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Ⅲ 人とヒト
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電車の中、シュウはアクトに聞く。
「人殺すのに抵抗ないやつなんかいねえよ。俺は人工尾つけてる奴のこと人間だと思ってないだけだ」
アクトは視線を合わせないまま返す。
「なんか...人だったものを殺すって、なんだか僕には信じられませんよ。なんで僕なんかが呼ばれたのか自分でもさっぱり...」
「泣き言いうだけなら人工尾に殺されな。葬式にはご祝儀持ってってやるよ」
明確に煽っている。
「死ぬって...冗談でしょ?」
「うちの部署は対ギャングの部署だ。人工尾を仕切ってるから俺たちが人工尾も取り締まるんだ。だからうちの部署は万年人手不足だよ」
「え?それって...」
それはつまり、半端な気持ちで入った者は死んだということだった。
「そんなの、うそでしょ?僕、死にたくないですよ」
「早く死んどけば死の恐怖は薄いぞ。今日で死んどけ」
アクトの返答は冷たいものだった。
「それからターゲットはこの電車内にいる。いつなにが起きてもいいように心の準備はしとけよ。死ぬ準備ならしなくても死ねるがな」
「えっ」
急に同じ電車内にいるといわれ、シュウは頭が真っ白になった。
「キャー!」
後ろの車両から声がした。
「噂をすれば、か」
アクトが声がした車両に走り出す。それについてシュウも走る。
「あれだ。あれが人工尾だ。何回見ても反吐が出る」
アクトはまた眉間にしわを寄せた。
「俺は乗客前に集めとくから、お前はアレ殺せ」
アクトはそういってポケットから真っ黒なキューブを取り出した。そのキューブが変形して拳銃の形になる。それを左手に持って歩いていく。
「キシャーっ」
人工尾を生やした敵がとびかかる。アクトはそれを銃で迎撃する。
「皆さん逃げて!これはこちらで処理します。私について前の車両まで避難してください!」
アクトが乗客を全員連れて前の車両へ前の車両へ行ってしまった。
「え...一人...それでこっ殺さないといけないって、そんなの無茶だよ」
シュウは固まってしまって、動けなくなった。
「ヴエぁぁぁーー...」
敵は甘い息を吐きながらシュウの方を見つめている。
「キシャぁっ!」
シュウに飛び掛かった。
「うわっ、く、来るなあ!」
シュウはとっさに帯状の尾を広げてガードする。
「はっ、た、助かった...」
制圧、せめてそうしなければという思考にシュウは至った。ガードの尾を使って敵を押さえつけ、床に押し付ける。そして、敵の目の前に鋭い方の尾をついつける。
このまま尾で刺せば殺せる。シュウの頭にそれがよぎった。
「殺す...殺すってそんな...」
シュウの尾は萎縮して動かなくなっていた。
(殺す...?みんな当たり前のように言うけど、人なんでしょ...?僕に人殺しを知れっていうのか?そんなのおかしいよ。僕には無理だ。いっそこのまま...)
パァン、と銃声がした。アクトが奥の車両から狙撃したのだ。敵はシュウの目の前で脳幹を撃ち抜かれ、力尽きた。反抗する力がなくなるのがシュウにもわかった。
「死んだ...のか?うッ」
目の前で死を見て、シュウは急激に吐き気を催した。気分が悪くなり、胃から中身が上がってくるのがわかる。
「うっ...うぶるっs、ぶおろ...おえっ。ハッ...」
そこにアクトがつかつかと歩いてくる。
「よく死ななかったな。上出来なんじゃないか?あとそれ、汚えから自分で処理しとけ」
「すっすいません。片づけときます...」
その瞬間に駅に止まった。アクトは敵だったものを担いで外に出た。
「駅員に雑巾と消毒くらいは持ってこさせてやるよ俺は先に帰っとくから、自力で帰ってきな」
アクトはそのまま立ち去った。
「ただいま戻りました...」
「おーうお帰り」
赤城が出迎えた。その手には焼き鳥が握られている。
「ちょうど昼時だ。食う?」
「すいません。今食欲なくって...」
「そか」
そういって赤城は自分の席に戻った。
「てかさあアクト、お前仲間おいて先帰るってどうなんだよ。ましてや吐いたやつをよ」
「吐いたのはこいつが勝手に吐いただけです。それに仲良くしたって死ぬ奴はすぐ死ぬんです。どうでもいいでしょ。それに吐いてすぐの人に飯進める人に言われたくありません」
「お前なんかいつもより冷たくね?さてはシュウに尾が2本あるからか?どっちも本物だって検査結果見てんだろ?」
「こいつは尾が2本生えてること以外なんも取柄ありませんよ。同じファーム出身だからって甘やかさないでください」
「いいだろ別に。尻尾仲間だぞ」
「フッ、なんか猿みたいですよね」
「あー、今私もけなしたでしょ!」
「なんですかだめ宮さん」
「あめみやですー!そういうのいけないんですよ。警察なんだから自覚持ってください」
「俺は俺の目的のためにここを利用してるだけです。勝手なこと言わないでください」
アクトはそういって自分の席に座るなり携帯音楽プレーヤーで音楽を聴きだした。これ以上話しかけるなと言わんばかりだ。
「シュウ、今日はもう帰っても大丈夫だぞ。始めは慣れが肝心だからな。ちょっとずつできるようになってくれればいいよ」
「ありがとうございます...えっと僕帰る場所なくって...」
「じゃあ警察寮があるから入れてもらいな。手続きはやっとくから」
「ありがとうございます」
「人殺すのに抵抗ないやつなんかいねえよ。俺は人工尾つけてる奴のこと人間だと思ってないだけだ」
アクトは視線を合わせないまま返す。
「なんか...人だったものを殺すって、なんだか僕には信じられませんよ。なんで僕なんかが呼ばれたのか自分でもさっぱり...」
「泣き言いうだけなら人工尾に殺されな。葬式にはご祝儀持ってってやるよ」
明確に煽っている。
「死ぬって...冗談でしょ?」
「うちの部署は対ギャングの部署だ。人工尾を仕切ってるから俺たちが人工尾も取り締まるんだ。だからうちの部署は万年人手不足だよ」
「え?それって...」
それはつまり、半端な気持ちで入った者は死んだということだった。
「そんなの、うそでしょ?僕、死にたくないですよ」
「早く死んどけば死の恐怖は薄いぞ。今日で死んどけ」
アクトの返答は冷たいものだった。
「それからターゲットはこの電車内にいる。いつなにが起きてもいいように心の準備はしとけよ。死ぬ準備ならしなくても死ねるがな」
「えっ」
急に同じ電車内にいるといわれ、シュウは頭が真っ白になった。
「キャー!」
後ろの車両から声がした。
「噂をすれば、か」
アクトが声がした車両に走り出す。それについてシュウも走る。
「あれだ。あれが人工尾だ。何回見ても反吐が出る」
アクトはまた眉間にしわを寄せた。
「俺は乗客前に集めとくから、お前はアレ殺せ」
アクトはそういってポケットから真っ黒なキューブを取り出した。そのキューブが変形して拳銃の形になる。それを左手に持って歩いていく。
「キシャーっ」
人工尾を生やした敵がとびかかる。アクトはそれを銃で迎撃する。
「皆さん逃げて!これはこちらで処理します。私について前の車両まで避難してください!」
アクトが乗客を全員連れて前の車両へ前の車両へ行ってしまった。
「え...一人...それでこっ殺さないといけないって、そんなの無茶だよ」
シュウは固まってしまって、動けなくなった。
「ヴエぁぁぁーー...」
敵は甘い息を吐きながらシュウの方を見つめている。
「キシャぁっ!」
シュウに飛び掛かった。
「うわっ、く、来るなあ!」
シュウはとっさに帯状の尾を広げてガードする。
「はっ、た、助かった...」
制圧、せめてそうしなければという思考にシュウは至った。ガードの尾を使って敵を押さえつけ、床に押し付ける。そして、敵の目の前に鋭い方の尾をついつける。
このまま尾で刺せば殺せる。シュウの頭にそれがよぎった。
「殺す...殺すってそんな...」
シュウの尾は萎縮して動かなくなっていた。
(殺す...?みんな当たり前のように言うけど、人なんでしょ...?僕に人殺しを知れっていうのか?そんなのおかしいよ。僕には無理だ。いっそこのまま...)
パァン、と銃声がした。アクトが奥の車両から狙撃したのだ。敵はシュウの目の前で脳幹を撃ち抜かれ、力尽きた。反抗する力がなくなるのがシュウにもわかった。
「死んだ...のか?うッ」
目の前で死を見て、シュウは急激に吐き気を催した。気分が悪くなり、胃から中身が上がってくるのがわかる。
「うっ...うぶるっs、ぶおろ...おえっ。ハッ...」
そこにアクトがつかつかと歩いてくる。
「よく死ななかったな。上出来なんじゃないか?あとそれ、汚えから自分で処理しとけ」
「すっすいません。片づけときます...」
その瞬間に駅に止まった。アクトは敵だったものを担いで外に出た。
「駅員に雑巾と消毒くらいは持ってこさせてやるよ俺は先に帰っとくから、自力で帰ってきな」
アクトはそのまま立ち去った。
「ただいま戻りました...」
「おーうお帰り」
赤城が出迎えた。その手には焼き鳥が握られている。
「ちょうど昼時だ。食う?」
「すいません。今食欲なくって...」
「そか」
そういって赤城は自分の席に戻った。
「てかさあアクト、お前仲間おいて先帰るってどうなんだよ。ましてや吐いたやつをよ」
「吐いたのはこいつが勝手に吐いただけです。それに仲良くしたって死ぬ奴はすぐ死ぬんです。どうでもいいでしょ。それに吐いてすぐの人に飯進める人に言われたくありません」
「お前なんかいつもより冷たくね?さてはシュウに尾が2本あるからか?どっちも本物だって検査結果見てんだろ?」
「こいつは尾が2本生えてること以外なんも取柄ありませんよ。同じファーム出身だからって甘やかさないでください」
「いいだろ別に。尻尾仲間だぞ」
「フッ、なんか猿みたいですよね」
「あー、今私もけなしたでしょ!」
「なんですかだめ宮さん」
「あめみやですー!そういうのいけないんですよ。警察なんだから自覚持ってください」
「俺は俺の目的のためにここを利用してるだけです。勝手なこと言わないでください」
アクトはそういって自分の席に座るなり携帯音楽プレーヤーで音楽を聴きだした。これ以上話しかけるなと言わんばかりだ。
「シュウ、今日はもう帰っても大丈夫だぞ。始めは慣れが肝心だからな。ちょっとずつできるようになってくれればいいよ」
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「ありがとうございます」
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