黒い物質の画像を見たことがあるけど、ちょうどそんな感じ。そんな闇としか言えないようなものが、人ひとり飲み込みそうなサイズの大口を開けてそこにあった。あとの二人には見えていないらしい。あとの二人には見えていないらしい。

「おーい陸、さっさと来いよ」

穴の向こう側から二人の呼ぶ声が聞こえる。二人には聞こえていないようだ。俺は恐る恐る足を踏み出した。

汗をたらしながら一歩、吸い込まれるように二歩。三歩目を踏んだ時には、

「どこだよここ...」 

立ち並ぶ商店、闊歩する甲冑兵。商店街の中というのは分かるが、どこの商店街だかさっぱり…どこの商店街か分かってもしょうがないけど。

「おう兄ちゃん、そんなとこで突っ立ってんじゃねーぞ」

後ろを振り向くと、やたらに体格のいいおっちゃんが上から俺を睨みつけていた。

「俺の通る道に立ってんじゃねえよ。喧嘩売ってんのか?」

えーっと…ヤーさん?あ、でも言語は通じてるのか。都合いいかも。

って、そんなこと今はどうでもいいんだよ。あんまこういうチンピラとかに絡まれたことないし対処法わからんのよ。

「黙ってねーでなんか言ったらどうだ!」

おっさんが俺に殴りかかってきた。やばい!異世界転生一発目で死の予感…

「オルァッ!」

おっさんが殴りかかった。

あっ、終わった。短い異世界生活だったなあ。

「あら?」

おっさんがよろめいた。俺の体をすり抜けて。

「これは…」

異世界転生主人公恒例の?異世界転生したというだけで付与されるという例の?

「どうやって避けたかわかんねーが、舐めてんじゃねーぞ」

おっさんが再び殴りかかってきたが、俺には当たらない。

「何だと…このテレ様が2回も拳を外すとは…」

チンピラの名前も発覚したところで、ここは主人公らしくトドメを刺してやろう。

「くらえっ」

恐らく「物体を通り抜ける能力」。物体を通り抜ける能力……物体を通り抜ける能力?

もしかして攻撃の手段ない?

「俺にここまで恥かかせて、さぞ強力な一撃なんだろうなあ。ああ?」

あっ(察し)これ勝てないやつか。

「こうなったら、奥の手を使うぜ」

「ほう、随分と期待させるじゃねえか」

「究極秘技…」

チンピラが唾をのんだ。

「逃げる!!」

「ズリぃ!」

俺の異世界生活は、最高にかっこよくないとこから始まった。



とにかく逃げ続けると、街の広間に出た。人目を嫌ってか、チンピラは追ってこない。住宅に囲まれた円形で、真ん中には待ち合わせの人が集まっている時計台がある。

「あの、大丈夫ですか?」

後ろから女の人の声がした。優しい声だ。振り向くと、金髪で容姿端麗の女性が立っていた。修道女の服を身にまとっている。

「あっ、えっと...さっきチンピラに絡まれちゃって。すみません」

「こちらこそすみません。ここらで見ない顔だったのもあって気になっちゃって。宿はお決まりですか?」

「えっと...まだです。宿ってか住む場所なくて」

「あら、ほーむれすというやつですか?」

「うーん、気づいたらここにいて...」

「そうですか。大変ですね。私が住んでる教会があるのでいらっしゃいますか?」

「...お言葉に甘えて」

「ミリア・シャルルです。よろしくお願いします」

「...よろしくお願いします」

彼女はにこっと微笑んだ。
 


「では別の世界からやってきたということですか?」

そういってミリアさんはココアのカップを置いた。

「そうなります。自分でもよく状況がわかってなくて」

「いいんですよ。いきなり世界が変わったことはありませんけど、私だってそんなこと起きたらきっとパニックで何も考えられませんもの」

彼女はまた微笑んだ。

「こんな怪しい話、疑わないんですか?」

「え?うそをついえいるんですか?」

「いやそうじゃないんですけど...」

「ところで話に聞く限り高校生のようですけど、学校には行かなくてよいのですか?」

「この世界にも高校があるんですか?」

「ええ、この辺に住んでる同年代の子たちはみんな通っています。お金もいりませんし、ここの住所から通ってはいかがですか?」

「ありがとうございます」

「お勉強はちゃんとありますからね」

「うっ...」
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