TAIL BERSERKER

滝永ひろ

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Ⅸ 会遇

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「ただいま戻りました...」

シュウが戻ると、部屋にはいつもの3人と、もう一人見慣れない人物がいた。

「君が永目シュウ君かね。話は聞いているよ」

そこにいたのは、ぱっと見4~50代の男。威厳を醸し出しており、只者ではない雰囲気をにおわせている。尾は生えていない。

「この方は閻公成。人類最強の警視総監だ」

「いかにも」

「けいしっ...」

「身構えなくともよい。私は君たちに伝えなくてはならないことがあった故ここに来たまでだ」

「伝えなくてはいけないこと...?」

ゴホン、と咳払いをして閻は話し始めた。

「まず、人工尾のことだ。今話せるところまで話そう」

アクトも唾をのむ。

「あれは完全に有機的な生体の一部であることがすでに分かっている。それは一個の生命体のようでもある」

それにアクトが反応する。

「それって、人工生命体ってことですか...そんな科学力一体どこに...」

「今話せることまで、言ったであろう。言ってはいけないことは話せん。続けよう。その生命体だが、先日シュウ君が提供してくれた研究体で明らかになった。それで見返りに私から情報を提供をというわけだ。あの尾が如何のようにして人間をむしばむのかもわかっている。あれが腰に引っ付き、手始めに神経に接続する。そして神経を伝って上へ上へと向かう。そして脳を感じるとそこに致死量の快楽物質を分泌する」

「その時点でもう死んでるんですね...」

「ああ。幸か不幸かな...。それから、脳幹に進行しながら同時に体も犯していく。そして脳幹を犯すより早く体を支配する。それで人に襲い掛かるというわけだ。また、脳幹のうち人工尾に侵された部分さえ破壊すれば鎮圧できるということもわかっている」

「閻警視総監、人工尾の所持者が以上に力が強いのですが、それに関しては何かわかっているんでしょうか」

「あれに侵されたものは尾の分泌物で身体能力が強化される。君ら通常の尾所持者も同様のはずだが...」

「そんなもの、いったい誰が...」

アクトの疑問に閻は首を振る。

「今は言えない、としか言えん。一つ、ここだけにしておいてほしいことがある。君ら,..アクト君にはないんだったな。その尾は、後天的に外部から得たものだ」

その言葉にその場の全員が呆然と口を開けた。すぐにアクトが反応する。

「それって...つまりファームにいる人間も全員人工尾所持者ってことですか」

その顔は若干の怒りも見えている。

「少し、違う。君らに生えている尾は個々の個体であり、それぞれ個性がある。別の生命体だ。対して人工尾は培養されたクローンのようなものだ。粗悪品...といったところか。正規の薬局で売られる医薬品と、その辺の化学物質で作られたい脱法ドラッグのような違いだ」

「じゃあ...」

「君が憤るのは違法尾肢所持者、先刻の会議で名づけられた名で呼ぶなら『フィフス』だけでよい」

「フィフス...俺はそいつらと戦います。あなたのために」

「おや、私が何かしたのかな?」

「昔...ちょっとありまして」

「おお、あの時の...覚えているぞ。そうか、それでわざわざ志願してこの課に...尾なしでここまでやるのは私以外では君が初めてだ。頑張ってくれたまえ」

「...はい!」

「それからシュウ君」

「はっははい!」

「何か、君には運命が植え付けられているような気がする。私が知っていることでは話せることはもうないが、君ならその先を行くことができるだろう」

「あっありがとうございます」

緊張するシュウを見て閻はシュウを見て微笑んだ。

「では、君たちには期待しているよ。この署の命運は明るいようだな」

はっはっはっは、と笑い声をあげながら、部屋を後にした。

「なんなんですかあの人...」

シュウが耐え切れず赤城に聞く。

「あの人は、警察組織に入ってから異例の14か月で警視正まで出世、そこから1年足らずで警視総監になった異次元のやりてだ。入ってから一瞬でスキャンダルをつかみ、それを暴いて上に立つ。そうして成り上がったんだ。さらにそれだけじゃない。現場に立てばまるでオーケストラの指揮者のように、組織の上に立てば足りない歯車をひとつずつ埋めるように。通るところすべての問題を焼却していく本国警察の魔王だ」

「そんなすごい人がなんで護衛もつけずに...」

「それは護衛をつけると護衛を護衛する羽目になるからだ」

アクトが語りだした。とても饒舌に語りだした。

「あの人は武器を持たない。あの上着の内側にも武器は持っちゃいない。手に触れるものすべてを武器とし、状況の最適解をいつも見つけ出す。人間技じゃねえよな。だって強盗をバッグ一個で制圧するんだ。銃弾を防ぎ、銃口をふさいでそのままけり倒して銃を破壊、犯人を締めて制圧。あれが初めて見た閻警視総監だった...あの人は最強だよ。銃弾を手で受け流したって話も...」

「...アクト君」

レイラがアクトの話を遮る。

「なんだよ」

「よくしゃべるね」

「うっせえ!誰だって好きなもんの一つや二つあんだろ!」

「アクト君にもそういうのあるんだなあって...」

「ああもういい。ここまでだ。とにかくすごい人だってことだ」

アクトはそっぽを向いた。

「ふふ」

レイラはアクトを眺めながら、コーヒーに口を付けた。

(最強...すべてが武器...かっこいい!)

シュウも最強とかに弱い男の子だった。
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