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THREEPARTS 3/2
8話
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「お嬢様との縁談のお話、お決まりですか」
「またそれかよ...まあ別に絶対嫌だっつーわけでもないから、てきとーに印象悪くならないように伝えといてくれ。変に断って茅乃が俺ん所来れなくなったら嫌だろうし」
「承知しました」
ボディーガードはどこへともなく消えた。
「結婚...ねぇ」
高二の丹波にはまだ早い話だ。
そもそも丹波がなぜ茅乃といるかと言えば、茅乃を守ることに関して信頼を受けているからである。
茅乃が丹波のことを憎からず思っている事も加えて、丹波といればおおよそ安全であるし遅くなる頃には家に送り届けてくれるので父親もボディーガードも丹波に任せられるわけだ。
となるとやはり後継者問題で、神宮寺家は男子に恵まれなかった。
それなら頭も切れる丹波に婿養子として来てもらって神宮寺の社長が退いた後に継いで貰おうと言う願いが強いのだ。
「気長に待ってくれそうだし...する事仄めかしときゃいいだろ」
いざとなったら結婚もやぶさかではない。
丹波も茅乃に対して悪くは思わないので、そうなったらそうなったで、といった感じで捉えている。
「いっそ承諾するか~?」
そう言いながら伸びをして、丹波は神宮寺邸を去った。
「なあお前らさ、結婚ってどう思う?」
翌日の学校の屋上、昼の弁当を食べる3人組の中で丹波が尋ねた。
「好きな人と一緒になるのはいいなって思うよ」
悠生が答える。
「面倒くさそうだから俺はパスで...」
鋼が弁当の方に目をやったまま答える。
「そんなもんだよな~~~っ」
丹波が弁当を置いて後ろに倒れる。
「なんだ?彼女でも出来たのか?」
悠生が尋ねるが、
「いや、そういう訳じゃないんだ」
と丹波。
「俺らもう18だもんな」
「うん、それがどうかしたの?」
「断るのもなんかなぁ...」
「なんだ、やっぱ相手がいるんじゃん」
「いやな...」
そこで丹波は事の顛末を話す。
「へ~、それで断る訳にもいかずただ結婚は決めあぐねてると」
「そうなんだよ...」
「幸せにはなれそうだよな」
「そうだな」
「でも違うんでしょ?」
「...そうだな」
「自分で納得してないなら進むべき道じゃないんじゃない?丹波の人生だし、まあじっくり考えなよ」
「...そう...だよな」
「この女の子は守ってあげたいとか、一緒にいて欲しいみたいな、丹波にはいねーの?」
悠生が聞くと、丹波は天に目を移した。
青空に浮かべたのが茅乃だったかは丹波しか知らない。
「どうだろうな...」
鋼が立ち上がり、「時間」と言うと、悠生と丹波は昼休みギリギリであることに気づいて、弁当を片付け屋上を出ようとする鋼に着いて走った。
そんなことがあった放課後。
「志原様」
校門前に見慣れた黒服と黒塗りベンツが。
「神宮寺んとこのガードか」
「左様でございます」
「何の用だ」
学校に現れたことに若干の苛立ちを見せながら丹波が尋ねる。
「昨日の縁談のお話、旦那様から言伝を預かっております」
「...嫌な予感がするが」
「旦那様より、『これ以上娘を待たせるな。娘には待機している縁談がいくつもある。約束を決めるなら早く』との事です」
「...」
「どうなさいますか」
「あと1日猶予をくれと言ってくれ」
「かしこまりました」
丹波の言葉だけ聞いて黒服は振り返り去ろうとする。
「あとそれから」
黒服が立ち止まる。
「『たまには俺から誘って遊びたい。今からどうか』とお宅のお嬢さんに伝えてくれ」
「...かしこまりました」
「あと邸に行くんなら乗せてってくれ」
「かしこまりました」
黒服が待機させていた車に乗り込み、黒服が発進させる。
五分ほどして、神宮寺邸の前に着く。
「ではこちらでお待ちください。お嬢様にお伝えして参ります」
「ありがとう」
黒服は1度お辞儀をし、邸に向かった。
しばらくし、茅乃を連れて黒服が現れる。
「あの...丹波くん、ごめんね、お父さんが...」
「いいんだ。今日はちょっと大事な用があって」
「えっ...それって...」
黒服がドサッと音を立てて崩れる。
「逃げよう」
丹波が後部座席のドアを開け、そこに茅乃を乗せる。
そして自分は運転席に乗り込み、エンジンをかける。
ちなみに丹波は高二なので免許など持っているはずもない。
「え」
情報を処理しきれない茅乃が戸惑いの言葉を漏らす。
「シー...」
丹波が口の前で人差し指をたて、静かにするようにサインする。
丹波は交番に向かって車を走らせる。
交番に着くと、案の定真美がいた。
「おいおいお前~未成年」
「いいから」
丹波が未成年運転を咎めようとした真美を制止する。
そしてスマホを取り出し、その画面を見せる。
「なるほどね。楽しみな」
丹波が運転席を降りると、そこに真美が乗り込み、丹波は後部座席の茅乃を降ろし、運転席の真美に
「南へ」
とだけ言い、茅乃の手を引いて北へ走り出した。
「何がなんでも連れ戻せ!ふざけたあの男をひっ捕らえて法以上の裁きを加えろ!」
神宮寺邸で男の声が響き渡る。
茅乃の父だ。
後ろで母がアワアワと一人娘が連れ去られたことに不安がっている。
神宮寺父が叫ぶ。
「車のGPSを終え!」
「現在交番より南へ逃走中!」
「目的地を推定しろ!車内の盗聴器の情報も使うのだ!」
黒服たちが行ったり来たり、大の大人が奔走している。
全て、丹波の思い通りに。
父は苛立ちをみせ、指でテーブルを叩き、母は「あなた…」と父にすがっている。
「何が何でも見つけろ!」
「車、止まりました!」
「直ちに追え!」
黒服たちが乗り込んだ車が次々に発信する。
「...しかし、何かがおかしい」
神宮寺父は何かに気づいた。
「おいお前」
近くの黒服を呼び止める。
「念の為娘のGPSも追え。何か引っかかる」
「了解しました」
黒服が開いたスマホに、車のそれとは逆に動く娘の位置情報が映し出される。
「これは...」
「クソッ!」
父がテーブルを打つ。
「大人をバカにしやがって...」
父が興奮気味に叫ぶ。
「車に向かっているヤツらは全て娘のGPSの方に向かわせろ!我々をコケにするガキを許すな!」
無線の先で、数台の車がUターンを始めた。
「またそれかよ...まあ別に絶対嫌だっつーわけでもないから、てきとーに印象悪くならないように伝えといてくれ。変に断って茅乃が俺ん所来れなくなったら嫌だろうし」
「承知しました」
ボディーガードはどこへともなく消えた。
「結婚...ねぇ」
高二の丹波にはまだ早い話だ。
そもそも丹波がなぜ茅乃といるかと言えば、茅乃を守ることに関して信頼を受けているからである。
茅乃が丹波のことを憎からず思っている事も加えて、丹波といればおおよそ安全であるし遅くなる頃には家に送り届けてくれるので父親もボディーガードも丹波に任せられるわけだ。
となるとやはり後継者問題で、神宮寺家は男子に恵まれなかった。
それなら頭も切れる丹波に婿養子として来てもらって神宮寺の社長が退いた後に継いで貰おうと言う願いが強いのだ。
「気長に待ってくれそうだし...する事仄めかしときゃいいだろ」
いざとなったら結婚もやぶさかではない。
丹波も茅乃に対して悪くは思わないので、そうなったらそうなったで、といった感じで捉えている。
「いっそ承諾するか~?」
そう言いながら伸びをして、丹波は神宮寺邸を去った。
「なあお前らさ、結婚ってどう思う?」
翌日の学校の屋上、昼の弁当を食べる3人組の中で丹波が尋ねた。
「好きな人と一緒になるのはいいなって思うよ」
悠生が答える。
「面倒くさそうだから俺はパスで...」
鋼が弁当の方に目をやったまま答える。
「そんなもんだよな~~~っ」
丹波が弁当を置いて後ろに倒れる。
「なんだ?彼女でも出来たのか?」
悠生が尋ねるが、
「いや、そういう訳じゃないんだ」
と丹波。
「俺らもう18だもんな」
「うん、それがどうかしたの?」
「断るのもなんかなぁ...」
「なんだ、やっぱ相手がいるんじゃん」
「いやな...」
そこで丹波は事の顛末を話す。
「へ~、それで断る訳にもいかずただ結婚は決めあぐねてると」
「そうなんだよ...」
「幸せにはなれそうだよな」
「そうだな」
「でも違うんでしょ?」
「...そうだな」
「自分で納得してないなら進むべき道じゃないんじゃない?丹波の人生だし、まあじっくり考えなよ」
「...そう...だよな」
「この女の子は守ってあげたいとか、一緒にいて欲しいみたいな、丹波にはいねーの?」
悠生が聞くと、丹波は天に目を移した。
青空に浮かべたのが茅乃だったかは丹波しか知らない。
「どうだろうな...」
鋼が立ち上がり、「時間」と言うと、悠生と丹波は昼休みギリギリであることに気づいて、弁当を片付け屋上を出ようとする鋼に着いて走った。
そんなことがあった放課後。
「志原様」
校門前に見慣れた黒服と黒塗りベンツが。
「神宮寺んとこのガードか」
「左様でございます」
「何の用だ」
学校に現れたことに若干の苛立ちを見せながら丹波が尋ねる。
「昨日の縁談のお話、旦那様から言伝を預かっております」
「...嫌な予感がするが」
「旦那様より、『これ以上娘を待たせるな。娘には待機している縁談がいくつもある。約束を決めるなら早く』との事です」
「...」
「どうなさいますか」
「あと1日猶予をくれと言ってくれ」
「かしこまりました」
丹波の言葉だけ聞いて黒服は振り返り去ろうとする。
「あとそれから」
黒服が立ち止まる。
「『たまには俺から誘って遊びたい。今からどうか』とお宅のお嬢さんに伝えてくれ」
「...かしこまりました」
「あと邸に行くんなら乗せてってくれ」
「かしこまりました」
黒服が待機させていた車に乗り込み、黒服が発進させる。
五分ほどして、神宮寺邸の前に着く。
「ではこちらでお待ちください。お嬢様にお伝えして参ります」
「ありがとう」
黒服は1度お辞儀をし、邸に向かった。
しばらくし、茅乃を連れて黒服が現れる。
「あの...丹波くん、ごめんね、お父さんが...」
「いいんだ。今日はちょっと大事な用があって」
「えっ...それって...」
黒服がドサッと音を立てて崩れる。
「逃げよう」
丹波が後部座席のドアを開け、そこに茅乃を乗せる。
そして自分は運転席に乗り込み、エンジンをかける。
ちなみに丹波は高二なので免許など持っているはずもない。
「え」
情報を処理しきれない茅乃が戸惑いの言葉を漏らす。
「シー...」
丹波が口の前で人差し指をたて、静かにするようにサインする。
丹波は交番に向かって車を走らせる。
交番に着くと、案の定真美がいた。
「おいおいお前~未成年」
「いいから」
丹波が未成年運転を咎めようとした真美を制止する。
そしてスマホを取り出し、その画面を見せる。
「なるほどね。楽しみな」
丹波が運転席を降りると、そこに真美が乗り込み、丹波は後部座席の茅乃を降ろし、運転席の真美に
「南へ」
とだけ言い、茅乃の手を引いて北へ走り出した。
「何がなんでも連れ戻せ!ふざけたあの男をひっ捕らえて法以上の裁きを加えろ!」
神宮寺邸で男の声が響き渡る。
茅乃の父だ。
後ろで母がアワアワと一人娘が連れ去られたことに不安がっている。
神宮寺父が叫ぶ。
「車のGPSを終え!」
「現在交番より南へ逃走中!」
「目的地を推定しろ!車内の盗聴器の情報も使うのだ!」
黒服たちが行ったり来たり、大の大人が奔走している。
全て、丹波の思い通りに。
父は苛立ちをみせ、指でテーブルを叩き、母は「あなた…」と父にすがっている。
「何が何でも見つけろ!」
「車、止まりました!」
「直ちに追え!」
黒服たちが乗り込んだ車が次々に発信する。
「...しかし、何かがおかしい」
神宮寺父は何かに気づいた。
「おいお前」
近くの黒服を呼び止める。
「念の為娘のGPSも追え。何か引っかかる」
「了解しました」
黒服が開いたスマホに、車のそれとは逆に動く娘の位置情報が映し出される。
「これは...」
「クソッ!」
父がテーブルを打つ。
「大人をバカにしやがって...」
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