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THREEPARTS 3/2
12話
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「トメさん、おっひさー」
いつぞやの駄菓子屋。
丹波が茅乃と来た駄菓子屋。
そこの店番の武田トメさん。
そう、武田さんの奥さん。
武田さんは何者かと言うと...
「お父さん、お呼びですよー」
「ほいほい」
奥から、トメさんに呼ばれて髭を生やしたおじいさんが歩いてきた。
腰は曲がっているようだが、杖もつかず元気な様子だ。
と、唐突に
「ほい」
おじいさんが突き出した拳は、悠生の右耳を掠めた。
「また習いに来たんじゃろ。上がってけ上がってけ」
あの一瞬で悠生は汗ダラダラだ。
「...はい...!」
「ほうか...雲仙が...」
お茶をすすりながら、思い出すように武田さんが呟く。
「あいつはわしの弟子の中で一番のセンスと技術じゃった...それでも全ては教えきれんかったが...あれもこれも、教えておけば良かったと悔やまれるの...」
そして、三人をぎらりと睨む。
「わしの二番弟子...吉田真美を見張っておけ。やつは必ず無茶をする。雲仙ともそれなりに仲が良かったと聞く。敵の正体が割れれば必ず叩きに行く。それだけは絶対に避けろ。わしももう思い入れのある愛弟子に先立たれとうない...」
「分かってます」
「ワシが何を要求するか分かるか...?」
「あの人...マミちゃんより強くしてください」
武田さんはニッコリ笑う。
「あいわかった」
「体力・パワーで勝つのは無理じゃ。引き出しを増やせ」
駄菓子屋近くの河原。
武田さんが見たことの無い構えをする。
「かなり古い武術じゃ...歴史の文献からワシが復元した」
何者なんだ。
「動きの癖を瞬時に読み取って対策を練れい」
仕掛ける。
まず上段への蹴り。
右腕で受け流す。
幸いパワーはない。
武田さんが足を下ろすと、先程より圧倒的に距離が詰まっている。
「マズイ!」
腹部に武田さんの拳が命中した。
「全然ダメじゃ。気が読めとらん。昔も言ったはずじゃ『殺気を読め』と。そんなんじゃ銃で撃たれて終わりじゃ」
そんなこんな2時間。
鋼や丹波はもう帰ってしまっている。
「...やはり若さには敵わんのう...いや、悠生が特別か」
2時間で悠生は武田さんが繰り出す計32種の格闘技を完璧に受けたばかりか、先頭のさなかでその格闘技をし返すまでになった。
「...これでマミさんに勝てるんでしょうか」
「無理じゃな」
「マミさんのパワーでは押し切られる...それにマミさんと俺とじゃ決定的に動きが違う」
「分かってるじゃないか」
「何が違うんですか」
「なんだと思う?」
武田さんが質問に質問で返す。
「やはりパワーですか」
「違う」
「経験ですか」
「違う」
「じゃあなんですか」
「オリジナリティじゃ」
武田さんがカッと目を見開く。
「諸々の戦闘センスだけで言うならお前はとうに真美を上回っておる。では何が違うか、それは最も自分に合った拳法の使用。これは真美にしか教えていないわしの格闘技術における極意。...雲仙にも教えられれば良かったのじゃが」
「それでマミさんに勝てる...マミさんを守れるんですね」
「ああ。お前程の成長速度なら1日あれば数年分の練度が身につくであろう」
「教えてください」
「もちろんじゃ」
自分のための拳法。
オーダーメイドの、自分にあったドンピシャの拳術。
「教えてしんぜよう。お前の特徴はおおよそ分かった」
カットを多用して8時間後...
「もう、もうやめにしよう...これではワシが持たん...」
「ありがとうございました。強くなれた気がします」
日はもう落ちている。
「気をつけて帰るんじゃぞ~」
「大丈夫です。今ならヤクザにあっても無事帰れます」
「はっはっは、あながち冗談でもないのう」
笑いながら、「じゃあの」と手を振る。
それに悠生も振り返す。
あたりは暗い。
直ぐに悠生が見えなくなる。
「お前も危ういがの...この三番弟子よ...」
翌日。
今日は金曜日。
「マミちゃん、いる?」
交番に現れたのはいつもの三人組――—ではなく、悠生一人。
「おうどうした悠生...って今日は一人か」
「ああ、また久しぶりに組手でもして貰えないかなって」
「なんだなんだ?漫画でも読んだか?」
「はは、そんなとこかな」
悠生は明るく振舞っているが、マミちゃんは何か違和感を感じ取っていた。
「...いいぜ。受けて立つ」
交番の裏に行く。
「ここで何回組手したんだろうね」
悠生が問いかける。
「さあな」
真美は何か見透かすのか、素っ気ない返事だ。
「さ、構えろ」
真美が促す。
「構えが違う...やっぱなんか変だ...」
真美が呟く。
「ハァッ!!」
仕掛けたのは真美だ。
空手の上段蹴り。
悠生はそれを右手で掴み、受け止める。
「なっ!?」
「うん、これだ」
「どういうカラクリだ...私の蹴りを生身の人間が手で受ければ骨ごと消え去るはず...それなのに...いや、それどころか足を離すことも出来な...はっ、そうか!」
「直撃の直前、手から足までの距離をゼロにした。これでどんなに力を入れようとも俺が手を動かさない限りマミちゃんの足は動かない」
「...そーかい。そんなことを試すためだけに組手やろうってんじゃないだろ」
「わかってるね」
訳も分からず組手をする真美。
自分が子供のように可愛がった相手を、ただ面倒見る位の心持ちでしかない。
しかし、悠生には意味が違った。
勝たなくては行けない。
マミちゃんの方が強くあってはいけない。
あなたを失いたくはないから。
あなたを止められるのは俺だけだから。
一番大事な人だから。
だから、死んで欲しくないから戦う。
そんな歪んだ家族愛は拳と脚になって交わる。
「今度は俺からいくよ」
悠生の連撃が始まる。
真美との距離が短いまま、足払い、腕を引いて、首を掴む。
危険を感じた真美が咄嗟に後ろに跳んで逃げる。
「お前...一体どんな修行を...」
殺気が、ない。
「武田のジジイ...また余計なことを」
真美がニヤリと笑った。
いつぞやの駄菓子屋。
丹波が茅乃と来た駄菓子屋。
そこの店番の武田トメさん。
そう、武田さんの奥さん。
武田さんは何者かと言うと...
「お父さん、お呼びですよー」
「ほいほい」
奥から、トメさんに呼ばれて髭を生やしたおじいさんが歩いてきた。
腰は曲がっているようだが、杖もつかず元気な様子だ。
と、唐突に
「ほい」
おじいさんが突き出した拳は、悠生の右耳を掠めた。
「また習いに来たんじゃろ。上がってけ上がってけ」
あの一瞬で悠生は汗ダラダラだ。
「...はい...!」
「ほうか...雲仙が...」
お茶をすすりながら、思い出すように武田さんが呟く。
「あいつはわしの弟子の中で一番のセンスと技術じゃった...それでも全ては教えきれんかったが...あれもこれも、教えておけば良かったと悔やまれるの...」
そして、三人をぎらりと睨む。
「わしの二番弟子...吉田真美を見張っておけ。やつは必ず無茶をする。雲仙ともそれなりに仲が良かったと聞く。敵の正体が割れれば必ず叩きに行く。それだけは絶対に避けろ。わしももう思い入れのある愛弟子に先立たれとうない...」
「分かってます」
「ワシが何を要求するか分かるか...?」
「あの人...マミちゃんより強くしてください」
武田さんはニッコリ笑う。
「あいわかった」
「体力・パワーで勝つのは無理じゃ。引き出しを増やせ」
駄菓子屋近くの河原。
武田さんが見たことの無い構えをする。
「かなり古い武術じゃ...歴史の文献からワシが復元した」
何者なんだ。
「動きの癖を瞬時に読み取って対策を練れい」
仕掛ける。
まず上段への蹴り。
右腕で受け流す。
幸いパワーはない。
武田さんが足を下ろすと、先程より圧倒的に距離が詰まっている。
「マズイ!」
腹部に武田さんの拳が命中した。
「全然ダメじゃ。気が読めとらん。昔も言ったはずじゃ『殺気を読め』と。そんなんじゃ銃で撃たれて終わりじゃ」
そんなこんな2時間。
鋼や丹波はもう帰ってしまっている。
「...やはり若さには敵わんのう...いや、悠生が特別か」
2時間で悠生は武田さんが繰り出す計32種の格闘技を完璧に受けたばかりか、先頭のさなかでその格闘技をし返すまでになった。
「...これでマミさんに勝てるんでしょうか」
「無理じゃな」
「マミさんのパワーでは押し切られる...それにマミさんと俺とじゃ決定的に動きが違う」
「分かってるじゃないか」
「何が違うんですか」
「なんだと思う?」
武田さんが質問に質問で返す。
「やはりパワーですか」
「違う」
「経験ですか」
「違う」
「じゃあなんですか」
「オリジナリティじゃ」
武田さんがカッと目を見開く。
「諸々の戦闘センスだけで言うならお前はとうに真美を上回っておる。では何が違うか、それは最も自分に合った拳法の使用。これは真美にしか教えていないわしの格闘技術における極意。...雲仙にも教えられれば良かったのじゃが」
「それでマミさんに勝てる...マミさんを守れるんですね」
「ああ。お前程の成長速度なら1日あれば数年分の練度が身につくであろう」
「教えてください」
「もちろんじゃ」
自分のための拳法。
オーダーメイドの、自分にあったドンピシャの拳術。
「教えてしんぜよう。お前の特徴はおおよそ分かった」
カットを多用して8時間後...
「もう、もうやめにしよう...これではワシが持たん...」
「ありがとうございました。強くなれた気がします」
日はもう落ちている。
「気をつけて帰るんじゃぞ~」
「大丈夫です。今ならヤクザにあっても無事帰れます」
「はっはっは、あながち冗談でもないのう」
笑いながら、「じゃあの」と手を振る。
それに悠生も振り返す。
あたりは暗い。
直ぐに悠生が見えなくなる。
「お前も危ういがの...この三番弟子よ...」
翌日。
今日は金曜日。
「マミちゃん、いる?」
交番に現れたのはいつもの三人組――—ではなく、悠生一人。
「おうどうした悠生...って今日は一人か」
「ああ、また久しぶりに組手でもして貰えないかなって」
「なんだなんだ?漫画でも読んだか?」
「はは、そんなとこかな」
悠生は明るく振舞っているが、マミちゃんは何か違和感を感じ取っていた。
「...いいぜ。受けて立つ」
交番の裏に行く。
「ここで何回組手したんだろうね」
悠生が問いかける。
「さあな」
真美は何か見透かすのか、素っ気ない返事だ。
「さ、構えろ」
真美が促す。
「構えが違う...やっぱなんか変だ...」
真美が呟く。
「ハァッ!!」
仕掛けたのは真美だ。
空手の上段蹴り。
悠生はそれを右手で掴み、受け止める。
「なっ!?」
「うん、これだ」
「どういうカラクリだ...私の蹴りを生身の人間が手で受ければ骨ごと消え去るはず...それなのに...いや、それどころか足を離すことも出来な...はっ、そうか!」
「直撃の直前、手から足までの距離をゼロにした。これでどんなに力を入れようとも俺が手を動かさない限りマミちゃんの足は動かない」
「...そーかい。そんなことを試すためだけに組手やろうってんじゃないだろ」
「わかってるね」
訳も分からず組手をする真美。
自分が子供のように可愛がった相手を、ただ面倒見る位の心持ちでしかない。
しかし、悠生には意味が違った。
勝たなくては行けない。
マミちゃんの方が強くあってはいけない。
あなたを失いたくはないから。
あなたを止められるのは俺だけだから。
一番大事な人だから。
だから、死んで欲しくないから戦う。
そんな歪んだ家族愛は拳と脚になって交わる。
「今度は俺からいくよ」
悠生の連撃が始まる。
真美との距離が短いまま、足払い、腕を引いて、首を掴む。
危険を感じた真美が咄嗟に後ろに跳んで逃げる。
「お前...一体どんな修行を...」
殺気が、ない。
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