異世界転生したので俺TUEEEを期待してたら戦闘向きの能力じゃなかったので頭を捻ろうと思います。

滝永ひろ

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1章 転生したは良いものの…これでどう戦うんだあ!!

6話 追跡

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「割られて...る...」

窓の破片は家の内側に飛び散っている。そして窓が開いているってことはミリアさんが家にいるときに外から割られた。...ってことは?

「ミリアさんが攫われた...?」

口に出すとその言葉の意味がありありと分かってくる。

一度ここに来た時にはミリアさんは教会にいた。そして帰ってきた今いないということは、俺たちが楽しく町の探検なんかしてた時にミリアさんは...

気づいたときには窓から飛び出していた。隣のハルの家に向かって。

「ハル!いるか!?」

「いるも何もたった今帰ってきたところ...」

ドアを開けながらハルが顔を出した。

「力貸してくれ。あと知識も」

「何事?」

「ミリアさんが攫われた」

「...え?」



「そうか、それで俺を呼んだというわけだな!」

「ああアダム、話が早くて助かるぜ!」

アダム宅、ドアを叩いすぐに出てきたアダムに事の説をした。

「それではすぐに出よう。敵の位置はわかっていないのか?」

「わからねえ。でも"人外の何か"を使っているのは確かだ」

「ほう、それでハル君を連れて来たわけだな」

「ああ、敵もテイム系なら同じテイム系のハルの意見が貴重だと思ってな」

「なるほど、それでハル君、敵はどこにいると思うかい?」

「えっと...」

ハルがわかりやすく困った顔をする。

「詳細については聞いてなくて、まだ何がなんだか...」

「現場の状況は...で、...で...」

「そっか、それなら大型獣の仕業かもね。あるいは魔獣とか」

「魔獣!?そんなもんがいるのか」

「由緒正しく続くテイム魔法一族などの洗練されたテイム魔法でしかテイムされることはないと聞くが...」

「この近辺のテイム魔法一族を当たっていくか...」

「...」

アダムが何か言いたげな顔をしているのに気づいた。

「どうしたアダム、何か気になることでもあるのか?」

「いやなに、例の殺人鬼はいきなり現れては目を離したすきに消えてしまうんだ。テイム系魔法の使い手でそんなことをするのを見たことがないなと思って...」

「というかテイム系の魔法使いにそんなことできるのか?」

「いや、聞いたことがない。何より獣に手を下させればいい話だからな」

「てことは獣に殺させることができない理由があるのか?」

「もしやミロクの能力はテイムではないのでは?」
「てことは協力者がいるのか?」

「そうだな。テイム系はそんなに操っている獣から離れられないはず。それが大きければなおさら」

「てことは、ミリアさんが攫われた時にも今日ミロクが現れた時にも近くにいたテイム使い...」

アダムは俺の言いたいことを察したようだった。

「...っ、そんなわけがないだろう」

「ところでさっきから全然しゃべらないが、口を滑らせたらまずいことでもあるのか?」

俺は隣に黙って立つ容疑者の名前を呼ぶ。

「ハル...」

ハルは俺たちに目を合わせない。

「キマイラ!!」

ハルの声が町に響いた。

すると、どこからともなくライオンとヤギが融合した形のキマイラが現れる。尻尾は蛇、翼まで生えている。

「ごめんね」

ハルのその声を合図に、キマイラがアダムと俺をくわえて飛び立った。

まさか本当に...このままさらわれてしまうんだろうか。

「なあリックよ。俺らは攫われているな」

「ああそうだな」

「これはおとなしくしておけば敵の拠点までひとっ飛びでは?」

「いわれてみればそうだな」

ん?そうなるとミロクを倒すとわかってて連れ去るハルはいったい...?



黙ってキマイラに運ばれていると、山の中の小屋につれてこられた。空き家にしか見えない。もともとそうだったものだろうか。

「静かにしてて」

ハルが俺らに言う。ほんとに敵なのか味方なのかわからなくなってきた。

「ああ、ハルか。お前も一緒に来るのは珍しいな」

小屋からフードの男が出てきた。おそらくあれがミロク...仮面をつけていて顔が見えないが、爺さんの声?うちの担任の声とは違うけれど、少なくとも年を取った男の声だ。

「今日は二人か。いつものとこに置いといくれ」

「...」

「どうした?運んどいてくれ」

「ねえミロクさん」

「どうしたハル?」

「僕もうこれやめたいよ」

「そうか」

「止めないの?」

「いいや」

「じゃあどうして何も言わないのさ」

「お前では儂に勝てん。視線が泳いでおる。お前が逃げようとも、儂は追いついてお前を殺せる」

ハルが下唇をかむ。

「でもここで全部終わりにしたい。そのために友達を連れて来たんだから」

「ほう、友達、ねえ」

「そうだぜ!ハルを犯罪に巻き込むのはやめてもらおうか!」

「そうだ!ハル君は俺らの友達なのだからな!」

こうなったらしゃしゃり出てやる。

「アダムとハル、その恨みごと俺の友達を利用した借りは果たしてやるぜ」

「やれるものならやってみるがいいさ」

ミロクは体をこちらに向け、仮面越しの殺意を表した。
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