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ⅩⅠ 捕獲
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やがて、入口の車から漏れる光で逆光になった赤城が見える。
「おーう、やっぱ逃がしたか」
赤城は煙草をくわえたまま手をひらひらと振って声をかけてきた。
「赤城さん、敵は幻覚を見せるフィフスです!透明になったかのような幻覚を見せて逃げていたんです!」
「わかってらあ。そのためのこいつだよ」
赤城は煙草を口から離すと、煙を吐いた。
「幻覚、破れたり!」
煙が立ち込めたが、一か所だけ人の形に煙が行かない場所があった。そこは、敵がいる場所だ。
「そこだッ!」
もう一つ、空間がヒト型の空間に向かう。赤城の尾だ。
「つかまえ、たッ!」
その尾が敵に巻き付き、とらえる。
「ふー、手間かけさせやがって。こういうのは一日以内に捕まえないといけねーんだが...報告書改竄しとこ」
法を犯すのに余念がない警察官である。
「ふしゅ...」
敵は幻覚を解いた。
「やっと姿を現しやがったな。これが仮面か...来いよシュウ、これが煩わせた野郎の正体だ」
そういって、赤城がその仮面に手をかける。
「御開帳...」
仮面の下に隠れていた顔、それはシュウにとって見慣れた顔。
「エン...?」
「...シュ...ウ...」
「エン!エンじゃないか!ママが死んだって...」
「シュウ...これだけ...第8大陸...天使は悪魔...」
「何?意味が分からないよ!」
「ふしゅ...るるる...」
その敵は正気を失っていた。
「ふっしゅるるるる...」
仮面を赤城から奪い、それをつけ、赤城の見えない尾を振り払って姿を消した。そして、赤城が乗ってきた車のドアがひとりでに開き、車が傾く。そして、向こう側のドアも開く。
「しまった!」
赤城が追いかけんと車に乗ったときには遅かった。本体のない、影だけが走っていき、やがてそれもアスファルトに溶け込んでいく。
「しまった...逃がした」
一方シュウは、放心状態であった。
「第8大陸...天使は悪魔...」
その言葉をかみしめ、考えている。
「赤城さん」
「帰るぞ」
「赤城さんにはさっきエンが言ってたことわかるんでしょ」
「...」
「8ってどういうことなんですか。天使ってなんのことなんですか。ねえ知ってるんでしょ。教えてくださいよ」
「シュウ...」
「赤城さん!」
「シュウ!」
シュウが赤城を問い詰めるとともに、赤城の声も大きくなった。
「赤城さん...」
「シュウ、帰るぞ」
赤城は何も言わなかった。
「あれは本当に親友の声だったか」
赤城が車の中、シュウに聞く。
「...はい」
「話を聞く限り、あいつに幻聴は起こせなさそうだ。それなら声だけは本物だろう。お前が本物だというなら本物だろう」
「...殺さないといけないんですかね」
「状況次第、としか言えない」
「赤城さんはエンの言葉、ホントにわからないんですか」
「...ああ」
赤城は左にハンドルを切った。
「...大人ですね」
「お前は子供のままだな」
それから二人の仲に会話は生まれなかった。
「先に部屋に戻ってろ。俺は行くとこがある」
「わかりました」
シュウは警察署に入っていった。
「だからあ、赤城ってのがギャング対策本部にいるでしょ?」
受付で女の声がした。声の主は、白衣を来た、髪の長いやたらにスタイルのいい女性。
「聞き覚えのある声...」
「あっ、新人君じゃない?」
その女が降り向いた。初めて見たその顔は、顔立ちがよく、見るものを引き付ける。シュウの顔を見るなり寄ってくる。
「えっと...シュウ君だったかな?私、覚えてる?研究所の受付のお姉さんよ」
「ああ、あの時の!」
「覚えててくれたのね!そう、リツよ!ほんとにあの検体助かったわ~。お礼はいつかするからね」
「ああ、それは...ところで、赤城さんを探してるんですか?」
「あっ、そうだったわ。あの受付の刑事、なんかい言っても留守だの一点張りで何も教えてくれないのよ」
「あ~、赤城さんならさっき...」
「知ってるのね!?」
「車で出ましたけど...」
「うああああ~~~~」
リツは崩れ落ちた。
「なんか、行くところがあるって」
「どこに行くかは聞いてない?」
「聞いてないですけど、知ってても防犯上の理由から教えることはできませんよ」
「そっか~...」
「ところで何の用だったんですか?もしよければ僕が伝えておきますけど...」
「タバコ...」
「え?」
「あいつ、貸してって言って私のタバコ一箱持ってったのよ~。吸わないくせに...一箱余ってたから渡したけど、吸ってた箱が空いちゃって...」
「ああ...」
「ねえシュウ君、あいつ、私のタバコどこやったか知ってる?」
「えっと...一本は吸ってましたけど...他はわかりません」
「そっか...じゃあ、ここで待ってれば来るわね」
「そう...ですね。じゃあ、僕は部屋に戻るので」
「え?ここに居なさいよ」
「業務があるので...」
「え~ケチ。ちょっとくらいいいでしょ?」
「それは...」
「それとも女の子慣れしてないシュウ君は女の人といるの緊張しちゃうのかな?」
「いやっそんな...」
「ふふ。かわいい」
リツはシュウで遊んでいた。
「じゃっじゃあリツさん」
「どうしたの?」
「あの、検体のお礼してくれるって...」
「あら、こんな人目のつくところでなんて大胆ね」
「そうじゃなくて...教えてほしいことがいくつかあって」
「何?お姉さん、あなたになら何でも教えてあげる」
「あの、赤城さんについて...」
「...知りたいの?」
「はい」
「あの男のことは、話したくないわ。ごめんね、私帰るわ。きっとあいつもタバコ届けに行ってくれたんでしょ。ばいばい」
リツは、そのまま帰っていった。
「おーう、やっぱ逃がしたか」
赤城は煙草をくわえたまま手をひらひらと振って声をかけてきた。
「赤城さん、敵は幻覚を見せるフィフスです!透明になったかのような幻覚を見せて逃げていたんです!」
「わかってらあ。そのためのこいつだよ」
赤城は煙草を口から離すと、煙を吐いた。
「幻覚、破れたり!」
煙が立ち込めたが、一か所だけ人の形に煙が行かない場所があった。そこは、敵がいる場所だ。
「そこだッ!」
もう一つ、空間がヒト型の空間に向かう。赤城の尾だ。
「つかまえ、たッ!」
その尾が敵に巻き付き、とらえる。
「ふー、手間かけさせやがって。こういうのは一日以内に捕まえないといけねーんだが...報告書改竄しとこ」
法を犯すのに余念がない警察官である。
「ふしゅ...」
敵は幻覚を解いた。
「やっと姿を現しやがったな。これが仮面か...来いよシュウ、これが煩わせた野郎の正体だ」
そういって、赤城がその仮面に手をかける。
「御開帳...」
仮面の下に隠れていた顔、それはシュウにとって見慣れた顔。
「エン...?」
「...シュ...ウ...」
「エン!エンじゃないか!ママが死んだって...」
「シュウ...これだけ...第8大陸...天使は悪魔...」
「何?意味が分からないよ!」
「ふしゅ...るるる...」
その敵は正気を失っていた。
「ふっしゅるるるる...」
仮面を赤城から奪い、それをつけ、赤城の見えない尾を振り払って姿を消した。そして、赤城が乗ってきた車のドアがひとりでに開き、車が傾く。そして、向こう側のドアも開く。
「しまった!」
赤城が追いかけんと車に乗ったときには遅かった。本体のない、影だけが走っていき、やがてそれもアスファルトに溶け込んでいく。
「しまった...逃がした」
一方シュウは、放心状態であった。
「第8大陸...天使は悪魔...」
その言葉をかみしめ、考えている。
「赤城さん」
「帰るぞ」
「赤城さんにはさっきエンが言ってたことわかるんでしょ」
「...」
「8ってどういうことなんですか。天使ってなんのことなんですか。ねえ知ってるんでしょ。教えてくださいよ」
「シュウ...」
「赤城さん!」
「シュウ!」
シュウが赤城を問い詰めるとともに、赤城の声も大きくなった。
「赤城さん...」
「シュウ、帰るぞ」
赤城は何も言わなかった。
「あれは本当に親友の声だったか」
赤城が車の中、シュウに聞く。
「...はい」
「話を聞く限り、あいつに幻聴は起こせなさそうだ。それなら声だけは本物だろう。お前が本物だというなら本物だろう」
「...殺さないといけないんですかね」
「状況次第、としか言えない」
「赤城さんはエンの言葉、ホントにわからないんですか」
「...ああ」
赤城は左にハンドルを切った。
「...大人ですね」
「お前は子供のままだな」
それから二人の仲に会話は生まれなかった。
「先に部屋に戻ってろ。俺は行くとこがある」
「わかりました」
シュウは警察署に入っていった。
「だからあ、赤城ってのがギャング対策本部にいるでしょ?」
受付で女の声がした。声の主は、白衣を来た、髪の長いやたらにスタイルのいい女性。
「聞き覚えのある声...」
「あっ、新人君じゃない?」
その女が降り向いた。初めて見たその顔は、顔立ちがよく、見るものを引き付ける。シュウの顔を見るなり寄ってくる。
「えっと...シュウ君だったかな?私、覚えてる?研究所の受付のお姉さんよ」
「ああ、あの時の!」
「覚えててくれたのね!そう、リツよ!ほんとにあの検体助かったわ~。お礼はいつかするからね」
「ああ、それは...ところで、赤城さんを探してるんですか?」
「あっ、そうだったわ。あの受付の刑事、なんかい言っても留守だの一点張りで何も教えてくれないのよ」
「あ~、赤城さんならさっき...」
「知ってるのね!?」
「車で出ましたけど...」
「うああああ~~~~」
リツは崩れ落ちた。
「なんか、行くところがあるって」
「どこに行くかは聞いてない?」
「聞いてないですけど、知ってても防犯上の理由から教えることはできませんよ」
「そっか~...」
「ところで何の用だったんですか?もしよければ僕が伝えておきますけど...」
「タバコ...」
「え?」
「あいつ、貸してって言って私のタバコ一箱持ってったのよ~。吸わないくせに...一箱余ってたから渡したけど、吸ってた箱が空いちゃって...」
「ああ...」
「ねえシュウ君、あいつ、私のタバコどこやったか知ってる?」
「えっと...一本は吸ってましたけど...他はわかりません」
「そっか...じゃあ、ここで待ってれば来るわね」
「そう...ですね。じゃあ、僕は部屋に戻るので」
「え?ここに居なさいよ」
「業務があるので...」
「え~ケチ。ちょっとくらいいいでしょ?」
「それは...」
「それとも女の子慣れしてないシュウ君は女の人といるの緊張しちゃうのかな?」
「いやっそんな...」
「ふふ。かわいい」
リツはシュウで遊んでいた。
「じゃっじゃあリツさん」
「どうしたの?」
「あの、検体のお礼してくれるって...」
「あら、こんな人目のつくところでなんて大胆ね」
「そうじゃなくて...教えてほしいことがいくつかあって」
「何?お姉さん、あなたになら何でも教えてあげる」
「あの、赤城さんについて...」
「...知りたいの?」
「はい」
「あの男のことは、話したくないわ。ごめんね、私帰るわ。きっとあいつもタバコ届けに行ってくれたんでしょ。ばいばい」
リツは、そのまま帰っていった。
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