9 / 23
Ⅸ 会遇
しおりを挟む
「ただいま戻りました...」
シュウが戻ると、部屋にはいつもの3人と、もう一人見慣れない人物がいた。
「君が永目シュウ君かね。話は聞いているよ」
そこにいたのは、ぱっと見4~50代の男。威厳を醸し出しており、只者ではない雰囲気をにおわせている。尾は生えていない。
「この方は閻公成。人類最強の警視総監だ」
「いかにも」
「けいしっ...」
「身構えなくともよい。私は君たちに伝えなくてはならないことがあった故ここに来たまでだ」
「伝えなくてはいけないこと...?」
ゴホン、と咳払いをして閻は話し始めた。
「まず、人工尾のことだ。今話せるところまで話そう」
アクトも唾をのむ。
「あれは完全に有機的な生体の一部であることがすでに分かっている。それは一個の生命体のようでもある」
それにアクトが反応する。
「それって、人工生命体ってことですか...そんな科学力一体どこに...」
「今話せることまで、言ったであろう。言ってはいけないことは話せん。続けよう。その生命体だが、先日シュウ君が提供してくれた研究体で明らかになった。それで見返りに私から情報を提供をというわけだ。あの尾が如何のようにして人間をむしばむのかもわかっている。あれが腰に引っ付き、手始めに神経に接続する。そして神経を伝って上へ上へと向かう。そして脳を感じるとそこに致死量の快楽物質を分泌する」
「その時点でもう死んでるんですね...」
「ああ。幸か不幸かな...。それから、脳幹に進行しながら同時に体も犯していく。そして脳幹を犯すより早く体を支配する。それで人に襲い掛かるというわけだ。また、脳幹のうち人工尾に侵された部分さえ破壊すれば鎮圧できるということもわかっている」
「閻警視総監、人工尾の所持者が以上に力が強いのですが、それに関しては何かわかっているんでしょうか」
「あれに侵されたものは尾の分泌物で身体能力が強化される。君ら通常の尾所持者も同様のはずだが...」
「そんなもの、いったい誰が...」
アクトの疑問に閻は首を振る。
「今は言えない、としか言えん。一つ、ここだけにしておいてほしいことがある。君ら,..アクト君にはないんだったな。その尾は、後天的に外部から得たものだ」
その言葉にその場の全員が呆然と口を開けた。すぐにアクトが反応する。
「それって...つまりファームにいる人間も全員人工尾所持者ってことですか」
その顔は若干の怒りも見えている。
「少し、違う。君らに生えている尾は個々の個体であり、それぞれ個性がある。別の生命体だ。対して人工尾は培養されたクローンのようなものだ。粗悪品...といったところか。正規の薬局で売られる医薬品と、その辺の化学物質で作られたい脱法ドラッグのような違いだ」
「じゃあ...」
「君が憤るのは違法尾肢所持者、先刻の会議で名づけられた名で呼ぶなら『フィフス』だけでよい」
「フィフス...俺はそいつらと戦います。あなたのために」
「おや、私が何かしたのかな?」
「昔...ちょっとありまして」
「おお、あの時の...覚えているぞ。そうか、それでわざわざ志願してこの課に...尾なしでここまでやるのは私以外では君が初めてだ。頑張ってくれたまえ」
「...はい!」
「それからシュウ君」
「はっははい!」
「何か、君には運命が植え付けられているような気がする。私が知っていることでは話せることはもうないが、君ならその先を行くことができるだろう」
「あっありがとうございます」
緊張するシュウを見て閻はシュウを見て微笑んだ。
「では、君たちには期待しているよ。この署の命運は明るいようだな」
はっはっはっは、と笑い声をあげながら、部屋を後にした。
「なんなんですかあの人...」
シュウが耐え切れず赤城に聞く。
「あの人は、警察組織に入ってから異例の14か月で警視正まで出世、そこから1年足らずで警視総監になった異次元のやりてだ。入ってから一瞬でスキャンダルをつかみ、それを暴いて上に立つ。そうして成り上がったんだ。さらにそれだけじゃない。現場に立てばまるでオーケストラの指揮者のように、組織の上に立てば足りない歯車をひとつずつ埋めるように。通るところすべての問題を焼却していく本国警察の魔王だ」
「そんなすごい人がなんで護衛もつけずに...」
「それは護衛をつけると護衛を護衛する羽目になるからだ」
アクトが語りだした。とても饒舌に語りだした。
「あの人は武器を持たない。あの上着の内側にも武器は持っちゃいない。手に触れるものすべてを武器とし、状況の最適解をいつも見つけ出す。人間技じゃねえよな。だって強盗をバッグ一個で制圧するんだ。銃弾を防ぎ、銃口をふさいでそのままけり倒して銃を破壊、犯人を締めて制圧。あれが初めて見た閻警視総監だった...あの人は最強だよ。銃弾を手で受け流したって話も...」
「...アクト君」
レイラがアクトの話を遮る。
「なんだよ」
「よくしゃべるね」
「うっせえ!誰だって好きなもんの一つや二つあんだろ!」
「アクト君にもそういうのあるんだなあって...」
「ああもういい。ここまでだ。とにかくすごい人だってことだ」
アクトはそっぽを向いた。
「ふふ」
レイラはアクトを眺めながら、コーヒーに口を付けた。
(最強...すべてが武器...かっこいい!)
シュウも最強とかに弱い男の子だった。
シュウが戻ると、部屋にはいつもの3人と、もう一人見慣れない人物がいた。
「君が永目シュウ君かね。話は聞いているよ」
そこにいたのは、ぱっと見4~50代の男。威厳を醸し出しており、只者ではない雰囲気をにおわせている。尾は生えていない。
「この方は閻公成。人類最強の警視総監だ」
「いかにも」
「けいしっ...」
「身構えなくともよい。私は君たちに伝えなくてはならないことがあった故ここに来たまでだ」
「伝えなくてはいけないこと...?」
ゴホン、と咳払いをして閻は話し始めた。
「まず、人工尾のことだ。今話せるところまで話そう」
アクトも唾をのむ。
「あれは完全に有機的な生体の一部であることがすでに分かっている。それは一個の生命体のようでもある」
それにアクトが反応する。
「それって、人工生命体ってことですか...そんな科学力一体どこに...」
「今話せることまで、言ったであろう。言ってはいけないことは話せん。続けよう。その生命体だが、先日シュウ君が提供してくれた研究体で明らかになった。それで見返りに私から情報を提供をというわけだ。あの尾が如何のようにして人間をむしばむのかもわかっている。あれが腰に引っ付き、手始めに神経に接続する。そして神経を伝って上へ上へと向かう。そして脳を感じるとそこに致死量の快楽物質を分泌する」
「その時点でもう死んでるんですね...」
「ああ。幸か不幸かな...。それから、脳幹に進行しながら同時に体も犯していく。そして脳幹を犯すより早く体を支配する。それで人に襲い掛かるというわけだ。また、脳幹のうち人工尾に侵された部分さえ破壊すれば鎮圧できるということもわかっている」
「閻警視総監、人工尾の所持者が以上に力が強いのですが、それに関しては何かわかっているんでしょうか」
「あれに侵されたものは尾の分泌物で身体能力が強化される。君ら通常の尾所持者も同様のはずだが...」
「そんなもの、いったい誰が...」
アクトの疑問に閻は首を振る。
「今は言えない、としか言えん。一つ、ここだけにしておいてほしいことがある。君ら,..アクト君にはないんだったな。その尾は、後天的に外部から得たものだ」
その言葉にその場の全員が呆然と口を開けた。すぐにアクトが反応する。
「それって...つまりファームにいる人間も全員人工尾所持者ってことですか」
その顔は若干の怒りも見えている。
「少し、違う。君らに生えている尾は個々の個体であり、それぞれ個性がある。別の生命体だ。対して人工尾は培養されたクローンのようなものだ。粗悪品...といったところか。正規の薬局で売られる医薬品と、その辺の化学物質で作られたい脱法ドラッグのような違いだ」
「じゃあ...」
「君が憤るのは違法尾肢所持者、先刻の会議で名づけられた名で呼ぶなら『フィフス』だけでよい」
「フィフス...俺はそいつらと戦います。あなたのために」
「おや、私が何かしたのかな?」
「昔...ちょっとありまして」
「おお、あの時の...覚えているぞ。そうか、それでわざわざ志願してこの課に...尾なしでここまでやるのは私以外では君が初めてだ。頑張ってくれたまえ」
「...はい!」
「それからシュウ君」
「はっははい!」
「何か、君には運命が植え付けられているような気がする。私が知っていることでは話せることはもうないが、君ならその先を行くことができるだろう」
「あっありがとうございます」
緊張するシュウを見て閻はシュウを見て微笑んだ。
「では、君たちには期待しているよ。この署の命運は明るいようだな」
はっはっはっは、と笑い声をあげながら、部屋を後にした。
「なんなんですかあの人...」
シュウが耐え切れず赤城に聞く。
「あの人は、警察組織に入ってから異例の14か月で警視正まで出世、そこから1年足らずで警視総監になった異次元のやりてだ。入ってから一瞬でスキャンダルをつかみ、それを暴いて上に立つ。そうして成り上がったんだ。さらにそれだけじゃない。現場に立てばまるでオーケストラの指揮者のように、組織の上に立てば足りない歯車をひとつずつ埋めるように。通るところすべての問題を焼却していく本国警察の魔王だ」
「そんなすごい人がなんで護衛もつけずに...」
「それは護衛をつけると護衛を護衛する羽目になるからだ」
アクトが語りだした。とても饒舌に語りだした。
「あの人は武器を持たない。あの上着の内側にも武器は持っちゃいない。手に触れるものすべてを武器とし、状況の最適解をいつも見つけ出す。人間技じゃねえよな。だって強盗をバッグ一個で制圧するんだ。銃弾を防ぎ、銃口をふさいでそのままけり倒して銃を破壊、犯人を締めて制圧。あれが初めて見た閻警視総監だった...あの人は最強だよ。銃弾を手で受け流したって話も...」
「...アクト君」
レイラがアクトの話を遮る。
「なんだよ」
「よくしゃべるね」
「うっせえ!誰だって好きなもんの一つや二つあんだろ!」
「アクト君にもそういうのあるんだなあって...」
「ああもういい。ここまでだ。とにかくすごい人だってことだ」
アクトはそっぽを向いた。
「ふふ」
レイラはアクトを眺めながら、コーヒーに口を付けた。
(最強...すべてが武器...かっこいい!)
シュウも最強とかに弱い男の子だった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
魅了の対価
しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。
彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。
ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。
アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。
淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
クゥクーの娘
章槻雅希
ファンタジー
コシュマール侯爵家3男のブリュイアンは夜会にて高らかに宣言した。
愛しいメプリを愛人の子と蔑み醜い嫉妬で苛め抜く、傲慢なフィエリテへの婚約破棄を。
しかし、彼も彼の腕にしがみつくメプリも気づいていない。周りの冷たい視線に。
フィエリテのクゥクー公爵家がどんな家なのか、彼は何も知らなかった。貴族の常識であるのに。
そして、この夜会が一体何の夜会なのかを。
何も知らない愚かな恋人とその母は、その報いを受けることになる。知らないことは罪なのだ。
本編全24話、予約投稿済み。
『小説家になろう』『pixiv』にも投稿。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる