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THREEPARTS 3/2
7話
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「なんだぁ?誘拐かぁ?」
あんなことがあったすぐ翌日、交番の前を通りかかった丹波と少女に真美が声をかけた。
「...せめてデートだろ」
丹波が突っ込み、少女が顔を赤らめる。
「いやあ、ヤンキーのお前が神宮寺家のご令嬢、神宮寺茅乃ちゃんを連れてたら誘拐に見えるだろ」
「真美さん、俺がそんなことすると思うの?」
「いや、お前は頭いいやつだからな。せいぜい家での付き合いとかだろ」
「ああ、大方そんなとこだ」
「あの...」
か細く可愛らしい声で茅乃が喋り出す。
「この人は...」
「ああ、この辺の治安を守ってるおまわりさんの吉田真美さん。俺も昔から良くしてもらってるんだ」
茅乃がぺこりと頭を下げる。
「あ、ども」
つられて真美も頭を下げる。
真美に丹波が耳打ちする。
「家出する度俺のとこ来るから親は俺の事信頼してて任せてくれてんだ。一応周りにボディーガードは隠れてるから、安心して」
真美が頷く。
「行こうか茅乃ちゃん」
「だがしやに行きたいです!」
「晩御飯が入らなくならないようにするんだよ」
「はい!」
かわいい。
「じゃまたな」
と丹波がいうと、茅乃がぺこりとお辞儀をする。
そのまま2人は交番を去った。
駄菓子屋にて。
「これ好きです」
茅乃が手に取ったのは、小さなプラスチックの缶に入ったコーラのラムネの駄菓子だ。
商品名はプチ・コーラ。
「おう、買うか。他はなんかないのか?」
「え~っと.......あっ!これ気になります!」
茅乃の手には、「ねりねりねりね」が握られている。
「あ~、懐かしい...ガキの頃やったなあ」
「このふたつ!買います!」
茅乃がレジに持っていき、レジのトメさんに渡す。
「はぁい、130円ね」
「こんな楽しいお菓子が安く買えて駄菓子は凄いです!」
「可愛いお嬢ちゃん、おまけつけとくね」
「わわっ!ありがとうございます!」
茅乃はトメさんからおまけの10円ガムを貰って、がま口の小銭入れから130円取り出し、トメさんに渡す。
「はい、ピッタリね~。彼氏と仲良く食べな」
「かかっ!かれっ!」
茅乃の顔が赤くなる。
「あんまからかうなよトメさん。箱入りの娘さんだ」
「ふふ、お似合いだと思うんだがねぇ」
「あーったよ。ありがとな。行くぞ茅乃ちゃん」
「はい!」
行くと言っても、トメさんが店の前にベンチを置いてくれているので、そこで2人で座って食べるのがいつものパターンだ。
茅乃がプチ・コーラの蓋を開ける。
「丹波さん!手、出してください」
丹波が手の平を差し出す。
じゃらら、と茅乃がラムネを丹波の手に出す。
「おすそわけです」
「お、ありがとう」
丹波がその1つをつまみ取り、口に放り込む。
慣れ親しんだコーラの味がする。
柄の悪い高校生と可愛らしい少女が、駄菓子屋の前のベンチに座って駄菓子を頬張っている。
ほっこりする絵面だが、そうはいかない超能力社会。
「おお?神宮寺財閥のご令嬢じゃあねぇかぁ?」
チンピラだ。
ヤンキーヤクザの蔓延るこの街でご令嬢が狙われないわけが無い。
「こんなとこで不用心が過ぎるぜぇ。さっさと連れ帰って脅して身代金を...ウグッ」
チンピラが崩れ去った。
「何したんですか?」
「ん?ちょっと痛いことしただけ。茅乃に怖いことしようとしてたからな」
「ありがとうございます」
「まあ、この役目位は果たさないと一緒にいさせて貰えないしな」
「私のために...ありがとうございます」
座ったまま丹波の方にぺこりとお辞儀をする。
「茅乃ちゃんは礼儀がなってて偉いね~。俺は真美さんにいつも友達みたいに接してるよ」
「礼儀は大事です!...でも敬語使わないような仲もちょっと羨ましいです...」
「ん?じゃあ丹波って呼んでみる?俺も茅乃って呼ぼうか」
「ううっ、それは...」
「無理にとは言わんよ」
「今のままにしておきます...」
茅乃がベンチに置いたねりねりねりねを見る。
「これ、やってみたいです」
「おう、やろうか」
粉を入れて、水を入れて(トメさんに貰ってきた)ねりねりすればねりねりするほど色が変わる。
「凄いです!色が変わってます!」
微笑ましい。
「食べてみます...」
あむっ。
「美味しい!」
てっててー。
ねりねりして美味しいねりねりね~りね。
「わわっ、周りに気絶した人がいっぱいです」
「ああ、危ない人は近づけないから安心して」
「ありがとうございましゅ...」
茅乃が顔を赤らめて下を向く。
「さ、ねりねりねりね食べ終わったしそろそろ行くか」
「はい」
ベンチからよっとおりて、2人がまた歩き出す。
「~でさ、その時悠生が牛乳鼻から吹き出して~」
「ははっ、面白いです」
談笑しながら2人は歩いている。
そして日が暮れて空が赤くなった頃、
「あらっ、こんな時間か。ちょうど茅乃ちゃんの家の前だね。ご両親に怒られちゃう。また今度ね」
「平日にありがとうございました。こっそりお部屋に戻ります」
「はーい、またね」
「またね、です!」
茅乃が家に入っていく。
そしてドアを開き、その向こうに姿を隠し、ドアが完全に閉じられた時、影から男が出てきて話しかけてきた。
「今回もありがとうございます。お陰様でお嬢様がまたお帰りになりました」
「いや、俺も好きでやってるんで」
「ところで、旦那様からのお嬢様との縁談についてお決まりでしょうか...」
あんなことがあったすぐ翌日、交番の前を通りかかった丹波と少女に真美が声をかけた。
「...せめてデートだろ」
丹波が突っ込み、少女が顔を赤らめる。
「いやあ、ヤンキーのお前が神宮寺家のご令嬢、神宮寺茅乃ちゃんを連れてたら誘拐に見えるだろ」
「真美さん、俺がそんなことすると思うの?」
「いや、お前は頭いいやつだからな。せいぜい家での付き合いとかだろ」
「ああ、大方そんなとこだ」
「あの...」
か細く可愛らしい声で茅乃が喋り出す。
「この人は...」
「ああ、この辺の治安を守ってるおまわりさんの吉田真美さん。俺も昔から良くしてもらってるんだ」
茅乃がぺこりと頭を下げる。
「あ、ども」
つられて真美も頭を下げる。
真美に丹波が耳打ちする。
「家出する度俺のとこ来るから親は俺の事信頼してて任せてくれてんだ。一応周りにボディーガードは隠れてるから、安心して」
真美が頷く。
「行こうか茅乃ちゃん」
「だがしやに行きたいです!」
「晩御飯が入らなくならないようにするんだよ」
「はい!」
かわいい。
「じゃまたな」
と丹波がいうと、茅乃がぺこりとお辞儀をする。
そのまま2人は交番を去った。
駄菓子屋にて。
「これ好きです」
茅乃が手に取ったのは、小さなプラスチックの缶に入ったコーラのラムネの駄菓子だ。
商品名はプチ・コーラ。
「おう、買うか。他はなんかないのか?」
「え~っと.......あっ!これ気になります!」
茅乃の手には、「ねりねりねりね」が握られている。
「あ~、懐かしい...ガキの頃やったなあ」
「このふたつ!買います!」
茅乃がレジに持っていき、レジのトメさんに渡す。
「はぁい、130円ね」
「こんな楽しいお菓子が安く買えて駄菓子は凄いです!」
「可愛いお嬢ちゃん、おまけつけとくね」
「わわっ!ありがとうございます!」
茅乃はトメさんからおまけの10円ガムを貰って、がま口の小銭入れから130円取り出し、トメさんに渡す。
「はい、ピッタリね~。彼氏と仲良く食べな」
「かかっ!かれっ!」
茅乃の顔が赤くなる。
「あんまからかうなよトメさん。箱入りの娘さんだ」
「ふふ、お似合いだと思うんだがねぇ」
「あーったよ。ありがとな。行くぞ茅乃ちゃん」
「はい!」
行くと言っても、トメさんが店の前にベンチを置いてくれているので、そこで2人で座って食べるのがいつものパターンだ。
茅乃がプチ・コーラの蓋を開ける。
「丹波さん!手、出してください」
丹波が手の平を差し出す。
じゃらら、と茅乃がラムネを丹波の手に出す。
「おすそわけです」
「お、ありがとう」
丹波がその1つをつまみ取り、口に放り込む。
慣れ親しんだコーラの味がする。
柄の悪い高校生と可愛らしい少女が、駄菓子屋の前のベンチに座って駄菓子を頬張っている。
ほっこりする絵面だが、そうはいかない超能力社会。
「おお?神宮寺財閥のご令嬢じゃあねぇかぁ?」
チンピラだ。
ヤンキーヤクザの蔓延るこの街でご令嬢が狙われないわけが無い。
「こんなとこで不用心が過ぎるぜぇ。さっさと連れ帰って脅して身代金を...ウグッ」
チンピラが崩れ去った。
「何したんですか?」
「ん?ちょっと痛いことしただけ。茅乃に怖いことしようとしてたからな」
「ありがとうございます」
「まあ、この役目位は果たさないと一緒にいさせて貰えないしな」
「私のために...ありがとうございます」
座ったまま丹波の方にぺこりとお辞儀をする。
「茅乃ちゃんは礼儀がなってて偉いね~。俺は真美さんにいつも友達みたいに接してるよ」
「礼儀は大事です!...でも敬語使わないような仲もちょっと羨ましいです...」
「ん?じゃあ丹波って呼んでみる?俺も茅乃って呼ぼうか」
「ううっ、それは...」
「無理にとは言わんよ」
「今のままにしておきます...」
茅乃がベンチに置いたねりねりねりねを見る。
「これ、やってみたいです」
「おう、やろうか」
粉を入れて、水を入れて(トメさんに貰ってきた)ねりねりすればねりねりするほど色が変わる。
「凄いです!色が変わってます!」
微笑ましい。
「食べてみます...」
あむっ。
「美味しい!」
てっててー。
ねりねりして美味しいねりねりね~りね。
「わわっ、周りに気絶した人がいっぱいです」
「ああ、危ない人は近づけないから安心して」
「ありがとうございましゅ...」
茅乃が顔を赤らめて下を向く。
「さ、ねりねりねりね食べ終わったしそろそろ行くか」
「はい」
ベンチからよっとおりて、2人がまた歩き出す。
「~でさ、その時悠生が牛乳鼻から吹き出して~」
「ははっ、面白いです」
談笑しながら2人は歩いている。
そして日が暮れて空が赤くなった頃、
「あらっ、こんな時間か。ちょうど茅乃ちゃんの家の前だね。ご両親に怒られちゃう。また今度ね」
「平日にありがとうございました。こっそりお部屋に戻ります」
「はーい、またね」
「またね、です!」
茅乃が家に入っていく。
そしてドアを開き、その向こうに姿を隠し、ドアが完全に閉じられた時、影から男が出てきて話しかけてきた。
「今回もありがとうございます。お陰様でお嬢様がまたお帰りになりました」
「いや、俺も好きでやってるんで」
「ところで、旦那様からのお嬢様との縁談についてお決まりでしょうか...」
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