THREE PARTS 3/2

滝永ひろ

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THREEPARTS 3/2

2話

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「マミちゃ~ん、海行こうよ~」

交番で机に突っ伏して寝る真美を揺さぶり悠生が言う。

他の二人は交番前で待っている。

「んあ...ああお前らか...あんだよせっかく人が職務サボって昼寝してんのによ~...」

「もう4時だぞ...ってか仕事はしろよ」

「うるっせこの町ヤンキーどもが多すぎておまわりの1人や2人いないも一緒なんだよ」

「じゃあいこ~ぜ~」

「...しっかたねぇなぁ、土曜非番だから連れてってやるよ~」

思ったより真美の声はウキウキである。

「海といえば男漁りだろ」

「本音出てんぞ」

外から丹波が突っ込む。

鋼はアイスで口がふさがっているので黙っている。

「とりあえず海には連れてってやるよ。つーか連れてけ。私が海にいく理由をしっかり務めろ」

「OK、とりあえずつれってってくれるんだな」



そうして土曜日。

「お前らなあ...」

やってきた真美が三人組に言う。

「ヤンキーなのに5分前行動って...真面目か...」

「遅れたら失礼だろ」

「俺なんて10分前に来たぞ!」

「俺は悠生に運ばれてきた...」

鋼はアイスキャンディーを咥えている。

真美のヤンキー幻想がまた傷ついたところで、真美は煙草をくわえて言う。

「乗りな」

シュボっとジッポの火をつけた。

「てかさ~、子供の前でタバコやめろよ~」

「あ?お前らもこそこそやってんだろ。吸う?マルボロ」

「へっ、俺らはシガレット一択だよ」

鋼はアイスキャンディーも選択肢にあるようだ。

「お菓子かよ...小学生か」

「つーかおまわりが高校生にたばこ勧めんな」

そう横から丹波が突っ込む。

「へっ。あたしは別に秩序なんぞのために警察やってねーんだ」

「うわっ。最寄りの警察署寄ってもらっていい?」

「いやだ!私はまだ職を失いたくない!」

「じゃあたばこやめろや」

そういって車に備え付けのギュウギュウな灰皿を開け、吸い殻を押し込む。

鋼が食べ終わったアイスの棒をしまい、次のアイスの包装を開ける。

「ついたぞ」

「よっしゃ!荷物運ぶぞ!」

悠生が車を飛び出す。

鋼はアイスを口に突っ込む。

「え。お前らそのまんま入んの?」

「え?だって下に水着着てるし」

「準備万端かよ...わっくわくじゃん」

「え?だってマミちゃんと海これたし。なんか変?」

「...いや。はぁ...」

「おーい丹波、あれ貸してやって」

「おう」

丹波が荷物から袋を取り出す。

「ポータブル更衣室~」

骨組みを手際よく組み立て、カーテンを取り付け、シャッ!と開ける。

「どうぞ」

「...私もうお前らでいいわ...www」

「年増に興味はない」

鋼が口からアイスを引っこ抜いてボソッと言う。

「ぁ゛あ゛!?」

ぐりんと真美が車の中の鋼をにらむ。

「私はまだ年増じゃねえ!35だ!」

「19歳差...」

「あそっか」

真美が珍しく納得している。

「じゃああたし着替えるから。覗くなよ~」

そう肩越しに言って、水着の入ったバッグを持って更衣室に入っていく。

それを待つ三人組...

...

...

...

真美がなかなか出てこない。

「マミちゃん、なんかあった?」

シャッ!とカーテンが勢いよく開いて、真美が姿を見せる。

形に特徴もない黒のビキニだが、いつもの制服からはわからない抜群のスタイルがあらわになっている。

それはそうと、開口一番大声で、

「いや覗けよ!!」

「??覗いたら犯罪だろ」

「なんでそういうとこしっかりしてんだよ悠生ぃ!多感な男子高校生なら除くだろそんなにアラサーの裸体は興味ないか!」

「人が嫌がることしちゃダメだろ」

「よくできた子だなあ丹波もよぉ!おい鋼ぉ!」

「年増の体に興味はない」

「お前が一番しっくりくるよチキショー!」

「よっと」

そういって車を降りた鋼の手には、パラソル・シート・全員分のバッグが抱えられている。

「早く行こ...」

ほくほく顔である。

「...やっぱ私お前らでいいわ」



海に降りると、周りはカップルがわらわらと遊んでいる。

「全員女付きかよ!」

真美が崩れ落ちる。

「マミちゃん、あそぼ!」

「あ゛~~...私もうやる気失せたんだけど...」

「日焼け止めは塗らなくていいのか?」

丹波が訪ねる。

「更衣室で塗ったよ...お前ら覗かないから...」

「じゃあ遊ぼうぜ!せっかく鋼がやる気なんだし!」

鋼はぺったんこのビーチボールの空気穴を咥えて不機嫌そうな顔をする。

「貸しなよ。私がやったげるから」

鋼はスッとボールを差し出し、それを受け取った真美はカリッと咥え、

「フッ!」

一瞬でボールが膨らんだ。

「お~」

「さすが」

「年増」

「いやそれほどでも...ってなんか余計なのいたな...まあいいや。やるぞ!コート書け!」

「「へい!」」

悠生と丹波が走り出す。

「どうぞ!」

「お前らそろいもそろって...」

コートがやたらにでかい。

「18×9でビーチバレーするやつがあるかぁ!」

書き直せ書き直せ。

結局三分の一のサイズになった。

「ったく...ネットもこのサイズじゃねーか...」

真美チーム:吉田真美、外村鋼。
悠生チーム:穂高悠生、志原丹波。

「1点先取、負けたら海の家でなんか奢りな。行くぞ~」

真美のサーブ。

猛烈な回転がかかったボールが、縦に曲線を描いてコートに突き刺さる。

1発で決めるつもりか。

「3m四方のコートにおいて能力範囲が半径1.5mの俺らに死角はねえ!」

ボールが回転したまま空中で静止する。

そこに丹波が入り、下からレシーブする。

それを悠生がトスし、上がったボールの先には丹波。

「ドラァ!」

丹波のパワー×能力の衝撃。

「へっ、私のジャンプ力なめんな!」

真美がブロックに飛ぶ。

両手を横に広げ、ブロックにしては変なポーズだ。

しかし、真美は納金ジャンプでネットから肩まで見え、腕が広範囲をブロックする。

「甘い」

丹波が人差し指をクイっと上にスワイプする。

スパイクは真美にあたることはなく、さらに丹波の指の動きに合わせて真上に上がり、真美の上を通り、真美の真後ろで地面に向かって急降下する。

「鋼ォ!」

地面にバリアが張られる。

バリアにバウンドし、鋼のほうに飛んでいく。

鋼がそれを高く打ち上げる。

「ネット超えるぞ、上げろ丹波」

「いや、待て悠生!」

ネットの直上5mほどまで上がったボール。

そのすぐそばに真美。

「普通に打ってちゃ勝てないんだろ。じゃあお前らが反応できない弾速で撃ち落とせばいいんだ」

真美がほぼ真下に腕を振り下ろす。

パンッ!

ボールが破裂する。

「えっ」

鳩が豆鉄砲食らったような顔をして、腕を振り下ろしたままの姿勢で真美が落下した。

ネットにあたり、コートにずり落ちる。

「いてっ」

鋼があることに気づく。

「ネットタッチ...」

勝者、悠生チーム。
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